木ノ葉教育戦国時代   作:宝石マニア

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しばらく三嶋アザミ視点~転生者たちの詳細を明かす編

本来ならナルトが修行に出る時期なので、忍界転生してきた人たちの群像劇で新章を書いていこうと考えています。たまにナルト視点も。



アザミ番外編
1 イタチ班の中忍選抜試験①~オカヤとライカ


『オカヤとライカ』

 

 霧ヶ原湿原のトラップは想像以上のものだったが、私たち第77班は慣れているので途中ですれ違う木ノ葉以外の班を奇襲して順調に巻物を手に入れ、先着でもかなり早い段階でゴールした。第77班は既卒生でもないし、上忍師がいる直轄アカデミーの所属じゃない。『転生者のよしみ』というもので、上忍に正式な任命を受けたうちはイタチにより『イタチ班』として修行をつけられた上で出場している。

 

 平和な長野県長野市での人生を経験したイタチさんは、原作よりもずっと自分の命について考えるようになった。イタチさんのご両親はUターンで忍界に、何人かのうちはの人たちはイタチさんが長野時代に一緒に過ごした遠い親戚である人たちの転生者。だから事情や勝手は分かっていた。原作では志村ダンゾウたちによって命を落とすシスイさんは無事生存していて、元気に警務隊の分隊を指揮している。シスイさんの代わりに、前世で複雑怪奇な犬神家ばりに奇怪な家族関係をしている扇城(せんじょう)一族出身者が写輪眼を奪われて死んでしまった。その人の祖父だか祖母は志村一族らしいから多分、ダンゾウの体によく馴染むんだろう。おそらく、それを想定して組まれた縁組のもとで生まれた人。悲しいような虚しいような。

 

 

 

 『第3の試験 予選』においては144人、48チームを3つに分割して試合を行い本戦参加者を決定する。これはもちろんそうだと思ってはいたけれど、当たった相手が問題だった。ただし、予選も予選で中忍昇格者決定に関わっているので手を抜けない。どれだけ来ている上忍達に自分をアピールできるか。それが勝負だ。第1回目の試験ほどシビアではない代わりに、どれだけ自分の能力を示せるのかが問題となっている。48時間内にたどり着けなかったチームが非常に多く出たのと、棄権者がかなり出たので綱手様が考えていた以上に規模の小さい予選になりそうだ。だって、棄権者を除けば合計24人しか残っていない。

綱手様は「アレ?思ったより少ないじゃないか・・・」と少しへこんでいた。

 

 もし原作の強い子たちと当たったらどう戦おうか思考を巡らせていると、ぼんやりしていたようで誰かに肩を叩かれた。多分オカヤ君だろう。私は生前から「考え事をしていると意識がどこかにいってしまう」から、いつもオカヤ君とミサキ君にそうやって連れ戻してもらっていた。

 

「三嶋さん、対戦表が出たよ。行こう!」

 

オカヤ君とミサキ君に促されて、対戦表が貼りだされた廊下へと急ぐ。

そこには3枚の大きな紙が貼りだされていて、草隠れのチームが見事に全滅していた。

 

 

ナルト君たち『原作勢』は、面白いほどに同じ対戦相手同士。砂の三姉弟やガイ班がいないだけで、それぞれ対戦相手が似たような感じ。原作の第1の試験、第2の試験で登場し、いつの間にかいなくなっていた人たちが今回は生き残っている。しかも原作やアニメより数段階も強化された状態で。

 

うちはサスケ(木ノ葉) vs コムギ(木ノ葉)

春野サクラ(木ノ葉)  vs イナホ(木ノ葉)

うずまきナルト(木ノ葉)vs 源内(木ノ葉)

 

奈良シカマル(木ノ葉) vs ネジリ(砂)

秋道チョウジ(木ノ葉) vs コマザ(砂)

山中いの(木ノ葉)   vs バイウ(雨)

 

犬塚キバ(木ノ葉) vs ホウセイ(木ノ葉)

日向ヒナタ(木ノ葉) vs ジメイ(木ノ葉)

油女シノ(木ノ葉) vs ホウキ(滝)

 

鹿島ライカ(木ノ葉) vs 諏訪オカヤ(木ノ葉)

香取フツミ(木ノ葉) vs 稗田ミサキ(木ノ葉)

静織ハヅチ(木ノ葉) vs 三嶋アザミ(木ノ葉)

 

見事に、転生者と原作勢がきっぱりと別れた対戦表となっている。

まぁ、この方が後々に響かないだろうけれど。そういえば、イタチさんが「綱手様は誰が転生者か知っているから、さり気なく”配慮していく”そうだ」と言っていた。多分、その関係なんだろうと思う。

 

 

 

                       ☆★☆

 『原作勢』が見事に勝利を決めていくなか、遂にやってきた我ら『忍界転生者と転生者が作った一族出身者だけで組まれたスリーマンセル』同士の戦い。鹿島・香取・静織の3人はおそらく転生者じゃない。転生者が作った一族から生まれた子供たちである。私、三嶋アザミは転生者が作った一族に生まれた転生者だ。

 

「嫌だぁ・・・。鹿島一族と戦うなんて、おれ、遺伝子が拒否してる!」

 

チームメイトで前世からの大親友、諏訪オカヤ君が私とミサキ君に泣きついている。本当は棄権つもりなんか全く無いのに、普段は明るく前向きなのに、遺伝子が拒否するんだったら仕方がない。前世には無かった属性を背負っているばっかりに、それを自覚しているばかりに、ままならない事もあるのが苦しい。

 

「早く降りてきなさいよ、諏訪オカヤ。いつまで私を待たせるの?」

 

イラついた声にオカヤ君はビクビクしたまま振り返り、「行ってきます!」と言いながら飛び降りていった。すかさず私とミサキ君は心配になって柵から体を乗り出して会場を見下ろす。鹿島ライカはツインテールが似合う女子で、おそらく直轄アカデミーの女子の中では一番戦闘力が高いと言われている。それはそうだ。諏訪・香取・鹿島の3家は『軍神』と並び称される名門だが、昔からの因縁で諏訪一族が格下扱いを受けている。諏訪一族は鹿島一族から追われる形で天龍湖周辺へと逃げ込み、木ノ葉隠れが出来るまでは鹿島一族から監視されていた。遺伝子レベルで恐ろしくても仕方がないのだ。

 

「・・・やる気あるの、あんた。ま、勝つけど」

 

「や、やるに決まってるだろ?」

 

第1回中忍選抜試験の時に負った重症から無事復帰した月光ハヤテ特別上忍が試合開始の号令をすると、ライカは普段の「ざぁこ!」を封印した不敵な表情を浮かべたままオカヤ君から遠ざかった。

 

「見ていて下さい、おおおじいさま。諏訪オカヤ、推して参ります!!」

 

オカヤ君は背負っていた弓を持つと、氷遁を纏わせた矢を番えた。前世で弓道部の仲間だった頃から変わらない、何とも美しいフォーム。それも忍界に転生した今は更に磨かれ、相手を射抜くため最適化された最低限の動きからなる姿勢へと進化を遂げた。その瞳は不安から吹っ切れて、いつもより輝いて見えた。

 

キリキリと引き絞られる弓から手が離されると、オカヤ君はすかさず印を結んだ。

風遁によって放たれた矢の速度を上げ、ついでに最初の標的の着弾予定をずらす事が出来る。

当然、これはオカヤ君にとってはジャブに過ぎない。幸いライカはあまり頭が良いタイプではない。オカヤ君もそこまでではないけど、そういう方面が得意なワケではない。相手の興奮を煽れば冷静さを奪えば、オカヤ君にも勝てる可能性がある相手だと私は考えている。

 

「・・・焦っているな、オカヤ」

 

「うちはコーチ、いつの間に!」

 

ミサキ君が驚き過ぎて目が丸くなっている。それを見たイタチさんは目元に笑みを浮かべた。

 

「コーチ、こんばんわ。驚きましたよ」

 

私とミサキ君の間に、いつの間にか収まっていたうちはイタチ上忍――通称・うちはコーチ。師匠というよりも年齢が近いという事でコーチとオカヤ君が呼び出して以来の呼び方だ。

 

「先ほど来たばかりだ。これを食べるといい」

 

イタチさんは私とミサキ君に棒付きの飴を渡した。バター飴っぽい甘みが疲れた体に染み渡る。

 

 氷遁と弓術を併せ技にした戦闘スタイルのオカヤ君に対し、鹿島ライカは雷遁を纏わせたチャクラ刀を武器にしている。女性の割りには腕力がある、男子にメスゴリラと評されるライカは同い年の男子が扱う刀を平然と振るっている。対し、オカヤ君は男子の割りには非力。

 

「二人とも元気が無いな」

 

「鹿島ライカがイライラしている日はロクな事件が起きないので」

 

「・・・そうか、ミサキ。その原因は思い当たるだろうか?」

 

「ニキビ、イライラ、ですか。僕、前世は医者なんで予想はつきますけど。僕の口からは・・・」

 

ミサキ君は彼の言う通り、前世は医者だった。体力ギリギリな陸自の医官だった。大人相手に察する事が苦手だったが、今世では学習したようだ。

 

「同性なので分かりますが、ホルモンバランスのせいじゃないですかね」

 

「ホルモンバランスか・・・」

 

イタチさんが一瞬黙り込んでしまった。外見18歳美青年のイタチさんだが、長野県民に転生した人生では既婚者子持ちだったから色々と察したんだろう。13歳はそういう年頃だから覚えがある。

 

「あと、オカヤ君の動きが緊張でぎこちなくなっている事も鹿島さんのイライラを誘っているのだと私は思います。彼女は初等部時代、私の動作を見ていつもイラついていましたから。イタチさんが修行をつけて下さって初めて、私たちはやっと普通の下忍らしくなれました」

 

「それは良かった。だが、君たちは自分自身を過小評価し過ぎだ」

 

 ユタカ班は非常に要領が良い。だから、鹿島ライカに関しては初等部で同じ学校だった頃から要領があまりにも悪すぎて教師が首を横に振るレベルだった私に対していつもイラついていた。発達に凹凸が激しすぎる障害という原因はあるが、それでも忍者を目指す私に対して彼女は「やめちゃえば?」「どうせザコザコなんだから忍者になったら死んじゃうよ」と悪気も無く明らかに善意で忠告してきた。血継限界がなかなか発現せず、忍者としての成績を下から数えた方が早い私は彼女からしたら価値の無い存在。

 血継限界が発現しなかった関係で直轄アカデミーではなく、東部忍軍附属中学校に行く事になった私に「出世しないの確定なんてかわいそう!」と言い放った。明らかにイラついた顔で。彼女は直轄アカデミーでは首席だった星宮アマツ君と、男子次席だった香取フツミ君という優秀な二人と同じ班になってご満悦。学校は違っても同じDランク任務を共同でこなす機会はあるから、鹿島ライカは私の大事な班員にして大親友であるオカヤ君とミサキ君の要領に悪さに驚いていた。以来、私、いや私たちは彼女にとって確実な忌むべき対象になった。本来はライバルとして一緒に成長していくべきだった諏訪一族のオカヤが『出来が悪い』というのもあったからだろう。

 

「いや。私は身の程をちゃんと理解しているつもりです」

 

「僕も同じです」

 

 こうやって会話している間にも階下ではオカヤ君の放つ氷の矢とライカのチャクラ刀の攻防が続いている。ライカは才能がある。努力家でもある。だからこそ、私たち第77班のことを『血継限界の持ち腐れ』と言う。そうは言われても、出来ないことは出来ない。なぜなら彼女たちが生まれた一族は血継限界保持者が忍者として国と里に奉仕することを『力を持つ者の義務』と考えているからだ。まるで軍人のようだ。

 

 緊張で体が動かなくなっていくが、無理をおして体を動かし続けるオカヤ君は過呼吸という形で限界を迎えつつあるように見えた。やめさせようとする先生もいるし、イタチさんも試合を中断させるべきだと判断したが。オカヤ君は絶対に諦めないと宣言した。矢筒から射るべき矢も尽き、震える指で結んだ印と共に透明な鳥の形をした氷の刃が空気中に形成されていく。多くの使い手ならば平均3つほど、熟練者ならば12もの風を纏った氷の刃で獲物を襲う『諏訪流氷遁・凪鎌(なぎかま)』。惣領家のみの『御神渡り』を持たぬ者にとっては同じだけの価値を持つ、風神の刃である。

 

「あら、凪鎌?」

 

「・・・そうだよ」

 

軽い口調のライカに対し、オカヤ君の返答はまるで水分を吸い取られたかのように掠れていた。

おそらくオカヤ君は空気中の水分を集めるのが苦手だから、体中の水分を絞り出している。

 

「1つ、ね。あなたの曾祖父サマは私たちと同じ年齢(とし)の頃、5つは出していたそうだけど・・・」

 

「・・・それがどうした!」

 

1つだけ”顕現”した凪鎌は大きさを増していくと同時に、オカヤの目つきがぼんやりとしてきた。

オカヤ君とライカが同時に駆け出した。一瞬の間を置いて地面に散ったのは赤い花――のように見えるほど綺麗に散った鮮血と、腹部を刺し貫かれたオカヤ君だった。バラバラに砕け散った氷の結晶が紅く染まり、私は体温が下がる錯覚をした。刺した方のライカは逆に動揺しており、手が震えている。私は妙に頭が冴えて、ミサキ君の方を見た。私とミサキ君が動くよりもイタチさんは早く、フェンスに足をかけた。

 

「カカシさん!」

 

カカシ先生とアイコンタクトをしたイタチさんが飛び降りていく。医療忍者になる勉強をしているヒナタちゃんが動揺しつつも「今抜いたら出血が酷くなります」と、必死に大きな声を出して叫んでいる。私は生前、オカヤ君が藤森陸也(おかや)だった頃、中学生だった時ガラスに突っ込んだ時の事を思い出した。あの時も割かし大怪我だったが、出血が派手なだけで命に別条が無かった。

しかし、今は。

久しく表れていなかった過呼吸の予兆が来そうになっている。手の先端が痺れ、体感温度が下がり、呼吸が苦しくなってきた。思わず口元を両手で押さえると、紙袋を差し出す誰かの手があった。

 

「三嶋下忍。ここには腕の良い医療忍者がいるから大丈夫。これで呼吸を落ち着けて」

 

「あなたは・・・」

 

おそるおそる紙袋を差し出してくれた人を見ると、驚く事に予想したよりもずっと小柄な男性だった。

推定年齢は20代後半。170センチくらいの中背で華奢な感じの男性。色白で、髪と瞳は黒。優しい顔立ちをしていて、忍者らしい雰囲気がない人だった。

まるで生前の私が慕っていた”あの人”のような。

 

「僕は諏訪ヤシマ、階級は上忍。中忍選抜試験第3の試験予選のため、審査員の一員として呼ばれてここにいる」

 

「・・・、あの」

 

フラッシュバックする、生前の私に暗く影を落とした『彼』の『最期』の姿。

一流大学を卒業して建築家になって活躍していたが、突然病魔に蝕まれて若くして命を落とした父方の叔父。名前を滝川憲嗣(のりつぐ)。無関心な家庭を顧みない父に代わっていつも遊んでくれたり面倒を見てくれた、私の初恋の人。その人は知性の塊で、語学に堪能。しかもお洒落で美形なのに、複雑な家庭環境から結婚を躊躇っていたと死後に親戚から聞いた、33歳でこの世を去ったその人と同じ顔をしていた。

そう思うと驚くほど容易く過呼吸の予兆は収まり、落ち着いてその顔を見る事ができた。

 

「ん?」

 

「・・・何でもないです」

 

 諏訪上忍は不思議そうに首を傾げるから、顔は同じでも別人なのだろう。

父と少し年齢の離れていたその叔父を私は大好きだった。彼は長野県に対して説明が付かない郷愁を感じていて、その感覚を分かち合える私を可愛がってくれた。

 

話は血まみれの親友に戻る。

 

 ストレッチャーに乗せられ、階下ではオカヤ君が医療忍者たちによって搬送されていく。ライカの刺した忍者刀が突き刺さったまま。ミサキ君を見ると、無表情で唇を噛み締めていた。生来、ミサキ君は表情を作るのが苦手だ。そちらに注意を割けなくなったという事は、相当な怒りを感じているはず。当のライカは「どうして私こんな事してるの?」と言っているから、記憶が飛んでいるんだろう。

 

続いて、『香取フツミ(木ノ葉) vs 稗田ミサキ(木ノ葉)』の試合だ。

 

すっかり血の気の引いて白い顔をしたミサキは首にある勾玉のチョーカーを緩め、開始の号令がかかるのと同時に印を結んだ。

 

 

戦いの幕が上がる。




滝川憲嗣(のりつぐ)おじさん
=どこで何をしているのか分からないけど、独身で高学歴で超エリートなイケメンなおじさん。サマーウォーズの侘助おじさん的なポジションだったおじさん。
生前は東大卒、旧家出身、そしてアメリカ帰りのどこかで聞いたようなハイスペック。いくらイケメン高学歴でも、コミュ障の滝川あざみの血縁者なので、適切な人間関係の構築に関してはお察し。姪の前ではパーフェクトマン。だから独身だったオタクなおじさん。建築家だからお洒落で家の内装はハイセンスだった。外では失言王のため、無口を装っていた。喋らなければパーフェクト。
リメイク版のヤン似のヴィジュアル。特技:フラメンコ 趣味:ツチノコ探し
167センチと少し小柄め、甘くて優しい良い声の持ち主 享年33

諏訪ヤシマ 上忍 32歳
上記のおじさんそっくりな上忍(転生者)
169センチ 56キロ(生前よりもストレスが減って身長が伸びた)
氷遁の使い手
名前の由来:八島ヶ原湿原(八ヶ岳)
→八島ヶ原湿原には『あざみ館』という名前のビジターセンターがある
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