木ノ葉教育戦国時代   作:宝石マニア

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2 イタチ班の中忍選抜試験②~アザミとハヅチ

「すみません。僕、稗田ミサキは棄権します」

 

毅然とした声と態度で階下に降りたミサキ君が宣言すると、受験者から驚きの声が上がった。

ミサキ君はもし相手が香取フツミじゃなかったら喜んで試合に応じていただろう。感知をするためチャクラを大湿原で使いすぎたから、上忍師たちの中でも『強さこそ全て』な戦闘民族的価値観を持つ霧島ユタカ上忍が育てたチームの一員相手には分が悪い。それに、霧島一族は三嶋一族と大昔から同盟締結の失敗をきっかけに殺し合う仲だ。私の対戦相手である静織ハヅチも上忍師に影響されていないとは言い切れない。

 オカヤ君を倒した鹿島ライカがどうしてあそこまでやったかというと、やはり一族同士の因縁が関係する。稗田ミサキ君にはそういった因縁は関係ないが、私には薄くそれがある。それは霧島ユタカ上忍の存在だ。

 

 

「・・・貴女は棄権しませんよね?三嶋のお嬢さん」

 

霧島ユタカ上忍は穏やかだが不敵な笑みを浮かべ、私に問いかけてきた。その隣にはフツミと戦い損ね、調子でも狂ったのか少し機嫌が悪そうな香取フツミがいる。フツミは黒い髪に黒い瞳をした、平均より少し背が高い男子だ。最近気づいた事だが、私と同じ世界からの転生者または転生者が作った一族の者はかなり現実的な身長体重と黒髪・黒い瞳をしている。霧島ユタカ上忍も彼の部下たちも、転生者が作った一族出身。少しは強力し合えばいいものをと幼少期は思っていたが、母方の叔母であるサクヤさんが嫁いだ霧島一族の俺様加減に嫌になって出戻ってきてから考えを改めた。三嶋一族は過去のゴタゴタで霧島一族と敵対関係にあり、霧島一族のチャクラを無駄遣いさせる専用の呪印を開発している。高祖父と曾祖父あたりの代までそれが使用されていた。その呪印は命を削るようにじわじわ作用し、ある一定基準のチャクラを練ると日向一族のソレのように痛みを齎す。

 

「うちの一族は負け戦が嫌い。そういう事です」

 

眠そうにしていた静織ハヅチが顔を上げ、こちらを凝視してきた。

 

「そっか。棄権するんだね!」

 

「勝手に僕のチームメイトを決めつけないでくれる?」

 

いつもは静かなミサキ君が応戦しようとしたため、私は右手を伸ばしてそれを遮った。

ミサキ君はいつもおとなしいが、それは人づきあいが嫌いだからだ。スイッチが入ると思った事をすぐ口にしてしまう。でもそれは不正が嫌いで、正義感の強さからくる発言である。生前のクラスメイト時代も、彼が医師になってからも、忍界転生した今世もそれは同じ。でも、今世の彼は”前”より大人しい。

 

「三嶋さん」

 

「なに?」

 

私より同じ背丈のミサキ君は私の肩を両手で掴んだかと思うと、顔を近づけて囁くように言った。

 

「・・・あいつはねぇ、経験からだけど幻術使われるとド面倒じゃんね。体術か忍具で決めりんよ」

 

「任せりんよ、相打ちには持ち込むでね。うちはコーチとこれでも食べて待っとって」

 

いつも忍界転生して再会してからは実家以外で隠している生前の故郷の訛りで話すミサキ君に、私は個別ポーチを付けて持ち歩いている祖父が買ってくれた高級チョコレートをほとんど全部渡した。どうにか”氷遁”を発動せず決めたいものだ。

 

あの防衛線以来、私は祖父から極力氷遁を外で使わないように言われている。封印されているとでも言っておけとも。どうやら三島と諏訪、そして生前の苗字である”滝川”がモメているらしい。生前の父が原因のようだ。

                       

 直轄アカデミーでも上位に入る幻術使いの静織ハヅチと対峙する私を、諏訪ヤシマ上忍も見ている。それが嬉しくて、体が軽く感じる。三嶋一族は代々骨密度が高く、筋肉がムキムキになりにくく柔らかい代わりに体重が他の忍者よりも重い体質だ。それは生前の祖父の生まれた家も同様。遺伝だろう。

 静織ハヅチの生まれた静織一族は幻術と結界術、そして呪印を得意としている。それは『総鎮守』とよばれるほど防御能力が自慢である三嶋一族も同じ。幻術のぶつけ合いか、結界での防御の攻防、あるいは体術か忍具での戦いになるだろう。または憧れの忍者である二代目様が使っていた、幼少期からひたすら訓練し続けていた水遁のある術。二代目様のようには上手くやれないだろうが、攪乱には使えるだろう。

 私が静織ハヅチに勝っている点というと、チャクラコントロールと体術位だろうか。怪我を覚悟で接近戦に持ち込んで、早めに終わらせてしまおうか。それとも桃地さんから教わった霧隠れの術とサイレントキリングで短期決戦に持ち込むべきか。

 

多分、後者だ。暗殺術は私に向いている。真正面からやり合うのは得意じゃない。

 

私は『霧隠れの術』の印を組む。濃霧が会場を包み込み、ハヅチが「何これ?」と声を上げた。イタチさんに教わったようにチャクラの感知をし辛くするためチャクラの放出を抑制し、音を出来る限りたてぬようこちらから感知術で索敵する。

 

(捕捉!)

 

音を立てず動き、口の中でチャクラを練る。いくら卑劣と言われようと、私はやる。

一度くらいは誰かに勝利してみたい。負けしか知らない私は昔から熱望してきた。

 

「アザミー!やっちまえ!!」

 

「三嶋ぁ!!」

 

「三嶋さーん!」

 

第7班の応援に感謝しつつ、私は唇を窄めて”死なないが痛い”場所に水の千本を放つ。ノーモーションで放つ事が出来る暗殺向けの水遁、天泣。私が世界一かっこいいと思う忍者の一人が最終決戦で披露していた、アレ。綱手様に『二代目様の大ファンなんです!』と何度も交渉したら、習得しやすいレベルの術が書いた巻物の閲覧を許可して下さった。

 

(天泣!!)

 

死なない程度に、手足の動きを封じるように何度だって放つ。静織ハヅチが聞くに堪えない叫び声を上げ、「降参!降参!!」と叫んでいる。月光ハヤテ特別上忍のお願いで術を解くと、そこには土下座して額を地面に擦り付けるハヅチがいた。

 

「勝者、三嶋アザミ!!!」

 

 

 

さっさと階段を上がり、仲間たちに合流する。ミサキ君が大喜びしていた。

 かわいい原作トリオとその同期たちから軽蔑されるだろうなと覚悟していたら、そうでもなかった。原作よりも忍者としての教育方針がハッキリしているためか、逆に「忍者はこうじゃないとね!」とサクラちゃんから言われて驚いた。イタチさんも私を褒めてくれたので、何というか、心の底から安心した。

 

「おめでとう、三嶋さん。良い無音暗殺術だった」

 

「うちはコーチ・・・」

 

 兄も姉もいなくて長女、しかもいとこたちは大部分が年下なので同世代の親戚の中では必然的にリーダーシップを取らされる私にとってイタチさんの持つ”お兄ちゃん”という雰囲気が心地よい。結構なブラコンであるサスケ君は里外からきたうちはの血を引く子供たちを世話しているからか、最近はお兄ちゃんらしさを身に付けつつある。このまま成長していってサクラちゃんと結ばれたら、里からあまり離れない素敵な父親になるだろう。サラダちゃんを悲しませるのは子供好きとしては絶対許せないし、避けたい。

 

「みんなも頑張ったな。里に帰ったら、俺からみんなに手作りの蕎麦を振舞いたい」

 

「やったー!!」

 

「楽しみにしてます、イタチさん」

 

紅班もアスマ班も笑顔で、それぞれお互いの勝利を喜び合った。ユタカ班は微妙な表情だったが。

ちなみに戦う前に渡したチョコレートは全て、イタチさんとミサキ君に食べられていた。

 

 

 

                      ☆★☆

土曜日 うちは兄弟の実家居間

 

「ほら、できたぞ。召し上がれ!」

 

 うちはイタチ上忍の手によって丹念に作られた蕎麦は、紛れもなく『戸隠そば』そのものだった。「一本棒、丸延ばし」という古い技術によって延ばされた生地は刃物の扱いに慣れた料理人によってカットされ、これまた絶妙なゆで加減でゆでられたあと、「ぼっち盛り」という特有の盛り方で更に盛られている。

 

「これが、これが兄さんの作ったそば・・・!!」

 

「いただきまーす!!」

 

キラキラと眼を輝かせるサスケ君は手を合わせ、誰も取らないのに一生懸命食べ始めた。ナルト君やキバ君といった食べ盛りの男子は当然、食べる量がとても多い。倍化の術を扱う秋道一族のチョウジ君に至っては、大食いというレベルじゃない。準備の良いイタチさんは影分身まで駆使し、大量の蕎麦をゆで上げた。

 

一口食べると、良質なそばの味が口の中に広がり、香りが鼻腔を抜けていく。

高校の校外学習で旅行した事がある北信の風景が蘇るようだった。高速道路で西三河を北上し長野に入り、松本市の松本城へ。それから安曇野市で花畑を見て、長野市へ。生前の貴重な美しい思い出だ。わさび園にも行ったな。

 

「おいしいね、いのさん」

 

「本当にね、サイさん」

 

早くもラブラブ状態のいのちゃんとサイ君にはもう慣れた。早くくっついてくれると、人間関係が分かりやすくなって良い。ナルト君とヒナタちゃん、サスケ君とサクラちゃんも、何がどうなったのか分からないけど既に将来を見据えた交際をしているようなので人間関係に関してはスッキリしている。

 

イタチさんはユタカ班も今日の蕎麦パーティーに呼んだのだが、断られた。彼らは息つく暇もないほど修行に明け暮れていて、対戦相手ながら気を付けて欲しいと思う。第3の試験本戦出場者はこれより1カ月間、特別な時間割を組まれて修行期間に入る。今回は3つの班の全員が本戦に出場するため、上忍師の先生方は忙しくなる。そのため例としてナルト君には自来也氏、サクラちゃんには綱手様、サスケ君にはカカシ先生といった分担で修行をつける事になった。

 

対して、私は突然怪我をしたので本戦出場を辞める事にした。

昨晩、家に帰るついでとして夜買い物をしていた時だった。突然襲われ、右肩を痛めた。見知ったチャクラの質だったんだが、まさか子供の復讐に親が出て来るなんて卑劣極まりない!!あれは悪い卑劣。許されざる卑劣である。

骨は折れていなかったものの、生まれつき接合が緩かった右肩の関節が外され、捩じられ、しばらく神経が痛んで満足に戦えなくされてしまった。

腕を普通に動かす事は可能だ。しかし、弓を引くと痛む。

 

こうして、私の中忍選抜試験は幕を下ろした。

 

あとは出場者のサポートと怪我の治癒に努めるのみ、だ。

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