木ノ葉教育戦国時代   作:宝石マニア

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1 二つの『星宮』と扇城

「これにて4月の日程は全部終わり。次は5月終わり頃だよ」

 

 ヤマト先生・・・、いや、隊長の一言によってホームルームは終わりを告げた。

1週間、6日間にわたる座学と実践訓練。中忍になった学生全員が寮に寝泊まりして行われたその『スクーリング週』では貴重な体験を沢山させて貰った。それは忍界大戦さながらのサバイバル戦闘、その名もカカシ先生が組み上げた『建造物破壊任務演習 ≪橋≫編』。ヤマト隊長の木遁によって橋が何度も建造されては、いかに効率的に破壊できるのかを習った。破壊したあとは迅速に撤退し、仲間が誰も傷つかないように。来月には別の建造物破壊の訓練があるという。敵アジトとか、敵司令部とか、補給基地だとか。そういったものが対象だ。

 

時計は12:30分丁度を差している。担任が出ていった教室はさっきよりも騒がしくなって、そこらじゅうから「これからどうする?」「食堂行ってから帰ろうかな」という声がしてきた。隣のクラスからも人が出てきて彼らが廊下を歩いていくのが見える。紅班はこれから食堂に行く様子で、ヒナタが「先に昼ごはんに行くね」とオレに小さく手を振った。猪鹿蝶トリオもまた食堂行きを選んだようだった。

 

「オレたちはどうする?」

 

「まずは昼食だな」

 

「賛成よ」

 

オレに問いかけられたサスケとサクラちゃんは、どちらもまずは腹ごしらえが先だと答えた。オレも賛成。

今日は食堂で食べても、食べなくても、自由な日だ。でも少し特別なものが出されるという噂があった。

 

「今日は諏訪がウナギを食堂に納品したとオカヤが言っていた。行くしかないだろう?」

 

実はオカヤと仲が良いサスケが得意げな顔で言った。誰より早く情報を手に入れると嬉しいもんな!

鰻は高級品だから、自分から好んで買い物しない。だから食堂に行くっきゃない。

 

「マジで!?」

 

「やったわね!」

 

 本拠地が『天龍湖』という大きな湖の周辺に存在する諏訪氏族は里が出来たころ、里に分社を祀るための祝(ほうり)一族の一部と忍者を出している武門・惣領家が丸ごと移住してきた。里に住み着くからには里に貢献したいと彼らは願い、最優先のお得意様として特産品のウナギを卸してくれているから里人は割と安くウナギが食べられる。とはいっても、高級品は高級品。若い忍者がポンポン食べれる品じゃない。

 

 オレたちは廊下に出て階段を下り、食堂へと歩き出した。途中でネジ先輩たちと行き会ったり、書類を届けに来たイルカ先生と少し話したりして、漂ってくる良い匂いと共に食欲が高まってきた。途中で行き会った人たちはみんな口をそろえて「すごくおいしかった」と言ったんだ。そりゃ期待も高まる。

 

 

 

 食堂に入ると、そこはまるで天国。甘いウナギのタレの匂いが充満していて、お吸い物の上品な良い匂いが同時に漂ってきている。先に来ていたヒナタやいのたちも嬉しそうに談笑しながら、ウナギが出来上がるのを待っている。いつもは定食の選択、またはビュッフェ形式。セルフサービスだ。でも今日は違っていて、ウナギ料理店『天龍や』の制服を着た人たちに混じって高校の校章が刺繍された料理人服を着た若者が働いていた。民間人が通う高等学校の調理師科。多分、実習も兼ねているんだろうな。

オレとサスケは紅班とアスマ班が座っているテーブルの、丁度3人分空いた席を選んで座った。

 

 結論から言うと、ウナギは絶品だった。余った分はおかわりをさせてくれたし、鮎の塩焼きまで用意してあった。同じ一族の人たちが働いているお店の提供なだけあって、オカヤとアザミが手助けに入っていたのには驚いたってばよ。他にもB組所属の諏訪軍団関係氏族出身者が混じっていて、大変そうだった。

 

 

                      ☆★☆ 

 昼食を食べ終わると、月曜日までは確実な自由時間が与えられる。というのも正式な中忍として始動するのが月曜日の朝からなだけで、今からDランクくらいの任務を自分で貰いに行っても良い。修行に励むのも良いが、大人数での集合演習によって気持ちまでヘトヘト状態のオレたちは何だかそんな気持ちになれなかった。だから、オレたちスリーマンセルは何気なく任務受付窓口へとフラリと向かう事にした。

 

 そうして得たのが、『星宮(ほしみや)一族本家の遺品整理』というDランク任務である。現在星ノ宮神社を仕切るのは、扇城一族と婚姻を結んでいない純正ともいえる血統の星宮一族の家だ。星宮と諏訪には血縁関係がある。劣勢ながらも敵対し合う大名同士の代理戦争に駆り出されて、かつて鹿島・香取の合同チームと戦っていた。劣勢とはいっても、最後に逃げ込んだ天龍湖周辺に閉じこもって戦国時代が終わるまで籠城し切った実績がある。それに、戦国時代最後の諏訪当主は当時の鹿島当主を打ち破っている。戦国時代が終わって木ノ葉隠れが設立される過程で有耶無耶になったそうだけど。

 

 

 

「ここが、アマツが"あの日"まで育った家か」

 

「そうです。ここが、アマツ君のまさしく”実家”です」

 

巫女姿の依頼人、星宮セイラが細く透き通った声でサスケに応えた。

 

「・・・実家」

 

何も感情を含んでいないが如く乾いたサスケの声がオレの隣からする。春の空は綺麗で、暖かな風が長く人の手がかかっていない住居と庭の雑草を撫でていく。あの事件の日から放棄されて長く時間が経過した、星宮一族本家。アマツは扇城一族出身の母・扇城アズサと、星宮一族の父・星宮ユウセイとの間に複雑な男女関係の末に第二子として生まれた。

 

 オレたちを案内してくれた若い女性は巫女で、今年19歳になる。彼女の顔立ちは何というか、扇城とは違う感じ。『うちは』要素が全く含まれていないという印象を受けた。どちらかというと『諏訪』の皆さんにそっくり。アザミの親戚っていっても驚かない。セイラさんは華奢で、なで肩で、戦いとは遠い場所の存在という雰囲気。艶のある長い黒髪を熨斗(のし)で一つに括っていた。

ここまでの道中で、彼女は彼女自身が女子高を卒業後から実家で巫女として奉職していると自己紹介してくれた。サクラちゃんと女性同士楽しそうに会話していて、オレとサスケは諏訪軍団が住む地区を通過しながらきょろきょろと周りを眺めていた。うなぎ屋が沢山立っていて、『御柱』という独特な柱を4つで地域を区切った不思議な居住区だった。その外れに『星ノ宮神社』があって、そこに続く通りにこの任務の目的地は存在した。名札には『星宮』、その横には家族の名前が書いた木の板。

『星宮コヨミ』『星宮クヨウ』『星宮ナキリ』『星宮カガセ』『星宮アマツ』と5人家族の名前。

このうち3人が死に、2人が生き残り、1人がその事件を起こした。

 

セイラさんは引き戸を開けた。すると、浅葱色の袴姿のがっちりした青年が現れた。

青年は鍛えているようだが、忍者とは違った体格をしている。筋トレ好きなんだろうか?

 

「こちらは兄の星宮スバル」

 

「来て下さってありがとうございます。さて・・・、お上がり下さい」

 

 

 

どんな風に放置されたままだったんだろうと不安だったが、通された屋敷の中は予想以上に片付いていた。

廊下はピカピカで、荒れているのは庭だけだったみたいで少しだけ安心。だけど何となく違和感がある。

それはサスケとサクラちゃんも同様らしく、きょろきょろと周囲を見渡していた。

 

「どうぞ、皆さん。遠慮せずお飲み下さいませ」

 

色からして高そうな緑茶を出され、結構な距離を歩いてきたのでオレたちはセイラさんたちの言葉に甘えて頂く事にした。口をつけてみるとカフェイン結構ありそうな感じがしたけど、予想通り美味しかった。

 

「忍者である皆さんは何となく気付かれたとは思われますが・・・」

 

「『うちは』と『扇城』にまつわるモチーフが多いですね。それに写輪眼についての書物もチラホラと」

 

即答したサクラちゃんに、星宮兄妹は頷いた。

 

「その通りなのです。私と兄は二人でこの家の整理を進めて参りました。私と兄は別に忍者を嫌っておりません。ただ両親や親戚が好んでいないだけで。ですが忍者に関する書物は知らなかったので、忍者の方に整理をお任せしたいと考えていました。それから・・・、兄がもうすぐ結婚するので、このお屋敷を頂く予定だったのです」

 

「それはまた・・・、おめでとうございます」

 

「ありがとうございます、うちは君」

 

スバルさんが照れくさそうに笑顔を見せた。無口だけど優しそうな笑顔だなって思った。

 

「ここからは次期神主である僕が話しましょう。『二つの星宮』の話を・・・」

 

 

 星宮は元々、諏訪と同じ大名の代理戦争に使われる忍一族だった。二つの氏族は共に鹿島・香取という剣術に優れた氏族連合を相手取り、古くから血で血を洗う苛烈な戦いを繰り広げてきた。何故ならば、鹿島・香取が属する勢力というか領土拡大にとって諏訪と星宮が所属する勢力は邪魔な存在だったからだ。諏訪と鹿島、星宮と鹿島・香取氏族連合。地域平定にとって邪魔だった、共通の敵を持つ星宮は諏訪と手を組んだ。幻術に優れた『惑い星・星宮』と、不撓不屈の精神と氷を血に宿す『不屈の氷龍・諏訪』。途中で諏訪は天龍湖周辺に封じ込められて守矢と争った結果、『諏訪軍団』を結成して戦国時代が終わるまで長い長い防衛戦を戦い抜く事になった。しかし星宮は途中までは圧倒的な戦闘力を以てして鹿島・香取を毎度のように完封勝利を収めてきた。だがある日、封印術に優れた『静織(しとり)』という家と同盟を組んだ。

 星宮と静織はチャクラからして相性が非常に悪かったらしい。ボコボコにされた星宮の者たちは呪印で縛られた。それが戦国時代が終わり、木ノ葉隠れが築かれた時代だった。その時代、星宮は二つに分裂した一つは志村一族と婚姻関係を結んだ。後に扇城一族とも。残りは神社からも遠ざかり、一般人としての生活を選んだ。一般人になった家はそうでもないが、忍者を出しつつ神社を継いだ方はずっと鹿島から監視されていた。いつ自分たちに再び牙をむくのか分からなかったから、だと。

 

「セイラさん。志村と結婚した家が、アマツの父親の生まれた家系ですか?」

 

「うずまき君、正解ですわ。ユウセイ上忍はアズサ姫とは実は二重にいとこの関係にあります」

 

「二重でいとこって・・・、両親がどちらもきょうだい同士じゃないですか!」

 

サクラちゃんが小さく叫ぶように言った。医療忍者からしたら絶句なんだろうな。

 

 扇城に志村と血を交えた血筋だが、こっちはなかなか凄い。血を交えた相手の扇城の方にはなんと、戦闘一族として知られていた『かぐや一族』の血が混じっていたのだ。その家系は戦闘民族具合と狂気が問題であまり外からお嫁さんやお婿さんが来なかったそうだ。だから何とか親しい家に子供を養子に出すなどして緩和を計ってきた。その結果が、コレだという。オレには理解出来なかった。

 

「こちらの屋敷を所有していた星宮家、つまりは元本家。こちらの家にはもう殆ど星宮自体の血は残っていませんでした。扇城の方と親しいうちは君は気を悪くされるかもしれません。ですが、言いますね」

 

サスケが息を飲み込む音がした。

 

「明らかに、『うちは』に近付くため写輪眼の遺伝子についての研究を行っておりました。里が出来た頃に最初に結婚した星宮の者以降、この家は扇城とばかり婚姻関係を結び続けました。だから私たち民間人になった星宮の分家がこうやって神社を受け継ぐまで扇城に『乗っ取られて』いたのです」

 

「り、理由は何だってばよ!?」

 

「扇城一族は”うちは”によって監視されていたようです。血を濃くしないための生存戦略としても存在していた家系ですが、どんどん力をつけていった歴史があるので。『うちは』は里から監視されていましたが、扇城はそうでもない。職人一族としての隠れ蓑を持って比較的平和に暮らしていたので。ですが、『うちは』の監視を逃れるため怪しまれない血を分ける先が欲しかった」

 

オレは心配したが、サスケは逆に「興味深い。もっと聞かせて欲しい」と言った。

 

「それが、この星宮だった」

 

「その通りだよ」

 

そして、セイラさんたち『もう一つの星宮』について。

こちらは先程言った通り忍者を出すのをやめ、忍者としての術は全て連合を組んでいた親戚である『諏訪』に引き渡してしまったという。諏訪の氷遁はX染色体に情報が乗っているから、母親が遺伝子のキャリアなら『息子』は氷遁を発現する仕組みだそう。戦国時代中期、諏訪の方に『最強の星宮』と呼ばれた男性忍者がY染色体を引き渡した。アマツに繋がる方にはそちらの血が入っていないらしい。

 

柱時計がポーンポーンと鳴った。時間は午後16時。そろそろ作業に入らないと夕飯に間に合わない。

オレたちは資料の引き取りのため、立ち上がって星宮兄妹に連れられて資料が纏められた部屋に向かった。

 

                      

 

 作業が終わった頃には夜7時になっていた。春の夜は早く来る。オレたちは諏訪軍団の居住する地域の通りを使い、それぞれ寮へ、自宅へと帰っていく。サクラちゃんは途中で中忍をしている父親と会ったので、サスケを交えて何やら喋っていた。サクラちゃんの父ちゃんはサスケを認めている。将来、愛娘がうちはに嫁ぐという未来も。サスケはサクラちゃんの父ちゃんから激励されたあと、ぐしゃぐしゃになった髪を直さないままサクラちゃんとその父ちゃんに手を振って見送った。

 

木ノ葉隠れの里内でも、エリアごとに違った味のラーメン屋とその名店が存在している。オレは突然、初めて訪れたここにも有名なラーメンがある事を思い出した。にんにくの匂いに食欲が湧いてきて腹が鳴る。

市街の商店が並ぶあたりには『伝令鳥貸します』と書いた小さな店があった。これがあったら、今日は外食してから帰る事ができるかもしれない。オレは横を向き、サスケに誘いをかけた。

 

「ここのラーメン食べていかねぇ?今から鳥借りて飛ばすからさ」

 

「良いな」

 

快い返事が嬉しくて、さっさと鳥を貸してくれる店から学生寮へとメッセージを飛ばした。

これで大丈夫。まだ出会った事のないラーメンに会いに行ける!

 

 

                       

 

 

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