長野弁っていうよりも、長野弁『風』だと思って頂きたいです
転生を複数経て表情筋が割と活発なサイです
はじまり 原作ナルト世界
1度目 現代(伊賀か甲賀出身で愛知の美大に進んだ”志村彩(サイ)”くん)
少年漫画家として名を馳せる
2度目 何故か呪術廻戦の世界で、絵を具現化する術式を持って誕生
ヤマト隊長っぽい人と行動を共にしていた。渋谷恐怖症になる
いのっぽい彼女(呪術師)を渋谷で失いそうになった
3度目 今ココ
前前前世からいのが好き
☆★☆
アマツから見たCEOとサスケから見たCEOは印象が全く違う。
だが黒幕もいるにはいる。意外と近くにいる。
8月7日
オレたち第7班に割り当てられたBランク任務は、五代目火影によって直接命じられた。扇城屋のCEO・扇城トオルとその一家を、夏の休暇先である天龍湖の湖畔にある温泉リゾートへと送り届け、滞在中も襲い来る刺客たちから守り切ること。これが、2週間にも及ぶ任務の内容だ。扇城トオルは、天龍湖の湖畔に本社や紡績工場を構える『藤森財閥』との合併協議も兼ねてそちらへ行く。これまで吸収合併してきた企業は数知れず。しかし、それだけに恨みを買って刺客を放ってきた者たちもまた数知れず。扇城トオルは元が上忍ではあるが、当人は「だいぶ忍者の仕事から遠ざかっていて完全に鈍っている。ほぼ民間人だ」と事あるごとに主張する。だが元忍者(正確には定期的に訓練には参加している予備役)だから、これまで生きながらえられたのも真実だ。
オレからすれば、扇城トオルが鈍って忍者としてのカンを失っているとは到底思えないエピソードが思い出されられる。あのCEOは前CEOと三嶋フウレン特別上忍が親友同士という繋がりからか、三嶋フウレンの孫娘・アザミの姓が”三嶋”だった頃から風遁の指導を行なっていた。三嶋の血継限界である晶遁は『土』と『風』の性質からなっている。アザミはとんでもなく不器用で要領が悪いが、三嶋フウレンの教育方針から術の教授を一切されなかった代わりに徹底したチャクラコントロールの修行を課されていた。一族相伝である術を教わらない代わりに、自分で誰か術を教えてくれる人間を探して教わるよう彼女は言われていた。その相手の一人がたまたま、祖父の知り合いである扇城トオルだった。志村一族の血を引く扇城トオルは風遁も得意で、好奇心旺盛なアザミから風遁を教わりたいと熱心に頼まれていた。中庭で指導を受ける同期と養父の姿を見ていて思ったが、あの動きはどう考えてもカンが鈍った人間とは思えなかった。それは多分、今もだとオレは思っている。たまに街で見かけても、身のこなしが引退した者とは段違いで無駄が無い動きなのだ。
門の近くにある甘味処で友人である上忍たちと共にみたらし団子を頬張る兄さんを見つけたので、オレたち第7班とサイは兄さんにも任務へ行くという報告をする事にした。兄さんはこれから同窓会だという。
「兄さん、行ってくる」
「行ってらっしゃい、サスケ」
兄さんとその友人たちに見送られ、オレたち4人は依頼人を迎えに行くため扇城屋の方へと歩き出した。
最近義姉さんは夏の暑さからなのか体調が良くないらしく、ここ数日間任務を休んでいる。心配だから、天龍湖の有名な菓子でも土産に買っていこうと思う。それにはサクラもナルトも賛成していた。だがサイだけは暫し考え込んでから、「さっぱりした物にしようよ」と柑橘系のものを強く推してきた。
扇城屋での社会科見学以来の扇城家本家邸宅の中庭に行くと、そこではCEO夫妻と同い年で民間私立校に通うアキラ、CEO夫妻の実子である3姉妹が勢ぞろいしていた。
「来てくれてありがとう、第7班のみんな。私は元忍だが民間人としての生活が長いからね、家族を守りながら旅行するのは本当に大変なんだ。サスケ君。イズミちゃんは元気かな?」
爽やかな実業家然とした表情でオレと握手しながら、扇城トオルは義姉さんについて問いかけてきた。
「ハイ、元気です」
「それは良かった!皆が忍者になってからというもの、あまりこうして顔を合わせられなかったからね」
ナルトはCEOを見ると居心地わるそうにし、サクラとサイの方をちらほらと見ていた。
CEOの傍らには、この邸宅で警備員として仕えている扇城の使用人が控えている。それに対しても、ナルトはどこか落ち着かない様子。社会科見学で調子が悪くなった時にナルトを気遣っていた者だ。
その側近は、名をハルキという。階級は中忍で、医療忍術の心得がある。
「ではみんな、行こうか!」
「しゅっぱつしんこう!」
CEOの実子のまだ小さな末娘が元気いっぱいに右手を空に突き上げて叫んだ。
サクラは少女の姿を微笑ましそうに見ている。
こうして、危険?な夏季休暇護衛任務は幕を開けたのだった。
☆★☆
天龍湖とその周辺にある集落に向かうには、イナ谷という渓谷を抜けていく必要がある。かつてイナ谷には忍一族がいくつも存在し、そこから里に移住してきた一族もいる。その地域の一族の多くが諏訪軍団に味方していた。天龍湖周辺へと抜けるにも、狭い谷が繋がっている。その谷の中心には川が流れ、両岸には小さな古い神社がある。かつて諏訪と守矢が川を挟んで激闘を繰り広げたという、由緒正しい古戦場だ。谷を抜けるとようやく、天龍湖へと到着する。天龍湖の名産品はウナギと生糸。観光地は天龍大社。
天龍大社というと、多くの人間が名前だけで1つの大きな神社を想像するだろう。実際には上社(かみしゃ)と下社(しもしゃ)。その中にも上社は前宮と本宮、下社は秋宮と春宮に別れている。
中忍選抜試験の時にはしっかりと見る暇が無かったが、天龍大社の祭神は軍神だ。どんな強大な相手にもひるまず立ち向かう、たゆまぬ勇気と不撓不屈の心を象徴する水と風を司る軍神(いくさがみ)。狩猟の神という側面を持ち、諏訪氏族の者が背負う弓と矢筒はそれに肖(あやか)ったもの。
夫婦仲が良い神でもあるので、夫婦の幸せを願って参拝する者も多いという。
今日から2週間はカカシがいない、新人中忍と2年目中忍だけで挑む任務だ。今日の1800からは中間地点にある飯田(いいだ)という街で一泊する。朝0800には出発し、明日の夕刻には天龍湖にある豪勢な宿泊施設に到着する予定になっている。波の国に行った時の事をよくよく思い出し、纏めておいた『自然現象ノート』を捲る。豆知識が沢山あり、依頼人との話題に困らないという事で重宝している。
「ここは大渓谷だ。雨が一旦降りだすとこの地域はなかなか止まない。ここ三日間、晴れている」
オレが読み上げると、軽い歩調で足を進めるナルトが頷いた。
先頭を歩くサイは突然こちらに振り向き、右手の人差し指で地面の水たまりを指差した。
「おっ・・・、と。ここにわざとらしく水たまりがある。皆さん、春野中忍の指示通り下がって下さい」
隊長を命じられたサイが務めて笑顔でクナイを構えながら扇城一家を下がらせ、サクラに指示を出した。サクラは女性で同性だからか、忍者嫌いのCEO夫人からの抵抗がかなり少ない事がここまでの道で分かったのだ。そこで上忍候補に選ばれるほど優秀なサイは、夫人と3人の娘たちに対する対応の7割をサクラに割り振った。サクラは怖がるCEO夫人と娘3人を下がらせた。アキラはCEOによって守られている。
「サスケ。雷遁でドカンと一発頼むってばよ!」
「おう」
「例のアレね!」
オレは里から持ってきたコードを水たまりに差し込み、雷の性質を持つチャクラを練ってそこに電流を流した。すると水の中から男が一人、聞くに堪えない叫び声を上げながら飛び出してきた。恰好からすると抜け忍だろうか?どこに雇われたのかを聞き出す必要があるので、サイが縄で拘束しながら軽く尋問をしている。不意にサイはポーチから狼煙を出し、火を付けた。
「少し待ちましょう。彼を連行してもらいます」
休憩を兼ねて少し待っていると、木の上からヤマト上忍が降りてきて手錠をかけ里の方向へと向かっていった。「みんな頑張れ!」と声をかけてから。オレは全く気付かなかった。付いてきているという事に。サイとナルトは最初から知っていたようで、驚くオレが面白いのかクスクス口許を抑えて笑っていた。
悔しい、大いに悔しい。伝説の三忍・自来也を師とするナルトも感知で気付いていた事が悔しい。
以後、天龍湖に到着するまでに登場した暗殺者たちは実にピンキリだった。マヌケなヤツから、案外動けるヤツまで色々いた。会社名をCEOに告げる度にCEOは眉を顰め、溜息をついた。この暗殺者の襲来は面倒極まりなかったが、良い事もあった。適切に迅速に対処する度に忍者嫌いである筈のCEO夫人からの信頼がどんどん上がっていったのだ。なので出発時にはサクラ以外にはツンケンした態度でいた彼女も、到着時にはオレたち男子3人にも話しかけてくるようになった。中でもナルトがお気に入りらしく、「ナル君に現地でボディーガードしてもらおうかしら」と言い出すほどだ。CEO夫人は妹を九尾襲来で亡くしている。あの日記の内容が真実ならば。だというのに、それも認識した上でナルトを気に入ったようだ。
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8月8日
川沿いを進んでいくと、遂に開けた場所に出た。昨年の12月に来て以来の天龍湖が見える。
その風景は冬とは印象が違い、湖畔に咲く花々の鮮やかさにオレは少しだけ驚いた。
銀色に輝く広い湖面に、サクラが「わぁ!」と感嘆の声を上げた。湖の上を吹き抜ける風が、盆地ゆえの熱い空気を海へ流れ出す川の方へと押し流していく。そのため、天龍湖の周辺はちょっとした避暑地になる。付き人である扇城ハルキはきょろきょろと周囲を見渡している。
「どうしたんですか、ハルキ中忍」
それに気づいたサクラが尋ねると、扇城ハルキ中忍は爽やかな笑顔を見せた。
「流行りのお菓子があると聞きましてね」
「そうなんですね!教えて頂きたいなって・・・」
「勿論良いですよ。僕は甘いものが大好きでして」
万年中忍だと自称する、一見優し気な扇城ハルキ中忍35歳。サクラと和やかに話している。
オレはどうも、このCEOの付き人が苦手だ。サクラはそうでもなさそうだが、ナルトが警戒した表情を一瞬だけオレに見せてきた。一緒に来ている扇城タイキ中忍とは仲の良い従兄弟同士であり、扇城家に住んでいた時代はよくしてもらった。そちらは見るからに冷たそうな印象を受ける20代前半の人物だ。だが実際は温厚で優しく、オレはどちらかといえばハルキ中忍の方ががあまり得意ではない。時折見せる舐めるような観察するような視線がどうにも好きにはなれなかった。
「あ、そうだ。僕は先に宿泊先に行ってあちら側と打ち合わせをしてきます」
サイが突然、そう言って走り出した。
目的地に辿りついたが気を抜かないよう、隙の無いフォーメーションを組みながら天龍湖温泉の温泉街の中心を通る広い道を歩いてく。道の両脇には雪の結晶で出来た梶の葉に足が生えた諏訪氏族の家紋がついた装束を纏った人々がざっと20人はおり、今回の会談がどれだけ大事なものなのかを物語っている。
宿泊先は約50メートル先にある、天龍湖の湖畔で一番大きな温泉旅館。名は『ふじもり館』という。
ずらりと着物姿の仲居が番頭を先頭にして並び、そわそわと扇城屋一行を待っている。そこにはサイもいた。サイは普通に立っているように見せかけて、左足を前にした立ち方で利き手は手裏剣ホルスターの近くに置いている。デキる奴だ。変な奴ではあるがチームメイトとしては尊敬できる。
「あそこにあるのが、僕たちが宿泊する『ふじもり館』だよ。みんなの分は払ってあるから、好きに楽しんでね」
ああ、そうだ。この感じだ。案外ふんわりとした、優しい口調。
「ありがとうございます、社長さん」
「どういたしまして、春野さん。ここは特殊な場所でね、お金を払えば好きに飲み物や食べ物を食べて良いし目の前の湖岸で遊んでいい。浮き輪も可愛い浴衣もタダで借りられるよ」
優しい表情で双眸を細め、引き取った子供たちを慈しんでくれたあの日々。
『あの日』に育ての両親と姉を亡くした挙句、実兄が犯人の疑いをかけられて虐殺の巻き添えを喰らって生き残ったアマツに「無理しないで良いんだよ」と言っていた姿。あの日記帳とはかけ離れた、忍者嫌いの妻とのバランスを取ろうと苦心する優しい養父の姿。二つの姿が脳内でグチャグチャになりそうだ。
「そういえば扇城の社長さん。僕って言うんだな?」
「元々こっちが本当だよ。気を抜くと出てしまう。僕もいいけれど、どうも威厳が足りない。それで直したのさ」
「コラ、ナルト。敬語!」
サクラに注意され、ナルトは「ごめんなさい」とCEOに謝った。
オレたちが打ち合わせをしていると、CEOの夫人である扇城ハナエが夫に肩を小さく叩いた。
「ねぇ、あなた。私とこの子たちの護衛はナル君を指名して大丈夫かしら?」
「そうだね。ナルト君が良いなら・・・」
「もっちろん、頑張るってばよ!」
明るいナルトの声に、ハナエと三人の娘たちは嬉しそうにそっくりな笑顔を浮かべた。
それからアキラはナルトに近付き、その両手首を持ってブンブンを上下に振った。
「ねえみんな、久々に一緒に遊ぼうよ!」
「良いな、それ!」
すっかり休みモードになった親友にオレはあきれた。頭の中がひまわり畑か。
「オイ、これはあくまでも任務だ。忘れんなよウスラトンカチ」
「分かってるってばよ~!」
「そうよ、ナルト。サスケ君の言う通りよ!」
「良いのよ、みなさん。私(わたくし)、忍者にしか出来ない水遊びが見たいの!」
「ナルお兄ちゃん、遊んで!」
「あ~、もう!私たち一体何しにここに来たのよぉ!!」
すっかり明日の予定が護衛兼夏休みにすり代わり、ぎゃあぎゃあと騒ぐオレたちをCEOとサイが笑顔で見ている。サイは無表情だが、いつもより血色が良い。明らかに怒っている。というより、いつの間にここまで来たんだ?オレはサイの上忍師であるヤマト上忍について思い出す。きっと二人は似た怒り方をするだろう。
「・・・時間、おしてるよ」
1つ上のチームメイトの声は地を這うような響きをしていた。