今回の社会科見学はカップラーメン工場(体験付き)です
9月1日
9月、新学期がやってきた。これにて一旦は4月から9月までの5カ月間に及ぶ重点的な中忍向け指揮官教育が修了し、残りは教養教育のみとなる。2クラスのみだった火影直轄校の中忍クラスにはまた2クラスが追加された。中忍選抜試験合格者と部隊内選抜試験を経て昇任したC組、そして上忍と特別上忍たちの推薦と会議での審議を経て昇任したD組。今季全体では前期同様1080名が中忍となり、より常備戦力として機能できるよう木ノ葉の、火の国の駒が整ってきている。これにて制度改定前より直轄校にいた忍者学生の全員が中忍となった。そして今季から3ヵ月間、サイと日向ネジの2名が上忍になるための課程に入った。カカシはオレとナルト、サクラを来季または来々期あたりに推薦したいと考えている。推薦後は審議を経る必要があるので、そこをクリアできる事を願うしかない。
本日の時間割は1限目・国語、2限目・数学、3限目・自然科学、4限目・社会、5限目・社会科見学①、6限目・社会科見学②。今回の社会科見学の行き先はカップラーメン工場である。土産物を沢山くれるらしいから、ナルトにとっては天国かもしれない。兄さんは今回の行先を聞くなり、「オレも行った事がある」と言っていた。兄さんは天才児(ギフテッド)課程にいたが、一部の授業は一般学生と一緒だったと聞いた事がある。だから兄さんにはヨリヤやリョウ、カズキといった友人がいるんだと思った。
艶の良い黒髪のツインテールを揺らし、教室に現れたのは鹿島ライカ。小柄な体躯を生かした生かした俊敏な戦闘スタイルが強みのくのいちだ。彼女はくのいちの中でも群を抜いた戦力として期待されている。サクラたち医療忍者候補生の女子3人とはあまり関りがなく、初等部時代からただのクラスメイトという関係に他ならない。1ヵ月振りに姿を見た鹿島だが、久々の彼女は見る影もないほどやつれた表情をしていた。普段ならば騒がしく感情表現が豊かなのだが様子がおかしい。女子を中心に、ライカを不思議そうな目で眺めている。オレの近くを通らなければ彼女は席につけないので、オレは試しに挨拶する事にした。
「・・・おはよう、鹿島」
「見て分かんない?話しかけないで」
彼女は挨拶もせず無表情で、香取フツミと静織ハヅチと共に机の間をぬって歩いて行った。鹿島が好きな男子は多い。鹿島は里を抜けたアマツの許嫁だったのだが、アマツの里抜けによって保留になっている。カガセがあの事件を起こすまでは、カガセが許嫁だった。今になって考えると、古来から熾烈な殺し合いをしてきた鹿島と星宮という二つの家を結婚によって結び付けよう、という約束が意味深に聞こえる。
「鹿島さん、一体どうしたんだろう」
「・・・心当たりが全然無いわ」
サクラと日向ヒナタが話していると、登校してきた香燐も頷いている。荒んだ目つきをした鹿島ライカは前を通り過ぎる諏訪氏族の庶流出身者であるB組の藤森ケンゴを睨みつけ、ケンゴはそれをぎょっとした顔で見返した。続いて脛を思い切り蹴られ、「顔見せんなクソザコ」と忌々し気に吐きだした。罪のない不運なケンゴは油女シノに昆虫図鑑を返しに来たようだ。シノは無言でケンゴを労うよう飴を渡した。ここまで敵対心丸出しの者は現代の鹿島でも珍しいのではないか?隣のクラスの鹿島アユムは逆にフレンドリー過ぎるほどフレンドリーで、よくライカに引っ叩かれているというのに。不思議だ。
ライカが従えているフツミとハヅチは少し疲れた様子だ。いつものライカはあくまでも表情豊かな、クラスを明るくするタイプの少女だ。対人スキルが高く、感情表現も豊富。楽しい事が大好きだ。その戦いの才能は本物で、いつも楽しい事を探しながら退屈している。裕福な鹿島氏族本家筋に生まれた事が影響しているのか知らないが幼少期からワガママな所があり、気分屋。彼女に対してプラスの感情を持つ人間の方が多いのではないかと思う。が、オレとは決定的に合わない。彼女は少し計画性に欠ける。彼女が言う「陰気なコたち」の方がずっとオレとは息が合っているように思える程だ。
話は戻るが、普段は明るい鹿島ライカの荒み具合にオレたちクラスメイトは暫し無言になった。椅子への座り方も乱雑で、名門一族の令嬢らしい淑やかな仕草とはかけ離れている。破壊的でヒステリックな印象を受けた。彼女がこうした姿を見せるのは三嶋姓だった頃からの諏訪アザミと、鹿島の敵対氏族・諏訪に関する氏族の人間相手だけだった。そのギャップに対し、反感を持っている者がいるのも事実だ。
「おはよ、みんな。何かピリピリしてるわね」
「おはようってばよ、いの。シカマルとチョウジもおはよう!」
ナルトの元気な挨拶に気だるげなシカマルと、ポテチを片手にいつも通りのチョウジが返事した。キバとシノは席についたナルトの傍に行き、楽し気に雑談を始めた。シノはナルトが持ってきた土産にいたく感動し、次どこかに行ったら任務先の土産を買ってきたいと言っている。オレからも渡すと、シノは泣き出しそうなほど喜んでいる。シノは何故か知らんが、いつも皆から忘れられている。良いヤツなのに不思議だ。
鹿島ライカのライバル、それは今のところ諏訪オカヤだ。急成長を遂げたオカヤは今や期待の若手にして、貴重な氷遁遣い。去年まではかなり辛辣な接し方や言葉で「あんたやる気あんの?」とネチネチと責めていたが、今はなかなか良い関係を築いているのではないかと思う。同じ姓が二人、特殊な任務でもないのに同じ班にいるのは面倒だという事でオカヤは鹿島ライカたちと同じ班に編入。色々あったが、割と仲良くやっている。意外な事に。これにて『御三家』と呼ばれる旧家が揃い踏みし、よりバランスが良い編成になった。だが、その一方で悪化している関係もあった。鹿島ライカと諏訪アザミである。二人は初等部時代よりギスギスしており、実技が優秀なライカと理論派の”三嶋”アザミは相容れなかった。
興味深い事に、二人は初等部2年生頃までは割合仲が良かった。ただいつの日からは二人は対立するようになり、2年次の春を境に二人の間にある溝がじりじりと広がっていった。目の前にある問題をひとまずクリアしたがるライカと、長期的な計画を好むアザミ。ルーチン嫌いで欲望に忠実なライカと、ルーチンが好きでストイックなアザミ。二人はあまりにも違っていた。思い立ったが吉日のライカからすれば、黙って準備を進めていつの間にか目標を達成しているアザミが気に入らない。いくらアザミが厳しい修行を裏で重ねていても、私情を任務や合同修行に持ち込まない彼女は表面上平然として見える。それがライカには気に入らなないようだ。他にも色々と二人には隔絶が存在する。普段の諏訪アザミは必要以上に感情表現をせず、理論的で思慮深く落ち着いている。鹿島ライカは感情豊かで基本的に親切、楽しい事が大好きで騒がしい。そう、鹿島ライカは基本的に親切な性格である。色々あって同じ班になったオカヤとは少し分かり合えたようだが、それは『諏訪と鹿島』の枷を外せたからだろう。これまでずっと仲が悪く、いくら突っかかっても『相手にしてくれない』我が道を征くアザミと違ってオカヤは感情表現の豊富さなど共通点が予想以上に多かったんだろう。ツンケンして見られるが人気が高いライカの人気に流されず、ライカから見れば『いつも一人で寂しそう』なアザミは『好き好んで孤独でいる』。幼い頃、ライカはそんなアザミを遊びの輪に『入れてあげたい、みんなで楽しい事がしたい』と彼女を誘った。アザミはライカの誘いに乗り、一緒に遊んでいた。だが諏訪アザミはそれを窮屈だと感じるようになったのだ。孤独でいるという自由を奪われて、教師から好かれるタイプのライカに平然と反抗するアザミはやがて孤立するようになった。同様に孤独を愛するミサキや実は一人の時間も好きなオカヤ、ハズキのような”親友”はいたが。孤立しがちな、幼い子供が制裁として行った”無視”の常連である変わり者たちは強い絆を作っていた。
犬猿の仲、水と油。そんなくのいち二人だが、うちは一族の事件以来決定的に仲が悪くなった。復讐に燃えるアマツに対し、『その感情は理解はできるが方法が共感できない。復讐するなら戦略的にやるべきだ、人生は長い』と言葉足らずにも落ち着かせようとしたアザミ。オレはかなり落ち着いてきていたので、アザミに同意した。アマツはぶち切れ、アザミはぶん殴られた。アザミの乳歯が一本吹っ飛び、血塗れだったのを鮮明に覚えている。そんなアマツを庇ったのは、カガセの許嫁からスライドしてきたライカだった。それが運命の分かれ道だった。アザミは学年じゅうから『冷血女』と罵られ、かなりの間孤立してきた。本人は一切気に掛けておらず、『静かで良いね』と逆に喜んでいたが。とにかくアザミの冷静さがライカと、そしてハッキリと家族を殺した犯人が分からないまま復讐に燃えるアマツを逆上させていた。成績に響く授業中の無視に対しても、『成績を落としたくなければ協力しろ』と交渉を持ちかけるのがアザミである。
アザミは幼少期から独特のマイペースさと合理性から奇妙に見られ、いじめの対象だった。ただ、その首謀者は決して鹿島ライカではない。人気があって強い優秀なライカの支持者が、ライカの見ていない所でいじめていた。日頃から「イジメとかダッサ!」というライカの言葉に反する勝手な行動だ。突っかかりはするが毎度の恒例行事、一過性のもの。それは【鹿島と三嶋】という、戦う理由もなければ因縁もない家の少女同士のうまくいかない人間関係、それで留まっていたからだ。
これまで父親が不明とされていたが、三嶋アザミの父だと名乗り出る上忍がいた。諏訪氏族最高戦力と名高い、諏訪ヤシマという男だ。アザミとそっくりな思考回路をした、温厚そうで端正な見た目と品のある立ち振る舞いとは裏腹に『串刺し公』という物騒な二つ名を持つ手練れである。アザミの祖父、三嶋フウレン特別上忍の母方祖父が諏訪の氷遁遣いだった。そこから三嶋フウレンと娘の三嶋チルヤ中忍を通ってきた氷遁を発現させる遺伝子が、奇跡的にも諏訪ヤシマと出会って生まれた氷遁の姫。X染色体に連鎖して伝わる潜性遺伝である以上、彼らの一族において氷遁使いのくノ一が生まれる確率は男性の半分。37%強しかない。男性はその倍で、75%が氷遁を使えるという。
諏訪と鹿島は不倶戴天の間柄”だった”。木ノ葉隠れに移住するに至り、詳細は知らないが【休戦協定】を結んでどうにか表面上は平和にやってきている二つの氏族はかつて熾烈な殺し合いをしてきた。まだ強力な風遁使いの一族でしかなかった弓使いの諏訪、体術剣術に優れた雷遁使いの鹿島。諏訪は体術とチャクラ量で鹿島に大きく劣っており、そのせいで常に劣勢を強いられてきた。鹿島は諏訪を天龍湖周辺地域へと押し込めて勝利を宣言した。だが押し込められた諏訪は天龍湖の土着氏族・守矢と戦って配下にし、やがて同じく土着の水遁に優れた一族・安曇(あずみ)の姫君を娶った。これによって突然変異で氷遁が生じ、血継限界を持つ『不屈の諏訪』へと成長。これが前の任務にて天龍大社の博物館で学んだ、強固な血族同盟・諏訪軍団の成り立ちである。
これまで『家同士としては敵でも味方でもない個人的に仲が良くない旧家のお嬢様同士』だった間柄が、4月に入ってすぐ一変した。それまで直接手を下さなかった鹿島ライカはこれまでの鬱憤を晴らすように”諏訪アザミ”に対して牙をむいた。4月半ば頃から酷いスランプに陥っている諏訪アザミに対し、学校で会う度に心と身体をボコボコにしているのだ。互いの氏族の者たちに話し合いの場が作られる程に強い憎しみを持って。アザミは大した抵抗もせず、「ストレスが溜まってるんだな」の一言で済ました。オレたちも二人が鉢合わせる度に緊張感を感じ、何度かライカを止めに行った。諏訪アザミは民間人と一部施設と教養授業を共有する忍軍附属中学校の中でも一番荒れている東部中学校で1年間を過ごしてきた。多分、色々あったのだろうと思う。昨年の再会ではオレは内心驚いていた。彼女の瞳から僅かにあった筈の輝きが失われていたからだ。それも少しは解消するのかと思っていれば更に悪化し、今朝は遂に下駄箱近くで「もう帰りたい」と零すまで追い詰められていてまたしてもオレは驚いた。彼女が普段着としている濃紺のTシャツの背中にはデカデカと、ドロップキックでもされたような靴底の跡があった。痣になっているかもしれない。
待っていると任務疲れらしいヤマト上忍が教室に入ってきて、ホームルームが始まった。が、3分ほどで終了した。隣では霧島ユタカ上忍が長々と話していたようで、授業が開始されるギリギリでようやくB組の標識がかかる教室から出てきた。霧島ユタカ上忍は一見温厚そうだが、実際は戦闘民族・霧島の次期当主だけあって相当に好戦的である。明日の集合訓練を楽しみにしているという噂を朝から聞いていたので、覚悟して準備を怠らない方が良いだろう。霧島ユタカの厳しさの方向性はヤマト上忍とはまた違っている。何故なら稗田ミサキ曰く「あの人たち頭の中が戦国時代のまんま!」なのだから。
☆★☆
カップラーメンの断面図から始まり、ガラス越しに見えてくるのは完全に機械化された製造工程だ。普段見る機会の無い、普段よく食べているものが生産される場所。実際に来てみると興味深く、思っていた以上に面白い。 ここの業者は木ノ葉隠れと契約しており、里内の片隅にある工場では戦闘糧食の一部を生産している。だからオレたち忍者は気付かない間にこの会社には世話になっている事になる。そう思えば感慨深い。里の片隅にひっそりと建つこの工場が、沢山の忍の命を繋いでいるのだ。
わいわいと工場見学を終えると、次は体験講座が始まった。今回はオリジナルカップラーメンなる企画だ。すこし蒸し暑い休憩場で、オレは扇城屋の体験講座で作った扇子で首筋を仰いだ。こういう道具は持っていると意外と便利である。毎回のように毎月頭にある学校の期間には必ず社会科見学と体験講座の機会が設けられている。三嶋フウレン特別上忍による方針だ。こうする事によって忍者は民間人社会を知り、民間人との距離が互いに縮まり、世界が少しづつだが広くなる。工場としても土産物をモニターして貰える。4月には修行ばかりの生活をしていた同期達は不満げだったが、何度目かになると楽し気だ。緊張が解けるのもあるが、オレにとってもクセになりそうな気がしている。調子よく完璧なタイミングで機械が動き、気持ちいい程に上手く乾燥された麺がカップに具と感想スープと共に放り込まれ、次々と封をされていく光景。ガシャン、ガシャンという音が最初は煩かった。今では眠気すら誘ってくる始末。従業員たちは眠くならないのだろうか?
「オレは~、この【ナゾ肉】メインにするってばよ。つーか、ナゾ肉って名前だったんだな、あの肉。そのまんまだってばよ!味は勿論醤油味!!なぁなぁ、工場長さん。一楽とコラボとかしないの?」
「私はこの【健康!食物繊維麺】に交換します!あっさり海鮮系塩味で、野菜たっぷりで、でも少しは刺激が必要よね・・・。そうだわ、この【辛味あん】も付けます」
ナルトとサクラの大喜びな声が聞こえてくる。サクラは『美味しそうだけど太っちゃう』と言っていたが、食物繊維の含有量を大幅に向上させた新製品に使う予定の麺に交換できると聞いてテンションが上がってきている。他の女子も似たようなもので、食物繊維麺の大人気具合に副工場長が驚いていた。まさか、ここまで人気とは思わなかったと。サクラたち女子と接していて分かったのは、女子達は努力して食事制限していても実際は美味いものを食べたくて仕方が無いのだという事実。そりゃそうだろうとは思っていたが。女子に対して気楽に生きているだとか言うヤツには知って欲しい。その理由が自己満足でも、好きなヤツのためでも、関係無い。好きで美しく見せるため、あいつらかなり我慢してるんだぞ、と。
あれはあれで修行の一種だとオレは考えるようになった。
「サスケ君はどうするの?全然選んでないじゃない」
腕を組んで考え中だったオレに話しかけてきたサクラの言う通り、オレの目の前には未だに空のカップと空欄のプリントがある。
「いざ自分で作るとなると思いつかないものだな」
「分かるってばよ。オレも色々考えたけどさ、結局はいつもの醤油味だしな。サスケはおかか味のお握りが好きだよな?ってことは、海鮮系好きそうだな。試しに【ニボシ系】やってみるのも・・・」
「ニボシか・・・、いいな。面白そうだ」
このあと、それぞれに120通りのオリジナルカップラーメンを完成されたオレたちは工場長からの贈り物として器に移して湯を注ぎラップを掛け3分という、資源節約になるチキンスープのラーメンを試供品として貰った。10月に発売だというそれは今後、フリーズドライの卵や追加のゴマスープといったカスタム商品を出していくつもりだという。その商品は任務時にも役立ちそうだ。任務中の食事にも役立つだろうし、サイズを小さくすれば持ち歩きがより簡単になる。
カップラーメンの可能性を感じた社会科見学だった。
☆★☆
『鹿島ライカの憂鬱①』
あたしは小さな頃から退屈で退屈で仕方が無かった。だって鹿島一族の男のコたち、みんなあたしよりよわよわのザッコザコだったんだもん。張り合いがないし、女のあたしに倒されてすぐ泣いちゃう。誰一人として、同じ世代のコたちはあたしを倒せない。体術ですらこう!幻術がダメダメなのは鹿島のみんながそうだから、苦手でも仕方ない部分があるのは分かるわ。鹿島には折角強い雷遁が伝わっていて、それを段階を踏んで学んでいく機会があるのに、あのコたちはみんな足踏みしてた。あたしは新しい事を学ぶのが大好き!いつも同じコトをしてると飽きちゃうもん。あたしのママはパパのお妾さんってヤツ。あたしのパパはひどいヒトで、鹿島の分家末端で忍の世界なんて知らないバイト巫女だったママを愛人にしてあたしを産ませた。だからあたしは普通なら日陰者みたいな扱いを受けるんだけど、ママが違うお兄ちゃん達はすっごく優しかった。男ばかり4人兄弟っていうのもあるかも。だからお兄ちゃんたちはあたしと遊んでくれて、たっぷり修行をつけてくれた。お兄ちゃんたちは全然よわよわじゃないし、優秀な人たち。だから同世代のコたちと上手くやれなかったんだと思う。無理して同世代と一緒に修行しなくて良いよって言ってくれた。
鹿島一族はいわゆる名門旧家で、代々雷遁と剣術の使い手を出している。それと同時に『諏訪』という先祖代々の宿敵である氏族が変な動きをしないように見張ってる。何故ならあいつら、裏切り者を出した悪い実績がある”うちは”に対して凄く友好的なのよ!?あたしの一族の男たちは使命感がとっても強いの。いつもあたしたち女衆を守ってくれるから、女衆は完璧な家事のほかいつもキレイでいるの。命の危険に晒されることはないから安心しろってお兄ちゃんたちは言うの。でも、それは裏を返せば古い伝統や価値観の順守を無言で強要されているコトに他ならない。うちさぁ、女を大事にしてはくれるけど男同士の仲が異常に良いのよね。良すぎるくらい。皮肉なコトにこの感覚を言葉にして教えてくれたのは、あたしの一番キライな女だったの。ああいうの【ホモソーシャルな結びつき】って言うらしいわね。
女の人は誰一人として忍者にならない。あたしは時代の最先端だから、やりたいと思ったから忍者になりたいと思った。お淑やかにしろって、ママは言ったけど、あたしはそうはなりたくなかった。何かが起こっても黙って座って文句言ってるだけのオンナにはなりたくなかったの。あたしは5歳の時、許嫁として星宮カガセさんと引き合わせられた。鹿島と敵対してきた星宮一族と、写輪眼を発現出来るうちはの分家・扇城のハイブリッド。10歳なのに既に下忍という規格外の優秀さで、あたしの忍になりたいという夢を応援してくれた。それにまだ5歳だったあたしと対等に接してくれた。性格もだけど顔もカッコいいし、でもどこか影があって、優しい人だった。修行にも付き合ってくれたのよ。あんなステキなヒト、好きにならないワケがないじゃない!!
あたしが火影直轄校に入る前にいたのは、旧家のお嬢様御用達の私立保育園。それも女のコしかいない、鹿島が経営しているところ。昔ながらのお嬢様ばっかりでつまんなかったわ!お父サマお母サマの意見に唯々諾々で、自分自身ってのが見当たらない。みんな忍者にはならない、お淑やかなお嬢様ばっかり。そんなとこじゃ友達が出来なかった。そして6歳になる時、学校選びの選択肢が本格的に必要になった。あたしはお兄ちゃんたちとパパに可愛くねだって、どうにか火影直轄忍者学校への入学を果たした。それと同時にママや世話係のオバサンお姉さん達からはそっぽを向かれた。どうして、こんな事だけで無視されなきゃいけないのか意味が解らなかった。ママはあたしがママって呼ぶのを嫌がって、「あんたなんか要らない」と言って、早々にパパが用意した若い男の人と結婚した。それからあたしを愛してくれる同性は一族に一人もいなくなっちゃった。そうやって、楽しいことを教えてくれる人が私の前から減っちゃった。
火影直轄校に入ったあたしは、とある男の子と出会った。まずはカガセさんの弟であたしと同い年の星宮アマツ君。鹿島と同盟を組む香取のフツミ君、星宮を打倒す決定打となった静織のハヅチ君。お兄さんがカガセさんと同い年のイタチさんだという、うちは一族当主の次男サスケ君。そして、同い年にして宿敵・諏訪の本家筋の諏訪オカヤ。あたしがオカヤより優位に立てば立つほど、一族のみんなはすっごく喜んでくれた。あたし自身、ヘタレた弱い存在は嫌いだったから何より。イジメってダッサいけど、あいつらだけは例外だった。それこそダサい考え方かもしれないけど、遺伝子レベルで嫌いなのよね。
アマツ君はとても優秀で、天才である兄のカガセさんから英才教育を受けて育っただけあって本当に強かった。でも優しい子だから、足を引っ張るよわよわなコたちにも平等だった。そのよわよわ代表が、オカヤ。オカヤはオカヤで誰にも分け隔てなく接する良いコなのがまた、ムカついた。男が好きって噂がある扇城ハズキに対しても、全然恐怖感とか無しで話してる。
私が楽しい事を思いついてみんなに提案する度に、みんなは喜んでくれた。それが嬉しくって、私はクラス会とか放課の過ごし方を沢山考えたの。同じ教室の中に一人、いつもぽつんといる女のコがいた。あの子は三嶋アザミといって、品行方正で頭の回転は速いけど地面のアリや教室の金魚ばかり見つめてる変人。本ばっかり読んでいて、学問の成績は結構優秀な方。でも、見ているとイラつく程に不器用で実技がダメダメ。そのくせチャクラコントロールと幻術は結構なもの。本気なんだか、セーブしてんだか、全然測れない不思議なコ。父親不明なのに、三嶋の家じゅうから無条件に愛されてるのがまた不思議。あたしは妾の子だけれど、両親がしっかり分かっているという優越感みたいな感情があったのは嘘じゃない。
そんな変人な三嶋アザミを遊びに誘ってみると、あの子は結構嬉しそうに誘いに乗った。話してみると思った以上に頭の回転が速くて、純粋に凄いと思った。意思決定能力ってやつが高く、判断も速い。先生から気に入られていないコだけどその理由が分かったのは普通に良かった。下手をすればアザミの方がずっと速いペースで思考していて、答えをすぐに出してしまうから先生はアザミを「考えていない」と言う。色々な言葉もアザミから教えて貰った。漢字も、歴史も、色々な事も。だから嬉しくって、アザミを毎日のように遊びに誘ってた。唯一無二の親友だと思っていたのに、あの子は言った。
「毎日誘われると困る。自分にも予定があるから」、と。
あたしはまるで雷遁を喰らったような衝撃を受けて、以来あたしはアザミと距離を置くようになった。
初めだった。あたしの誘いを断るコがいるなんて知らなかったから。
そうなってからはより距離が離れていった。更に忍者らしい科目が増えて、あたしと三嶋アザミは決定的に合わない人間同士だと分かった。常に動き回っていたいあたしと、無駄な動きは大嫌いなアザミ。戦略とか戦術とか難しい事は分からないけど、人間同士の繋がりをリーダーシップに繋げたいあたし。仲間でさえも駒だと思ってるアザミ。根本的に合わないんだって、あたしは改めて考えるようになった。授業でも沢山衝突した。こっちは怒っているのに、あっちは大人の対応っていうの?静かに頷くだけ。ヘタレのオカヤを突っついて遊んでいると、かなり本気でそれを止めにやってくる。人間があまり好きじゃないって言うクセに、ちゃんと人間らしいとこあるじゃないって思った。少しでもつっついてやらないと、どんどん人間らしさを失っていきそうで。好奇心をそそられたのもあるけど、あたしはアザミをいじるようになった。