やっとぶっ壊れたパソコンを買い換えられました。HDD生きてて良かった!!!
前のやつの後継モデルでございます。
10月1日 6:30
目を開けると実家の天井が見える。
気付けば朝になっていた。寝たといっても、まともに寝付けたのは3時間ほど前だ。
あまり眠れなかったからか、身体から疲労感が抜けきらない。
思考が霞がかってモヤモヤする。早く顔を洗いたい。
顔どころかシャワーを浴びてスッキリしたい。
オレは朝食前にさっさとシャワーを済まそうと起き上がり、着替えを手にした。
鹿島ライカ・香取フツミ・静織ハヅチという3人の同期が誘拐された衝撃的な事件は急転直下の結末を迎えた。3人の”死”によって。3人の遺体を引き渡すには、二年前に捕縛した『音の四人衆』の身柄が必要だと音隠れは要求してきた。五代目火影は、木ノ葉は、その要求を吞んだ。遺体の返還は行われたが、それは恐ろしい事に星宮アマツがやったと示唆させる有様だった。扇城ハルキは太刀筋で分かるのだ。兄さんの考えだと、アマツは万華鏡写輪眼を手に入れるため三人を求めたのではないかという。
それが正解ならば、オレの友人だった男は何ともおぞましい選択をした事になる。
昨日。鹿島香取氏族連合の地区の集会場で行われた葬儀の帰り道は、兄さんとシスイさんと歩きながらずっと無言だった。色々と思うところはある奴らではあったが、同期が三人まとめて死亡したのだ。どういう風に感情を処理すれば良いのか分からなかった。兄さんもシスイさんも、そういった経験は何度もしてきただろう。オレよりはずっと、感情の処理方法を知っているだろうと思っていた。だが二人は「こういう事は慣れないものだよ」と言っていた。カカシにはこういう話をしにくい。あの人は親友だった同期を二人も亡くし、恩師までもがこの世にいないのだ。
鹿島ライカの保護者や親族が諏訪アザミに対して取っていた態度は、オレたちが心配していたのとは非常に異なっていた。アザミに「あの子と仲良くしてくれてありがとう」と言っていた。アザミもアザミで沈痛な面持ちでいた。鹿島ライカといえば、アザミを一方的に敵視して暴言を吐いたり蹴っ飛ばしたりと、目に余る行動をしていたという印象。人気者で人気者である事と同時に、他の同期から嫌われても当然な発言をしていた。ライカと婚約者になってからの星宮アマツは少し元気になったが、同じ事をするようになった。二人がしていたのは『雑魚』『役立たず』といった発言である。アザミはライカとアマツの二人からそういう暴言を吐かれ、協力する必用がある授業中にもツンケンした態度を取られ、かなり困っていた。傷付いたのではなく『接し方が分からない』という理由で。アザミは色々あったがアマツとも向き合っていたように思える。話を聞こうと努力していた。オレはアマツの手を離したが、アザミは見捨てず暴言にも向き合っていたのではないかと考え直すようになった。
オレたちは諏訪アザミと鹿島ライカの関係を大いに誤解していたようだ。
アザミはライカに『私にも行動の自由がある』と言っただけで、拒絶は一度もしてこなかった。他人からすれば仲が悪いように見えたが、鹿島香取氏族連合側からすれば列記とした”ライカお嬢様のお友達”として見られていた。初等部時代にライカがアマツの許嫁になってからも、友人関係そのものは続いていたという。ただし和解が叶いそうになるたび、ライカが一方的それをブチ壊す。暴力や暴言のほかわざと約束を違えて取り返しのつかない事件を起こす。それを何度も繰り返し続けた結果、ライカは皮肉にも大好きな母親から愛想を尽かされてしまう原因を作った。おそらくライカは母親に対しても同じ事を行ってきたのではないかとオレは思った。
ライカはアザミから許容されているのか不安になるたび、それを確かめる為に敢えて暴言や暴力を向けていた。それがオレたちが見ていたアザミへの暴力と、それを受けてもある程度は許容するアザミの姿だったらしい。だが、人前ではやらなかった。流石にケガが増えてきたため、ヤマト上忍が見かねてアザミと話をしたらしい。結果、鹿島家に連絡が言って母親から られたライカがイラついていたのが先月の頭。帰宅してからたまたま開いた雑誌でライカそっくりの行動を『試し行動』と呼んでいた。
アマツもライカも、どちらも難儀な性質の持ち主だと感じる。
雑誌を見ながら考えていると、兄さんが話しかけてきた。何か言いたげな顔をしていたため、オレはこれまでの鹿島ライカの行動や言動についてどう考えるか聞いてみた。それは優等生としての努力とは逆に、周囲に向けて『雑魚』『役立たず』という言葉を吐いていた理由。おそらくだが、鹿島ライカは周囲からどれだけ許容して貰えるのか確かめていたのだろうと兄さんは言った。成程、と思った。星宮アマツのあの行動も多分だが似たような理由で、自分自身を上手く肯定出来ていなかったのだろうか。認めてほしくて、許して欲しくて、一番そうして欲しい人々から嫌われるような真似をした。
だったら、その言動を真っ先に向けてきたオレの事はどう思っていたのだろうか?
鹿島ライカたちの殺害は絶対に許せないが、オレはアマツに伝えたい。
『お前はお前じゃないか』、と。
☆
昨日の事があり、昨晩の睡眠は良質とは言えないものだった。それを兄さんは察したのか、珈琲を入れてくれた。甘いもは苦手だが、流石に苦すぎたので砂糖と牛乳を入れた。オレの横で兄さんはドボドボと音を立てて角砂糖を珈琲に大量投入して最後に牛乳を注いだ。珈琲そのものは美味しかった。
「行ってくるよ、兄さん、義姉さん」
門の前に立つ兄夫婦に出かけてくると伝える。
「行ってらっしゃい、サスケ。今日はトマトサラダを沢山作っておくわね」
「帰りは迎えに行くよ」
仲睦まじい兄夫婦は来年の春には親になる予定だ。親としてはかなり若い方だが、周囲からは好意的に見られている。それは二人が同世代よりもずっと大人びており、落ち着いているからだろうか。とにかく、新たなうちはの誕生は里内でもかなり歓迎されているのは確かだ。まだ性別は聞いてない。
実家から直接”学校”へ向かう鞄の中身は先月よりも軽い。というのも、中忍として必須なリーダーシップや技能・知識を学ぶ半年間が終わったからだ。これからは月に2日だけ、教養関係のレポート課題の内容を解説する授業を受けるのみ。2日目は社会科見学、そして芸術系や調理実習の半日だけの日程。今日はレポート課題を貰い説明を受け、調理実習を行うだけ。10月は1日だけで登校日が終わる。
毎月のように”学校”として利用されているのは学校として建てられた建物ではない。忍軍研修施設という名前の、会議室や講義室が沢山入った施設だ。研修施設というからにはあらゆる設備が完備されており、調理室もその一環だ。他には仮眠室・図書室・勉強スペース、プール、講堂、防音室など。料理から音楽活動まで、忍軍の活動から福利厚生までカバーしている。修行用のスペースもあり、毎日のように利用者がいる。要に何でもありの多目的施設だ。
程なくして目的地に到着すると、先に来ていたナルトがオレを見つけて手を振った。
★★★
夕焼けのグラウンドは気温が下がり、季節の移り変わりを感じる。半ズボンを止めて良かった。オレは兄さんと一緒に忍軍研修施設の玄関を出て、グラウンドが見える道を歩いていた。
朝から集会、レポート課題の説明、そして調理実習の日程をこなした。淡々と過ぎていった一日。10月にもなれば日が短くなり、17時半頃の時間帯には日没だ。登校日の下校時間からは1時間程は経過している。兄さんは言っていた通りオレを迎えに来た。
今日の帰りがけに、諏訪の同期たちからある広告を貰った。10月17日に天龍大社分社で行われる祭りのお知らせと書かれていた広告には兄さんが好きそうなイベントがあった。地区にある甘味処が共同で行うスイーツバイキングが行われるのだ。オレは広告を兄さんに渡した。すると兄さんは『今月は諏訪の地区に行こう』と言い出した。予想通りだ。天龍湖名物で、里でも地区限定で生産されている塩羊羹。兄さんはそれを気に入っているのだ。あの地区には美味い飯屋が多い。オレも当日を楽しみする事にした。
「サスケ。今日はどうだった?」
歩きながら兄さんが問いかけてきた。不安げな声だ。
「どうって・・・、結構普通だった」
「そうか」
それだけの遣り取りだったが、その返事はどことなく安心していたように聞こえる。同期を失うのが初めてだった。身近な大人たちから聞いていた通りに、同期の死が堪えるのは本当だった。少し前まで当たり前に存在した人間がいなくなる。家族がいなくなるのとは違う悲しみがあった。兄さんもカカシも、誰にも言えないような悲しみを心の中に抱えているんだろう。その傷をオレはまだ知らなかっただけだ。
隣で今日あったことを話しながら歩いているうちにオレたちは実家の前に到着していた。これからイズミ義姉さんからも今日の事を聞かれるだろう。話したいこと沢山ある。その一つは祭りの事だ。きっと義姉さんも行きたがるだろう。甘い物が好きならば惹かれると思う。サクラに誘われる可能性もある。
実家の引き戸を開けて「ただいま」と言うと、イズミ義姉さんが出てきた。
「おかえりなさい!」
オレはもっと強くならないといけない。二人の顔が見られなくなるのは嫌だ。二人が揃って笑い合う姿を見ていると、来年の春に増える新しい家族を思う。3人家族で、いずれは4人、5人と増えていくのだろう。昨日からそういう感情が強まってきている。
「ご飯出来てるからね」
「ありがとう、イズミ義姉さん。兄さんも早く食べよう」
我ながら子供っぽいと思いながら、兄さんを急かして家の中に入る。
強くならなければいけない理由がここにある。