木ノ葉教育戦国時代   作:宝石マニア

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15歳編の開始です。弟さん視点。


1 遠いひと

4月1日 12:35

 

「これにてホームルームを終わります。皆さん、計画的に課題に取り組んで下さい!!」

 

「はーい!」

 

 中年の女性講師が教室として割り当てらている教室を出ていくと、部屋中からは「おつかれ」「また夏に!」といった声が聞こえてきた。普段は研究者として働く中忍が先程まで担当していたのは卒業作文の書き方である。一般人でいう”中学校”を卒業したのと同等の学力を認める試験には既に受かっているからだ。その試験に加え、今年1年かけて執筆する作文を提出する必要がある。ただし今年度の2月までに提出すれば自由の身という、かなりアバウトなもの。夏休みには自由参加のバーベキュー大会が行われる。冬休みには立食パーティーが。それはこれから忍として忙しく予定を合わせるのが難しくなるという事で、都合を付けやすくするために最初から日付が決められている。オレはまだどうするのか決めていない。分かっている事は、チョウジは確実に行くだろうなという点位か。あいつが参加したら一瞬で学年に割り当てられた予算が尽きるだろう。

 

 話は変わるが『副担任』に抜擢されたシスイさんがどこに行ったのかというと、A組だ。A組といってもオレたちの世代ではない。1学年下である『2年A組』である。カカシもそちらの担任になった。B組の方はヤマト上忍が担任になった。カカシ達の教師としての任期は半年間だ。明日から5日間に渡って行われるのは、新人中忍向けのリーダーシップ研修である。新人中忍が初めて班を率いる時に戸惑わないよう、集中的に指揮統率について教え込まれる。昨年と違うのはそれが泊りがけではなく、休日を挟んで日帰りで行われるというところだ。カカシはリーダーシップ研修の責任者で、マイト・ガイ上忍や猿飛アスマ上忍、紅上忍が日替わりで教鞭を執る。毎年のように研修計画はブラッシュアップされており、今年に関してはこの形式が最善であると判断された。

 

                      ★                       

 

 ナルトは明日から1年近くに渡り、同盟関係にある国や里との外交任務と情報収集、そして修行を兼ねた旅に出る。五代目火影から直接賜った任務。同行者は師である、誰もが知っているあの自来也という人物。旅の安全を願ってはいるがナルトは人柱力で、それもあって道中で確実に危ない目に遭うだろう。分かってはいても、安全を願わずにはいられない。だがナルトは長い旅の中で新しい力を得る。そうなれば自分で自分の身を守れるようになる可能性が増す。夏に行われる自由参加のバーベキュー大会にも帰ってこないようで、恋人であるヒナタが寂しがっているのを見た。これまでナルトは断続的に師匠と共に修行を兼ねた任務をこなしてきており、それが長期になっただけとも取れる。

 

「明日何時に出るんだ?」

 

「朝7時だってばよ」

 

「見送りに行く」

 

「ありがとな、サスケ。ぜってー仙術使えるようになって帰ってくるからな!」

 

「楽しみに待ってる」

 

 ナルトはこれから”仙術”というものの修行を始める。仙術といえば身体エネルギー・精神エネルギーという通常のチャクラに必要な要素のほか、自然エネルギーを加えて練られる特別なチャクラ”仙術チャクラ”を用いる戦闘術。修行しても会得出来るとは限らず、ナルトの父親も苦手だったらしいが適性があった事から人柱力である息子は上手く会得出来るのではないかという希望的観測が、ナルトが仙術の修行を開始する理由だ。

 

「1年後、みんなどんな風になってんだろうな。帰ってきたら誰かが上忍になってたりして」

 

 ナルトの言葉に連想する名前と顔。親友にして永遠のライバルであるナルト、昔から安定した優秀さを見せるサクラとシノ、そして同世代どころか里内で圧倒的なIQを持っているシカマル。カカシが言うにはそこにオレの名前も加えられている。昨年はネジとサイが真っ先に候補として挙がった結果、その通りになった。だが、今年に関しては番狂わせは絶対にあると思っている。

 

「なぁ、サスケ。しばらく会えないんだし、これから一緒に修行しようぜ」

 

「良いな、行こう。あの訓練場で良いか?」

 

オレはナルトと二人、忍軍研修施設の敷地内にある小さな訓練場へと足を向けた。

 

                       

 

 修行をするためナルトと二人、里が訓練場として指定している森へと入っていく。生い茂る若葉が陽光に照らされて地面に落ちて出来た木漏れ日の中を歩いていると、幼い頃を思い出す。昔から本当に優秀で、飛び級をして下忍になった兄さんは手裏剣術の天才だった。オレは幾度も兄さんに修行を見てもらいたくて、予定が合わなくて、「また今度な」と優しく額を小突いてきた。兄さんとシスイさんが長い長い諜報任務から里に帰還して以降は昔のように「また今度」と言われる事も減った。今は二人から二人が知っている術をありったけ教えて貰っている。今はそれらを磨き上げている最中だ。

 

「まずは手裏剣だろ?見てるってばよ」

 

「ああ」

 

木の葉が風に揺れるざわめきだけが聞こえる。

 

(始めるか・・・)

 

 まずは高く跳躍。後方宙返りをする間にホルスターからクナイを取り出し、木々の間に隠された的を目掛けてそれらを投擲する。的の場所を瞬時に見分けるのは写輪眼だ。続いてすかさず新たに別のクナイを投げ、滞空中の先に投げたクナイに当てて軌道を逸らす。こうすることにより、普通に投げただけでは当たらない的にも当てる事が可能だ。着地すると、ナルトが「おお」と声を上げた。

 

「やっぱり何度見ても凄いってばよ!!」

 

「兄さん達には叶わないがな」

 

オレとナルトは夕方まで手裏剣術と体術の修行を集中的に行う事に決め、修行を始めた。

 

                       

 

 

「あぁーっ、疲れたってばよ!!」

 

 本当に久々の、任務でもなかなか無いだろうチャクラを使い果たしそうになっている時特有の疲労感が全身を襲う。チャクラ量がほぼ無尽蔵だろうナルトは本当に疲れているのか怪しいが、オレの方はは疲労困憊だ。地面に大の字で寝転がり、見上げた空はオレンジ色をしていた。

 

「前から思ってたんだが、チャクラが無尽蔵にあるようなお前でも疲れるのか」

 

「・・・そりゃ疲れるってばよ。サスケと戦うとスゲー緊張感があって、気疲れする。速いんだもん」

 

「そうかよ。オレもお前と戦うと物理的な意味で身の危険を感じる。ぶっ壊されそうだ」

 

「お互い様だな!!」

 

だんだんと色が変わっていく夕焼けの空を見上げながら笑い合う。上空には烏が一羽飛んでいた。見ていると烏は急降下し、オレとナルトの足先の方向の先にいる人物の肩に静かに留まった。

 

「よっ、サスケとナルト君」

 

「あ、シスイさんだ!」

 

 声の主はシスイさんだ。オレとナルトはほぼ同時に腹筋で身体を起こした。シスイさんは散らばっている手裏剣の一つを拾い上げ、「ほら」とオレに手渡した。ナルトはシスイさんの肩に留まっていた烏を許可を貰い、優しい手付きで撫でていた。疲れている時、動物は癒しだ。

 

「久しぶりだね、ナルト君」

 

「お久しぶりでーす!オレさ、明日から修行と任務の旅に行ってくる」

 

「聞いてるよ。かなりの長旅らしいな。ホームシックにならないか?」

 

「そこは自分で頑張るしか無いってばよ」

 

 シスイさんはナルトの快活さを好ましく思っており、ナルトに向ける眼差しはとても優しいものだ。

ナルトは明日の準備のため、現在の時刻をシスイさんに聞くと大慌てで帰って行った。烏はいつの間にか空へと舞い上がり、主人を急かすように鳴きながら寝床へと帰って行った。シスイさんは里への帰還以来、部屋が余っていたうちの邸宅の一室に住んでいる。うちにはイズミ義姉さんと甥っ子がおり、防犯面でも都合が良い。金銭的な問題も同様だ。

 

「今日は随分頑張ってたな。いや、いつもか」

 

「そりゃアイツらに負けたくないからな」

 

「良いな、ライバルって」

 

 まさに青い春だな、とシスイさんは言う。シスイさんだって若者である。兄さんもシスイさんも、二人と話しているとこの人たちは本当に若者だろうかと考える時がある。あまりにも向けてくる視線が実年齢離れしているのだ。例えるなら孫がいる祖父のような。まだまだ追いつけない、少し高い位置にある大きな瞳を斜め下から見上げた。彼は兄さんよりも少しだけ背が高い。勿論オレよりも。凛々しくも優しいその表情は夕日に照らされ、より暖かなものに見えた。

 

「シスイさんのライバルは誰なんだ?」

 

「俺の・・・?俺のライバルなぁ。強いて言えばイタチ、かな。明確にライバル関係だとは考えた事は無いけどな。ライバルというより兄弟、みたいな?だが同じ一族の忍同士、写輪眼の使い手同士、里の仲間同士、切磋琢磨する関係だと思っている」

 

 やはりそうか、と思った。あの兄さんとライバル関係であれる人間そのものがこの里にはいるかどうか分からないレベルの話なのだ。名前を挙げてみると、現実的に可能なのはカカシかシスイさん位だろう。他愛もない話をしていると、夕焼けは夜の色へと移り変わっていく。そろそろ帰る時間だ。

 

シスイさんは帰る前に五代目火影の所へ寄っていくと言い、途中で追いつくと言われたのでオレは先に帰る事にした。カカシもそうだが、上忍は忙しい役職だ。その姿に昔見ていた父の忙しそうな背中を思い出す。オレも今年あるいは来年、同じように上忍として同じ会議で未だ遠い人たちと肩を並べる事が出来るのだろうか。

 

憧れと同時に不安が過る。それを悟られぬよう、オレは夕焼けの中で我が家へと足を向けた。

オレは周囲から自信家だと思われているが、普通に不安だってある。

 

(上忍、か・・・)

 

 上忍という肩書が背負うものについて、オレは兄さんやカカシを見ていてそれなりに分かっていると思っている。上忍といえば里の中枢に近い立ち位置だ。その顔ぶれを思い出せば容易に想像出来た。

 

(・・・里に捧げる覚悟は出来てる)

 

かつてマダラという裏切り者を出してしまった過去は絶対に消せない。

だが、オレたちは間違えない。里の一員として仲間を守り、捧げる覚悟はとっくの昔に決めた。

 

(オレは木ノ葉のうちはサスケ)

 

とっくに決まっている覚悟を示す時は来た。

今度こそオレたちが一族に対するイメージを塗り替えてやる。

 

(手始めに上忍になってやろうじゃないか!!)

 

 

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