下忍認定試験は毎年1月に行われる。里内には血継限界・秘伝家系出身者向け、一般忍者家系出身者向け、一般家庭出身者向けと3種類の下忍を育成する忍者学校が存在している。それぞれすべてが民間人として生きる事を決めている子供が通う学校と併設されているから、普通に民間人の子と交流がある。
たとえば、オレが通っている火影直轄アカデミー・通称『中央アカデミー初等部』と同じ敷地内には火の国大名直轄の『国立』民間人学校が建っている。だから忍者関係とは無縁の行事では、一緒に学校行事を行う事もある。
だからオレにも民間人の友達が普通にいるワケで。
「ナルトくーん!」
一人の同い年の男子がオレに手を振り、指定カバンを背負って駆け寄ってきた。
「マスミ!」
焦げ茶の髪をした『国立』民間人学校に通う、鈴木マスミという男子はオレの友達だ。マスミは純然たる民間人で、里内にある神社に本職巫女・神職として奉職する両親と一緒に里外からやってきた。将来は神職になりたいと言っていた。
「扇城くんも一緒だけどいい?」
マスミのうしろから、団扇・扇メーカー『扇城屋』CEOの末息子である扇城アキラが顔を出した。アキラは恥ずかしがりやで、いつもマスミの背中に隠れる様にして立っている。緊張が解ければよく喋ってくれるけど。一番上の兄、扇城キョウスケ中忍は直轄アカデミーの中等部3年生だ。『うちは』の血を引きながら民間人ばかりになっている扇城一族には稀に、扇城キョウスケ中忍のように写輪眼が出る。オレの友達である星宮アマツは姓こそうちはと関係無くなっているが、星宮一族はかつて里創設期に扇城一族の中でも写輪眼が本家並みに出る忍者家系と血縁関係を結んでいる。
「勿論だってばよ。どこ行く?」
「・・・フラペチーノ、飲もう?父さんからクーポン貰ったの」
「マジか!?やったー!!」
アキラの父親はCEOだから、クーポンをいつでも発行できるのかな?
25%オフなんて驚いて、オレは思わず唾を呑みこんだ。
オレたち忍者候補生たちはは来週頭に下忍認定試験を控えていて、街は色めき立っている。子供たちが合格したら何をプレゼントするかとか、美味しい料理を作ろうだとか、そんな話題が溢れてる。下忍認定試験自体はそんなに難易度がなくて実技だけだから、保護者たちは子供たちを厳しく教育するよりリラックスに努めてる。
オレ・マスミ・アキラが入店したのは、『星鹿珈琲』というオシャレなコーヒーチェーン店の木ノ葉火影邸前本店。里外にチェーン展開していて、扇城屋が経営しているお店だ。今日はじっちゃんから息抜き用にお小遣いを貰っているから、チラシで見るだけだったでっかいフラペチーノを呑もうと思ってる。
「あら、ナルトじゃないの!」
「あれぇ?サクラちゃんじゃん!!」
サクラちゃんはサスケ、星宮アマツと一緒に窓際の席に座っていた。
「ナルトも新作フラペチーノ?」
「そうだってばよ。その感じじゃ、サクラちゃんもそう?」
「勿論!サクラ苺フラペチーノなんて、絶対に美味しいに決まってるじゃない」
一方甘いものが苦手なサスケは一番苦いフラペチーノを頼んでいるようで、結構それがおいしいらしい。「コレならイケるぞ」と言っている。アマツは抹茶ラテを飲んでいた。オレがクーポンを取り出すと、サスケとアマツは「俺たちもCEOから貰った」と言っていた。
「ナルトたちもここ座ったらどうだ?誰もいないし」
「じゃ、そうするってばよ」
マスミとアキラも頷いて一緒に隣に連なる空席に座ると、サスケに荷物を頼んで注文に行く事にした。
「みんなは合格したらやっぱ家でお祝いすんの?」
オレがそうみんなに聞くと、最初にアキラが口を開いた。
「うん。サスケ君の合格を今から楽しみに待ってるよ。トマト尽くしにするんだ」
「トマト尽くし・・・それなら、頑張るしかないな」
「俺もトマト好きだから楽しみだな」
「もちろん、アマツ君の好きな食べ物も作るよ。何が良い?なかなか聞けなくて」
「牛丼がいいな。半熟たまごがかかったやつ」
「母さんに伝えておくね」
アマツの家族は亡くなっているから、血縁者である扇城屋のCEO家族と一緒に暮らしている。イタチさんに殺された事になっているけど、遺体が見つかっていない。アマツが生まれた星宮(ほしのみや)一族は星ノ宮大社の社家だ。社家だけど、扇城一族と血縁関係を結んでいた。だからうちはの血を引く扇城一族と関りがあって、アマツの年齢が離れた医療忍者だったお姉さんはうちは一族の男性と結婚予定だった。けれど、『うちは事件』の日に偶然家族での食事会だった。だから、事件に巻き込まれてしまった。アマツの年齢が離れたお兄さん、カガセ上忍も亡くなった。その人はイタチさんの友達で、シスイさんという人と共に仲良し三人組だったと聞いている。でもみんな、いなくなってしまった。カガセさんの遺体が見つかっていないのに、何故かイタチさんに全部責任が押し付けられてしまった。シスイさんとカガセさんは写輪眼を抜かれて遺体を酸で溶かされて下水に流されてしまったという説があって、それも全部、イタチさんに押し付けられた。結果、イタチさんは里を抜けた。
でも、カガセさんってぽい人が国際的犯罪組織の一員やってるという噂があるんだよなぁ。今ここにはいないけど、情報通のアザミが『都市伝説』として言ってた。
そのあと、扇城屋のCEOは家族を失った血族であるサスケとアマツを我が子同様に育てている。オレから見て、『扇城一家』は仲良し家族に見えるけど。アマツはアキラのお母さんとあまり仲が良くないんじゃないかと今、はじめて思った。だからアマツはサスケの方をたまに寂しそうな目で見るのかな、とか。本当は扇城家にいたくないんじゃないかとか思う。だってアマツ、寮生活を楽しみにしているもん。
1月上旬日曜日 下忍認定試験前日
明日は下忍認定試験!と思ってたっぷり睡眠しようとパジャマ代わりの長袖Tシャツとジャージに着替えて風呂から上がったオレを、三代目のじっちゃんが呼び止めた。じっちゃんは深刻な顔をしているし、その横にはシカマルとチョウジ、いのの父ちゃんがいた。3人は猪鹿蝶トリオと有名な上忍で、オレも尊敬している。
「ワシは”囮”に対して色々思うところはあるが・・・、ナルト。おぬしをミズキ中忍捕縛任務の囮役として任命したい。ミズキ中忍は二代目火影様の巻物に書いてある禁術を求めておる。情報部隊の調査によれば、そろそろ動く頃じゃろうと。ところでナルト。最近ミズキ先生がやけに優しくしてきたり、おぬしの実力を低く見ているような発言は無かったかの?」
「う~ん、そうそう・・・、確かにオレ、ミズキ先生から『出来ない子』みたいな扱い受けてた。たとえば、他の子と同じレベルで出来たのに『可哀そうに』って。そうやって言われてると段々、ほんとに出来ないような気がしてきた。最初は優しいって思ったってばよ。でも、そうじゃなかった。オレが力を求めるような感じで誘導しようとしてた。アザミがオレを見て変だなって思ったみたいで、洗脳?を解いてくれた。オレの成績データを見せてきて、『ミズキ先生が望むような”可哀そう”』な状態じゃないって教えてくれた、あの時は分からなかったけど、今なら解るってばよ」
「ナルト・・・、流石じゃ。中忍による心理作戦に負けないとは。やはりミナトの息子。将来は明るいのぉ」
何だかじっちゃんが涙ぐんでいる。
「そんで、じっちゃん。オレはどうすりゃいいの?」
「そうじゃそうじゃ。おぬしにはミズキ中忍の言葉に従ったフリをし、誘いに乗ってみて欲しい。レプリカの巻物は用意しておく。そこで、じゃ。まず手始めに、下忍認定試験には”わざと”落ちてみてほしい。そうすればミズキ中忍はおぬしに誘いをかけてくるはずじゃ」
「エェッ!?」
マジかよ!?と驚いていると、シカマルの父ちゃんが「個人試験」の話をしてくれた。だから安心だけど、せっかく一生懸命練習したのをイルカ先生に披露できないと思うと悲しい。でも、オレはやりたいと思う。オレにしか出来ないならば。
「・・・分かったってばよ。オレ、やってみせる!」