晩ご飯は鍋だと言う音也に穂乃果はじゃあみんなで鍋パーティーだねと提案する。
最初は断る音也だったが最終的には了承する。
他にも人を呼ぼうとする穂乃果たちに家にあるものじゃいろいろ足りないと思った音也は、いろいろ買って帰路につくのだった。
家に帰る途中で穂乃果が呼んだという後輩二人と園田さんに会った。
どうやら親には友達と一緒に晩ご飯食べてくると言ったらしい。親も穂乃果がいるなら大丈夫でしょうと言ったという。 さすが穂乃果である。略してさすほのだ。
ちなみにさっきまで一人で運んでいた炬燵は園田さんが一緒に持ってくれた。ありがてぇ。
「そういえば、初めましてが二人いるんだけど……」
歩きながら僕は穂乃果に聞く。
「あっ、そうだった。この二人がさっき言った後輩でこっちが星空凛ちゃんで、こっちが小泉花陽ちゃん。二人とも穂乃果の可愛い後輩だよ」
「星空凛って言います。ヨロシクにゃー、音也先輩」
「あっ、あの~、小泉花陽って言います。よっ、よろしくお願いします。音也先輩」
元気に手を上げながら独特な話し方をする星空さんに、たどたどしく縮こまりながら話す眼鏡っ子の小泉さん。いや、待て。色々突っ込みたいところはあるが、とりあえず……
「なんで二人とも僕の名前知ってるのかねぇ、穂乃果」
「えっ、えーっと、それは……」
何かやましいことでもあるのか、明らかに動揺する穂乃果。家族ならまだ分かるが、後輩だぞ。変な事言ってないだろうな? そんな疑問にはいかにも活発そうな女の子、星空さんが答えてくれた。
「穂乃果先輩が、可愛い男の子拾った、って連絡くれたんです!」
「ちょっと、凛ちゃん!」
拾った、って。あれだろうか、僕はダンボールに捨てられた猫なのだろうか? ……傷つくなぁ。
「へぇ~、僕は穂乃果にとってペットか何かなのかぁ……友達って言ってくれたのに。ふんっ」
「いや、あの違うんだよ。そういう意味じゃなくて……助けて~」
穂乃果は海未とことりに助けを求めるが、二人は呆れ顔だ。
「今回は穂乃果が悪いですね」
「そうだね~。私もそれはちょっとなぁ~って思うよ、穂乃果ちゃん」
「そんなぁ~」
肩を落とす穂乃果、そんな状況を作り出した元凶である星空さんは、小泉さんと何か話している。
「ねぇ、かよちん」
「何かな、凛ちゃん」
「確かに可愛いね、音也先輩」
「うっ、うん。なんか見た目はしっかりした男の子って感じなのに、女々しいっていうか……」
おい、聞こえてるぞ。人が結構気にしてることを……
「誰が女々しいって?」
僕がそう言うと小泉さんは怯えて縮こまった。
「ひっ、すっ、すみません~」
そんな小泉さんの前に立って両手を広げる星空さん。
「こらー、かよちんをいじめるなー」
あれ? これ完全に僕が悪者の図じゃん。僕そんなに怖かった?
「えっ? 今の僕が悪いの?」
「そうですね、男性の方が女性を怖がらせてはいけませんよ」
「そうだよ、音也くん」
まさかの別方向からの追撃だった。まじかよ……理不尽じゃないですか?
「だめだよ、音也くん。女の子はか弱いんだから」
穂乃果が威張りながら、そんなことを言ってくる。復活早いな! というか……
「そう言って許されようとしてないかな? 穂乃果」
「あっ、ばれた? えへへ~、ごめんなさい」
舌を出して謝ってくる穂乃果。あざといけど、そんなことされたら結局許しちゃうんだよな。やっぱり男って単純なのかな。
「……まぁ、別にいいよ。ちょっと傷ついただけだから。小泉さんもごめんね」
「いっ、いえ、大丈夫です」
こんな会話をしながら数分後、僕の家に着いた。
「ただいま~」
「お邪魔しまーす」
「お邪魔します」
「お邪魔するね」
「お邪魔するにゃー」
「おっ、お邪魔します」
……たった一言でここまで個性が出るものなのか、すごいな。
「狭いだろうけど、ゆっくりしてね」
流石に六人もいるといつもより狭く感じる。まだ、入りそうではあるが。やっぱりこの部屋広いなぁ。
他の五人はなぜか部屋をキョロキョロ見ている。僕はそんな五人を尻目に炬燵を部屋の真ん中に置きちゃぶ台を端に立てかける。その後、穂乃果たちから食材と食器を受け取りキッチンへ。
「すごい! 綺麗だ」
「ふむ、これは男の人の部屋とは思えないほどしっかり掃除してありますね」
「音也くんって、中身は女子だったりするのかな」
なんかとんでもないフレーズが聞こえたぞ。
「いや、そんなわけないでしょ。僕はれっきとした男だよ! 確かにちょくちょく女の子みたいだねとか言われることあるけど……結構気にしてるんだからね」
「ごっ、ごめんね。ことりの部屋より綺麗だから、つい」
「綺麗というか、物がないだけな気がするにゃ」
「まぁ、たしかに男は女の子よりかは色々楽だと思うよ……あっ、炬燵組み立てといてくれない? 布団はまだいいから。できる?」
「任せて!」
そんな会話をしながら晩ご飯の準備をしていく。
「そういえば、音也くんはベッドはないの?」
炬燵を組み立てながら穂乃果がそんなことを聞いてくる。
「ベッドは場所をとるからね。それに僕は敷き布団派なんだ」
「へぇ~、そうなんだ」
「本当は畳とかがいいんだけどなぁ」
我が家は残念ながらフローリングだ。大家さん曰く、最近張り替えたらしい。その為布団を敷くときは毎回下に除湿シートなるものを敷くようにしている。じゃないと、フローリングがかびるからだ。
「あっ、じゃあ今度海未ちゃんの家に行こうよ」
「わっ、私の家ですか!?」
急に話題にされた海未は驚いた顔をする。当たり前だ、今の話の流れでどうして海未が出てくるのか。
「園田さんの家じゃないとダメな理由でもあるの?」
穂乃果の家も畳あったよな? まぁ、確かにあれは寝室ではなく、いわゆる和室というものだったが。
「海未ちゃんの家って、すごく広いんだよ」
それは理由になってない気がするが、まあ、穂乃果らしい回答だ。それにしても園田家って金持ちなのか?
「へぇ~、園田さんってお嬢様なんだ」
「はい、私の家は曾お祖母様から続く日本舞踊の家系なのです……武術も嗜んでいたりしますが。というか、流石に急に男の人は連れていけませんよ」
「え~、そうかな?」
まあ、普通そうだよな。
「穂乃果の家が特別なだけだと思うよ?」
「確かに、そうかもしれないわね」
ことりも僕の言葉に同意する。と、事情を知らない星空さんはよく分かっていないようで、僕にこう聞いてきた。
「? 穂乃果先輩の家が特別ってどういうこと?」
「ああ、実は今日朝ご飯を穂乃果の家で頂いたんだ」
小泉さんは僕の発現を聞いて神妙な顔つきになった。
「昨日会ったばっかりの男の子を連れてきた穂乃果先輩に対する家族の反応って……」
うん、普通ならちょっと……かなりやばい状況だよね。でも高坂家だからなぁ。
「普通に受け入れてくれたよ。本当、高坂家はみんな穂乃果みたいだ」
僕の言葉にくすりと笑う海未。
「それは、言い得て妙ですね」
「まあ、そう言う僕たちも穂乃果の雰囲気に流されてるんだけど。まだ出会って間もないのに、こんなことになってるんだから」
僕の言葉に同意する凛。
「確かにそうだにゃ。凛とかよちんはついさっき音也先輩に初めて会ったばっかりなのに」
花陽は申し訳なく思ったのか謝ってくる。
「それなのにもう家に上がらせてもらって、その上晩ご飯まで頂いて……すっ、すみません」
「いいんだ。昨日まで一人で晩ご飯だったから、誰かと一緒に食べるのはきっと僕が望んでたことなんだ。だから、穂乃果には感謝してる。ありがとう穂乃果。それにみんなも、ありがとう」
そう、昨日思っていたこと……それがこんなにもすぐに現実になるなんて思ってもなかった。だから僕はみんなに正直に感謝の気持ちを伝える。
「そう正直に言われると照れますね」
「こう言うところが穂乃果ちゃんに似てるんだよね」
「確かにそうにゃ」
「分かります」
「もう、音也くん、不意打ちはずるいと思うな」
みんなは僕の言葉に少し困惑してるように見える。というか、ずるいってなんだろう?
「? なんのこと? ……さっ、出来たよ、鍋。準備するの手伝ってくれない?」
そう言いいながらカセットコンロを持っていく。僕の言葉にみんなも立ち上がる。本当はお客様だから、あんまりこういうことは頼みたくないんだけど、人数が多いから準備も大変なのだ。
「机は組み立てれた?」
僕の問いに穂乃果が元気よく答える。切り替え早いな。
「うん、ばっちり」
「そっか、じゃあ押入れの中に一応座布団は入ってるからそれ出して。ごめん言い忘れてて」
前に大家さんにもらった座布団だ。今思い出した。まさか役に立つ時が来るとは。
「オッケー、ここ?」
「そう、その中」
「おお、これだね。おお、人数分ある。というか、それでも余る。なんでこんなに? ……まぁ、いいや。海未ちゃん、運ぶの手伝って~」
「分かりました」
穂乃果と海未は二人で座布団を運んでいる。と、花陽が僕にこんなことを聞いてくる。
「あの、お皿って……」
「さっきの買い物袋の中にまだ入ってる。好きなの選んで~。気になるようだったら洗って持ってって」
僕の答えに納得し、花陽はお皿を机に持っていく。それを見てことりも花陽を手伝いだす。
「しゃもじはどこ?」
今度は凛から質問が飛んできた。
「あーっと、ごめん、面倒で炊飯器の中に入ってる、熱いだろうから僕がやるよ」
僕は今鍋を運んでいるため手が離せない。
「これぐらい大丈夫、熱っ」
「あー、だから言ったのに、ごめん、ことり、星空さん診てくれない?」
とりあえず、近くにいたことりに星空さんを診てもらい僕がご飯を盛る。
「分かったわ。凛ちゃん大丈夫?」
「だっ、大丈夫にゃ」
「一応、流水で冷やそうか」
そんな感じでドタバタしながら、ようやく食べる準備ができた。
「なぜか疲れた」
僕の言葉に申し訳なさそうに誤る星空さん。
「う~、ごめんなさい」
「星空さんは悪くないよ。大丈夫だった?」
僕の質問にはことりが答える。
「幸いなことに火傷にはなってなかったよ」
「そっか、良かった」
と痺れを切らしたように穂乃果が聞いてくる。
「ねぇ~、食べないの~」
「そうだね、とりあえず食べようか。……いただきます」
「「「「「いただきます」」」」」
そうして箸をとる。菜箸でも用意しようかって聞いたのだが、みんな構わないと言う。果たして気にしないのか、それとも気づいてないのか。僕は後者だと思うが。……まぁ、役得だと思っておこう。恥ずかしいのだが。
「うーん、美味しい」
「そうですね。塩鍋というのもずいぶん久しぶりな気がします」
「ことりも、家じゃあんまり鍋って出なくて」
「お~、ちゃんと骨がない魚だ」
「鍋だと野菜もご飯のおかずになるのがいいよね」
うん、好評なようでなによりだ。ってあれ?
「……あの、小泉さん、そのご飯の量」
さっき僕がよそった時はそこまで量はなかった気がするし……そもそも、お茶碗じゃなくなってるし、自分で変えたのか? と考えていると僕の言葉に星空さんが答えてくれた。
「音也先輩、かよちんを侮ってもらっちゃ困るにゃ。かよちんは普段この量の倍は食べるんだよ?」
「はっ?」
いや、おかしいだろ。丼に山盛り一杯によそっておいて、普段はこの二倍? なんだ、二合半くらい食べるのか? どこに入っていくんだ、それ。
「あっ、あの、すみません。こんなに食べる女の子、嫌ですよね」
僕の反応が若干引いてるように見えたのか、小泉さんはこんなことを言ってくる。
いや、別にたくさん食べる女の子が嫌いとかではない。むしろ小泉さんは普通に可愛い部類に入る。……本人の前じゃ絶対言えないけど。
「ううん、別にそうじゃないんだけど……足りるかな、ご飯」
そう、問題は別の部分にある。今日は結局朝昼と外で頂いたから、ご飯は朝炊いてあった五合分あった。僕はそんなに食べるタイプじゃないし、女の子ばっかりだから、これで足りるかなと高をくくっていた訳だが小泉さんがこんなに食べるとなると……
そんな風に考えていると、小泉さんはまた謝ってきた。
「ああっ、つい、いつもの癖で。すみません、無遠慮でした」
「まあ、いいよ。たくさん食べるのは良いことだしね」
いざとなったら、レンチンできるご飯を食べてもらおう。
「音也先輩、飲み物のお代わりある?」
「星空さん今の会話聞いてた? ……まあ、いいけど」
そうして飲み物を取りに立ち上がる。
昨日は一人だったのに、今日は五人もいる。こんな奇跡みたいなことが起こるなんて人生何があるか分からないな。そう思いながら、楽しい時間は過ぎていった。
次回は3月1日21時投稿予定です。基本金土日で投稿できるように頑張ろうと思います。
皆さんの周りではコロナウイルスの影響はどうですか?
私は卒業式がコロナウイルスの影響で短縮される事になりました。在校生がいなかったり来賓の方々がいらっしゃらないみたいで……まぁ、私は高校卒業悲しいな、というようなタイプでもないのでそこまで気にしてないんですけど。
皆さんも気をつけてくださいね。この小説を一体どれだけの方が読んでくださっているかは分かりませんが。