ラブライブ!IF ~少年と少女たちの物語~   作:秋麦沈初

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前回のラブライブIF

 穂乃果と海未の練習に付き合うことにした音也。なぜか海未の家に行き海未祖母と対話する。

 音也は状況に流されるまま海未祖母との対話を終えた後、海未とも二人で話しより親睦を深めるのであった。


響く音

 昨日は結局ほぼ一日中練習に付き合わされた。僕も僕で色々教えてもらいながら、なぜか柔道をしていた。

 

 なぜだ? と自分でも思うが、簡単に説明すると、あの後、海未の両親にも会ったのだ。で、また海未の祖母のように、海未の両親とも対話をしたのだが……どうも二人とも子煩悩なようで、一人っ子である海未のことが可愛くて仕方ないようだ。そこで、僕のことを見てこう言ったのだ。うちの娘はやれん、と。

 

 なぜ付き合う前提で話が進んでいるのか分からないが……突然そんなことを言ってきたので、僕は

 

「ふぇ!? あっ、えっと……えっ?」

 

 と、よく分からない返答をしてしまった。その後も会話の主導権はあちら側にあり、何を言われているか理解できないまま、いつのまにか、海未父が柔道を教えてくれることになったのだった。ちょうど体育の授業で柔道をやっていたので、柔道着は家から取ってきた。走って。

 

 そんなこともあり、日曜は過ぎていった。食事は朝昼晩と園田邸で頂いた。申し訳ないと一度は断ったのだが、結局押し負けた。

 

「明日は穂乃果の家で朝食だね。今日無理だった分」

 

 とは、穂乃果のセリフだ。決定事項なのか。とその時は思ったものだが、結局先ほど頂いているので、何も言えない。

 

 

 今はちょうど登校中だ。いつもは自転車で行くので登下校はあまり時間がかからないのだが、今日は歩きのためゆっくりである。

 

 ちなみに穂乃果は僕より早く出て行った。神社に寄るらしく結構時間ギリギリらしい。じゃあ、寄らなければいいのにとも思ったが、その辺は穂乃果の自由なので言うのはやめておいた。

 

 そして、僕は今穂乃果の妹である雪穂と登校している。雪穂は今、音ノ木坂中学校の二年なのだが、そんな子と歩いていると少し、いや、かなり緊張する。捕まらないだろうか、僕。そんな僕の心中を察してか雪穂がこんなことを言ってきた。

 

「大丈夫ですよ、音也さん。(はた )から見れば私たち、兄妹みたいなものですから」

 

 そうなのだろうか? 弟しかいない僕には、妹というものが分からない。しかし……

 

「そっか。雪穂みたいな子が妹だと僕も嬉しいよ」

 

「ぐふっ、音也さん、よくそんなことが言えますね」

 

 胸を押さえる雪穂。どうしたんだろう? まさか……

 

「え? あっ、ごめん、嫌だったよね。僕なんかが兄じゃあ」

 

「いっ、嫌なんかじゃないですよ。……でも、恥ずかしいじゃないですか」

 

 恥ずかしい……そうだ、無意識で言ったけど、よく考えたらそうだ。

 

「……そうだね。ごめん、僕も今更恥ずかしくなってきた。どうしよう、穂乃果に毒されてきてるのかな……」

 

「ああ、確かにお姉ちゃんもそういうこと臆面もなく言いますよね。ホント、言われる身にもなって欲しいです」

 

「確かに」

 

 でも、だいたい穂乃果のせいにするのはやめた方がいいな、うん。そう思っていると雪穂がジト目になってこちら見ている。

 

「あなたもですよ。……お兄ちゃん」

 

 おっ、お兄ちゃんって言ったか!? 今。やばい、すごく嬉しい、嬉しいんだけど……

 

「あっ、うっ、うん、気をつけるから。だからその呼び方はやめて! 恥ずかしいから」

 

「えー、やめていいの? お兄ちゃん」

 

 うわっ、急にタメ口になったし。なんかこういう小悪魔的なところはすごい穂乃果っぽいというか……

 

「っ、そりゃ、うっ、嬉しいけど……」

 

 僕の反応に雪穂は噴出す。

 

「あはは、本当に音也さんは裏表がないですよね。隠してるつもりでも最終的に表に出しちゃうんですから。……まぁ、私も恥ずかしくなってきたので、やめますね」

 

「あっ、うん。……残念なような、良かったような」

 

「また今度、気が向いたら言ってあげますよ。私も音也さんのことは結構気に入っていますしね」

 

「……やっぱり、君は穂乃果の妹だ」

 

「私はお姉ちゃんみたいに自分に正直じゃないですよ」

 

 無自覚か。流石は穂乃果の妹だ。気に入ってるなんてなんでそんな簡単に言えるかなぁ。

 

「あっ、私の学校はこっちなので」

 

「うん、またね」

 

「はい」

 

 そう言って雪穂とは別れた。その後はいつもの道をいつもよりゆっくりと進んで学校に向かった。この三日くらいで大分打ち解けたなぁ、そう思った。

 

 

 時は流れ……

 

 月曜の授業は六時間目までしかなく、今がちょうどその六時間目だ。そして、その授業は

 

「……現代文だ」

 

 今日は隣も休んでいない。いろいろ聞くチャンスかも。そう思って隣を見ると、その隣の人物である佐々木さんがこちらを見ていた。なんだろうか? 

 

「どうしたの? 佐々木さん」

 

「隣と席くっつけてだって、先生が」

 

「あっ、すみません、聞いてなかった」

 

 まだ授業が始まったばっかりで佐々木さんでも流石に寝てなかった。というか、どうやら動かない僕に注意しようとしてくれたらしい。

 

「ねえ、佐々木さん」

 

「うん? なーに?」

 

 佐々木さんはこのクラスだとあんまり目立ってない、正直僕と同じタイプの人間だ。そして、結構無口なため、ミステリアスな印象を持つ。

 

 実際は、自分から喋ることが少ないだけで、話しかければ結構話してくれるのだが。まぁ、僕も自分から話しかけることはほとんどないのであんまり人のことは言えないのだが。

 

 彼女なら男の僕よりはいろいろと詳しいはずだ。

 

「音ノ木坂学院って知ってる?」

 

「ああ、あの人気ない女子校のこと?」

 

「人気ないんだ?」

 

 まぁ、なんとなく予想できてたことだが。

 

「そう、そもそも女子校だから共学より母数が少なくなるのは仕方ないんだけどさ。女子校今は行くんだったらオトノキよりUTXって人が多くて」

 

「それでも、オトノキに行く人はいるんでしょ?」

 

「そうだね。学費が安い女子校に行きたいって人はオトノキに行くんじゃない? 正直女子校じゃなくていいならここみたいな普通の国公立行くし」

 

「そういうことね……」

 

 成る程、確かに納得できる理由ではある。僕がそう思ってると佐々木さんは不思議そうな顔をしている。

 

「どうしたの? 急に」

 

 ああ、理由を言ってなかったか。

 

「いや実は、オトノキの生徒の知り合いができて」

 

「へぇー、オトノキの生徒に知り合いがね~。すごいね、女子校の生徒と知り合いになるなんて」

 

「まぁ、そうだね。僕もすごい奇跡だと思うよ。……それでね、オトノキが廃校になりそうなんだって。だから、どうしたら人が集まるかなぁって」

 

「ああ、そうなんだ。あそこ、潰れるのか」

 

 特に興味なさげな反応。まぁ、そんなもんか。

 

「やっぱり、そんな反応になるよね」

 

「まぁ、そこまであの学校に思い入れがあるわけじゃないから。でも、それをどうにかしたいと」

 

「そうなんだよ」

 

 佐々木さんはしばらく考える素振りを見せた後、無表情でこんなことを言う。

 

「うーん、そもそもなんでその知り合いを助けたいの? 惚れた?」

 

「うぇ!? ちっ、違うんだよ! そうじゃないんだよ」

 

「そんなに慌てると逆にちょっと怪しいけど。 普段あんまり話しかけてこない音也くんが話しかけてくれたわけだし、まぁ、面白そうだしいっか」

 

 佐々木さんは本当に不思議な人だ。というか、大分話がずれてる気がする。

 

「面白そうって……いいけど、それでさ、どうすればいいかな。というか、オトノキになくてUTXにあるものって、なんだろうね」

 

「……あえて言うなら、話題性かな。ほら、日本人って流行に乗りやすいでしょ? 思春期の女子なんて特にその傾向が強いし」

 

「何かあるの? UTXって」

 

「知らない? 今ね、スクールアイドルっていうのが流行ってるんだよ。UTXはその一番前を走ってるんだ」

 

「スクールアイドル? なにそれ」

 

「学生がアイドルするの、学校活動の一環としてね」

 

「はえー、学校公認のアイドルってこと?」

 

「そんな感じ、だから、学校の広告塔になるの」

 

「へぇ~、知らなかった」

 

 僕の反応に佐々木さんは少し目を見開く。

 

「まじか。結構テレビとかでもやってたりするよ。UTXのARIZEっていう三人組のアイドル」

 

「うち、テレビないから」

 

「え? 音也くんってすごく貧乏だったりするの?」

 

「いや、貧乏ってほどじゃないけど、一人暮らしだと需要を感じなくて」

 

「え? 待って、一人暮らしなの? 初めて聞いたんだけど。え? あー、そういえば自己紹介で静岡から来たって……成る程、家族で引っ越したわけじゃなくて上京してきたわけね。へぇー高校生から上京して一人暮らしする人っているんだね」

 

 一人で質問して一人で納得する佐々木さん。自己完結しちゃうのか。

 

「まあね、親の意向もあったけど、ここに来たのは僕の意思だね」

 

「ふーん、そうなんだ。それじゃ、家事とか全部……」

 

「僕がやってるね、一人だし」

 

「ヤバい。私よりよっぽど女子力高いじゃん」

 

「女子力、ねえ。……ふふっ、その言葉はちょっと傷つくなぁ。はははー」

 

 女子力って言うのはある意味で男女差別の一つだと僕は思ってる……あくまで僕個人の意見だが。というか、それって遠まわしに僕が女子っぽいって言ってるようなものなんだよね……

 

 僕の乾いた笑いに佐々木さんは何か悪いことを言ったと思ったのか謝ってくる。

 

「え? あ、なんかごめん」

 

「まぁ、いいよ。僕自身も性格が女々しいのは理解してるから」

 

「ああ、女々しいんだ。なんか分かるかもしれない」

 

 自分で言うのはいいけど、誰かに言われるのはちょっと……我ながら面倒くさい性格だなぁ。

 

「えー、それどういう意味?」

 

 その後はクスクス笑ってはぐらかされてしまった。佐々木さんが笑ってるところを見るのはこれが初めてだったかもしれない。

 

 

 授業が終わった。……結構喋ってたはずなのに先生には怒られなかった。なぜだ? まぁ、考えても分からないことは考えても無駄か。

 

 今日は掃除があるためすぐには帰れない。清掃場所は教室だ。番号順的に佐々木さんとは同じ担当である。

 

「それで、他の人は?」

 

「サボりじゃないの? 今日は担任もいないし」

 

「……じゃあ、適当にやって終わろうかな」

 

「あっ、やるんだ。真面目だね。音也くんは」

 

 いや、机は運ばれてるしやらざるを得ないだろ。まぁ、みんな部活で忙しいんだろうし、普段はしっかりやってくれるので何か事情があるんだろう……

 

「というか、そういう佐々木さんだって」

 

「うん? まあ、どうせ暇だし」

 

 優しいんだなぁ、佐々木さんって。

 

「……そっか、ありがとう」

 

「さあ、ちゃちゃっとやっちゃおうか」

 

 その後は彼女と部活のない教室に残っている生徒たちに手伝ってもらい──みんな優しいな──掃除は早く終わったのだが……いざ帰ろうとした時、スマホから着信があった。

 

 誰だろう? そう思って確認すると、なんと穂乃果だった。そういえば、一昨日流れで連絡先を交換したんだった。

 

「うーん、誰々? ……えっと、高坂穂乃果? 知り合ったっていう女の子? へぇ~、もう連絡先まで交換してるんだ」

 

「え? あっ、なんで見てるの!」

 

 佐々木さんが後ろから覗き込んでいた。

 

「ふーん、今日は部活もないから一緒に帰ろう? だってさ。どうするの?」

 

「いや、何堂々と内容まで見てるの!? なんか急に距離感近くなったよ!?」

 

「もう、そんなことはどうでもいいじゃん。で、どうするの?」

 

「どうでもいいって……まぁ、行くけど」

 

 僕の言葉に佐々木さんは頷いて自分の荷物を持つ。

 

「そう、じゃあ、私帰るから」

 

「そっか。またね」

 

「うん、またね、音也くん」

 

 その後、穂乃果たちと合流して一緒に帰った。……佐々木さん本当に不思議な人だな、そう思った一日だった。




次回は3月13日21時投稿予定です。

 さて、やっとここまで来ました。ここまではたった四日間の出来事でしたが、ここからは時間がいっきに進んでいきます。いく……はずです。

 次回"太陽の下で凛と咲く花"お楽しみに。
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