穂乃果たちと出遭ってから初めての学校。音也はオトノキの廃校をどうにかする案を考えるため……そして、今までの自分を変えるため、音也は隣の女子……佐々木響子に話しかける。
諸々の事情を聞いた響子は面白そうという理由でオトノキやUTXについて教えてくれる。
その会話の中で音也と響子は距離を縮めていくのだった。
「今日はどうしようか」
今僕はやることもなしに外を適当にぶらついている。今日は土曜、穂乃果たちと知り合ってちょうど一週間程度だ。穂乃果と海未は練習で忙しいらしく、今日も練習に誘われたが流石に断った。というか、また海未の家に行って海未父の稽古を受けるのが嫌だっただけだが。
そんな本音を話すと、穂乃果は苦笑い。海未は謝ってきた。海未は悪くないよと言って二人を送り出したが……
「やることないんだよな」
そう、特にやることがないのである。いつもだったら家の中でネットサーフィンでもして過ごすのだが今日はそんな気分でもなかった。
「やっぱり、あれかな。人肌恋しいってやつなのかな」
先週の出来事が出来事だけに家で一人でいるのが急に辛くなったのだろう。と思案に耽っていると遠くの方から声が聞こえた。
「ダレカタスケテー」
どうやら助けを呼ぶ声のようだ。でもこの声聞き覚えがあるような……
「声が聞こえたのは……あっち?」
とりあえず僕は声の主の元へ向かうことにした。どうせ暇だったし。
「ダレカタスケテー」
「かよちん、いい加減諦めて! 何を言われても凛は止まらないよ」
声の主を探し歩いて僕がたどり着いた先は小さな公園の中だった。そこにはどこかへ走り去ろうとしている凛とその凛の腕を掴んでそのまま引きづられている花陽がいた。
「凛、花陽、近所迷惑だよ?」
「え? あ、音也先輩だ。こんにちはー」
「あっ、音也先輩助けてくださーい」
僕に気づき元気に挨拶してくる凛と助けを求めてくる花陽。
「別にそれはいいけど、これはどういう状況?」
「実は……」
花陽曰く、凛と花陽は今日も花陽の家で受験勉強をしようとしていたらしいのだが、凛が花陽の家だと集中できないと言って飛び出してしまったようなのだ。
「そっか。それで凛はどこへ行こうとしてたの?」
「えーっと、それは……」
言葉に詰まる凛、これは……
「あれでしょ? 集中できないっていうのは建前で勉強したくなかっただけでしょ」
「うっ、そうにゃ」
ガクッと項垂れる凛。図星か。まぁ、なんか可哀想だし、勉強漬けっていうのもなぁ。
「まぁ、今日ぐらいは多めに見てあげない? 花陽」
「でも、凛ちゃんと明日は休もうねって言っていたんです」
「そうなの!? それじゃあ、逆に凛が譲歩すべきとこじゃない?」
明日休む予定だったら、今日くらい我慢すればいいのに。
「うー、でもぉ」
「でも?」
「かよちんの家だと炬燵があって寝ちゃうにゃー」
「は? はぁ、花陽の家はもう炬燵を出してるんだ?」
凛の予想外の答えに気の抜けた返事をしてしまうが、すぐに納得して花陽にこのように聞く。
「へ? はっ、はい」
まだ十一月に入ったばっかりなのに早いな。いや、人それぞれか。それはそれとして、ということは……
「ふーん、じゃあ凛は炬燵がなければ勉強するんだ?」
「あっ、うん。でっ、でもかよちんの家の炬燵を片付けちゃうのはダメにゃ。だから、今日は休もう!」
「よし、うんって言ったからね……ちょっと勉強道具持ってきて」
「え? あの……」
花陽は何を言ってるか分かっていないようだ。ちょっと言葉足らずだったな。
「うちに来ればいいんじゃない? この前来たから場所分かるでしょ?」
「あっ、あのいいんですか?」
「うん、どうせ暇してたし、せっかくだから勉強見てあげるよ」
もう知らない仲じゃないし……ここ一週間で何度か話した程度だけど。
「えーっと、でも、あの、迷惑じゃないかにゃ?」
「凛、勉強が嫌いなのは分かるけど、オトノキに入るんでしょ。この前調べたけど、そこそこ偏差値高いじゃん、オトノキ」
「うー」
どうしても勉強したくないのか。……ここは奥の手を使うか。
「よし、じゃあ、なんか好きなもの買ってあげるよ。だから頑張ってみない?」
「好きなもの? ホント!? 凛はラーメン、ラーメンが食べたいにゃー」
目を輝かす凛。へぇ、凛はラーメンが好きなのか。
「ラーメンか、ふむ……まぁ、お昼までに考えとくよ」
どこかに食べに行こうかな?
「それでいいです、やったにゃー」
「花陽は何かある?」
「え? 花陽も? わっ、悪いですよー」
花陽は首を振っている。やっぱり花陽は謙虚だなぁ。
「大丈夫。凛だけだと不公平だし」
「えと、じゃあ、考えておきます……」
言葉尻が萎んでいくのも花陽の特徴だ。
「うん、それでいいよー。じゃあ、僕は先に家に帰るからね。ちゃんと来たらラーメンね」
そう言って帰ろうとしたのだが、なぜか止められた。
「あ、あの、待ってください。えと、ついてきてくれませんか? 私一人じゃ凛ちゃんを止められる気がしなくて……」
凛、どんだけ信用されてないんだ。
「ああ、まぁ、いいけど」
また、女の子の家に行くのか。気が乗らないな、いろいろと。
「本当ですか! ありがとうございます~」
まあ、この安心したような花陽の笑顔を見たらどうでもよくなって……こないけど。
「花陽、家族の方は」
「あっ、実は今日は出かけていて……」
「そうか!」
いや~、それなら安心だ。……ちょっと園田邸での出来事がトラウマになってるな。
「なんでそんなに嬉しそうなのかにゃ?」
「ちょっと、ね。まぁ、それは別にいいじゃん、早く行こう」
その後は何事もなく花陽の家から勉強道具を持ってくることができた。行きがけに凛の家の前も通り、紹介されたのだが……僕が二人の家の場所を知ってどうしろというんだ。
さて、僕の家にもつい一週間前に購入した炬燵があるのだが、僕はまだ炬燵布団を引いていない……つまりただの机となっているわけだ。
「これならいいでしょ?」
「……うん、確かに」
少し残念そうにしている凛。どれだけ勉強したくないかが窺える。
「まぁ、確かに勉強よりも大切なことは世の中にあると思うけどね」
「そうだよね!」
「でも、ある程度できた方がいいのも事実だよ」
「……上げて落とすのはやめて欲しいにゃ」
やばい、言葉一つ一つに反応する凛を見てると面白くなってくる。
「ふふっ、ごめん。さ、頑張ろう? ……僕もついでだし予習やっちゃおうっと」
「は、はい」
返事をしたのは花陽。花陽はそこそこやる気があるみたいだ。凛も渋々ながら準備はしている。凛の気持ちは分からないでもないけど……僕にはどうすることもできない。
その後は特に事件が起こるわけでもなく普通に勉強していた。
「と、そろそろお昼だね? どうする?」
「ラーメン!」
「うん、だと思ったよ。どっか食べに行こうかと思ったんだけど……僕はあんまり外で食べないし、凛が行きたいところでいいよ」
「本当ですか!?」
「う、うん。遠慮しないで」
「じゃあ、最近できた凛おすすめのラーメン屋さんに行くにゃ。テンション上がるにゃー」
「じゃ、じゃあ、案内よろしくね」
凛の勢いに圧倒されつつ出かける準備をする。さっきまで死んだ魚みたいな目をしながら勉強してたのに……
「早くするにゃー」
「す、すみません、凛ちゃんが……」
凛はすでに靴を履いて外に出ている。花陽はそんな凛を見てこちらに頭を下げてくる。……どう反応すればいいんだろう?
「あ、えーっと、気にしてないから大丈夫だよ? だから頭を上げて? 花陽」
「は、はい、ありがとうございます」
少し涙目になりながらそんなことを言って凛の方へ向かう花陽……なんか僕が悪いことしてるみたいな気分になってくるんだよな。こんな花陽を見てると。元気な凛と正反対だよな。
僕も外に出ると花陽と凛の二人はすでに話しながら歩いていた。やっぱりあの二人は正反対だけど、だからこそ友達でいられるのかもしれないな。
「音也センパーイ、早くー」
家から出てきた僕に気付いて、手を振る凛。花陽も照れくさそうに笑っている。その時の二人の笑顔はとても眩しく、太陽のように輝いているように見えた。
次回は3月14日21時投稿予定です。
今日って13日の金曜日なんですよね……まぁ、だからなんだって話ですけど。
今回は花陽と凛の話でした。うーん、なんかうまく書けませんね。というか、キャラ設定が迷子になりつつありますね。まぁ、頑張ります。
次回"郷里は絵のように"お楽しみに。