ラブライブ!IF ~少年と少女たちの物語~   作:秋麦沈初

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前回のラブライブIF

 やることもなしに外を散歩していた音也は偶然花陽と凛に会う。

 逃げる凛と追いかける花陽、二人の事情を聞いた音也は自身もなんとなく人肌恋しかったという理由で二人にうちで勉強すれば? と誘う。

 ラーメンという報酬で凛を無理やりやる気にさせた音也は二人の受験勉強に付き合うのだった。


郷里は絵のように

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 穂乃果たちと出会ってちょうど二週間が経った金曜日、今日も一緒に帰ろうと連絡があり、僕はなぜかオトノキの前に来ていた。

 

「気まずい」

 

 そう、連絡をくれたのはいいものの、用事があるからオトノキの前で少し待っててと言われたのだ。特に何も考えてなかった僕はここに着いてから、事の重大さに気づいた。

 

「通報されたりしないよね?」

 

 女子校の前に立つ一人の不審な男とかいう見出しは嫌だぞ。……ああ、すれ違う女子に奇異な目で見られてる気がする。とりあえず会釈でもしておく。

 

 頑張れば信号待ちに見えなくもないけど……今度は車の運転手に渡らないの? って目で見られる。それもそれで気まずい。

 

「あ、音也くーん。お待たせー」

 

 と、聞き覚えのある声がした。

 

「すみません。穂乃果が無茶を言って」

 

「音也くん? 大丈夫? なんかすごく顔色が悪いけど……」

 

 他二人も来たようだ。

 

「それは当然でしょう? 男性が女子校の前に立ち尽くしているなんて結構凄い状況よ」

 

 聞き覚えのない声もした。誰だ? そう思って声のした方を向くと、金髪ポニテの美女がいた。というか、肌白! スタイル良すぎ! ハーフか? なんか何処と無くそんな雰囲気が……

 

「あの? どなたでしょう?」

 

 そう本人に尋ねるとその方も不思議そうな顔で首を傾げて言う。

 

「あら? 穂乃果、説明してないの?」

 

「へ? あ……忘れてた」

 

 一瞬気の抜けた返事をした後、しまったって顔になる穂乃果。

 

「まったく、相変わらずね、穂乃果は。……それじゃ、初めまして、音也。この学校の生徒会長兼穂乃果たちの幼馴染、二年の絢瀬絵里って言うわ。よろしくね」

 

 穂乃果の返答に呆れた顔をした穂乃果の幼馴染だという絢瀬さんはこちらに向き直り自己紹介をした。どうやら一つ上の年齢らしい。

 

「あ、どうも、鈴木音也です。……それにしても生徒会長ですか」

 

 うーん、なんとなく真面目そうな人だし……自分で立候補でもしたのか? そう考えていると絢瀬さん僕の心中を察したかのように答えてくれた。

 

「そう、ついこの間生徒会選挙があってね。みんなに推薦で立候補させられたのよ。そしたら、見事に勝っちゃって……」

 

「へぇ、そうなんですか。それで、その生徒会長さんがどうして? また穂乃果ですか?」

 

 こんな人が僕なんかに会いに来るなんてまた穂乃果が何か言ったに決まってる。そう思って聞いたら見事に予想は的中した。

 

「そう、穂乃果から面白い男の子がいるーって私に話しに来て、今日はそんなに忙しくなかったし、気になったから来てみたんだけど……また?」

 

 絢瀬さんはまたという部分に引っかかったようだ……まぁ、そうだよな。

 

「またですね。前にも同じようなことがありまして……あの、とりあえずここから離れませんか? 僕だいぶ恥ずかしいんですけど」

 

 早くここから離れたい……そう思って発言すると、絢瀬さんも僕の気持ちを汲んでくれたのか、同意してくれた。

 

「そうね。行きましょうか」

 

 ちなみに他の三人は三人で話している。とりあえずは僕と絢瀬さんでお互い話して、ということだろうか? それだったら、絢瀬さんにいろいろ聞いてみようかな。……なんか昔だったら初対面の人にこんなに堂々とできなかったはずなのに、ここ二週間で結構変わったのかな、僕。

 

「はい、それで絢瀬さん……」

 

 歩きながら絢瀬さんにいろいろ聞こうかと苗字を呼んだところ、絢瀬さんは何かを考える素振りを見せる。

 

「絢瀬さん、ねぇ。……エリーチカと呼んでくれてもいいのよ」

 

 ウィンクしながらそんなことを言う絢瀬さん。僕は予想外の言葉に動揺隠せない。

 

「ほぇ? なっ何ですか急に」

 

「ふふっ、そうね、理由をつけるとしたら、苗字で呼ばれるのが好きじゃないからとかでいいかしら?」

 

 僕の反応にクスクス笑いながらそんなことを言う絢瀬さん、理由をつけるとしたらって……

 

「いいかしら? じゃないですよ! どうせあれですよね。穂乃果たちを呼び捨てにしてたから、私のことも……みたいな感じですよね。海未みたいに」

 

 絢瀬さんは僕の最後の言葉に驚き海未の方を向く。

 

「あら? そうなの? 海未」

 

 こちらの会話をしっかり聞いていた海未は動揺している。

 

「いっ、いえ、それは……おっ、音也は最低です」

 

「え? いや、え? 理不尽じゃないか?」

 

 顔を赤くしながら僕を罵倒する海未。いきなりの罵倒にさすがに理不尽さを感じる。と、そこに絢瀬さんがニヤニヤしながらこんなことを言ってきた。

 

「あら、私に黙ってそんなことをしていたの? 音也は」

 

「やめて、その言い方だといろいろ誤解を生みかねないから、いや、マジで、笑ってないでやめてください、そういうのは。聞いてます? 絢瀬さーん」

 

 その言い方は駄目だ。浮気が発覚したみたいなヤバイ状況になりかねない。いや、そもそも付き合ってすらないのだが、周りから見ればそんなこと関係なしに僕が悪者だ。

 

「エリーチカ、でしょ?」

 

「へ? ……えっ、えっ、絵里さんこれで妥協してください」

 

 ……ぶれないなぁ。これはもう僕が折れるしかないじゃないか。だが、エリーチカはさすがに恥ずかしい。

 

「もう、しょうがないわね。敬語と敬称も要らないわよ、もう知ってる仲だしね」

 

「いや、一応初対面……」

 

 初対面で敬語が要らないって……

 

「穂乃果の知り合いだもの、これで分かるでしょ?」

 

「あっ、はい、そうですねー」

 

 さすほのだ。もう僕も吹っ切れた方がいいかもしれない。

 

 

 その後、歩きながら絵里といろいろ話をした。ちなみにハーフじゃなくてクウォーターだった。祖母がロシア人らしい。

 

 僕の家の前に着いた所で僕は言う。

 

「それじゃ、僕はここで」

 

 そう言って別れようとしたのだが……

 

「あら、私は音也の家に入れてくれないの?」

 

「へ?」

 

 絵里はそんなことを真面目な顔で言ってくる。思わず気の抜けた返事をする僕。

 

「三人はもう中に入れたんでしょう?」

 

「まっ、まぁ」

 

「それじゃあ、私も入れてもらって構わないわよね」

 

 どういう理論だよ。

 

「それじゃあ、の意味が分からないけど……まぁ、いっか」

 

 だがまぁ、僕は別に構わない。断る理由は特にないし……そんな風に思ってると僕と絵里の話を聞いていた穂乃果が食いついてきた。

 

「あっ、絵里ちゃんは音也くん家に寄ってくの? 私も行っていい?」

 

 やばい、穂乃果に尻尾が見える。というかその上目遣いはやめてくれ、無条件に了承したくなる。だけど……

 

「穂乃果、練習は?」

 

 もう大会まで二週間もないって言ってなかったっけ? そんな僕の言葉に固まる穂乃果。

 

「あ」

 

「忘れてたんだね」

 

 穂乃果は笑って誤魔化す。そんなんで大丈夫なのか。

 

「あ、あははー」

 

「海未に聞いて?」

 

 練習メニューを組んでるのは海未みたいなので、海未が了承すれば僕は別に構わない。

 

「海未ちゃーん」

 

 海未に抱きつく穂乃果、だが海未は冷静に話し出す。

 

「そうですね……今日は金曜日、大会まで後二週間ほどなので本当は駄目……」

 

「そんなぁ」

 

 泣きそうな声を出す穂乃果、そんな穂乃果に微笑みかける海未。

 

「なのですが、せっかく久しぶりに絵里と一緒ですし、土日がありますからね。今日くらいはいいでしょう」

 

「本当!? やったー、いいって、ことりちゃん」

 

 今度はことりに抱きつく穂乃果。凄い喜んでるけど、海未の言葉を聞く限り土日に休みはないよな……

 

「うん、よかったね穂乃果ちゃん」

 

 ことりは穂乃果を撫でている。というか、これって海未とことりも来るってことだよね。

 

「はぁ~結局全員? そうっぽいね。なんか最近僕の家が溜まり場になりつつない?」

 

「いいじゃん、別に。ほら、早く行こ。いや~音也くんの家って洋菓子が出るからいいよね」

 

「おい、結局それが目的じゃん。外でそんなこと言わない方がいいよ? 和菓子屋の娘が」

 

「大丈夫だって、周りに私たち以外人いないし」

 

 本音が出てるぞ穂乃果。ここ二週間練習がない時などはちょくちょく穂乃果や海未が来たり、穂乃果と海未が練習のときはことりが来てたり……この三人が結構うちに来るようになった。三人とも最初の内は僕を気にして様子を見に来てくれる、という感じだったので僕も凄く感謝していた。

 

 だが、最近はどうもそれぞれ違う目的でうちに来てるようなのだ。その中でも穂乃果は特に分かりやすかった。……来てくれること自体がありがたいので結局は家に上げてしまうのだが。

 

「……そもそもなんで僕がお菓子出すと思ってるの?」

 

 確かに僕は三人への感謝の気持ちと実家の風習であるお客様にはお茶菓子を出す、に則りうちに人が来たら必ずお菓子とジュースを出していた。だが、そこまではっきりと期待されると逆に出す気がなくなってくる。

 

「え? 出してくれないの?」

 

「図々しいな、僕のお金だよ?」

 

 そう、こういう所で、僕の家に来てくれてありがとうっていう気持ちが最近薄まってきたのだ。

 

「ダメ?」

 

「ダメですか?」

 

「ダメかな?」

 

「ダメかしら?」

 

「いや、なんで全員で……っ、分かったよ、分かったって。だからその上目遣いはやめて、僕が恥ずかしいから!」

 

 くそ、あざとい。というか穂乃果はともかく他三人は予想外だ。海未と絵里にはなんとなくそんなイメージないし、ことりに至っては自分で作りゃいいじゃん。この前お菓子づくりが趣味って聞いた気がするぞ。

 

「……ああ、くそ。家にあんまり買い置きないから、荷物置いて買ってくる。何が欲しい?」

 

 すぐにペースに流される。本当僕は女の子に弱いな、最近穂乃果たちと接するようになって気づいた。

 

「えっ? 一緒に行こうよ」

 

 穂乃果は僕の言葉にキョトンとした顔でこんなことを言う。

 

「そうやってお菓子ねだるんでしょ? 最近いいように財布になってる気がするから、流石にお金が足りなくなって……」

 

 ねだられると僕は多分負けちゃうから、最初から連れて行かないほうが財布に優しいと思うのだ。だが穂乃果は笑顔でこんなことを言う。

 

「増えてたよ、ゲームの山」

 

「……え? おっ、おい、何勝手に人ん家の押入れの中見てるんだよ! というか、いつ見たんだよ! えっ? マジで見たの? 内容までは見てないよね!?」

 

 あの中にあるゲームには流石に女子に見せられないのもあったはずだ。

 

「……音也くんも男の子だもんね、しょうがないと思うよ?」

 

 穂乃果は遠い目をする。それって見たって事だよね? 

 

「やめて、やめてください。分かった、なんでも買っていいから、その話はやめてください」

 

 なんて拷問だよ、これ。死ぬよ、僕。羞恥心で死ぬよ。

 

「よし、三人とも好きなの買っていいってさ」

 

 ……また、穂乃果にやられた。穂乃果は笑顔で他の三人に言う。

 

「穂乃果、さすがにそれはどうかと思います」

 

「そうだね~、今のはちょっとひどいかなぁ」

 

「穂乃果、あなたいつもこんな感じのことやってるの?」

 

 穂乃果と僕のやり取りを見ていた他の三人は少し引き気味だ。

 

「え? さっきまでみんなもお菓子ねだってたよね!? なんで急にそっちに行くの!?」

 

「ああ、いいよ。三人とも、穂乃果だってわきまえてるはずだから……多分」

 

 ここは穂乃果の味方をしておこう。なんか可哀想だし……

 

「お、音也くん!」

 

 穂乃果は目をきらきらさせてこちらを見る。

 

「まったく、音也は穂乃果をすぐに許すんですから」

 

「そうよ、音也。被害者は音也なのよ?」

 

 海未と絵里は少し不満そうだ。

 

「いいの、これくらいのことなら」

 

 まぁ、別に穂乃果にあれを見て嫌われたわけじゃないし……

 

「本当、音也くんは優しいよね~」

 

「器が大きいというか……切り替えが早いというか」

 

「あれね、穂乃果に甘いのね」

 

 好き勝手言ってくれるな。自覚はしてるが……

 

「何してるの? 早く行こう!」

 

 穂乃果はいつの間にか先に行って手を振ってるし……海未とことりは穂乃果の元に走っていく。

 

 本当穂乃果と出遭ってから暇しないなぁ。いろんな人にも知り合えたし。そう思って絵里を見ると絵里は穂乃果たちを見て微笑んでいる。よくできたお姉さんみたいだなぁ。

 

「……改めてだけど、これからよろしくね、絵里」

 

「何よ、急に」

 

 僕の言葉に驚く絵里。まぁ、確かに急だった。

 

「ううん、ただなんとなく、そう言いたくなっただけ」

 

「そう……ええ、よろしく、音也」

 

 そう言った絵里の姿は絵画のように美しかった。




次回は3月15日21時投稿予定です。

 オチが難しいです。書きたいこと書いてると最後どう締めようか分からなくなります。

 ちなみに漫画設定でストーリーはアニメ寄りにしようと考えた時、一番困ったのは絵里の設定です。まぁ、その辺はご都合主義でどうにかするので楽しみにしててください。少なくとも十話くらい後の話ですけど。

次回"小鳥は寂しいと死んじゃう動物?"お楽しみに
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