ラブライブ!IF ~少年と少女たちの物語~   作:秋麦沈初

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前回のラブライブIF

 ことりに一緒に帰ろうと誘われ二人で帰ることになった音也。

 いつもと様子が違うことりを心配していると、ことりがその胸の内を吐露する。

 そんなことりを見て、音也なりにことりに励ましの言葉を送る。

 そんな音也の言葉で少し元気を取り戻すことりは、また音也と一緒に帰る約束をするのだった。


幸薄い希

 穂乃果の出る剣道の大会の前日である今日、大会前日だから英気を養うためという理由で部活がなかった穂乃果、海未、ことりと一緒に下校し、明日の準備があるからと別れた後、家で着替えた僕はふと思い至って神社に来ていた。

 

「神頼みはあんまりアテにしないタイプなんだけど……まぁ、一応ね」

 

 賽銭箱に五円玉を投げ込み鈴を鳴らす。確かこうすることで神が降りてくるんだっけ? あれ? 拍手の方だっけ? あとで調べるか。その後二礼二拍手して願いを唱える。

 

「穂乃果が無事優勝してオトノキの廃校が免れますように」

 

 最後に一礼っと……間違ってないよな? 

 

「よし、帰ろう」

 

「ちょい待ち」

 

「はい?」

 

 後ろから呼び止められた。振り向くとそこには独創的なツインテールの髪の巫女さんが立っていた。というか周りに誰もいないと思って願い事声に出してた……恥ずかし! 箒を持ってるからその辺を掃除してたんだよな? なんで気付かなかったんだ、僕。

 

「あの、どちら様でしょうか?」

 

 ここは冷静に対応しよう。内心は全然冷静じゃないけど……

 

「ウチ? ウチは東條希。ここの神社でバイトをさせてもらってるんやけど……実は気になる単語が聞こえてな、ちょいと呼び止めさせてもらった」

 

 ……関西弁? でもなんか、エセっぽい。というか、気になる単語が聞こえたから呼び止めるって……ああ、僕の知り合いはそういう人が多かった。

 

「はぁ、そうですか。それで気になる単語って……」

 

「いや、ウチな、オトノキの二年なんやけど、今オトノキっていう単語が聞こえてな。オトノキの関係者か何か? 男の子だけど」

 

「ああ、そういうことですか。実は……」

 

 

「へぇ、穂乃果ちゃんの知り合いかぁ」

 

 この巫女さんにざっくりと説明──変な誤解を生んで変質者と通報されるのは嫌だし──した所、こんなことを言いながら腕を組んで頷いている。……どうしよう、あまりにも独創的な髪型とか説明とかで気付かなかったけど……大きい。思わず目をそらす。こういう時は冷静になるんだ。たぶんあちら側にはばれてるだろうけど……女の子は視線に敏感だって聞いたことあるし。

 

「穂乃果を知ってるんですか?」

 

「穂乃果ちゃんを知ってるというか、エリチを知ってるんやけど。穂乃果ちゃんと直接会ったことはまだないんや」

 

 よし、とりあえず違和感なく返せたな。あちら側も特に何事もなく返してくれてる。まぁ、わざわざ面倒な状況にしたくないよな。……それにしてもこの巫女さん、絵里の知り合いなのか。

 

「絵里を?」

 

「ウチ、オトノキの副生徒会長なんやって言ったら分かる?」

 

「……ああ、成る程、そういうことですか。世界って意外にも狭いんですね」

 

 生徒副会長なら、絵里経由で穂乃果たちのことを知ってても不思議じゃない。でもまだ直接の面識がないのはなんでだろう? 

 

「本当にな~。ふーん、でもそっか、エリチに男の影ができたと思ったら穂乃果ちゃんたちの差し金か」

 

 すごいニヤニヤしている巫女さん。男の影って……別に僕と絵里そんな関係じゃない。ただの友達……少なくとも彼女はそう思ってるだろう。しかし、この巫女さんに絵里は僕のことを話したんだろうか? 

 

「それって、あれですか。絵里、僕のこと話してたんですか?」

 

「いや、直接は言っとらんよ。なんとな~く、仄めかしてただけや」

 

「一体何を言ったんだろ、絵里……」

 

 この巫女さんが僕のことを分からなかったってことは多分、外見とかに関しては言ってないんだろうけど……

 

「……聞きたい?」

 

 巫女さんがこんなことを聞いてくる……しかし、この巫女さんの顔は見覚えがある。僕の知り合いが悪巧みしている時の顔にすごい似ている気がするのだ。

 

「……やめておきます」

 

 嫌な予感がするので、触れないことにした。

 

「そか、残念や。そうだ、自己紹介がまだやったね。ウチは東條希、今はここの神社のお手伝いをしてるんや。よろしく」

 

「まぁ、はい。先程、説明した時に言いましたが、改めて鈴木音也です。よろしくお願いします、東條さん」

 

 衝突の自己紹介に一瞬面食らってしまったが、まぁ、こういう急展開は慣れた。

 

「音也くん、呼び捨てでもええんやで、エリチみたいに」

 

「いや、そういうわけには──―」

 

「ええんやで」

 

「……分かったよ、希」

 

 世の中ではこれは許可ではなく強制と言うのでは? 満面の笑みでそんなことを言う希に僕も反抗はできない。なんか怖いし……ああ、即落ち二コマみたいだな。

 

「おっと、敬語もなくなったな」

 

「えっ? あ、すみません」

 

 しまった、つい無意識で敬語まで無くなってたか。

 

「ええって、別に、気にしとらん。敬語って使う方も使われる方も疲れるしな」

 

「……ありがと」

 

 なんというか、不思議な人だ、希は。達観しているというか……自分の世界を持っている。

 

「うんうん、それでいいよ。さて、それにしても剣道で廃校をねぇ」

 

 急に真面目な顔になる希。やっぱり、それは気になるか。

 

「希はどう思う?」

 

「正直に言うと、無理やと思う」

 

「……だよね」

 

 当たり前だ。僕ですら望み薄だと思ってたのだ。

 

「でも……穂乃果ちゃんなら或いは、そんな気持ちもあるよ。穂乃果ちゃんには、そんなパワーを感じるんや」

 

「パワーって……」

 

 やっぱり不思議な人だ。大真面目でこんなことを言う。……だが、あながち間違いとも思えない。

 

「まぁ、ただ、やっぱり剣道っていうのがなぁ」

 

 上げて落とすタイプの人か? まぁ、正論だが。

 

「そうなんだよね、本人もその辺りは少し気づいてるし」

 

 穂乃果自身も剣道で生徒が集まるというのは少し厳しいと思ってる節がある。

 

「そうなんや」

 

「うん、本人から直接聞いたわけじゃないけど……」

 

 あの時……僕に廃校について教えてくれた時、穂乃果は色々考えちゃうとしか言ってなかったが……恐らくあれは……

 

「……音也くん」

 

「どうした──―ひぇ」

 

 急に名前を呼ばれて希の方を向くも希はいない。と背中をツーっとなぞられる感覚がした。

 

「おー予想外の反応」

 

「やめてよ!」

 

 後ろを向くとニヤニヤしている希がそこにいた。どうやら箒の柄の部分で背中をなぞられたようだ。……別に背中が特段弱いわけではなく不意打ちだったから驚いただけだ。勘違いしないように。……誰に言い訳してるんだろ? 

 

「音也くんがなんか暗い顔で考え込み出しちゃったからね、つい」

 

「あ、ごめん」

 

 また、一人で考える癖が出てたか。この癖直さなきゃな、本当に。

 

「ええよ、音也くんの可愛い所が見れたし」

 

「え? あー! 忘れて! お願いだから! 忘れてー!」

 

「無理」

 

 満面の笑みで否定する希。

 

「な、なら……せめて、誰にも言わないでいただけると……」

 

「それなら、ええよ。二人だけの秘密やね?」

 

「ありがとう、本当にありがとう」

 

 動揺しすぎてこの時の僕にはそんな言葉しか返すことが出来なかった。

 

 

 その後は少し世間話をしてから希と別れて家に帰った。ちなみに希は明日の大会の応援には行けないらしい。帰宅後、僕は希との会話を思い出し、二人だけの秘密……やばい、恥ずかしい、となって身悶えてしばらく動けなくなっていた。

 

「希、内心笑ってただろうな、多分」

 

 かと言って多分そこに突っ込んだら、もっといじられたに違いない。

 

 ……あー希には当分いじられ続けるんだろうな、僕はなんとなくそんな予想をしたのであった。その予想は遠くない未来、的中することになる。




次回は3月21日21時投稿予定です。

 ラブライブのssなのに穂乃果たちが未だスクールアイドルになっていない件……というか主要人物が未だ全員出ていない件。自分で読み直して展開の遅さと内容の薄さに驚きです。……文才が欲しい。

次回"優勝"……タイトルでネタバレしていくスタイル。
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