ラブライブ!IF ~少年と少女たちの物語~   作:秋麦沈初

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前回のラブライブIF

 剣道の大会当日、穂乃果の応援に行く音也。

 音也の応援(応援してたか?)のおかげか、穂乃果は無事優勝するのだった。


にこ

 穂乃果が無事大会で優勝してから二日後の月曜の放課後、どうにも不安な僕は次の策をすでに考え始めていた。

 

 来年オトノキに入った人数で廃校を本格的に検討し始めるとことりからは聞いたが、果たして剣道部の優勝だけでどれくらい人が入ってくるか……

 

「結果は四月にならないと分からないけど……たぶん無理だろうなぁ」

 

 穂乃果には悪いが、剣道なんて今時の女子が興味を持つとは思えない。一応動画も上げたが視聴者にターゲットの年齢層はいない。

 

「でも、次はどうしようかな?」

 

 思いつかない。

 

「……UTX行ってみようかな? いや、あそこも女子校だし……校舎はなんかでっかいビルだっけ? それなら遠目から見る分なら大丈夫かな?」

 

 取り敢えず、行ってみようかな。今日は用事があるとことりに連絡してだけして、僕はいつもとは違う道を歩き出した。

 

 

 すごいな、UTX。これは、無理かもしれない。というか人が多い。なんで学校の前に生徒以外の人がこんなにいるのだろうか。

 

「──―私たちA-RIZEです」

 

 何? あのでっかいディスプレイ。本当にここ学校? ……あれ? A-RIZEって聞き覚えがある気がする。

 

「なんだっけ? 確か学校で聞いた覚えが……スクールアイドル?」

 

 そうだ、たしか佐々木さんに聞いたんだった。今話題になってるんだっけ? でも、僕の周りでこういうの好きそうな人いなさそうだし……いや、意外に好きな人がいたりして。

 

「でも、A-RIZEかぁ。そんなにすごいのかな?」

 

 無意識に出た言葉はすぐ隣の不審者みたいな格好の人に届いてしまった。マスクにサングラスに長めのコートって……

 

「あんた、A-RIZE知らないの!?」

 

「……あ、あの、どなたでしょう?」

 

 びっくりした。なんだこの人。いや、声と髪型的に女性だとは思うが……

 

「そんなのどうだっていいじゃない。それよりあんた、こんなところでA-RIZEのことを低く言うのはマズイわよ。……ファンに怒られるわ」

 

 どうやら僕の無用心な発言を注意してくれたらしい。……すごい上から目線なのは気になるが、まぁ多分この不審者もファンみたいだし、怒られなかっただけマシか。

 

「す、すみませんっ。……ご親切にありがとうございます」

 

「ふふん、大したことないわ。気をつけなさいよね」

 

「はい」

 

 誇らしげに笑う不審者はまたディスプレイを見始める。僕もそれに習いディスプレイを見る。……すごいな、あの人たち、本当に学生か?  

 

 そんな風に考えていると隣の不審者が話しかけてきた。

 

「ねぇ、あなた」

 

「なんでしょう?」

 

「A-RIZEに興味あるの?」

 

「ええ、まぁ、そうですね」

 

 興味があるというか、今興味が沸いてきたというか……

 

「そう……じゃあ、これあげるわ」

 

 そう言ってポケットから何かの紙を取り出す不審者。僕はそれを受け取る。

 

「これは? ……A-RIZEのライブチケット!? え!? も、貰えませんよ」

 

「布教活動の一環と思ってくれればいいわ、チケット二枚手に入っちゃったし」

 

「え? いや、それでも流石に……せめてお金は払います」

 

「いいわよ、別に。ここで会ったのも何かに縁でしょ」

 

 そう言いながら去っていく不審者。なんかかっこいいな。

 

「あ、ありがとうございます」

 

 僕は不審者の去り際の背中にそう言ったのだった。

 

 

 その後、ついでに今日の晩ご飯の食材でも買ってくかと近くのスーパーに寄ったのだが……

 

「「あ」」

 

 さっきの親切な不審者に再会した。

 

「先ほどはどうも」

 

「そ、そうね」

 

 締まらないなぁ、さっきはあんな感じで別れたのにすぐ再開とか。うーん、気まずい。このまま去ってもいいが、なんか後味悪いし……何かないか、この場を打開できる何かは……

 

「あ、そういえば、サングラスはずしたんですね?」

 

「サングラスを付けてちゃ、食材がちゃんと見えないでしょ!」

 

「成る程、家庭的ですね」

 

「当然よ」

 

 そう言って胸を張る不審者。……背は小さいけど見た目で年齢は分からないし、もしかしたら本当に主婦かも……聞いてみようかな? うまく話題が逸らせるかも。

 

「それで、えーっと……親切で家庭的な不審者さん」

 

「うんうん、親切で家庭的な不審……不審者じゃないわよ!」

 

 うん、今のは少し悪ふざけが過ぎた。でも、しょうがない、名前知らないし。

 

「えーっと、じゃあ……」

 

「にこよ、矢澤にこ……不審者なんて心外だわ」

 

 じゃあ、服装をどうにかした方がいいと思うが……僕がとやかく言えることでもないか。というかさり気なく名前を聞き出せた……狙ったわけではないのだが。

 

「そうですか、それで、えーっと、矢澤さんは一人暮らしでもしてるんですか? それとももうご結婚されてたり……」

 

「結婚!? そんなわけないじゃない!?」

 

「あ、そうなんですか。主婦っぽいこと言ってたのでもうご結婚されてるのかと……」

 

「そもそも私はまだ高二よ! 結婚なんてまだ先だわ」

 

 一つ上だったのか、でもそれにしては台詞が行き遅れて言い訳してる女性っぽいというか……

 

「成る程、じゃあ一人暮らしですか?」

 

「違うわ、親が忙しい時に家事を私がやってるだけ……ってなんでこんなことをあんたに言ってるのかしら」

 

 確かに初対面の人とここまで話せるとは……穂乃果の影響かな。でも矢澤さんは話していて楽しいと思えるのだ。うーん我ながら自分の気持ちが良く分からない。

 

「すみません」

 

「謝られるのは何か違う気もするわね……まぁ、いいわ、別に」

 

「ありがとうございます」

 

「お礼を言われるのも何か違うわね」

 

 矢澤さんはそんなことを言いながら、そういえばと続ける。

 

「あんた、名前は?」

 

「あ、音也、鈴木音也です」

 

「そう、音也ね……あなたこそ一人暮らしなわけ?」

 

「そうですよ?」

 

「へぇ~、そうなの……え? 本当に!?」

 

 そんなに驚くことだろうか? いや、まぁ、最近は僕が一人暮らしだって知ってる人が増えてきたけど、みんな最初は驚いてたっけ。

 

「ええ、まぁ。あの、僕が言うのもあれですけど、買い物いいんですか?」

 

 結構長い間話してる気がする。一応他のお客さんに迷惑にならないようにはしてたつもりだけど……どう考えても迷惑になってる。

 

「え? あっ!」

 

 矢澤さんは完全に忘れていたようだ……

 

「やばい、チビたちが待ってるわ、それじゃ、音也」

 

「はい、さようなら」

 

 矢澤さんは駆け足気味に行ってしまった。チビって……小さい弟か妹がいるのだろうか? それかペット? 

 

「まぁ、いっか」

 

 一期一会とも言うし、矢澤さんとはもう会えないかもしれないし……考えても分からないことを考えるのはやめよう。

 

 そんなことを思っていたにも関わらず案外早くにまた再開することになるのだが……それはまた別の話。 




次回は3月27日21時投稿予定です。

 にこの設定はアニメに寄せました。……漫画のにこの方が個人的には好きです。一応言っときますけど、アニメのにこも好きですよ? にこはアニメと漫画で大分キャラが違いますよね。……漫画版だと普通に友達いますし。

 まぁ、これはにこに限った話ではないですけど、希とか漫画だと副生徒会長ですらないですし……

次回"なんでもない休日の朝"
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