ラブライブ!IF ~少年と少女たちの物語~   作:秋麦沈初

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前回のラブライブIF

 穂乃果父は激怒した。

 ……はい、走れメロスですが? え? 前回のあらすじをちゃんと言えって? たまにはこういうのもいいじゃないですか。

 ……手抜きじゃないですよ?


義理

 今日は二月十四日、所謂バレンタインというチョコレート会社の陰謀の日だ。

 

 さて、去年までは母親にしかもらってなかった。僕はこういうイベントは特に気にしないタイプなので何も感じなかったが、世の中には今日が決戦の日とでも思っているような人々もいる。

 

 さっきはあんな捻くれた言い方をしたが、僕にとってのバレンタインってゲーム内でバレンタインイベントが始まるな~くらいの認識なんだが……それに貰っちゃうと返すのが面倒だなぁとか思う失礼な人間なので、貰えない方がいいと思っていた。朝までは。

 

 そう、思っていたのだが……まぁ、ある意味で予想通りというべきか、結構な量もらってしまった。

 

 

 まずは朝、最近朝は雪穂と行くことが多くなっている。穂乃果たちと行くと微妙に遅刻しそうになるのだ。自転車はとっくの昔に直っているのだが……まぁ、なんとなく歩いている。

 

 というわけで雪穂と歩いていた時、雪穂が話しかけてきた。

 

「音也さん」

 

「何?」

 

「今日はなんの日か、分かりますか?」

 

 衝突な質問に少し混乱しながら答える。

 

「んー、今日って何かあったっけ?」

 

「今日は二月十四日ですよ」

 

「……ああ、チョコレート会社の陰謀ね」

 

 僕の答えに呆れた顔をする雪穂。

 

「なんですか、その夢のない言い方は……まぁ、いいけどね。というわけで、はい音也さん」

 

 そう言って何かを差し出してくる雪穂。それを見て僕は固まってしまう。

 

「……おうふ」

 

「なんですか、その反応。音中も女子校なんで、男性の人って今までお父さんくらいにしかあげてなかったんですけど。まぁ、せっかくですし」

 

 そっぽを向きながらまくし立てる雪穂。そんなに恥ずかしいならくれなくても良かったのに

 

「……そっか」

 

「……嫌でしたか?」

 

 僕の返事に少し不安そうな顔をする雪穂。感情豊かだなぁ。こういう所は穂乃果に似ている。

 

「嫌じゃないんだけど、なんというか、母親以外から貰ったの初めてだからさ……意外に嬉しいものだなぁって」

 

「……そうですか、それなら良かったです。あっ、一応言っておきますけど義理ですよ」

 

「分かってるよ、それくらい。でも、ありがとね。すごく嬉しいよ」

 

 これで本命とか言われたらそれこそ反応に困るし、自分がモテてるなんて性格上思えない。……例え周りがどう思っていようと。

 

「どういたしまして、お兄ちゃん」

 

「……急にそういうこというのやめてくれない?」

 

「音也さんが急に恥ずかしいこと言うからです」

 

 僕なんか言ったっけ? 身に覚えがない。

 

「音也センパーイ」

 

「ダ、ダレカタスケテー」

 

 遠くから聞き覚えのある声がする。そんな声を聞いた雪穂は僕に言ってくる。

 

「それじゃ、私は先に行きますね。どうやら音也先輩にはお客さんが多いようですので」

 

 ただ一つ気になることがある。

 

「まさか今日一日中こんな感じ?」

 

「まぁ、多分そうですね。女子校の生徒の数少ない男性の知り合いですから」

 

 ああ、僕死んだかもなぁ。恨み殺される。

 

「そっか、覚悟しとくよ。後ろから刺される」

 

「大丈夫ですよ、そんな女子はいませんって」

 

 僕の知り合いにそんなメンヘラ女子はいない。いない、はずだ。そっちではなくて……

 

「いや、男の方」

 

「……あー、ドンマイです」

 

 それで察したのか、僕に同情する雪穂。と、すぐ後ろから先ほど聞いた声がした。

 

「音也先輩、と雪穂ちゃん?」

 

 凛と花陽がいつの間にか真後ろにいた。僕は振り向いて挨拶をする。

 

「おはよ、凛、花陽」

 

 そして雪穂は

 

「それじゃ、今度こそ私は行きますね」

 

 と言って二人に会釈だけしてそそくさと行ってしまった。

 

「音也先輩、なんで雪穂ちゃんと一緒なんです?」

 

「ここの所ずっと雪穂と登校してるよ、僕。というか凛と花陽こそどうして? いつも穂乃果たちと一緒なんじゃないの?」

 

「ハァハァ、音也先輩に、ハァハァ、用があったんです」

 

「穂乃果先輩に音也先輩ならこの道を歩いてるだろうって教えてもらったんです」

 

 成る程、それで走ってきたのか。

 

「そっか、まぁ、とりあえず花陽が落ち着くまで待とうか」

 

「しゅ、すみません」

 

 しばらく待って、花陽が落ち着いたのを確認してから僕は二人に聞く。

 

「それで用っていうのは?」

 

「音也先輩にこれをあげる為ですにゃ」

 

「わ、私からもどうぞ」

 

 うん、予想通りというか、チョコだった。これで三個……やばい、僕の顔今赤いかもしれない。

 

「……ありがと」

 

 そうとだけ伝えて僕は逃げるように二人と別れた。というかあれ以上あそこにいたら、恥ずかしくてやばかった。凛の声で周りに音中生が集まってきていたのだ。二人は気付いてなかったみたいだけど……後であの二人は質問攻めだろうな。

 

 

 次は学校だった。学校に着いてすぐにまた数個増えたのだ。

 

 最近席替えしたのだが、相変わらず隣は佐々木さんだ。もうみんなして図っているとしか思えない。

 

「おはよう、音也くん」

 

「おはよう、佐々木さん」

 

 いつも通りに挨拶をする。ただこの次がいつもと違った。

 

「はい、これ」

 

「……まさか佐々木さんからも貰うとは思わなかった」

 

「いらないの?」

 

「……ありがたく頂きます」

 

「最初からそう言えばいいの」

 

 と、そんないつも通りの会話をしてる時、クラスメイトの女子何人かが話しかけてきた。

 

「あ、音也くん、これクラスの女子からね」

 

 どうやら、何人かの女子がクラスの女子全員からという名目で男子全員に配ってるようだ。

 

「あ、ありがとう」

 

「と、言っても音也には他にももらえる人がいるからいらなかったかもね」

 

「そ、そうだね」

 

 実は僕がオトノキの生徒に知り合いがいるのを知ってる人は何人かいるのだ。オトノキに友達がいる女子がその友達に教えてもらったらしい。

 

 

 まぁ、そんな訳で学校でもチョコを貰ってしまった僕は放課後にもチョコを貰うことになる。

 

「おっとやくーん」

 

 穂乃果、海未、ことりと一緒に下校するのもある意味日課になってきた。穂乃果と海未は部活がある日以外は一緒に帰っているし、部活に入っていないことりとはあの日以来、殆ど毎日一緒に帰っている。

 

 で、今日は部活がない日らしく、久々に四人で帰る途中というわけだ。心なしかことりのトサカにも気力があるような……

 

「音也くん? 今失礼なこと考えてなかった?」

 

 ……ことりは僕の心が読めるらしい。

 

「そんなことないよ」

 

「そう? ならいいけど……」

 

「二人ともなんか、仲良くなった?」

 

「私たちが部活の時は殆ど二人で帰っていたそうですし、無理もないですね」

 

 穂乃果と海未がそんな話をしている、だが、一つ否定させてもらう。

 

「二人じゃない時もあるけどね」

 

「え? 誰か他にもいるの? 誰々? 教えて~」

 

 穂乃果が目を輝かせて聞いてくる。そんなに気になるか? 

 

「音也くんのクラスメイトの女の子だよ」

 

 穂乃果の質問にはことりが答えてくれた。

 

「女の子? というか音也くん友達いたんだ」

 

「さりげなく失礼だなぁ。いや、まぁ、分からなくもないけど……穂乃果たちと出逢った後とか年明けてから、いろいろ僕も考えてね、クラスメイトに作っていた壁を崩したんだ。まだ、地元の友達ほどじゃないけど、何人か話せる人はできたよ」

 

「そっかぁ、良かったね音也くん。でも、酷いよ。それならそうと言ってくれればいいのに」

 

 そう言ってぷくーっと頬を膨らませる穂乃果。……可愛い。

 

「……なんて言えばいいの? 友達できたよーとでも言えば良かった? ……無理だよ、恥ずかしい。穂乃果は僕の保護者?」

 

「えー? 違うの?」

 

「違うよ! 友達でs、あっ、うぅ」

 

 しまった。くそ、こういうこと多いなぁ。もう、三人ともめっちゃニヤついてるし……

 

「そうだもんね~、穂乃果たちは音也くんの友達だもんね!」

 

「そうですね」

 

「本当に可愛いなぁ」

 

 ことりはなんか違う気がするけど……

 

「あれ? でも男友達もできたんだよね?」

 

「うん、できたよ」

 

 席が近くて、趣味も似ていたので仲良くなったのだが……全員運動部に入っていて忙しいみたいだ。

 

「でもさっき言ってた子って女の子なんでしょ?」

 

「あっ、うん、佐々木響子さん、席が隣なんだけどね、何を勘違いしてるのかみんなして僕の席と佐々木さんの席を隣同士にしたがるんだ」

 

「勘違いって? あれ、二人が付き合ってるみたいな? 違うの? 私てっきりそういう関係かと思ったんだけど……」

 

 そう、一部のクラスメイトの間では僕と佐々木さんが付き合ってるみたいな勘違いがされてるらしい。

 

「違うよ。だって佐々木さんには他に好きな人がいるからね。ことりも知ってるけど」

 

「そうなの? ことりちゃん」

 

「うん、響子ちゃんから直接聞いたんだ。穂乃果ちゃんと海未ちゃんも知ってる人だよ?」

 

「誰だろう?」

 

 うーん、と唸る穂乃果……まぁ、まず出てこないと思うから答えを言ってしまおう。

 

「お隣の大野さん」

 

「大野さん? ってあの大野さん!? 強面の!?」

 

「あの御仁ですか」

 

 二人とも驚いている。うん、僕もあの時は驚いた。

 

「そう、その大野さん。いやー、佐々木さんがね、一回僕の家を見ておきたいとか言うから、三人で帰ることになったんだけどね」

 

「そうそう、あの時ことりと響子ちゃん初対面だったのに結構仲良くなっちゃって」

 

「そうだったなぁ。それで家に着いた時ちょうど大野さんに会って……」

 

「一目惚れしました、って。さすがにあの大野さんもたじろいでたよ」

 

「あの時は本当に世界の広さを思い知ったよ。世の中には、穂乃果みたいな人もいれば、佐々木さんみたいな人もいるんだなぁって」

 

 不思議な人だと常々思っていたが……佐々木さんは不思議を通り越して変人だと思う。

 

「待って、なんでそこで穂乃果の名前が出てくるの!?」

 

「ふむ、確かにそうですね」

 

「なんで海未ちゃんも納得してるのかな!?」

 

 穂乃果はスルーして話を続ける。

 

「そういう訳で、僕と佐々木さんは付き合ってないよ。かといって、まだ佐々木さんと大野さんも付き合ってないけど。大野さんも満更でもなさそうなんだけど……」

 

「まだ、未成年ですからね。世間体を気にしてるのでしょう」

 

 海未の言うとおり大学生三年生と高校一年生というのは周りからいろいろありそうだ。

 

「その通り、でも佐々木さんすごくてね。私もう十六歳なので法律上は結婚できますって言うんだよ? もうある意味尊敬するよ」

 

「恋は盲目とは言いますが……」

 

「いや、もうあれはそんなのとは違うと思うよ。そうだなぁ、あえて言うなら……狂気?」

 

「それも、違うと思いますよ」

 

 ジト目になり冷静にツッコミを入れてくる海未。

 

「……そうだね、さすがに失礼だった。僕の語彙力じゃあうまく言い表せれないや。でもいつのまにか佐々木響子じゃなくて、大野響子になってるかも……」

 

 でも、取り敢えず、大野さんが就職するか、佐々木さんが高校卒業するまでは変わらないと思うけど……

 

「二人とも穂乃果を無視して会話を進めないで!? なんか私こういう役回り多くない!? ……うわーん、ことりちゃーん」

 

「よしよし」

 

 また、ことりに泣きつく穂乃果……なんか、普段いじられたりするから、こういう時にちょっとした仕返しをしたくなるんだよな。

 

「今度二人にも佐々木さん、紹介するよ」

 

「はい、お願いしますね」

 

 多分、穂乃果も海未も佐々木さんにいじられるようになるだろうけど……そんなことを考えてると穂乃果が復活した。

 

「あ、そうだ、音也くん、渡すものがあったんだ。えーっと……あった、はい、チョコ」

 

「あ、ことりからも」

 

「私からもどうぞ」

 

 ……女の子三人からチョコを同時に貰うなんて……妬み殺される。けど、すごい嬉しい。

 

「あ、うん、ありがとう……う、嬉しいよ!」

 

「あー、照れてるの? 音也くん」

 

「顔が赤いよ?」

 

 穂乃果とことりが満面の笑みでそんなことを言う。そんなに顔赤いのか、僕。

 

「こら、穂乃果もことりも、あまり音也をからかってはなりません」

 

 海未は僕の味方をしてくれている。

 

「大丈夫だよ、海未。もう慣れたから……」

 

 そんな風な会話をしながら僕たちは家に帰った。

 

 

 最後は家だった。 

 

 ──―ピンポーン

 

 誰か来たみたいだ。

 

「はーい、どちらさまでしょう」

 

 そう言いながら玄関を開けると美女二人が立っていた。

 

「こんにちは、音也」

 

「お久しぶりやね、音也くん」

 

「絵里……それに希も。どうしたの?」

 

 というか、希はうちに来たのは初めてだよな? 二人とも制服を着てるから下校途中で寄ったのかな? 

 

「音也? 今日はなんの日だったかしら?」

 

「……まさか」

 

「はい、音也くん」

 

 差し出されたラッピングされた二つの箱。

 

「チョコ?」

 

「ご名答」

 

 まさか、この二人からも貰うとは……

 

「というか、希も?」

 

「ウチがあげちゃいかんかった?」

 

「い、いや、嬉しいんだけど……だって何ヶ月ぶり?」

 

 実は初めて逢った時から希とは会っていなかったのだ。つまり、希と会うのはこれで二回目、ということになる。

 

「いやー、ウチも別に渡すつもりはなかったんやけど、エリチが楽しそうに準備してるのを見てな。まぁ、なんとなく」

 

「べ、別に、楽しそうにはしていなかったでしょ! 今まで貰ってばっかりだったから、あげるのが少し新鮮だっただけよ」

 

 貰ってばっかりって……やっぱり女子高ってそういうのあるのか。

 

「あー、絵里は同姓からもモテそうだよね」

 

「え、ええ、本命ですって渡されて断るのにすごい心苦しいから、この日は少し苦手だったのよね」

 

「とか言って、チョコいっぱい貰えて喜んでたのはどこの誰だったかなぁ?」

 

「だから、何度も言ってるでしょ。私は告白されたことに喜んでたんじゃなくて、チョコが好きだから喜んでたのよ」

 

 へー、絵里はチョコが好きなのか。でも……苦手だったって……なんか心変わりでもあったのかな? まぁ、それはいいや。もう日も沈んで暗いし、女の子をあまり遅い時間まで引き止めるのはよくない。

 

「二人とも本当にありがとね」

 

「あ、一応言っておくけど……義理よ?」

 

 絵里の冗談めかしてそんなことを言う。さっきも言われた気がするな、それ。

 

「分かってるよ、それでも嬉しいものは嬉しいよ」

 

「でも、ウチは本命や」

 

「え?」

 

 真面目な顔でそう言う希に僕は焦る。

 

「……冗談や」

 

「心臓に悪い冗談はやめて、お願いだから」

 

 が、すぐに悪戯が成功したような顔になって冗談だと言う。希には当分勝てそうにない。

 

 

 その後は、ちょっとした世間話をして二人は帰っていった。そして最初の場面に戻るというわけだ。

 

「結局、個人から十個も貰ちゃったのか……」

 

 しかも、市販の物が意外に少ないのが驚きだ。すごい嬉しいけど……ただ……

 

「これ、返すの大変だなぁ……はぁ」

 

 一ヶ月って結構早いし考えておかないと……皆ならそんなに気にしない気もするが。あー、でも、人生初の同年代の女子からのチョコ……僕の顔今ニヤけてるかも……我ながら気持ち悪いな。

 

 その日は少し興奮してなかなか寝付けなかったとだけ、付け加えておく。




次回"受けた義理は返す主義"4月4日投稿予定。 ……これまた季節はずれのホワイトデー回です。

 本当はバレンタイン当日にこの話を投稿しようか迷ったのですが、話の流れと投稿期間的に無理でした。

 今回の話、年齢=彼女いない歴の私にとって難易度の高いものでした。いや、本当にこの話が結局ハーレム系にありがちな感じになったのは、そもそも私が気持ち悪い系オタクに分類される人種なので……こういう妄想を書き連ねたものしか書けないのです。

 ええ、まぁ、自虐もそこそこに……一つ報告を。大学が始まったのですが、かのウイルスが原因で授業開始が遅くなりました。それで、来週から周1投稿に戻そうかと思っていたのですが、もう少し周3で投稿します。
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