ラブライブ!IF ~少年と少女たちの物語~   作:秋麦沈初

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前回のラブライブIF

 音也がいろんな女の子にチョコを貰った。……羨ましい。

 え? 前回からこのコーナーが適当すぎるって? はははっ……本家のこのコーナーって誰かの語りなんですよね。ということで作者の語りでやろうとしたらこうなった訳ですよ。

 えー、まぁ、それは建前で結局面倒になっただけですけど……次回のこのコーナーもこんな感じになりそうかなぁ。


受けた義理は返す主義

 明日は三月十四日。ホワイトデーだ。バレンタインではたくさん貰ったからその分返さなきゃならない。ということで、色々準備した。

 

 と言っても、クッキーを手作りしてみただけだが。いやー、人生で初めてクッキーを作ったよ。そもそもお菓子作りなんて僕一人だとやろうとも思わないし。あ、クッキーはそこそこいい出来だ。まぁ大野さんに手伝ってもらったから。実は大野さんお菓子作りが趣味なのだ。本当、あの見た目でお菓子作りって……

 

 まぁ、いいや。とりあえず返す人は……

 

「穂乃果、海未、ことり、絵里、希、花陽、凛、雪穂、穂乃果母、佐々木さんに青木さん……」

 

 こう挙げてみると、多いな。まぁ、多めに作ったしなんとか分けるか。そう考えながらクッキーを透明な袋に小分けにしていく。

 

「ああ、そういえばクラスの女子からっていう名目で貰ったな。一応その分も……足りないなぁ。今から焼くかなぁ……材料余ってたよね?」

 

 面倒臭いなぁ、でも一応受けた義理は返さなきゃなぁ。

 

「はぁ、今日は遅くなるかなぁ?」

 

 そう呟きながら、キッチンに向かうのだった。

 

 

 翌日の朝、大量のクッキー入った袋をいつも使ってる鞄とは別の鞄に入れて高坂家に向かう、クッキーが割れないように注意しながら。面倒なので、穂乃果と雪穂には朝配ってしまおうという算段だ。

 

 いつも通りに朝ご飯を頂いていつも通り穂乃果が先に出て行こうとするので、それを止めてクッキーを渡してしまう。

 

「はい、これバレンタインのお返し」

 

「クッキー? ありがとう!」

 

「後、雪穂にも」

 

「ありがとう音也さん」

 

 うん、二人とも喜んでくれたようで何よりだ。

 

「律儀だねぇ、ねぇ?」

 

「……」

 

 穂乃果祖母の意味ありげな問いかけに顔を逸らす穂乃果父、どうしたんだろ? 

 

「お父さん、返すことがあんまりなくて……」

 

 雪穂がその疑問に答えてくれる。

 

「ああ、そういう……そ、その分大黒柱として頑張ってるじゃないですか!」

 

 なんか可愛そうなのでフォローを入れるが、穂乃果が首を振る。

 

「変な慰めはいらないよ、音也くん。お父さん気付いても毎回、家の和菓子で済まそうとするんだから」

 

「そうそう、一回くらいはまともに返して欲しいよね」

 

 雪穂も穂乃果に便乗してうんうん頷いている。

 

「……」

 

「そ、そうですか」

 

 こういう時男は肩身が狭いなぁと感じるのだった。

 

 そして、学校には穂乃果と一緒に行く。というか花陽と凛にクッキーを渡すために穂乃果について行った。

 

 

「穂乃果センパーイ……と音也先輩?」

 

「ダレカタスケテー」

 

 走りながらこちらに近づいてくる凛とその凛に引きずられている花陽。

 

「おはよう、二人とも」

 

「なんで音也先輩が?」

 

 僕がいることに疑問を持つ凛。花陽はまだ肩で息をしている。

 

「二人にこれを渡す為、はいこの前のバレンタインのお返し」

 

 そう言いながら、クッキーを渡す。

 

「わーありがとうございますにゃ、音也先輩」

 

「あ、ありがとう、ございます」

 

 二人とも喜んでくれているようだ、多分。と腕時計を確認するともうこんな時間だ。

 

「うん、それじゃ、ごめん、僕急ぐから」

 

 そう言って穂乃果たちと別れてからは走って学校に向かう。朝の内に配ってしまう方が楽だと思ったからだ。

 

 

 学校に着いてまず始めに佐々木さんに渡す。

 

「おはよう、佐々木さん」

 

「おはよう、音也くん」

 

 まぁ、いつも通りの挨拶。が今日は僕の方がいつも通りじゃなかった。

 

「はい、これ。この前のバレンタインのお返し」

 

「クッキー?」

 

「そう、初めて作ったから出来はあんまり良くないけど……」

 

「そう、ありがとう……その鞄の中全部クッキー?」

 

 佐々木さんは僕がいつも持ってる鞄とは違う鞄をもう一つ持ってることに気づき、そんな風に聞いてくる。

 

「うん、一応クラスの女子全員に配ろうと思って……」

 

「なんで?」

 

「あの日、クラスの女子全員からって名目でチョコ貰ったからね」

 

「……ああ、あのクラスの男子全員に配ってたやつね」

 

 佐々木さんは少し考え込んだ後、思い出したかのように言う。

 

「そう、それ」

 

「そうなの、相変わらず変なところでクソ真面目ね。知ってたけど」

 

「……佐々木さんのたまに吐く毒も相変わらずだね。ということで、配ってくるよ」

 

 で、クラスの女子全員にクッキーを一枚ずつ配っていった。というか正直僕一人で女子のグループに入って行く勇気とかはないから、最近仲良くなった男子四人、山本君と小田君と木村君と河西君に事情を説明してクラスの男子からという名目で女子全員に配った。

 

 ちなみにこのクラスは男子十三人と女子十七人の計三十人のクラスである。つまり何が言いたいかというと、女子全員に配る方が男子全員に配るより大変であり、面倒だということだ。当然口には出さないが。

 

 で配った時の反応は大体が、音也くんって料理出来たの!? だった。まぁ、一人暮らしだってことを知ってるのは佐々木さんとさっき言った四人くらいなものだ。なぜかその他にも知ってる女子がいたが、まぁ、誰かから聞いたのだろう。

 

 この四人とは席が近かったことと趣味が似ていたことから仲良くなった。ただみんな運動部に入っていて、放課後や休日は忙しいらしい。だから、まだ、一緒に遊びに行ったりということはない。

 

 話を戻すと、これを機にクラスの全員が僕が一人暮らししていることを知ることとなり、転校生顔まけの質問攻めになった。

 

「大変だった」

 

 HRが始まる時間になりみんなが席に戻ったことで僕は一息つく。

 

「よかったじゃん。一躍クラスの人気者だよ?」

 

「時期を考えようか、佐々木さん。もう一年生も終わりだよ。クラス変わっちゃうから……それに僕がそんなキャラじゃないの知ってるでしょ」

 

「知ってる、冗談だよ?」

 

 佐々木さんの冗談は冗談に聞こえない。

 

 

 本日最後の授業が終わり、すぐに帰る支度をする。この時期はもう早めにに学校が終わる、所謂短縮日課になる。

 

「今何時? 早く行かなきゃ」

 

「うーん? 何かあるの」

 

 佐々木さんは僕の急いだ様子が気になったのか、何かあるかと聞いてくる。まぁ、確かに最近は学校が終わってすぐに帰ることが少なくなっていたのでここまで急ぐのは珍しいかもしれない。

 

「まだバレンタインのお返ししなきゃいけない人がいて……」

 

 実はオトノキの方も短縮日課らしいのだが、あっちの方が少し早めに学校が終わるようなのだ。今日は自分で言うのもなんだが珍しく僕の方から一緒に帰ろう、と誘ったので待たせるわけにもいかない。

 

「へぇ、モテモテだね。音也くん」

 

 佐々木さんは相変わらず感情の乏しい表情でそんなことを言う。

 

「からかわないでよ、佐々木さん。……それじゃ、また明日ね」

 

「またねー」

 

 ちなみにこの会話はクラス全員になぜか聞かれていてこの後佐々木さんは質問責めにあったという。

 

 

 取り敢えず、帰りに海未とことりに渡そうと思ってる。で、案外早く着いて僕は穂乃果たちを待っている。どこで待ってるかって? オトノキの前だよ。

 

 実はオトノキは僕のいつも登下校で使っている道を一回だけ曲がった先にあるのだ。だからいつもはそこで穂乃果たちと合流するのだが……道の真ん中で立ってる怪しいやつと思われるのも嫌だから、オトノキの方へゆくっり歩くのだ。で、今回はいつの間にかオトノキの前に着いた、というわけだ。

 

「音也くーん、お待たせー」

 

 穂乃果の声だ。

 

「ううん、そんなに待ってないよ」

 

「カップルみたいな会話ね」

 

「あれ? 絵里も今日は一緒?」

 

 穂乃果の後ろには海未、ことりの他に絵里もいた。

 

「ええ、この時期は生徒会はあまり活動できないの。部活と違って」

 

「あー、成績つけるからみたいなね」

 

「そういうこと」

 

 オトノキも今日は短縮日課だったのは事前に知っていたが、成る程こういう展開もあるのか。

 

「あ、そうだ。海未とことりと絵里に……これ。穂乃果には朝渡しちゃったから」

 

「これは……クッキーですか」

 

「うん、バレンタインのお返しだって」

 

「なぜ穂乃果が答える……」

 

「成る程、穂乃果が休み時間に食べていたのはこれだったのですね」

 

 海未は納得したように頷く。

 

「あ、もう食べてくれたんだ。どうだった?」

 

「おいしかったよ?」

 

「そっか。初めて作ったからあんまり自信なかったんだけど……」

 

「……あら、普通においしいわよ?」

 

 絵里はいつの間にか食べてる。海未とことりも袋を開けて食べている。

 

「ありがと、でもやっぱりちょっとね……」

 

「嫌味に聞こえるわよ?」

 

「だって、お菓子作りならもっとできる人がすぐ近くにいるからね……」

 

 そう言いながら、ことりを見る。

 

「ふぇ?」

 

 ことりはクッキーを食べながら首を傾げている。その仕草が可愛すぎたので思わず顔をそらす。

 

「成る程、ことりの作るお菓子はおいしいですからね」

 

 海未はこちらの話を聞いていたのか、そんな風に頷く。誰も僕の少し動揺した様子には気づいてないよう……なんか視線を感じる。気になってそちらを見ると、穂乃果がこちらを……正確にはこちらのクッキーの入っていた鞄を見ていた。

 

「どうしたの? 穂乃果。さっきから黙って……あ、食べたいの、クッキー。いいよ、まだ余ってるから」

 

 穂乃果に聞いてる途中に穂乃果はクッキーが食べたいのでは? と予想した。昨日結局作りすぎてしまったのでクッキーはまだ余っている。

 

「本当!?」

 

「うん……はい」

 

 穂乃果の目を輝かしている様子を見ると予想は間違ってなかったようだ。というか……なんか尻尾が見える。気のせいだろうか? まぁ、こんなことを言うとややこしいことになりそうなので、この考えは胸の奥にしまっておこう。

 

 そんな感じで雑談しながら僕たちは家に帰った。

 

 

 家に帰ってから着替えて、僕は神田明神に来た。

 

「やっぱり希はここにいた」

 

 そして、そこの境内で巫女姿の希を見つけた。実は先ほど絵里に、希はここにいるだろう、と聞いたのだ。

 

「あれ、音也くん。どうしたん?」

 

「ううん、バレンタインのお返しに来ただけ……はい、これ」

 

「律儀やね、でも、ありがとう」

 

 希にクッキーを差し出す。だが希の両手には箒……そうだ! 袋からクッキーを取り出す。

 

「? 音──―」

 

 希が何か言おうとする前にクッキーを希の口に放り込む。希は目を丸くして驚き、その後顔を少し赤くしながらクッキーを食べている。

 

「どう?」

 

「ん、おいし……って何するの!」

 

 話し方が標準語に戻る希。前にエセ関西弁っぽいと考えたことがあったが……やっぱりわざとあんな話し方をしてたのか? 

 

「いや、箒持ってたから……」

 

「置けばよかったやん!」

 

 あ、話し方戻った。うん、でも、まぁ、それは知ってた。ただ……

 

「ちょっとした仕返しだよ」

 

 毎回いじられてばっかりだから、たまには仕返しをしたかったのだ。そんな僕の答えを聞いて希は下を向いてわなわな震えている。あ、これダメなやつだ。

 

「音也くん、覚悟は出来てるんやろな?」

 

「出来てないです、なので逃げます」

 

「あ、ちょっと──―」

 

 後ろから希の声が聞こえるが気にせず、走って逃げる。クッキーの残りは希の足元に置いてきた。あー、次会う時に怒れそうだな。

 

 

 家に帰ってきた。これで今日のノルマは達成したな。そう考えながら家でゆっくりしていると……

 

 ──―ピンポーン

 

「誰だろう?」

 

 そう思いながら玄関を開けると……

 

「音也くん、さっきぶりやな?」

 

 紫の悪魔がいた。

 

「すみませんでした!」

 

 取り敢えず謝る。僕はこれ以降希をいじるのは程々にしておこうと決めた。……これで懲りない僕は案外Sなのかもしれないと自分で思った。




次回"春休みの勉強会"4月5日投稿予定。一応第一章最後の予定です。

 環境が一気に変わって疲れがどっと来ました。そんな中で書いたので、なんかおかしい所があるかもしれませんが……気づいたら教えてくれると幸いです。

 まぁ、今回の話に限らず処女作なので今までの話にもいろいろおかしい所はあると思いますが……言い訳ですね。

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