新学期に突入して最初の登校日、頑張ったけどオトノキに入学した人数は一クラス分だけ。
そんな日に音也くんと一緒に帰ったんだけど……
「……今から、アキバに行かない?」
「UTXを見に行くの」
そう言って私を強引にUTXまで連れて行っちゃう。
今までUTXを直接見たことなかった私はびっくり。
「おっきい~、これ本当に学校なの?」
それで、音也くんってば、またもや強引に……
「実は今日、A-RIZEが新入生歓迎ライブをするらしいんだ。一般公開されるけどね」
「というわけで行こうか」
そんな訳でA-RIZEのライブを見た私はすっかりスクールアイドルの虜、音也くんは最初からこれを狙ってたみたい。
「……決めたよ、私。スクールアイドルやる、やるったらやる!」
そうして、スクールアイドルをやることに決めた私、まずは海未ちゃんとことりちゃんに話さないと。
スクールアイドル
「海未ちゃん! ことりちゃん! スクールアイドルやらない?」
放課後、授業が終わってすぐに穂乃果は、海未とことりにそう言った。穂乃果の急な言葉に当然二人とも頭にクエッションマークを浮かべる。
「スクール?」
「アイドル?」
二人の反応は予想済みだった穂乃果は昨日から考えていた理由を説明する。
「そう、スクールアイドル。今人気沸騰中のスクールアイドルをこの学校でもやれば人気出て入学希望者増えるんじゃないかな?」
スクールアイドルをやると決めてから、穂乃果は自分でいろいろ調べていたのだ。そんな穂乃果の言葉に最初に反応したのは意外にも海未だった。
「……まぁ、それは確かにそうですけど。私たちにスクールアイドルなんてできませんよ」
「あれ? 知ってたの? スクールアイドル」
「え? あっ! そ、それよりことりはどう思いますか?」
明らかに動揺して話を逸らそうとする海未。何か怪しいと思いつつも穂乃果はことりの方を向く。ことりは頬に手を添えてしばらく考えた後、こう言った。
「スクールアイドルかぁ、なんか面白そうかも」
なんともことりらしい。海未はそんなことりに何か言いたそうな顔をする。
「ちょっと、ことり」
「そうだよ、ことりちゃん。いろんな衣装作り放題着放題」
穂乃果の言葉にことりは妄想の世界へ入る。……女の子がしちゃいけないような顔をしながら。
「作り放題着放題……じゅるり」
「よ、よし、これでことりちゃんは堕ちたよ。後は海未ちゃんだけ」
海未はしばらく黙っていた後真面目な顔になって言った。
「……部活はどうするんですか」
「うっ、そ、それは……」
たじろぐ穂乃果に海未が更に追撃をかける。
「まさか、退部するとか言い出すんじゃないでしょうね?」
「……」
何も言えなくなる穂乃果。穂乃果には穂乃果なりの葛藤があったのだろう。だが、そんな穂乃果の気持ちを知ってか知らずか、海未は更に続ける。
「所詮、あなたにとってはその程度だったということですか」
悲しげに言う海未に穂乃果が反論する。
「ち、違うんだよ、海未ちゃん」
しかし海未は聞く耳持たず、声を荒げ悲痛な思いを叫ぶ。
「何が違うと言うのです! もういいです。退部でもなんでも勝手にしてください」
「う、海未ちゃん……」
「どちらにしろ、私はスクールアイドルなんてやりませんよ」
そのまま海未は一人で部活に行ってしまった。ことりの方も海未ちゃんを見てくるね、と行ってしまった。
「……ってことがあって、どうすれば海未ちゃんもやってくれると思う?」
「うん、海未とことりのモノマネや途中のナレーションっぽい何かはともかくとして、海未の言い分も分かるよ、僕には」
海未が実際どんな気持ちだったかは分からないが、ある程度予想はつく。あんなに一緒に頑張ってきたものをスパッとやめれるような性格ではないということだと思う。
「ええー、音也くんは協力してくれないのー?」
穂乃果不満そうに頰を膨らます。……可愛いだけだ。ちなみに、穂乃果は部活は? と聞いたら、サボっちゃった。と言われた。まぁ、海未とそんなことがあった後じゃ、確かに顔合わせにくいかも。
「協力はするよ? 僕が嗾しかけたみたいなものだし。でもね、やりたいって言ってる穂乃果ならともかく、やりたくないって言ってる人に僕は強制できないなー。無責任かもしれないけどね」
そう、僕が嗾けたようなものだが、あくまで最後は穂乃果自身がどうしたいか、本人に判断を委ねた。
僕は何事もやらされるより、自らやる方がいいと思うのだ。……言い訳に聞こえるかもしれないが。
「むー、音也くんのケチ。最近、音也くんが意地悪な気がする」
僕の返答に穂乃果が本格的に拗ね始めてしまう。……そういう反応されると僕が折れざるを得ないんだよな。
「そうかなぁ? でもまぁ、そうだね。僕の方からも海未と話してみるよ」
「本当!?」
急に笑顔になる穂乃果。相変わらず起伏が激しいな。
「うん、もしかしたら海未に嫌われるかもしれないけど……」
海未の説得する言葉はある程度思いついてるが、それは海未を傷つけるかもしれない。僕はそんなに頭が良くないから、他に言葉が思いつかないのだ。
僕だけが悪者になったって別にいい。自己犠牲っていうのは僕の性質そのままだと思う。ただ、海未を傷つけるとなると気が乗らない。
「何を言う気!?」
穂乃果は僕の言葉に戸惑った反応をする。
「んー、ちょっとね」
僕がはぐらかした返事をすると、穂乃果は驚いた顔をしながらこんな風に言ってきた。
「……音也くん、本当に変わったよね」
「そうかな? うーん、変わったんだとしたら、それは穂乃果たちのおかげだよ?」
「そうなの?」
穂乃果はキョトンとする。まぁ、確かに穂乃果たちに自覚はないと思う。彼女らはあくまで厚意で行動しているのだから。
「うん、穂乃果たちと出逢ってからいろいろあったからね。少なくとも僕の行動原理にはほとんど穂乃果たちが絡んでるよ」
「そっかぁ、なんかごめんね」
「なんで謝るの? 僕はね、感謝してるんだ」
「え?」
「言ったでしょ? こっちに来て穂乃果たちと出逢ってからこっちでも友達ができるようになったんだ」
「……」
なぜか悲しそうな顔をする穂乃果。どうしたんだ? まぁ、いいや。
「というわけで、海未と話してみるよ」
「……うん、お願い」
いや、本当にどうしたんだ? さっきは気にしなかったけど……直接聞いてみるか?
「どうしたの?」
「なんでもないよ」
これは答えてくれそうにないかな。でも、僕に心当たりはないし……
「そっか、じゃあ家に着いたし、また明日ね」
「……うん、またね」
結局家の前でそのまま別れた。穂乃果のあの様子は気になるけど……考えても分からないし、取り敢えず海未のことを考えることにした。
家に帰り制服から部屋着に着替える。
「さて、海未に電話してみよう」
そう思ってスマホを持った時……
──―ピンポーン
「誰だろ? ……まさか、海未とか? って、そんなわけないよね」
これで海未だったらすごい御都合主義だなぁ、そう思いながら玄関を開ける。
「あの、すみません、音也? 相談に乗ってもらってもよろしいですか?」
御都合主義は存在した。……落ち着け、大丈夫。ただ電話する手間が省けただけ。……よし、冷静に返そう。
「……うん、いいよ。多分スクールアイドルのことでしょ?」
「な、なんでそれを……って穂乃果から聞いたんですね。ええ、その通りです」
海未は驚いた顔をした後一人納得するように頷く。こういう所を見ると海未も海未で感情表現豊かだよなと思う。
「まぁ、とりあえず入って?」
「ええ、お邪魔します」
海未を中に入れ炬燵に座らせる。炬燵布団はもう閉まったからただの机と化してるが……
お茶菓子を用意して僕も座る。海未は遠慮したが、まぁ、前も言った通りお客様が来たらお茶菓子を出すのは我が家の礼儀だ。
「で、冷静になって考えたらどうだったの?」
座ってから僕はまず、そう聞いた。
「……音也は人の考えが読めるのですか?」
「いや、今回の状況と海未の性格的にどうせ、後々一人で考えて後悔してるんじゃないかなぁって思っただけだよ?」
「……そうですか」
その反応は図星かな? しばらくの沈黙……海未がまだ話せないなら、とりあえず僕が好き勝手言わせてもらおう。
「それで、海未はどうしたいの?」
「え?」
「結局この問題はね、穂乃果の隣にいるか穂乃果の後ろにいるか、そういう問題だと僕は思うんだ」
「……」
「穂乃果はさ、一人でどんどん先に行っちゃうから、最後にはみんなついてこれなくて一人になっちゃうんじゃないかなって僕は考えたことがあるんだ」
そう、それは僕が穂乃果たちと初めて出逢ってから少し経った時だったか、僕はそんなことを考えたことがある。思えば僕が穂乃果に協力しようと考え出したのもその辺りだったはずだ。
「……それ、は」
「あるでしょ? 思い当たる節がいくつか? 僕よりずっと長いんだもん、穂乃果と一緒にいる時間は」
きっと海未にもあるはずだ、そんな経験が。誰かが言っていた、一を二にするのは簡単だが、零を一にするのは難しい、と。穂乃果はそれができるタイプの人間だ。だが日本人というのは、変わらない、調和を乱さないことを第一としてる人種だと僕は思っている。さて、穂乃果が何かを始めたとして一緒に何かをしてくれる人がどれだけいるか……
「……」
「でも、穂乃果の周りは優しい人が多いからね。海未も含めて」
「え?」
「僕の私的な意見だけどね、穂乃果みたいな人って、嫌いな人も結構いると思うよ?」
「そんなわけ──―」
「クラスに一人はいたりするんだけどね、ほら所謂構ってちゃんに近い部分があると思うんだよね、穂乃果って。で、そういうのを嫌う人って意外にいるんだよね、少なくとも僕の周りには何人かいた」
穂乃果のあの性格は多くの人を惹きつける魅惑的な性格であるとともに多くの妬みも惹きつける不幸な性格でもある。完全に構ってちゃんとは言い切れないにしても、穂乃果は恐らく近くに他人がいないと耐えられないタイプの人間だと思ってる。……違うかもしれないが。
「……」
「もう、こんなの人の好みの問題だけどさ」
「……何が言いたいんです?」
海未は少し怒気を含みながら僕に聞く。本当に穂乃果が好きだな、海未は。
「ごめん、回りくどかったね、要するに穂乃果はね、周りの人たちの協力があって初めて穂乃果でいられるんじゃないかな?」
「どういうことですか?」
「……やっぱり分からないかぁ、うーん、言葉にするのは大変だなぁ」
僕の言葉に先程までの怒気は消え、吹き出す海未。
「……なんですか、それ」
「よし、ちょっと話の方向を変えようか。海未、君はどうしたい?」
やっぱり僕はこういうの苦手だ。最後はその人自身の判断に任せる。じゃあ、なんであんな話をしたかって? なんとなく、だ。……今までの会話である程度海未の緊張も解けただろう。
「え?」
「海未は穂乃果にスクールアイドルの話をされてから今まで何を考えたの?」
「それは……ええと、最初穂乃果から誘われた時は、部活を辞める話を聞いて、その裏切られた気持ちになって……」
「裏切られた?」
「……はい、そんなに簡単に剣道を辞めるなんて、今まで本気で剣道をやってこなかったんじゃないかって……そう思うと、私が今までやってきたことってなんだったんだろう? って」
「それで、穂乃果が裏切ったように感じた、と?」
成る程、やっぱりそんな感じだったか。穂乃果が急に剣道をやめてスクールアイドルを始めると言い出した。それを海未は今まで一緒に頑張ってきた努力……思い出まで簡単に捨てられたように感じられた、だから、裏切られた、か。だが、穂乃果はそんな気持ちで言ったわけじゃない。それは海未も分かっていたようだ。
「ええ、その時はそんなことを考えたんです。でも後から考えると、これって被害妄想も甚だしいですよね」
「うーん、まぁ、僕がどうこう言える話じゃないけど、個人的に見れば結構理不尽な怒られ方してるよね、穂乃果」
つまり、もっとしっかり話しておけばこんな風にはならなかったと思うのだが……まぁ、人の心は複雑怪奇ってやつだ。そう簡単にはいかないだろう。何事も気持ちの整理とは大事だ。
「そうですよね、それで穂乃果が何を考えてスクールアイドルをやろうって言ったか考えてみたんです」
「ふむ」
「穂乃果はただやりたいからやるんです」
「そうだね」
そう、穂乃果は自分のやりたいことに一直線だ。今回だってそう。スクールアイドルに憧れ、やりたいからやると言い出した。
「そう考えると、なんかいろいろ考えてたことが馬鹿らしくなってきて」
「なんで?」
「穂乃果は本気だったんです、剣道だって今回だって……」
確かに穂乃果は悪い言い方をすれば浮気性だ。だがそれは、一つの事に一生懸命だと言い換えることもできる。穂乃果はスクールアイドルの為に剣道を疎かにしようとした訳じゃない、スクールアイドルも剣道も穂乃果にとっては本気でやりたいことだったんだ。
「そうか……それで海未が納得したんだったらいいんじゃない?」
海未はすでに自分で答えを見つけていた。ならばなぜ、僕の元に来たんだ? その疑問には海未自身が答えてくれた。
「ええ、それで、その……ど、どうやって穂乃果と仲直りしましょうか?」
「ああ、そういうことね~。いいじゃん、スクールアイドルやっぱり一緒にやるって言ってあげれば穂乃果喜ぶと思うよ?」
成る程、本題はそれだった訳か。……今までの会話いらなかった? いや、まぁ、無駄ではなかったか。というかそこまで穂乃果のことを考えてるんだったら、一緒にスクールアイドルやってあげればいいのに。
「ええっ!? いや、スクールアイドルはちょっと……」
だが、海未はスクールアイドルをやることに難色を示している。なぜだ?
「……そういえばさ、穂乃果に聞いた時気になったんだけど……海未、スクールアイドル知ってたの?」
「え、えっと、それは……」
言いにくそうに顔を逸らす海未、何か事情があるのだろうか?
「別に嫌なら言わなくていいけど……」
「……ちょっと憧れてて」
「ふーん、そうなんだ……ほぇ?」
海未の意外すぎる答えに思わず気の抜けた声を出してしまう。だって、海未が……あの海未が憧れてるって……
「なんですか、その反応! 悪いですか!?」
「いや、ううん、そんなことはないけど……じゃあ、余計になんでやらないの?」
海未は僕の反応を見て顔を赤くして声を荒げる。冷静じゃない海未とは反対に僕は冷静に言葉を切り返す。
「は、恥ずかしいじゃないですか!?」
「……それだけ?」
「そ、それだけです」
「そうやって穂乃果たちに言った……ああ、言いたくないから、別の言い訳を考えようとしたら部活のことが浮かんで連鎖的にこんな面倒なことになったわけね」
海未の理由は至って単純であり、そんな海未のプライドが邪魔をしてここまで大事になったのか。
「うう、その通りです」
海未も認めているし……下手したらこのまま絶交なんてことも有り得たのに……まったく。
「……取り敢えずさ、明日もう一回穂乃果としっかり話してみたら?」
「え?」
「大丈夫、なんとかなるよ」
「そう、でしょうか?」
「うん、僕がこんなこと言って海未が安心できるか分からないけど……穂乃果と海未の仲だもん」
二人ならしっかり話せばなんとかなるはずだ。……良い仲介役もいるし。
「……いえ、ありがとうございます。少し気持ちが楽になりました」
「そっか、それなら良かったよ。ごめんね、大したアドバイスもできなくて」
その後、すっかり暗くなった外を海未一人で歩かせる訳にもいかず、家まで送っていって、海未の親にいろいろ問い詰められたのは言うまでもない。
──―ピンポーン
次の日の放課後、家でゆっくりしているとチャイムが鳴った。玄関を開けると穂乃果、海未、ことりが立っていた。
「音也くーん」
「穂乃果? それに海未とことりも……どうしたの?」
「音也くん、私たち三人でスクールアイドルやることにしたよ」
話はうまく、まとまったようだ。良かった、穂乃果と海未が絶交とかにならなくて。
「……そっか、頑張ってね。僕も協力はするから」
「うん、ありがとう、音也くん」
「僕は感謝されるようなことはしてないよ? スクールアイドルを勧めたのは別に案が思い浮かばなかったからで……」
僕の言葉に首を振る穂乃果、どうしたんだ?
「ううん、そうじゃないの」
「え?」
「スクールアイドルは私がやりたいからやるの。そうじゃなくてね、音也くんと会えて良かったって話。私たちの友達になってくれてありがとね、音也くん」
「……な、何急に。泣かせに来てるの?」
穂乃果の不意打ちに思わず僕は顔を逸らす。穂乃果も穂乃果で気恥ずかしかったのか少しはにかむ様な笑顔でこちらを見ている。
「えへへー、なんとなく言いたくなっちゃって」
「っ……バカ」
「えー!? なんでー!?」
穂乃果には本当に敵わないな、でもそんな穂乃果だからこそ僕は穂乃果を……
一方その頃……
「ねぇ、海未ちゃん」
「なんですか? ことり」
「あれ男女逆に見えない?」
「……まぁ、確かに」
「だよね?」
こんな会話が二人の間であったとかなかったとか。……その後はスクールアイドル結成祝いでちょっとしたパーティーをしたのだが、それはまた別の話。
次回"グループの名前は?"4月12日21時投稿予定。
昨日は短かったけど、今回は長めです。これで均衡がとれました……冗談です。なぜ海未が主題の話はこう長くなるのでしょうか?
あ、前回のラブライブIFをアニメっぽくしてみたんですけど……やっぱりこれを小説でやろうとすると大変ですね。
そもそも個人的には、アニメで言うところの五分くらいを一話としてえ投稿してる感覚ですから、どうしても前回のあらすじがそこまで言うことがないというか……はい、言い訳はいらないですね。