春休みになってみんなで勉強会をすることにした私たち、でも……
「終わった」
「どうせ、また穂乃果が無理やり始めたことでしょう?」
「穂乃果?あんまり音也に迷惑かけちゃダメよ?」
音也訓くんはもう宿題終わったって言うし、海未ちゃんと絵里ちゃんには注意されるしでもう散々!
勉強は音也くんに教えてもらったんだけど、音也くん意外に教えるの上手みたい。ことりちゃんにも教えてたし、音也くんって頭いいのかな?
新学期、僕は二年になった。クラスは変わったのだが、意外にもクラスメイトは一年の時とそんなに変わらなかった。
そして、オトノキの件だが……
「やっぱり、ダメだったかぁ」
「うん、今年は一クラスしかないの」
穂乃果は少し残念そうにしていたが少しは予想していたのか、何処と無く諦め気味に言う。今年のオトノキの一年は一クラスしかないと言う。それだけ人がいないということだ。結局剣道で人は集まらなかったということか……
「どうするの?」
「どうしよっか」
穂乃果に何か案はあるのかと聞く僕に聞き返す穂乃果。海未とことりは用事があるということで今は穂乃果と二人で帰っている。
丁度いいので、前々から計画していた作戦を実行しようと思う。
「……今から、アキバに行かない?」
僕の突然の提案に穂乃果は不思議そうに首を傾げる。
「アキバ? なんで?」
「UTXを見に行くの」
「え?」
目を見開いて固まる穂乃果。流石に急すぎた、が、ここで止まる訳にはいかない。
「まぁ、取り敢えず行こうか」
「ちょ、ちょっと待ってよー」
ちょっと強引すぎたかもしれないが、穂乃果に案がないなら少し僕の考えに付き合ってもらおう。後は穂乃果の決断次第だ。
「おっきい~、これ本当に学校なの?」
UTXを見た穂乃果の第一声はそれだった。というか、今の今まで来たことがなかったらしい。……どうもUTXにあまりいい印象がなかったようだ。
「学校らしいね、多分相当な学費はかかるはずだけど」
どうしても僕はお金の話になってしまう。いや、本当に学費が高いと思うんだけど、UTXって。その辺りに関しては調べるのを忘れていたから、予想でしかないけど。
「ねぇ、あっちにできてる列はなんなの? 生徒じゃなさそうだし……」
キョロキョロとお上がりさんみたいに周りを見ていた穂乃果はある一点に目をつけた。やっぱりそこに着目したか。まぁ、気になるよな。どう見ても学生じゃない人が並んでるし。
「実は今日、A-RIZEが新入生歓迎ライブをするらしいんだ。一般公開されるけどね」
「A-RIZE? 何それ?」
「トップスクールアイドルだよ」
「スクールアイドル?」
穂乃果の頭の上にはてなマークが浮かんでいるのが見えるようだ。うん、まぁ穂乃果ってこういうの興味なさそうだし……僕が言えたことではないが。僕も佐々木さんに聞くまで知らなかった訳だし……リアルにはあんまり興味がないタイプのキモオタだし、僕……いかん、ナチュラルにネガティブな思考に……切り替えよう。
「そう学校公認……校内活動の一環として生徒がアイドルをするらしいんだ」
「へぇ、そうなんだ」
穂乃果は少しだけ興味を持ったように行列の方を見る。よし、少しでも興味を持ってくれたなら脈ありだ。
「……見ていく?」
「え?」
「ここにチケットが二枚あるんだ」
「え?」
「というわけで行こうか」
「え?」
穂乃果を置いてけぼりにして勝手に話を進める。このライブを見て穂乃果が何を感じるのかは穂乃果次第だが、きっとこれが穂乃果の為になると僕は思っている。
状況に流されるようについてきた穂乃果と一緒にライブ会場に入る。周りはすでに大勢のファンが埋め尽くしている。穂乃果とはぐれないように穂乃果の方に気を配る。
「……あ、そうだ。これサイリウムとかいる?」
今日の為に一応持ってきたんだった。学校用の鞄とは別の鞄からサイリウムも取り出す。すでにA-RIZEのライブには何回か一人で来ているので慣れたものだ。
「……用意周到だね、音也くん。最初から穂乃果をここに連れて来る気で?」
「うん、そうだよ。……まぁ、とりあえず見てみれば分かるよ」
暗くなる会場、もうすぐ始まるようだ。あたりも自然と静かになる。
パッとステージ上にライトが照らされる。そこには三人の女の子。そのまま音楽が流れ出し、会場のボルテージが一気に上昇する。空気が支配されるような感覚、思わずこの空気に呑まれてしまいそうになる。
ファンと一体となってステージの上で歌い踊る彼女たち……あれがA-RIZE……綺羅ツバサ、優木あんじゅ、統堂英玲奈の三人による今一番人気のあるスクールアイドルユニットだ。素人目にも分かる、彼女たちがどれだけすごいか。
「どう? 穂乃果」
「──―」
ああ、これは聞いてない、あるいは聞こえてないな。もうライブに夢中だ……目が輝いてるし。これは、連れてきて正解だったかもしれない。とりあえず僕も楽しもう、そうじゃないとステージ上の彼女たちに失礼だ。
「改めて聞くけど、どうだった?」
ライブも終わり帰る途中、僕は穂乃果に聞く。
「すごい、すごいよ。なんというか、その、とにかくすごかった!」
「そっか……それで穂乃果……どうしたい?」
さっきと同じようで違う質問、多分穂乃果も僕の言いたいことは分かってる。
「……決めたよ、私。スクールアイドルやる、やるったらやる!」
穂乃果はスクールアイドルをやることに決めたようだ。……でもそれは僕が穂乃果にこうなるように仕向けたからみたいな部分もある。
僕は少しの罪悪感とともに穂乃果をこれまで以上サポートしよう、と心に決めた。
次回"スクールアイドル"4月11日21時投稿予定。
今回は短めです。はい、ということで今回から第二章、スクールアイドル始めよう編です。第一章は主に音也と周りとの関係構築と音也の少しの成長を描いたつもりです。ここからは物語が本格的に動き出します。……多分。
後、前に言ってたサブストーリーの件ですがまだ無理そうです。言い訳させてもらうと、まぁ、メインを考えてると考える余裕がないというか……いえ、自分で言い出したことですので、頑張ります。