ラブライブ!IF ~少年と少女たちの物語~   作:秋麦沈初

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前回のラブライブIF

 海未ちゃん……怖かったよ~ ごめんなさ~い。


自分に正直に

 なんとなく暇を持て余した平日の午後、僕はまた近所の公園に来ていた。いつものベンチに行くと今回は彼女がいた。彼女とはタイミングが合えば会うことがあるという良く分からない関係が続いていた。

 

「また、会いましたね。……また悩み事ですか? 今度はどうしたんです?」

 

「学校の先輩にちょっと、ね」

 

「学校……結局オトノキにしたんですね? 制服的に」

 

「ええ」

 

 彼女が着ている制服はいつも見ている制服とほぼ同じものだった。

 

「それで、先輩っていうのは?」

 

「すごい人でね、私たちの曲を作曲してくださいって頼まれちゃって……」

 

「そうなんです──ー……へっ? あっ、あの、その先輩の名前って聞いた?」

 

 思わず素の話し方に戻る。その話、最近どこかで聞いたような、いやというか確実に……

 

「え? 確か高坂先輩って……」

 

「……やっぱり穂乃果かぁ」

 

「何、知り合いなの?」

 

 思わず頭を抱える僕に彼女はジト目になってこちらを見る。

 

「知り合いというか、なんというか……すみません、穂乃果が迷惑かけてるみたいで」

 

「……話が見えてこないのだけど」

 

「うーん、話すと長くなるしなぁ。穂乃果の言ってたことが本当だとすると……貴女、門限とかあります?」

 

 最初に会った時からお嬢様みたいな人だなと思っていたが……穂乃果の話を聞く限り、彼女は実際お嬢様のはずだ。

 

 で、偏見かもしれないが、そういう家はいろいろと厳しいルールがあるような気がするのだ。

 

「いいえ、高校入ってからは特に決められてないわ」

 

「そっか、じゃあどうしようかなぁ。家に来ますか?」

 

 こんな所でする話じゃないし……多分話す内に辺りが暗くなると思う……僕そういうの話すの苦手だからコンパクトに伝えられる自信はないのだ。

 

「はっ? え?」

 

「うん、まぁ、普通そうなるよね。あの人たちがおかしいだけだよね」

 

「貴方、何を言ってるの? まさかナンパとか?」

 

 なぜか最近なんの疑問もなくいろんな女性を家に入れているが、普通は有り得ない状況だ。

 

「……やめときます?」

 

「行かないなんて言ってないじゃない」

 

 が、まぁ彼女はなぜか来るようだ。半分ヤケになってる気がしないでもないが……

 

「じゃあ、こっち」

 

「……妙に慣れてるわね。他にも女性を家に上げたことあるワケ?」

 

 彼女は物凄い形相でこちらを睨んでいる。怖い、すごく怖い。どうしたんだ? 

 

「あー、上げたことあるというか、最近は溜まり場になりつつあるね、はぁ」

 

「イミワカンナイ」

 

「僕も分かんないよ、でもなんかさ、慣れた」

 

「っ、……そう」

 

 彼女は僕の答えになぜか目を見開き驚く。本当にどうしたのだろうか? 彼女の気持ちがよく分からない。

 

「? ……そうだ、貴女の名前は西木野真姫、で合ってますよね?」

 

「それも高坂先輩から?」

 

「その通りです、というかずっとお互いに名前を知らなかったんですよね、不思議なことに」

 

 本当に不思議な関係が続いたものだ。ここで彼女──西木野さんに出逢ったのは偶然ではなく……必然だったのかも、なんて。それこそ有り得ないか。

 

「そうね、それであなたの名前は……」

 

「音也、鈴木音也です」

 

「そう、改めてよろしく、音也さん」

 

「こちらこそ、西木野さん」

 

 

 家に着いてからこれまでの経緯をいろいろ話した。まぁ、穂乃果たちと出逢ってこれまでどういうことをして、どうしてこうなったのか……諸々を説明した。正直そこまで説明するつもりはなかったのだが……あそこまで問い詰められるとは思わなかった。

 

 あ、敬語はやめた。西木野さんが別に今更敬語なんていらないと言ってくれたから。

 

 西木野さんはパソコンの前の椅子に足を組んで座って僕の話を聞いていたのだが……正直、この部屋を一通り品定めするように見回してから一直線にこの椅子に座った時は驚いた。本当にこの部屋に来るの初めてか? 西木野さん。

 

「ふーん、成る程ね。貴方がそんなダメダメな人だったなんて知らなかったわ」

 

「突っ込む所そこなんだね……」

 

「……私にはあんなに偉そうに説教しといて」

 

「申し訳ございません」

 

 腕を組んでこちらを睨む西木野さん。僕が穂乃果たちと出逢ってからということは僕がぼっちだったこと……つまり僕が誰かに何か言えるような人間じゃないということがバレた訳で……

 

「ふん、まぁいいわ。それより高坂先輩のことよ」

 

「……穂乃果のことだから、多分しつこく頼んでるんでしょ?」

 

「そうね、迷惑だわ。あなたからどうにか言ってもらうことはできないワケ?」

 

 ど直球で迷惑と言う西木野さん、ここまで行くと清々しい程で協力もしてあげたくはなる。だが、あの穂乃果を僕が止められる訳がない。

 

「無理だと思うよ? 穂乃果は自分が惚れたものに一直線になるような性格だから」

 

「ほ、惚れたって」

 

 西木野さんは顔を赤くしてたじろぐ。こう言う惚れた張ったみたいな話には弱いようだ。

 

「あながち間違いでもないと思うよ? 穂乃果の話を聞いた限りは偶然の出会いだったんでしょ?」

 

 穂乃果がすごい勢いで西木野さんの魅力について語っていた時にその辺のことは聞いた。

 

 あ、そう言えば……西木野、どこかで聞いたことがあると思って調べたら、西木野総合病院というこの辺りでも結構大きな病院があるのだ。聞き覚えがあったのはそれが原因みたいだった。

 

 彼女はそこの一人娘ということになる。だから、実際お嬢様という結論が出た訳だ。

 

「そうね、私が音楽室でピアノを弾いていたら高坂先輩が来て……」

 

「うん、聞いたよ、穂乃果から。西木野さんの音楽が如何にすごいかをね。西木野さんの音楽に惚れたんだよ、穂乃果は。こうなるとよっぽどのことがないと穂乃果は止まらないよ?」

 

「……そう」

 

 西木野さんは髪の毛をクルクル弄りながら素っ気ない返事をするが……顔が赤くなってる。隠してるようだが、嬉しいようだ。

 

「そもそも、なんで作曲してあげないの? アイドルを一緒にやってって言われたわけじゃないんでしょ?」

 

「言われたわ」

 

「あ、言われたのね」

 

「でも、嫌なら作曲だけでもって……」

 

「作曲するのも嫌なの?」

 

 アイドルを一緒やってって言われたならまだ断る理由は分かるが──いつぞやの海未のように──別に作曲だけならやってあげればいいのに、と正直思うのだが。

 

「……だって、アイドルの曲とか安っぽいじゃない」

 

 ……ああ、そういう。世の中にはいろいろな感性を持ってる人がいるが、成る程、安っぽいときたか……なんか納得いかないな。

 

 世の中広いからこういう曲は本当に無理って人はいるかもしれないが……西木野さんの場合なんとなく聴かず嫌いな気がしてならない。

 

 悔しいのでスマホを取り出して、ある曲を再生する。

 

「……西木野さん、ちょっとこれを聞いてみてくれる?」

 

「何よ?」

 

「まぁ、いいから」

 

 僕の言葉に不承不承といった感じながら静かに曲を聴いてくれる西木野さん。部屋の中にスマホから流れる音楽だけが響き渡る。

 

「……この曲は?」

 

「A-RIZEの曲だよ」

 

「A-RIZE?」

 

「UTXのスクールアイドルだよ」

 

「ふーん、そうなの……」

 

「これで西木野さんが何を感じるのかは自由だけど……この音楽を安っぽいって言われるのは納得できなくて」

 

「……」

 

 西木野さんは特に反応もせず曲を聴き続ける。音楽に聡い彼女だからこそ、ここから何かを感じ取れると僕は信じている。

 

「まぁ、本音を言うと、西木野さんだとアニソンとかボカロも安っぽいって言いそうだったから、気に食わなかったっていうのがあるんだけど」

 

「最後のは余計な一言ね」

 

「ごめん」

 

「……でも、そうね。考え直してみることにするわ」

 

 相変わらず素直じゃない。だが、そこを敢えて指摘する程僕の性格は悪くない……と思う。

 

「ありがとね」

 

「別にあなたの為じゃないわ。私にも思うところがあったってだけ」

 

「それでも、ありがと」

 

「ふん」

 

 これが後にμ'sの曲を作曲する理由の一つであったと僕は勝手に思っている。




 はい、遅くなってしまって申し訳ございません。実は人生初の携帯電話を買って頂きまして……いろいろ手間取っていたのです。

 私この年まで携帯持ってなかった珍しい人種でして……まぁ、どうでもいいことですね。


 次回"振り付けを考えて" 絵里の回ですよ~
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