穂乃果たちとの出逢いに思いをはせる音也。
音也は家で穂乃果について考えながら眠るのであった。
──―ピピピッ、ピピピッ
ああ、誰だ僕の眠りを妨げるのは……
「……休日なのに目覚ましで起きる地獄、ふぁ~ぁ、眠い」
しかし、一回でも妥協すると、その後ずるずるといってしまうのだ。僕の性格的に。
「平日起きれなくなるからなぁ。はぁ、長期休みならだらけれるのに……早く長期休みになってくれないかなぁ」
我ながら難儀な性格なものだと、自嘲気味に笑う。
「今日は確か、自転車を修理に出しに行くんだけど……痛い出費だなぁ」
憂鬱な気分で支度をする。
ただいまの時刻は六時ジャスト、流石に店が開いてない。
さてどうしたものか。朝ご飯は作るの面倒くさいからもういいとして……
「宿題でもやるか」
高校になったら宿題なんてないと思っていたのだが、授業の予習という名の宿題があった。やってこない人もいるが、僕はやるタイプだ。まぁ、やる気が出たときにやっとくのが一番だろう。早起きして勉強とか自分で言うのもなんだが、優等生みたいだな。
やることが決まったら、とりあえず布団をたたみ、押入れへ詰め込みちゃぶ台の前に学校用のかばんを持っていく。このちゃぶ台もちょっとぼろぼろになってきたな。買い換えるか?
それからジャージに着替えて顔を洗う。
そろそろ水で顔を洗うのは寒くなってきた。お湯にする時期かな。そうだ、どうせならちゃぶ台の代わりに炬燵でも買うか。そんな風に考えながら、学校用のかばんから勉強道具を出して、ちゃぶ台の上に広げる。
勉強はそんなに好きじゃない、が別に嫌いでもないので気が向いたらやるようにしてる。ただ、英語は大嫌いだ。
そして、勉強を始めて一時間程経った頃、玄関のチャイムが鳴った。
「こんな時間に誰だろう?」
なんか宅配でも頼んでいたかな? うーん、心当たりがないなぁ。お隣の大野さんかな? それとも大家さんの青木小母さんか? いや、どっちもこんな早い時間に訪ねてくることはあんまりない。……変な勧誘かな? 僕学生なんだけどなぁ。
「はーい、どちら様でしょうか?」
そう言いながら、ドアを開ける。そこには見覚えのある女の子が立っていた。
「あっ、起きてた。良かった、寝てたらどうしようかと思ったよ。また会ったね、音也くん」
「……はっ?」
立っていたのは、ジャージを着た高坂さんだった。
「えへへ、おはよ、音也くん。寂しいって言ってたからさ、来ちゃった。朝練のついでだけど」
……夢でも見ているんだろうか。そう思って、両頬をつねる。
「痛く、ない。夢じゃない」
「夢だなんて、失礼しちゃうな。心配だったんだよ、音也くんのことが」
あぁ、本当に、何だろう、この子は。なぜか無性に泣きたくなってきてしまう。
「ありがとう……ございます、高坂さん」
「えっ? あっ、うん、どういたしましてって何で泣いてるの、音也くん!」
「いえ、ただ、その、どうしようもない程嬉しくて」
「……そっか、それなら良かった、のかな?」
「なんでそこで疑問形なんですか」
「えへへ」
はにかむ彼女はとても可愛くて、僕は彼女から目を逸らす。そんな僕には気づかず、高坂さんは話を続ける。
「そういえば、今何してたの?」
「宿題ですけど……」
「宿題!? 真面目なんだね、音也くん」
「いや、宿題をすること自体は別に当たり前のことだと思うんですけど……」
「うぇ!? そうかな?」
何で驚いてるのかな高坂さん、まさか……
「まさかとは思いますけど高坂さん……」
「そっ、そういえば、音也くんは朝ご飯食べた?」
明らかに話を逸らす高坂さん。そうなんだ、高坂さん宿題やらないタイプの人間なんだね。まぁ、いいけど。えーっと、朝ご飯ね。
「ううん、っ……食べてないですけど」
しまった、思わず素が出そうになった。高坂さんあんまり意外でもない意外な一面を知って、ちょっと油断してた。
流石に会って二日目の人にタメ口はまずいだろう。いや、高坂さんなら気にしない気もするが、僕が気にする。
「そっか、私もなんだ。……ということで、私の家に来ない?」
「ふぇ?」
やべ、変な声出た。
ふぇ? ってなんだよ。女子か! いや、確かに男子にしては声高いね、とか 合唱でソプラノパートを歌うとかよくあったけど、容姿は普通の男子高校生のそれだぞ。
気持ち悪くなかったか? 今の。
というか、それより、なんだ? 朝ご飯の誘い? えっ? 昨日知り合ったばっかりだよね? 何? 何でこんな好感度MAXみたいなイベント起きてるの? これなんてギャルゲー。
うわぁ、高坂さん笑ってるし。いや、しょうがないだろ。かわいい女の子、それも昨日知り合ったばかりの女の子にそんなこと聞かれたら、驚くだろ。
大丈夫か? 他の人にも同じようなことしてないか? 高坂さん。心配だぞ。同姓の友達ならまだしも、異性の友達とは普通そんなことしないぞ……しないよな? あれじゃないか、女子校に通ってるから異性との接し方が小学生のときと変わってないんじゃないか? たぶん、高坂さんは中学もオトノキだと思うから、女子高だし。……いや、でも小学生のときもさすがにこんなことになった覚えはないが。
というか、どうしよう。返事待ってるぞ、高坂さん。とりあえず冷静になろう。状況を整理するんだ。早朝に女の子が訪ねてきたと思ったら、朝ご飯食べに来る? って聞いてくる。いや、何度考えても意味分からんぞ。
……あれ? よく考えたら、これ世の中の男共に後ろから刺されかねんぞ。
やばい、冷や汗をかいてきた。
「で、どうするの?」
「ぃ、行かせていただきます」
変な敬語だ。
……ふぅ、だいぶ落ち着いてきた。きっと高坂さんに他意はない。同情の類だと思おう。
それはそれでなんか複雑な気分だが、朝ご飯を食べさせてくれるというなら、悪い気はしない。
僕の返事に嬉しそうに頷く彼女。
「よし、それじゃ、レッツゴー! 家まで競争だよ」
そんなことを言いながら走り出す高坂さん。
「いや、僕高坂さんの家知らないんだけど!」
そう言いながら僕も慌ててついて行く。
「ああ、そうだった。ごめんね、音也くん」
高坂さんが笑っている。そんな高坂さんを見て僕も笑ってしまう。
なんか、高坂さんを見ていたら、僕の考えてることなんてどうでもいいようなことな気がしてきた。
そんな風にに思える魅力が彼女にはあるのだろうと、高坂さんの横に並びながら思うのだった。
次回は2月9日21時投稿予定です。
音也くんがうらやましいです。