ラブライブ!IF ~少年と少女たちの物語~   作:秋麦沈初

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前回のラブライブIF

 高坂家は全員穂乃果だった。


ピュアタイプ?

 朝ご飯を高坂家で頂いた後、力仕事をいくつか手伝った。高坂家の皆さんは別にそこまでしてくれなくても良いと言ってくれたが、僕の気が済まないので、と言って手伝った。それに最近は家にこもりっきりで、登下校や体育以外で体を動かす機会もなかったので、ちょうどよかった。

 

 ちなみに穂乃果さんは剣道をやっているらしく、体力は運動部らしく結構あったが、やはり力という面ではある程度男である僕の方が強いみたいだった。

 

 穂乃果さんが剣道をしているというのも驚きの事実であったが、よく考えれば朝迎えにきた時はジャージ姿だった。朝練のついでとも言っていたし。

 

 何か複雑な事情がありそうでもあるが……今度の剣道の大会で優勝すると言っていた穂乃果さんのあの時の顔は、多分何かある。でも、僕にはそれが聞けなかった。そんなに軽々しく聞いていいものでもない気がするし、僕には聞く勇気がない。

 

 結局その後、高坂家の皆さんとは別れを告げて自転車を修理に出しに行こうとも思ったのだが……

 

「なんで、ついて来てるんですか?」

 

 なぜか私服に着替えた穂乃果さんがついてきた。

 

「えへへー、ダメ?」

 

 うわ、可愛い。ではなくて。

 

「ダメ、じゃないですけど……別に僕といても穂乃果さんは楽しくないと思いますよ? それに、練習はどうしたんです?」

 

「ああー、また()()付けしてるし、敬語に戻ってる! もー」

 

 そう言ってそっぽを向いてしまう、穂乃果さん。

 

 呼び捨てじゃないと反応しない気か? 別に無視してもいいんだけど……良心が痛む。……しょうがないか。さっきよりは恥ずかしさもなくなった。というか、ここまで激しくアタックされると僕の方のガードも限界だ。

 

「はぁ~、分かった。これでいいんでしょ、穂乃果?」

 

「うんうん、最初から素直にそうしてればいいんだよ。音也くん。で、音也くんといても楽しくないって? そんなことないよ、友達といればどんなことでも楽しいよ。それに今日は朝練習だけの日なんだ、部活もないし」

 

 ……本当に敵わないな、穂乃果には。こんなこと言われたら僕は何も言えないよ。

 

「そっか……ありがとう」

 

「あははー、照れてるの? 音也くん」

 

 面白そうに僕を見る穂乃果……くそ、まじで可愛いなこの人。

 

「そっ、そんなことより、とりあえず、自転車取りに行くよ」

 

「あっ、誤魔化したー」

 

 穂乃果から目を離す。恥ずかしくて彼女の顔が見れない。

 

 でも、こんな風に誰かと雑談するのはいつぶりだろうか。これも、穂乃果のおかげだ。

 

「本当にありがとう、穂乃果」

 

 そう言って、今できる精一杯の笑顔で穂乃果を見る。こんなことで僕の気持ちが伝わるかは分からないけど。

 

「うっ、うん。どういたしまして……」

 

 今度は穂乃果が顔を逸らしてしまう。どうしたんだろうか? まさか、僕の笑顔が気持ち悪かったとか? ……しょうがないじゃん、別に僕は不細工というわけでもないと思うけど、イケメンってわけでもないんだから。

 

「よっ、よし、早く行こう。そうしよう。時は銀なりだよ」

 

 ……時は金なり、かな。よっぽど動揺しているのか、ただただ頭のできがよろしくないのか、どちらなのだろうか? ……そういえば、穂乃果って勉強が嫌いなタイプだったっけ。

 

 

 しばらくして、僕は家に戻り穂乃果に玄関前で待っててもらい出かける準備をした。ジャージから私服に着替えて財布とスマホを持つ。まぁ、これぐらいで十分だろう。

 

 外に出て穂乃果に合流したところ、お隣の大野さんが声をかけてきた。この大野さんという方は外見……というより主に顔が物凄く怖いのだが、話してみるとめっちゃ優しいのだ。最初に挨拶に行ったときは驚いたものだ。

 

 ちなみに年齢は二十一歳でまだ大学生三年生だという。近くの私立大学に通っているらしい。

 

「おっ、音也、ついに彼女でもできたか」

 

 ぐふっ、急に何を言い出すんだ、この人は。というか、なんで穂乃果は無反応なんだ? 

 

「ちっ、違いますよ! 友達です」

 

 大野さんニヤニヤしながら今度は穂乃果の方を向いた。

 

「ふーん、ま、何でも良いけどな。おい、そこの可愛い嬢ちゃん」

 

「はっ、はい」

 

 ああ、穂乃果、大野さんにちょっと怯えてたのか。すごいな、誰とでも仲良くなれそうな穂乃果ですら大野さんの顔にはビビるのか。

 

「ははっ、そんなに怯えられるとお兄さんちょっと傷つくなぁ。こんな顔だし、しょうがないとは思ってるけどさ。それより、音也は高校生になったていうのに今まで友達と遊んでるところなんて見たことがなかったんだ。仲良くしてあげてくれるとありがたいよ」

 

 この人は僕のなんだ? お父さんか? いや年齢的にはお兄さんか? どっちにしろ、もうやめてほしい。嬉しいけど、恥ずかしい。そんなことを考えていると穂乃果は少し驚いた顔をした後、大野さんに向かって言った。

 

「当然です! 私と音也くんは友達ですから……後、私の名前は高坂穂乃果ですよ」

 

 今度は大野さんが驚いた顔をした。まぁ、穂乃果はこういう人だよな、うん。

 

「そうか、そうか。あの音也と一緒にいる女の子がどんな奴かと思ったら……面白いな、高坂。俺は大野って言うんだ。音也の隣の部屋に住んでる。よろしくな」

 

「はい、よろしくお願いします! 大野さん」

 

 知らない内になんか意気投合してるし……すごいなー、二人とも。あれぐらい積極的にいかないと友達ってできないのか。……頑張ってみようかな? 

 

「さて、二人ともどっかに遊びに行くんだろ? 楽しんでこいよ。俺はこれから用事があるから」

 

「あっ、はい」

 

「またね~、大野さん」

 

 大野さんは去っていった。本当嵐のような人だな。ある意味では穂乃果に似てるかも。そう思いながら大野さんの背中を見つめるのだった。

 

 

 その後、パンクした自転車を引きながら、一緒に昨日予定していた通りショッピングモールの横にある大手全国チェーン店に来ていた。

 

「ねぇ、なんでこっちに来たの? 結構歩いたし、遠いし……」

 

 穂乃果は不思議そうに聞いてきた。

 

「こういう所の方が安いんだよ。それに横にショッピングモールがあるからね。ついでに遊んで行こうか。僕はあんまり来ないんだけど……」

 

「そんな風に考えてくれたの? 優しいね、音也くんは」

 

 今、なんとなくだけど好感度が上がった気がする……いや、最初から好感度MAXみたいな状態だったのに、上がるのか? 上限突破してるじゃん。別に遊ぶ方は後付けの理由なんだけどなぁ。それに遊ぶとなったら当然ある程度のお金を使うわけで……

 

「と言っても、これのせいで今月はちょっとやばいんだけどね。はぁ~」

 

 そんな僕の愚痴に穂乃果は苦笑いしながら、こんなことを言う。

 

「まあまあ、良かったらまた明日も朝ご飯食べに来ていいから」

 

「え? マジ!? ……でも流石に迷惑じゃないか?」

 

 確かに朝ご飯を食べさせてくれるというなら、いくらか食費は浮くけど……

 

「そんなことないよ。みんな音也くんのこと気に入ってるから」

 

「なんで? 僕、なんか気に入られるようなことしたっけ?」

 

 正直高坂家の人たちが何を考えているか、僕にはさっぱりだ。実は江戸時代から来たと言われても納得できる。あの時代って助け合いがすごかったらしいから。

 

「うーん、どうなんだろうね。私にもよく分からないんだけどさ、なんて言うのかなぁ? 音也くんって純粋なんだよ」

 

「純粋? 僕が!?」

 

 どういうことだ? 僕ほど純粋から程遠い人はいないと思うけど。

 

「そう、純粋……とは違うのかな。あの時、私と初めて会った時、音也くん言ったでしょ、寂しいって。そんな正直に言える人ってなかなかいないんだよ? 他の人から見れば私もそうらしいんだけど……分かんないや」

 

「でも、僕、そんなに正直者でもないんだよ。学校でもずーっと黙ってるようなやつだし」

 

 よっぽど、穂乃果の方が正直だ。こんなにも裏表がない人はいるだろうか。

 

「そういうことじゃないんだけどなぁー。どうすれば分かってくれるんだろう?」

 

 穂乃果はうんうん唸っている。

 

「多分何を言われても分かんないよ」

 

 そう、何を言われても分からない。結局人の気持ちなんてその人自身にしか分からないんだから。

 

「そっかぁ。あっ、じゃあさ、こう言えばいい?」

 

「?」

 

 穂乃果が何かを思いついたように言ってくる。なんだろう? 

 

「私たちは音也くんのことが好きになったの。なんとなく、感覚的に」

 

 そう言ながら笑いかけてくる彼女。……その破壊力はすさまじいものだった。

 

「っ、分かった。もうそれでいいよ! ──―なんでそんなこと面と向かって言えるかな? もう半分告白じゃん。会って二日目だぞ」

 

「音也くん? どうしたの?」

 

「なんでもないよ! ほら行くよ!」

 

 しかも本人は気づいてないみたいだし。まだ会って間もない男に好きだなんて言えるのは穂乃果ぐらいじゃないか? なんかそう思うと立場が逆な気がしてきたぞ。すごいイケメンな穂乃果に、女々しい僕……案外しっくりくるのが悔しい。

 

 

 その後、自転車を修理に出して、お金がいくらか飛んで行った。と言っても、ここ数年の生活費は全部仕送りでやりくりしてたし、バイトも一応しているから、その貯金がある。……お金の使い道も今までなかったし。最悪そこから切り崩せばいい。

 

 先程、今月はちょっときついと言ったのは、仕送りだけじゃまずいという意味で、別に暮らしに困るわけではない。 そう思うと、さっき穂乃果の前であんな発言をしたのは、もしかしたら、また来ていい、と言われることを期待していたのかもしれない。

 

 ……やっぱり、僕も甘えちゃってるのかなぁ。こんな奇跡みたいな出逢いと優しさに。そう考えた一幕だった。




次回は2月23日21時投稿予定です。

前回のラブライブIFが早くも適当になってきている……なってしまった!

ふざけてすみません、金曜日の生放送は最高でした。

ちなみにショッピングモールや音也の通う高校にモデルはないのであしからず。

本当は現実のモデルとかがあるといいんですけど……現地に取材に行くには時間とお金が足りなくて。研究不足で申し訳ないです。
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