ポケモン、出てきたな!(野生のみ
ワイルドエリアさん、もうちょっと生態系的なのがあればなぁ、俺もなぁ……
色々なポケモンが混在してるから、多少はね?
従来の生態系がコワレチャーウ……
まだ夜明け前の時間にスパイクタウンの入り口にリンドウが向かう。待ち合わせ場所にはすでに人が立っている。
「待ちくたびれましたよ」
どこまで本気なのか分からない表情で、合流するネズ。
「色々と準備するものがありますから、ね」
鞄を軽く持ち上げると、そこに荷物が詰まっていることが分かる。
「……約束は、守って貰いますよ」
ネズが隣を歩きながらリンドウに話す。
「勿論ですって、ちゃんとジムチャレンジの内容をマリィに伝えて、サポートしますよ」
マリィのサポート、それがネズからリンドウに出した推薦状の条件だった。
「……俺が言うのも何ですけど、別にマリィならサポートが無くても、クリア出来そうですけどね」
心配性のネズにたいして、少し冷めた目でみるリンドウ。だが、それについてはネズは全く気にしてない。
「勿論、実力的には何も問題ないでしょう。だがしかし、ジムチャレンジに向かう道中では何が起こるか……その為にエール団にも何人かジムスタッフに入れさせましたからね」
勿論、参加者の安全を確保する為に、とネズは付け足す。公私混同ではあるが、公をしっかり出来ていれば私を混ぜることに遠慮はないのだろう。緊急事態がなければ、マリィの進捗がいち早く把握出来るだけでネズは満足なのだから。
「それじゃ、目的地まで汽車で行きますか」
ルーンナイトトンネルを抜け、ナックルシティについた二人が、運転手に目的地を告げる。
「ワイルドエリアの集いの空き地まで」
駅まで汽車で乗り継ぎ、ワイルドエリアの手前の駅、集いの空き地と呼ばれる駅まで辿り着いた。
「……大丈夫ですか?」
ネズがリンドウの体調を気遣う。だが、それとは裏腹にリンドウは健康そうだ。
「ポケモンの巣に行かない限りは大丈夫ですよ。それも短時間なら、多分大丈夫です」
駅を降りると、囲いがされてある。そこに管理を任されている人間が何人か立っている、トレーナーや準備のある人間以外が無闇に入らないようにしているのだ。
「これは……ジムリーダーのネズさんじゃないですか」
ジムリーダーとなればガラル全体でリーグカードが出回るレベルだ。田舎の人間でも充分有名人として通ってしまう。
「新しいポケモンを探してですか? それとも、特訓? なんにせよ、お気をつけて!」
出会ってリーグカードにサインを貰えたことが嬉しかったのか、元気に送り出してくれた。
「はぁ、あまりこういうのは好きでは無いのですが」
ネズがうんざりした様子で話す。ファンの人間にチヤホヤされる、というのはあまりネズのイメージでは無い。ライブで熱狂はするが、それとはまた別なのだろう。
「さて、取りあえずは木漏れ日林ですね」
そういうと、駅から見て左、西側よりを目指す。うららか草原を降りて、まっすぐ西へ。キバ湖の西側を右手に見ながら、歩みを進めていく。ワイルドエリアの中では、うららか草原、こもれび林はどちらとも穏やかな部類になる。それでもなお、ワイルドエリアは日々変わる天候とその度に違うポケモンが現れる程多様性に溢れる環境だ。それは豊かな土壌があるということ、それと共に熾烈な生存争いがあるということでもある。とはいえ、○番道路などと呼ばれる人間が開拓した土地と比較しても、表だった競争は見られない。
「うららか草原は、今日は晴れですね」
駅を降りて直ぐの場所で、大岩がど真ん中に並んでいる。緑豊かな場所には似つかわしく無いのだが。
「間違っても、近づかないでくださいよ」
ネズの忠告に、リンドウも警戒を高める。迂回するように歩いて行くと、岩の一つに心地よさそうに眠るイワークの顔がある。
「……これ全部、イワークなのか」
驚きに目を見開くが、特にこちらを警戒する様子はない。防御力を誇るイワークだからということもあるが、その日陰で休むホルビーやトランセルの姿も見える。
「近づかなければ、というやつですね」
周囲を見渡せば、木々にマメパトがとまっていたり、草むらの上バタフリーが羽ばたいている。天気が良いからか、今日は蜜を運ぶミツハニーの姿も目にすることが出来た。
「さて、こもれび林の……見張り塔跡地側でしたね」
うららか草原に近い場所で目的地の確認をする。右手にはキバ湖が見える。眺めていると時たまギャラドスが水面から顔をだし、再び湖の中に潜っていく。
「まだ少し歩かないと……ここは冷えますね」
先ほどまで晴れていたうららか草原から僅かに進んだだけだというのに、気温が低くなっているのが肌で分かる程に天候が変わる。かなり広大な土地ではあるので、全ての場所が同じ天気というのはまずないが、それを考えても短い距離で天候が様変わりしている。
「雪もちらついていますね、奥にバニリッチの姿もありました。あまり長居は無用ですよ」
そういうと、防寒着を羽織りネズは足を速める。それに着いていく形でリンドウも急ぐ。歩いていると、ネズの端末に連絡が入る。
「……もうすぐ、ですね」
光の柱が立ち上っているのが見え始める。あれはダイマックスポケモンがいる証拠だ。
「お待ちしておりました、ネズさん。この先のポケモンの巣に、ダイマックスポケモンがいます!」
防寒着を上から羽織ったエール団がネズとリンドウを見つけると近づいてきた。リンドウが生唾を呑み込み、ボールに手を掛ける。
「人数は四人、行きますか!」
スタッフが腰掛けている大木に、リンドウがもたれかかる。
「し……死ぬかと思った」
少なくともリンドウよりも腕の立つエール団の二人も、肩で息をしている。表情からは余裕は全く感じられなかった。いつもと同じ表情なのはネズただ一人。
「それでは、そろそろ用事の時間なので……また目的のポケモンが見つかった時に連絡を下さい。何度もとは言いませんが、手伝えるようにはしますので」
そう言って、去るネズ。とてもではないが、同じトレーナーとは思えない格の違いを見せつけられる。だがしかし、目的は達成した。手にしたハイパーボールが少し揺れる事に、リンドウは達成感を覚える。
「次は……うららか草原、だな」
その言葉にエール団が驚く。
「まだやるんですか!? 一歩間違えれば死にますよ!?」
リンドウもそれについては同意する。
「確かに、がっつり準備してきたのに、正直ネズさんの足を引っ張らないようにするので精一杯だったからなぁ……次で最後にするよ」
ジムチャレンジに挑戦する以上、持てる戦力は少しでも多い方がいい。だが、それも危険が伴うのだ。そうして、探すポケモンの名前を出すと、エール団の表情が青ざめていく。
「……本気ですか?」
リンドウも、顔色が良いとは言えない様子だが、本気だと返す。
「大丈夫だ。今回同様、まだ対策が立てやすい部類のポケモンだ。ついでに言うと、目撃例は少ないし、状況は分かりやすい。取りあえず今日の所は一旦引き上げて、準備と……覚悟を決める時間はあるさ」
その言葉に、エール団の一人が呟く。
「俺、マリィちゃんに手紙書きます。戻ってこれなかったら……それを」
その言葉には、悲壮な覚悟があった。
こもれび林とは方向自体は反対方向だが、うららか草原の中なので、距離的には駅に近い。だが、それでもそこに辿り着くまでの時間は同じか、むしろそれ以上掛かったかも知れない。
「人数分の防塵ゴーグルは、役に立ちましたね」
流石のネズも、緊張しているのだろうか。生憎の天候の為、近くに居てもその表情は読み取れないが、口数の少なさ、それと何時も以上の周囲の警戒に、ただならぬ雰囲気を感じられる。
「……そうですね」
砂嵐の中を、警戒しながら進んでいく。気付いたハガネールが目と鼻の先にいたなんて事が起こりうる環境に、必死に足を前に出していく。
スパイクタウンのポケモンセンターでモルペコを休ませていたマリィが、三人仲良くベッドで眠っているのを見つける。
「どないしたんリンドウ? エール団の人らとどこか行ってたの?」
その言葉に、リンドウは答える。
「ちょっと……地獄の一丁目まで、な。全員三途の川を渡らずに済んだのが奇跡だったよ」
その言葉に、思わずマリィが笑う。
「もぉー、大げさやなぁリンドウは」
隣のベッドのエール団二人も渇いた笑いが零れていた。
読了ありがとうございました。
次回からジムリーグ開催です。
マリィちゃんカワイイヤッター
ちなみに、ゲームの主人公はマサルで出場します。
ユウリちゃんはどこ……ここ?