剣盾2の世界では詳細に書かれていなかった(調査不足かも知れませんが)チャンピオン時代のジムリーダーとのやりとりが書きたかっただけです(笑)
転生、キャラ崩壊、オリジナル、幻覚etc……どんとこいな方はよろしくお願い致します。
リンドウの言葉に、センジュの様子が一変する。或いは期待、動揺だったのかも知れない。
「幼なじみとは……ホップ博士か?」
慎重に探るような会話に、リンドウは訝しんだ。だが、相手の意図が分からない。
「博士なんて呼ばれる程じゃないだろう」
いずれ、ホップならなれるかも知れないが、今はまだ駆け出しも良いところだ。センジュは思案し、リンドウを囲んでいるムゲン団に指示を出す。
「状況が変わった、お前達は戻れ」
その言葉に困惑しつつも、ムゲン団は離れて行く。
「状況が変わったって、どういうことだよ」
リンドウが気を抜いてセンジュに話しかける。
「……「」ウリが、この世界でホップはか、いやまだ博士じゃないんだったか。彼と共に生きられるのならば……邪魔をすることは、ムゲン団の本意ではない」
その表情は複雑ではあったが、喜んでいるようにも見える。
「俺にも分かるように教えて貰えるか?」
リンドウの言葉に、センジュが少し考え込んでから答える。
「ムゲン団への協力が条件だ。それで全て話そう……とはいえ、直ぐに信じて貰えるとは思えないが」
リンドウはセンジュの提案に首を縦に振る。
「表向きの理由だけなら、断る理由はないしな」
場所を少し変えて、リンドウの借りてる部屋に案内する。
「……なんで俺の部屋なんだよ?」
リンドウのその問いにセンジュが万が一にも他人に聞かれる訳にはいかない、と答えた。
「どこから話そうか……ここではない世界、私達が生まれた世界について」
勝手にベッドに腰を下ろすセンジュ、最早彼女に訂正をする事も面倒になったのか、リンドウは諦めた表情で座る。
「そうだな、始めに伝えておかないといけないことがあったか……私の本当の名前は、マリィだ」
リンドウが、驚愕の表情で椅子から落ちる。
ホップとソニアの結婚式、それはハロンタウンにて行われた。決して大きな式場ではなかったか、知人、親類が大勢集まり、その中には、ダンデは勿論、ジムリーダーであるルリナやマリィも集まり、そして「」ウリの姿もあった。
「ホップ、おめでとう」
そう言って新郎の姿を見送る「」ウリの姿に違和感を覚えたのは、チャンピオンになってから長い時間を共に過ごしたマリィだけだったのかも知れない。
「「」ウリ、大丈夫と?」
心配になったマリィが、「」ウリに声を掛ける。一見すれば普段と何も変わらない、マリィ自身も見間違いかも知れないと思っていたのだろう。
「……大丈夫だよ、マリィ」
哀しく笑う彼女に、今更になってチャンピオンという重責が本音を押しとどめていることに気付かされた。
「「」ウリ」
泣いて良いよ、辛いと言って良いと、言えなかった。ガラルの希望で有り、憧れであり、何よりも彼女の思い人が目指し、憧れ、今なお輝き続けている聖域を、彼女自身が汚すことは願わない。
「……私は、そばにおるけん。ずっと、ずっと……」
マリィの手を握る「」ウリの手は、微かに震えていた。
ホップの結婚を過ぎても尚、強くなり続ける「」ウリの元に、メールが届く。
「ローズ委員長?」
最初は彼の名を騙る偽物かと思ったが、内容を見る限り本物のようだ。
「……ムゲン団、結成?」
アーマーガアタクシーに行き先を告げて、ローズ委員長がいるバウタウンのシーフードレストランへと訪れる。
「お待ちしておりました、チャンピオン」
そう言われてウェイターに案内されると窓際に座るローズ委員長の向かいの席に案内される。
「お久しぶりです、チャンピオン。随分と……いや、相変わらずお綺麗なままですね」
「」ウリの姿を見て驚いた様子を見せたのは、恐らく何年も経っているのに、チャンピオンになった当時の姿のままだったことだろう。
「今更貴方から連絡があるとは思ってませんでした。ムゲン団なんてうさんくさいもの、何のために?」
席に着いた「」ウリに少し皺の数が増えたローズは、昔と変わらないトーンで語る。
「何の為? それは勿論、貴女の為ですよ、チャンピオン。叶わなかった願い、それを手にするための集団。そのついでに、私の目的がある」
ローズの言葉に、眉をひそめる「」ウリ。
「まず第一に、ムゲンダイナの力が必要なのです。それもムゲンダイマックスを操れるだけのトレーナーの力も。ねがい石には元々人の願いを叶える力がある、それにムゲンダイマックスの力を加えれば、叶わない願いは存在しない」
ローズが真剣に語るその姿に、「」ウリは呆れる。
「そんなものは、ゆめまぼろしでしょう?」
「」ウリの言葉にローズは頷き、そしてこう答える。
「そう、その夢幻の中に、貴女の願いがある。違いますか?」
「」ウリが、スパイクタウンのマリィの部屋を尋ねる。
「何の用? 「」ウリも暇じゃなかとね」
チャンピオンは多忙を極める。先代チャンピオンのダンデも故郷に帰る時間も殆ど取れないほどだったのだから、「」ウリもそう変わらないはずだ。
「マリィ、貴女にも協力して欲しいの」
ムゲン団について「」ウリから語られる。
「……「」ウリ、正気っちゃ? そんな夢みたいな事」
「」ウリの真剣な表情が、本気である事を示していた。いや、思い詰めていたと言っても良い。
「「」ウリのやりたい様にすればよかと……それに私もついていくけん」
マリィが優しい笑みで答える。「」ウリに必要なものは、現実を知らせる厳しさではなく、寄り添う優しさだと信じて。
バトルタワーの頂上で、ダンデとマリィが会話をしている。
「バトルタワーに、研究施設を? ムゲンダイナの研究……か」
マリィの説明を受けて、ダンデが考え込む。
「いや、他ならぬ「」ウリの頼みだ。断る理由はない」
そう呟いたダンデが、それとは別に「」ウリの事を心配している様だ。
「「」ウリもチャンピオンの前に一人の女性です。悩み事の一つや二つ、あってもおかしくないでしょう。私達はSOSに気付いた時に手助けすれば……良いと思います」
マリィの言葉に、ダンデは頷いて協力を選んだ。せわしないバトルタワーの仕事に戻り姿を消した元チャンピオンの背中に呟く。
「私達は何度、彼女のSOSを……見逃しとったんやろね?」
部屋の外から、騒ぎ声が聞こえる。どうやら誰かが、無理矢理チャンピオンに会いに来たらしい。熱心なファンか逆上した者か、どちらにせよ途中で止められるか、チャンピオンに撃退されるのだが、今回は例外だった。
「「」ウリ! 何のつもりだ!?」
飛び込んできたのは、かのドラゴン使いキバナだった。
「こっちとしては、急に怒鳴り込んできたことに『何のつもり』か聞きたいけど?」
目も合わせようとしないチャンピオンに、怒りの声を浴びせる。
「ムゲン団のことだ! あんなものに、何でお前が関わっているんだよ!?」
キバナのあんなもの呼ばわりに、「」ウリは渇いた笑いを浮かべる。
「ねぇキバナ、最近調子悪いみたいだね……理由、当ててみようか?」
その言葉にキバナは苦虫を噛み潰した様な表情になる。確かに、新しくジムリーダーになったマリィやビートに順位を抜かれ、かつての栄光に陰りが見えていた。
「それが今、何の関係がある?」
「」ウリがキバナに向き合い、一言だけ囁く。
「私じゃ、ダンデの代わりにならなかったでしょ?」
キバナが目を見開く、「」ウリがチャンピオンになった次の年はまだ良かった。ダンデを下した新チャンピオン、それを倒せば自分がダンデに勝てる事を証明出来ると考えていたからだ。だが、年々下がっていくモチベーションに気付くのにそう時間は必要なかった。
「……確かに、未練がないとは言わねぇ。だが、それは過ぎた話じゃねえか」
無敗のチャンピオンダンデは、その席を明け渡した。そればかりか、目の前の少女に幾度となく敗北している。その事実が、キバナを苦しめている。
「私のチャンピオンタイムに、掛けてみない?」
「」ウリの言葉は、甘く、喉に刺さる様な毒薬だった。
アラベスクタウンのジムで、ビートと話す「」ウリ。
「うん、ビートの紅茶は美味しいね」
お茶請けのスコーンを楽しみながら、いつもの様にうんざりした顔で、ビートが呟く。
「僕は喫茶店を始めたつもりはないんですがね?」
「」ウリはその言葉を聞き流し、紅茶とお茶菓子を完食する。
「それで、この前の話……考えてくれた?」
「」ウリの言葉に、ビートは即答する。
「お断りします。ジムリーダーになる前であれば……考えたかも知れませんが」
とりつく島もない返答に、少し満足げな表情をする「」ウリ。
「一応、理由を聞いても良い?」
ビートは盛大に溜息をつき、答えるまで時間がかかった。
「……それはピンクじゃないからですよ。それで充分でしょう?」
「」ウリは嬉しそうに微笑む。
「そうだね、アラベスクタウンのジムリーダーはそうじゃなくちゃ」
そう呟いた「」ウリは、席を立つ。
「ビートは、変わったね」
離れて行く「」ウリに、ビートが話す。
「人間は自分から変わるなんて出来ないんです。変わるほどの何かと出会えるかどうか、なんですよ。僕も貴女も、変わるしかなかった……違いますか?」
未来に進む彼に、過去に留まり続ける少女。この二人に何の違いがあったのか。
「私は……変わらないよ」
読了ありがとうございました。
外出自粛中なのでGW中は殆どこのムゲン団の三次小説に費やしました(隙自語
皆様はどうやって長期休暇を過ごされましたか?
……え、休暇がない?
この時期でも仕事があるのは素晴らしいですね(目逸らし