ローズ委員長が出てきたりします。
センジュが手配したアーマーガアタクシーで、ガラル地方の端まで移動する。着いた場所には、何人かの警備員がいた。
「ふーん、こんな所にいるんだね」
「」ウリが呟きながら進む。センジュが事前に手配していたため、彼のところに辿り着くまで然程時間は必要としなかった。
「……やぁ、まさか君の方から尋ねてくるとは思っていませんでしたよ、ユウリさん」
椅子に深く腰掛けているのは、ローズだ。
「よかった、私の名前くらいは知ってくれてたんだ」
いつもの微笑みで、ローズの対面に座る。
「勿論、今ガラル中で話題ですよ。ファッションのカリスマ、チャンピオンに匹敵するポケモントレーナー、ムゲン団のリーダー……実に興味深い」
そういうと、「」ウリは、ローズの言葉もそこそこに切り出す。
「情報収集を怠る間抜けではなさそうだね。センジュ、資料を渡して」
センジュが準備していた紙束をローズに手渡す。その内の一つに目を通すと、ローズが目の色を変える。
「ムゲンシステム、これを……貴女が?」
最初と変わらぬ表情で、「」ウリが囁く。
「私なら、ムゲンダイナを使いこなせる。今度は……実現してみせる」
スパイクタウンで、マサルとマリィがカレーを口に運ぶ。多忙を極めるチャンピオンと食事をするのも、綿密に予定をすりあわせなければ出来ない。その為、この日を期待していたマリィだが。
「どうしたん、その傷」
頬に着いた絆創膏を見て、心配する。
「ん、バトルに負けた」
へぇ、と気の抜けた返事をしたマリィ。だが、その後に驚愕する。
「マサルが? 負けた!? 誰に!??」
食事をそっちのけにして、マサルに問いただす。
「負けたって言っても、三匹縛りだから、正式なポケモンバトルじゃないけどね」
マリィの焦燥に気付いていないのか、食事を続けながらマサルが言葉を続ける。
「ユウリ、やっぱり強かったな」
マサルのゴリランダーをユウリのエースバーンが倒す。マサルの手持ちは三体目、ユウリはまだ二体目だ。
「……マジか」
マサルは、起きたことを信じられない、と言った表情だ。
「うん、中々強かったね。後十年もすれば、負けちゃうかも知れないなぁ」
バトルを終えたエースバーンに労いの言葉を掛ける。そもそも闘える手持ちが三体しかいないから、正式なバトルだと厳しいかな、とユウリは付け加える。
「それじゃ、約束。ムゲンダイナを見せてくれる?」
その言葉に、マサルは頷いた。
「ただし、俺もしっかり制御出来る訳じゃないからな……気をつけるんだぞ?」
そういうと、モンスターボールを操作し、光があふれ出す。赤黒く輝くその体は、幾万年前に存在した、竜の骨格のようにも見える。あふれ出すエネルギーが、その巨体を更に大きく見せる。
「……え?」
だが、マサルを驚愕させたのは、ムゲンダイナがユウリに懐いている事だった。マサルにも見せない表情をユウリに見せていることに、ユウリというポケモントレーナーの異常さをうかがわせる。
「おかえり、ムゲンダイナ」
「それで、ムゲンダイナを渡したっちゃ!?」
マサルがカレーを食べ終えた皿にスプーンを置き、首を縦に振る。
「……信じられんと」
自分の捕まえたポケモンを渡すことは、本来あり得ない。余程親しい仲か、自分の子供にでもない限りない。ましてや、伝説と呼ばれる様なポケモンを手渡す等、前代未聞だろう。
「まぁ、俺が持ってても役者不足というか、暴れたりない……じゃないな。ムゲンダイナ自身が、バトルしたがる性格でもなかったしな」
年中バトルのことしか考えていないマサルとは、相性が合わなかったのかも知れない。ムゲンダイナの強大すぎる力は、一般トレーナーとのバトルに使える様な物ではなかったからだ。
「マサルでも勝てないって……本当に何者?」
ワイルドエリアは、その日は砂嵐で視界が極端に悪く、熟練のトレーナー以外は予定を切り上げるか、外出を控える様な天候だった。
「ん~、まぁホップなら大丈夫かなぁ?」
少し気の抜けた声で人を待っているのは、ユウリだ。本来であれば、テントを張って砂嵐が過ぎるのを待つか、安全な所に避難するのだろうが、彼女はまるで散歩をする様に歩いている。
「……ん?」
歩いていると、ふと違和感に気付く。少女がうずくまって泣いているのだ。
「どうしたの?」
安否を確認しながら、少女に声を掛ける。外傷はなく、少女は大丈夫そうだが、すすり泣く声は止まない。
「……私の、ジグザグマが」
恐らく、何も知らずにワイルドエリアに降りてきたのだろう。年頃の少年少女が肝試しのようにワイルドエリアに忍び込んで事故が起きるのは、毎年確認される。
「お姉さんに任せて」
エースバーンに少女を護衛させ、ユウリは彼女がポケモンに襲われたであろう場所へと向かう。その途中で、少女が出会ったであろうバルジーナと遭遇するが、
「ドラパルドっ!」
格上のポケモンと判断したのだろうか、一撃攻撃を受けると砂嵐の中に去って行った。
「……遅かったみたいね」
何のトレーニングも積んでいないジグザグマには、ワイルドエリアのポケモンと相手をするのは分が悪すぎる。主人を守る為には命を懸けるしかなかったのだろう。ユウリは、亡骸を抱えて少女の元へと戻る。
「う、うそ……ジグザグマぁ」
少女は泣き崩れてしまう。幼い子にはまだ、ポケモンとの別れは辛すぎるのだろう。
「ごめんね、間に合わなくて……一緒にお墓、作ってあげよう?」
少女は涙ながしながら、ユウリにしがみつく。ひとしきり泣き尽くすと、嗚咽を上げながらも、ポケモンの墓をユウリと作る。
「……あとは、お願いしますね」
ナックルシティの警備員に少女を託すと、少女は自分の家へと連れて行かれる。その途中、階段を登り切る前に一度だけユウリに振り返った。
「お姉ちゃん……ありがと」
その言葉を聞いて、手を振るユウリ。
「どうしたんだユウリ!? めちゃめちゃ汚れてるぞ!?」
ようやくワイルドエリアに着いたホップに、盛大に心配されるユウリ。
「ちょ、ちょっとあってね」
折角ホップとの特訓に、あまり暗い話題を持ち込みたくなかったのか、詳細を話すことはなかった。
「仕方ないな、俺が代わりに着替えを買ってくるぞ!」
後日、ブティックの女性コーナーでホップが大慌てしていたことと、ユウリが糞ダサTシャツを着ていた事が話題になった。
読了ありがとうございました。
投稿時間間違えて投稿しちゃってることに気付くのに遅くなりました。
……スタックなくなってちまったよ!?
あ、ちなみに「」ウリが選んだのはサルノリです。
エースバーンを使い始めたのはチャンピオンになってからです。
先代チャンピオンリスペクトと世間からは認識されていますが、
彼女はホップの挑戦を待っていたんですよねぇ……
無粋なお話でした。