Black "k"night   作:3148

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※胸糞と感じるかも知れません、閲覧注意です!




グロとかではありませんが、自分で書いてて嫌な気持ちになったので……


零話 とある青年の過去 前編

 時間は遡る。今から十数年前だろうか、病室で赤子を抱える母親がいた。その子は、生まれてからずっと、泣き続けていた。

「……ずっと、泣いてるわね」

眠る時以外はずっと泣き続けていた。医者に診せても。

「異常は見られません」

そう告げられるだけだ。困った母親は、疲労が積み上げられていく。

「何が……悪いの?」

友人に聞いても、病院の人間に聞いても、答えは分からない。そうして数ヶ月が過ぎた頃、違和感を覚える。赤ん坊の髪の色が夫婦のどちらとも違うのだ。

「……遺伝的になるはずの無い色です。後天的な要素によるものだと考えられますが……原因はわかりかねます」

首を横に振る医者、その言葉に母親は正気を失った。

「この子は……私の子供じゃ無いの」

 

 父親に抱えられてやってきたのは、孤児院だった。本来であれば身寄りが無い人間が集まる場所で有り、父も母も健在の赤ん坊には由縁がないはずだが。

「すみません……この子が居ると、妻が狂ってしまうのです。遠からず、その手に掛けてしまう」

事情を説明され、孤児院の委員長はその子供を受け入れる。誰の手に抱かれても泣き続けるその子供は、まるで周囲の不安を感じ取っているかのようだった。

 

 真っ白の髪と真っ黒の瞳を持つ少年は、いつも独りだった。誰からも相手されないということではない、彼自身が他人と共に居ようとしていないのだ。

「別に……他人が嫌いな訳じゃない」

これでも、親元に居た時よりも遙かにマシになっているのだ。泣き続ける事も無くなったし、意思疎通を図ろうとするようになった。それでも、孤児院の人間と仲良くなるということは無かった。

「こんにちは、僕はビート……君の名前は?」

孤児院に新しく子供が入ってきた。経歴こそ分からないが、この子供も親と離れなければならない理由があったのだろう。

「……リンドウ」

 

 アラベスクタウンに遠足に行くと、リンドウはフラフラと森に迷いこむ。それをルミナスメイズの森とよばれていることを知ったのは、随分と後の事だった。アラベスクタウンに来たことで、昔のように戻ってしまったのだ。周囲の不安が、周りの感情が自分に流れ込んで来る。まるで自分が無くなってしまう様な、押しつぶされてしまう様な恐怖から逃れたくて、唯只管に人のいない方向に歩いて行く。

「フゥ?」

森の中を彷徨い歩いていると、紫色のポケモンと出会う。頭に角が生えている、イエッサンと呼ばれるポケモンだ。リンドウが泣きじゃくっていると、イエッサンもその感情を共有してしまったのか、不安な表情になる。それを感じてまた、リンドウはより強く泣く。だが、イエッサンは哀しく、不安な表情のまま、リンドウに寄り添った。

「フゥウゥ」

赤ん坊の時以来のぬくもりに、リンドウは涙を流す。堪えきれない不安が溢れ、他人のぬくもりを思い出すことに、安心を覚える。

 

 それから、一年の時が流れた。最初はイエッサンの集落で過ごすことに慣れなかったが、今ではリンドウもイエッサンの家族のようになっている。互いに協力しながらルミナスメイズの森で生活していると、偶にイエッサンから尋ねられる。

 仲間が恋しくはないか?

リンドウからすれば、イエッサンが家族のようなものだったが、それでも自分がイエッサンと違う種族だということは分かる。ルミナスメイズの森で生活していれば、トレーナーの姿を遠くで見ることもあった。だが、気配を感じるとリンドウは逃げ出した。不安と恐怖が伝わるのだ、昔に戻るのを恐れて近づくことが出来ない。

「あー、もう! 腹立つあの糞ババァ!」

いきなりの大声に、驚いて腰を抜かすリンドウ。

「あれ? こんなところに子供がいるなんて珍しい……街の子供かな、迷子?」

そう行って、プラチナブロンドの女性がリンドウに手をさしのべる。今まで人間が近くに居て気付かなかったことはなかったのに、何故かこの女性には気付かなかった。

「あなた、だれ?」

その言葉に、胸を張って女性が答える。

「私の名前はメロン! キルクスタウンのジムリーダー 氷タイプの使い手、メロンさんだよ!」

スタイルの良い肢体をアピールしながら名乗りを上げる。リンドウにとって、色々な意味で初めて出会うタイプの人間だった。

 

 イエッサンはリンドウに尋ねる。本当に彼女の元に行かなくて良かったのかと。人間と共に暮らさなくて良いのかと。

「……分からない。だけど、怖いよ」

首を横に振るリンドウ。確かに彼女は他の人間と違ってそばに居ても怖くはなかった。だがしかし、それは彼女だけだった。そして、その彼女がリンドウの事を友好的に見てくれる保証はない。恐らく、メロンと呼ばれた女性は、この土地に暮らす人間では無いのだろう。出会うチャンスは多くは無いはずだ。

「……怖い」

 

 再びメロンが森に現れる。自信満々に歩き回る彼女を避けるように動くリンドウ。時折聞こえる声が、リンドウを探しているだろうと事が分かった。

「イエッサン?」

♀のイエッサンが不安に震えるリンドウの手を掴む。温もりが少しリンドウの不安を和らげる。

「……えっ?」

一瞬にっこりと微笑んだかと思ったら、ものすごい勢いでイエッサン♀が走り出した。勿論、メロンの元に向かって。

「えっ、この間の少年……とイエッサンじゃ無い」

突然現れたリンドウに驚き、怯えてイエッサンの後ろに隠れる少年に、優しい笑みを向ける。

「あなた、良かったら私と一緒に暮らさない? 子供が一杯いるから、きっと直ぐに馴染むわ」

差し伸べられた手を、リンドウはじっと見つめる。不安と恐怖と、僅かな期待を持ってリンドウはその手を取る。

「……きゅ?」

安心した表情のイエッサンが、一転疑問の表情に変わる。

「……」

メロンの手を取ったリンドウだが、もう片方のては、イエッサンの手をしっかりと握りしめている。

「あら、貴女も来るのね? 勿論、大歓迎よ」

 




読了ありがとうございました。

いや、別に悲劇のヒーローを書きたい訳じゃないけど!

設定が生えるのを放置してたらこうなったorz

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