バエルを使って、アグニカンドリームを実現する為にガンプラバトルをする男 作:GT(EW版)
ラストエボリューション絆を見た時の私リオ「許してしまうかもしれない……!(号泣)」
細谷さんの演技はやはりカッコいい。
しばらく二人と語り合って、一つわかったことがある。いや、わかっていたことを改めて再確認した。
リクという少年は私などよりも遥かに、英雄的資質が高いということだ。
私がバエルで暴れ回り、存分にアグニカを堪能したあの戦いの後。
リク君はあろうことか、私を差し置いてさらなるアグニカを行っていたのだ!
言うなればそれは、真の最終決戦だった。
ブレイクデカール事件の黒幕から直々に呼び出されたリク君は、舞台を電脳世界からリアルへと変えて最後の戦いに赴いたのだと言う。
ブレイクデカール事件の黒幕──リク少年は彼の名前までは教えてくれなかったが、黒幕の正体は正義を拗らせた元GPデュエルプレイヤーだったようだ。
事件を起こした動機はGPDからガンプラバトルの舞台を奪ったGBNへの復讐。時代の変化を受け入れられなかった黒幕は、GBNの世界をガンプラバトルの本質を見失った偽物と断罪し、その手で破壊したかったのだと言う。手段をより過激にしたシオンのようだと想像すれば、何とも哀れに思える。
黒幕は自らの野望を打ち砕いたダブルオーのパイロットであるリク君に興味を持ち、今度はリアルの世界でGPDによる一対一の果たし合いを申し込んだのである。
その時はリク君も黒幕から取り返したかった物があったらしく、それを返還することを条件に果たし合いを承諾。愛機「ダブルオーダイバーエース」を駆り、彼は人生初のGPデュエルに挑むこととなった。
黒幕もまた今度は自らのガンプラを駆って、正々堂々の真っ向勝負にのめり込んだ。
「アストレイノーネイムか……」
ぶつかり合うダブルオーダイバーエースとアストレイノーネイム。白熱していく戦いの中で、リク君は相手のガンプラを通して黒幕が抱えていた思いの丈を理解した。
時代の流れに拒絶された悲しみと怒り、ガンプラバトルを愛するが故の憎しみ。悲劇から生まれ出た激情を受け取ったリク君は、彼のガンプラバトルへの思いを受け取った上でその行いを断罪した。
GBNのガンプラバトルは偽物なんかじゃない。GBNを本気で楽しんでいる自分たちの気持ちもまた、本物なのだと。
彼がガンプラバトルが大好きなことはわかった。だが、だからこそガンプラを好きだという気持ちで他の誰かを傷つけるのはやめてください、と──そう訴えかけながら、リク少年は黒幕との戦いに終止符を打ったのである。
肉を切らせて骨を断ち、最後の力を振り絞ったダブルオーのビームサーベルが黒幕のアストレイを貫いた。
──そうしてブレイクデカール事件の、真の最終決戦が終結したのだった。
……それが、あの戦いの後でリク少年の身に起こった出来事の顛末である。
何と言うことだ……君のアグニカポイントは止まらない! 加速する……!
私の目に狂いは無かった! 凄まじいな……チャンピオンも目を掛けていたわけである。
この話をリク君が一通り語り終えた後、私の心に浮かんだのは彼の身の回りで起こった濃い一日への戦慄だった。
彼の口から語られたアグニカンドラマに、終始驚かされるばかりだった。次々と押し寄せてくる怒涛のアグニカチャンスを真っ向から乗り越えていくリク君の強さと勇敢さに、私は敬意を表したい。ナイス・アグニカ!
特に素晴らしいのはアグニカしようと思ってアグニカしている私とは違い、彼はロールプレイでも何でもなくごく自然体でアグニカしていることだ。
その在り様、言わば純粋種のアグニカである。私にはできなかった生き方だ。
「いえ、そんな……俺はただ必死で、俺たちの好きを否定されたくなかったから……」
「その真っ直ぐな思いこそが、彼を打ち破ったのだろう。人々の為に無我夢中で立ち上がることができるその心は、誰もが持っているものではない。私は君を尊敬するよ」
「あ、ありがとうございますっ」
始めは私がリク少年にこの町を訪れた理由を問い質してみたのが切っ掛けだったのだが、まさかこのような濃い話が返ってくるとは思わなかったものだ。事実は小説より奇なると言うが、まさにこのことだろう。彼と私がリアルの世界で繋がりがなかったことを恨めしく思うばかりだ。知っていれば私も、間違いなくその場に駆けつけていたところである。
黒幕に対するリク君の行動を偽りない賞賛で称えると、彼は頭を掻きながら照れくさそうに笑う。そんな彼の横顔を見て、少女サラが嬉しそうに頬を綻ばせていた。
ふっ……これだからガンプラバトルはやめられないな。世界は私の知らないアグニカに溢れている。良い話を聞かせてもらった。
そこまで聞けば、彼がこの町を訪れた理由も自ずとわかるものだ。
「なるほど、事情はわかった。君はその戦いで破損したダブルオーを、どう改修するか悩んでいるのだな? このぺリシアを訪れたのは、展覧会のガンプラたちからインスピレーションを得る為か」
他人のガンプラを見て自分のガンプラ作りの参考にするのは、上達を目指すガンプラビルダーの常套手段である。私にも覚えがある。
故にリク君が何故このような話をしたのか、その意図は手に取るようにわかった。
私の問い掛けに対して、彼は神妙な顔で頷く。
「……はい。このGBNを始めてから今まで見てきたものを、一から振り返って考えているんです。なかなか、上手くいってないですけど……」
「あのダブルオー……ダブルオーダイバーという機体は、君にとって特別なガンプラだったのだろう? 思い入れのあるガンプラを改修するとなると、慎重になるのは当然だ」
「はは……似たことをシャフリさん……シャフリヤールさんからも言われました」
GPDはGBNとは違い、戦いで受けたダメージがダイレクトにガンプラを傷つけてしまう。損傷が酷ければ修復は不可能になり、彼が扱っていたダブルオーダイバーエースはまさにそんな状態なのだろう。
そこでリク少年はダブルオーの魂を受け継いだ新しいガンプラを製作することに決めたのだが、この設計が行き詰まっており、頭の中で発想が纏まらないということを重々しく明かしてくれた。
そんな彼が、縋るような目で私に訊ねる。
「バエルさんは、どうして自分のガンプラにバエルを選んだんですか?」
良い質問だ。
しかし、私にできる返答は月並みである。
「君がダブルオーを選んだのと同じ理由だよ。数あるモビルスーツの中で、ガンダム・バエルが好きだったからだ」
「そうですよね……バエルさんのバエルからは、姿を見ているだけで大きな愛が伝わってきました」
「まだまだ至らぬばかりさ」
予想通りの答えしか返せなくて申し訳ない。
そんな私の言葉を真摯に受け止めながら深く考え込むリク少年の横から、サラ嬢がひょっこりと顔を出して問い掛けてくる。
「バエルのお兄さんは、バエルのどんなところが好き?」
「生まれてきてくれたことかな」
「わぁ……」
その問いにも迷うことなく即答を返した。
私がバエルを愛機に選んだ理由はバエルが好きだからであり、バエルが好きなのはバエルがバエルだからである。結局のところ自分にとって理想のガンプラとは、自分が最も愛する機体になるものなのだ。
確かにバエルを作り始めた当初の私は、バエルを軽んじる愚か者たちに対する怒りの中で生きており、心の中には常に彼らを見返したいという反骨精神があった。
そんな邪な私だが、バエルを300体も作っていく内にそう言った邪念は次第に薄れていき、少しずつこの世の真理に近づくことができた。それこそがアグニカの悟りである。
バエルを雑魚だと、言いたい者は勝手に言っていればいい。今の私からすれば気にするまでもない些末事だった。
そのような過去をサラ嬢とリク君に語ると、二人はうんうんと素直に頷きながら呟いた。
「バエルが、いっぱい好きなんだね……」
「そうかぁ……やっぱり、そういう気持ちでガンプラを作る人が強いんだなぁ……」
「なに、個人のアグニ観は人それぞれだ。私の言葉は参考の一つに留めておけばいい」
バエルを持つ私の言葉はアグニカ・カイエルの言葉……と、マクギリス・ファリドのように主張を押し付けるのもいいが、リク君もまた私が認めたアグニカの一人だ。彼に対しては私の言葉に従えと命じる気はない。
それはそれとして、私は彼にバエルをおすすめさせてもらうが。
「迷っているのなら君もバエルを使ってみるのはどうだ? ダブルオーと同じ近接戦主体の機体だ。君の操縦適性にも合っているだろう。射撃武器が必要なら君好みにカスタマイズするのもいい。バエルの拡張性ならそのぐらい容易いことだ」
「バエル……ダブルオーバエル……? うーん……それは、確かに強そうですけど……」
ふっ、我ながら変わったものだな。バエルの武装をカスタマイズするなど、昔の私ならまず口にしなかったことだろう。
高校時代まで私は純正以外のバエルを認めず、生半可な実力の者がバエルを使うことさえ強く否定していたものだ。狂信者の自覚は今でもあるが、当時と比べれば私も緩くなったということだろう。
尤も実力に関して言えば、リク君なら既にバエルを使いこなせると考えている。
GBNはGPDと違って連戦が効く分、プレイヤーの戦闘経験が蓄積していくのも早い。私が見込んだところでは、GBN世代であるこの少年は学生時代の私とは比べ物にならないスピードでメキメキと腕を上げていくことだろう。
君のようなビルダーにこそバエルが似合うという気持ちに嘘はないが……肝心の彼の反応を見るに、どうやら脈はなかったようだ。
「そこで言い淀むということは、バエルと君に縁は無かったらしい」
「いえ、その……」
「結構。自分の愛機と言うものは、決まる時は深く考えずとも決まるものさ。私はそうだった」
「バエルのお兄さんも?」
「ああ、鉄血のオルフェンズの劇中で初めてバエルを見た時、私の心は言い表しようのない深い衝動に突き動かされた……私もあの機体で戦ってみたい、あのガンダムでアグニカしてみたいという衝動だ」
「衝動、ですか……」
尤も、色々な機体を試運転しながら自分の適性にあったガンプラを理論的に吟味していくのも一つの手だ。
始めはただ単に強いからという理由で使っていたガンプラが、使っていく内に愛着が沸いて一番好きになっていくパターンもガンプラバトル界隈では一般的である。
偉い人は言っていた。強いガンプラ、弱いガンプラ、そんなものは人の勝手だと。
故に、私にできるアドバイスと言えば精々参考の一つとしてバエルの魅力を教えてやることぐらいだった。
今だ同志諸君! 叫べアグニカパワー! 無敵のバエルがそこで待っている。鉄血のオルフェンズ──ラスタル様もおったまげ!
そうとも……この身を喰らい尽くすこの激情、それはおそらく、リク君にも覚えがある筈だ。
「あ……」
リク君のガンプラ、ダブルオーダイバー。あの時目にした彼の機体からは、何か私のバエルと似たものを感じていた。
そんな彼ならば、私と同じように愛機の製作は衝動的に行った方が良い結果を得られるのではないかと思った。
そんな私の意見に、虚を突かれたような反応でリク君が言った。
「そうだった……初めてダブルオーを見つけた時、どこまでもこのガンプラと一緒に飛んでいきたいと思った」
「ダブルオーも、そう思ってるよ」
「サラ……ありがとう」
頭の中で考えが纏まった様子のリク君に対して、サラ嬢が後押しするように言う。
その瞬間、彼はこれまでよりもリラックスした、良い具合に力が抜けた顔つきに変わった。ふむ……この二人は将来良い夫婦になりそうだな。
尤も今の二人は、こちらがそう言った野暮な勘繰りを行うには尊すぎる距離感に見えたが。
「いい答えが見つかったようだな」
「はい! まだはっきりと浮かんだわけではないですが……バエルさんのおかげで、初心を思い出すことができました。もう一度デッキに行って、ダブルオーと向かい合ってみます!」
今の彼ならば、いや、彼らならばきっと私の想像を超える良いガンプラを生み出すことができるだろう。
ビルダーの先輩として、私の言葉が助けになったのならば幸いである。
君のガンプラが完成した暁には、是非とも我がバエルと手合わせ願いたいものだ。
「こちらこそ、その時はよろしくお願いします! 今日はありがとうございました!」
「バイバイ」
日時未定の対戦を約束すると、リク少年とサラ嬢は爽やかな笑顔を浮かべながら駆け出していく。
いずれ私にとって最大の脅威になるであろうアグニカの芽は、大事に育てていきたいものだ。二人の背中を見送りながら、私はいつの日か訪れる彼らとガンプラバトルに思いを馳せた。
《あの二人……いいな》
一言書き込んだメールをクジョウ・キョウヤ宛てに送信してみると、数秒後に《いい……》という返信が返ってくる。通常の三倍速いチャンピオンの返信に苦笑しながら端末を閉じると、私はこの町を訪れた本来の目的を思い出した。
さて、随分と話し込んでしまったが私もそろそろ活動を再開するとしよう。
フォースネストの改造に詳しい者を捜すのなら、やはり人が多い場所へ向かった方がいいだろう。そう判断し、私は展覧会の中で一際混み合った雑踏を視界に捉え、そちらに向けて歩を進めた。
その時だった。
私はそこに集まっていた人だかりが、ガンプラの展覧会とは全く別のものだということに気づいた。
たとえばそれは、人気アイドルのサイン会のような光景だった。
各人がウインドウ画面を開いてスクリーンショットを焚いており、一様に同じものを見つめている。
一同の視線を集めた人混みの中から、ふと少年の声が聴こえてきた。
「何か静かじゃないですね~。町の中にはガンプラも多いし、火星エリアとは偉い違いだ」
おや、これは……
「ああ、鑑賞用のガンプラは軒並みこっちに回してんのかもな」
「まっ、そんなのもう関係ないですけどね!」
「上機嫌だな」
「そりゃそうですよ。みんな凄いガンプラだし、タカキも頑張ってたし! 俺も頑張らないと!」
……なるほど。
何故これほどの人だかりができたのか、その声を聴いて私は理解した。
こうしてはいられないと優雅に人混みを掻き分けながら、私もまた最前列に出て野次馬に加わることにする。
「ああ……俺たちが今まで積み上げてきた在庫の山は、全部無駄じゃなかった。これからも、俺たちが立ち止まらない限り、道は続く……」
そこは、異様な空間だった。
路地裏から並び歩いて出てきた赤スーツの男と鉄華団ジャケットの少年。その姿はどこから見ても、決して散ることのない鉄の華である。
「ガッ!?」
彼らが大通りに出た瞬間、唐突に出現した黒服のヒットマンたちの銃弾が呑気にその場に佇んでいた黒人のボディーガードを襲う。
真っ直ぐに彼の肩を捉えた銃弾は演出用のペイント弾だったが、撃たれたボディーガードは本当に痛そうな顔で肩を押さえ、その場に蹲る。
ヒットマンたちのマシンガンから矢継ぎ早に襲い掛かる銃弾の嵐は、少年の身体を覆い被さるように庇った赤スーツの背中に容赦なくサクサクと突き刺さっていった。
「団長……? 何やってんだよ団長っ!」
本当に、何をやっているのだろうな。
一頻りペイント弾を背中に受けた赤スーツの男は、振り向き様に銃を構えその引き金を手当たり次第引き絞る。
「グゥ!? ……ッ、ヴァアアアアアア!!」
迫真の叫びだった。
撃ち返した弾丸はヒットマンの内の一人に命中すると、それを受けたヒットマンたちはまるでタイムアタックに追われているかのような動きで慌てて車に乗り込んで勢い良く撤退していった。
「何だよ……結構当たんじゃねぇか……」
ふへっ……と勝ち誇ったように笑いながら、本当に意識が朦朧としているようなリアルな演技を行いながら赤スーツの男が立ち上がる。
ふらつきながらも堂々とした後ろ姿を見据え、いつの間にか後方に下がっていた少年が膝をつきながら狼狽えた。
「だ、団長……? ああ……あああ……っ」
「なんて声、出してる……ライドォ!」
「だって……だってぇ!」
そして、静寂に包まれた路地に聞き慣れたメロディーが響き渡った。
美しい音色だ。このイントロを聴いていると、思わず私も「バエルは蘇った!」と演説を行いそうになる。
しかし、かの名曲を奏でている楽器は原曲のピアノではなかった。
「む? このフリージアは……」
これは琴……カンテレか。
赤スーツの男は何処かのカンテレから鳴り響く音色に沿ってお馴染みの自己紹介を行いながら、一歩ずつ前に進んでいく。
俺たちにたどり着く場所なんて要らない。ただ突き進むだけでいいのだと呟きながら、彼はその手でオルガ・イツカ最後の命令シーンを再現した。
「俺は止まんねぇからよ……お前らが止まんねぇ限り、その先に俺はいるぞォ!」
言い切る前にうつ伏せに倒れながら、右手に銃を握ったまま左手を振り上げる。
既に血に染まりきった指先を、辿り着くべき場所へと突き出しながら──
「だからよ……止まるんじゃねぇぞ……」
自らを犠牲に仲間たちに進むべき道を示した男は、己の志を託し黄昏に散った。
彼らを囲むギャラリーの誰もが、その男の散り様に釘付けになっていた。
そしてフリージアの演奏が終了すると同時に、後方から「カット!」という声が響いた。
瞬間、沈黙は破れ、辺りはライブ会場の如き盛大な歓声に包まれた。
「流石団長だ! 指の角度から足の角度まで原作通りだ!」
「意識たけぇー! 生半可な演技力じゃないぜ!」
「ナイス・オルガ!」
「やっぱお前らのロールプレイがGBN1だ!」
「実写版鉄血のオルフェンズじゃねぇか……」
そう、今しがた我々の前に広がっていた一連の流れはゲームのイベントではなく、プレイヤーたちによるゲリラライブだったのだ。
彼らは鉄血のオルフェンズにおける作中のワンシーンをGBN風にアレンジし、それぞれに役者を当てて再現していた。
さながらそれは、実写版鉄血のオルフェンズとして劇場公開できるほどのクオリティーである。
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
「俺たちにおひねりなんて要らねぇ……ただチャンネル登録してくれるだけでいい……だからよ……」
先ほどまでライド・マッスになりきって迫真の泣き演技を披露していた少年が、けろっとした笑顔でギャラリーに振り返り一礼する。
彼らの演技中は誰もが静かに見守っていたが、終わった途端町はガンプラ展覧会を遥かに凌ぐ今日一番の盛り上がりを見せた。
日に日にG-tuberの地位が向上している現代社会であるが、彼らほどの人気G-tuberともなると人々から人気芸能人と変わらない反響を呼ぶようだ。
私もまた、彼らのことは何度か動画で見ている。
私はマッキーとして自分自身が動画を上げることはないが、G-tubeの流行については人並み程度の知識があった。
「これが、鉄火団の演技力か……」
G-tuber「鉄火団」。決して消えることのない鉄の火だ。
彼らが投稿する動画はどれもエンターテイメントに特化しており、動画内では団員たちが各声優の特徴を捉えた迫真の演技力で鉄華団員のモノマネを行いつつ、ジェンガや叩いて被ってジャンケンポンなど本物の鉄華団がまずしないであろうシュールな遊びを真剣に行ったりしていた。
そのような姿を日夜動画に収めている彼らは、この一年でチャンネル登録者数をぐんぐん伸ばしている人気G-tuberの筆頭だった。
中でも【まるで団長】オルガvsラスタルシリーズは彼らを代表する人気大作動画である。どうせまたオルガが負けるんだろうけど……
そしてそのサークルのリーダーを務めている男は、私の顔見知りでもあった。
「っ、あんた……!」
彼らの動画撮影風景を見届けた私が最前列から拍手を贈っていると、うつ伏せの体勢のまま私の存在に気づいた赤スーツの男が目を驚いた様子で見開いた。
そのアバターはまさしく、鉄華団団長オルガ・イツカだった。
……そうか。この世界ならば、モノマネを超えるクオリティでオルガ・イツカになれるのだな。
マクギリス・ファリド風のアバターを作っている私に言えたことではないが、ゲーム内での彼はもはやフル・フロンタルレベルの気合いが入ったパチモンだった。
「相変わらずで何よりだ。一目でわかったよ、団長」
「マッキーじゃねぇか……」
GBNにログインしてからこの方、高校時代の旧友と再会するものだ。
そう……彼こそが、私がかつて所属していた模型部の部長である。
オルガ・イツカをこよなく愛する彼のあだ名は専ら「団長」。その名の通り、鉄華団団長のロールプレイに命を懸けた、熱きガンプラビルダーだった。
今回は「バエルだ!」をねじ込めなかったので「止まるんじゃねぇぞ……」を代用にします。
次回は新メンバーが加わります。やったぞみんな我々の勝利だの人です。