バエルを使って、アグニカンドリームを実現する為にガンプラバトルをする男   作:GT(EW版)

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 フレディ君もリク君にアグニカみを感じてたようでチャンピオンもニッコリ。


お前では勝てんよ

 模型部の団長は、私以上に負けず嫌いな男だった。

 

 彼はその特徴的な前髪通りオルガ・イツカをリスペクトしている稀有な人物なのだが、かの鉄華団団長とは違い彼自身は生まれも育ちも恵まれた部類であり、大家族の長男でありながらも比較的裕福な暮らしをしている──と、本人から聞いたことがある。

 そんな彼が何故オルガ団長に惹かれたのかと言うと、仲間の為ならば如何なる困難であろうと突き進むことをやめない勇敢な姿勢に、自分には無い男気を感じたからなのだと言う。

 鉄血のオルフェンズでは皮肉にもその在り方が災いし、自身が破滅の運命を辿る結末となったオルガ・イツカだが、彼が踏み記した生き様は生き残った団員たちの道標となった。

 自分自身は目的を果たすことができなかったオルガ・イツカだが、彼の行動は間違いなく団員たちの明日を掴んだのだ。そんな彼のことを私は「敗北者」だと認識している一方で、別段嘲笑うべき対象とは思わなかった。

 最後の最後まで仲間たちのことを想って生きていた男の、一体何が可笑しいのだろうか? 

 模型部の団長もまた、志半ばで倒れながらも突き進むことをやめないオルガ・イツカが好きだった。それは負け続けながらも戦い続けるガンダムのパイロットたちの姿勢を尊く思うトレーズ・クシュリナーダのエレガントイズムに近い感覚なのだろう。人々の心を動かすのは、勝者ではないのだ。

 

 まあ、それはそれとしてネタはネタとして楽しんでいた。嘲笑うことはしないが、面白いものは素直に笑い返すのが私の流儀である。

 オルガはいいキャラクターだったが、オルガMADがいけないのだよ。

 

 

 そんなオルガ・イツカの良いところも悪いところもリスペクトしている元模型部団長は、自らのチャンネルで鉄華団員に扮したパチモン軍団を立ち上げると、日々視聴者を笑わせてくれる面白おかしい動画を投稿していた。

 高校卒業からこの方彼とはしばらく会っていなかった私だが、彼が投稿した動画は最新作までチェックしている。

 そしてその最新動画の最後には、我々に関するメッセージが載せられていた。

 

《新しい仲間にミカが加わった俺たち鉄火団は、最強のメンバーを揃えてフォース戦に挑む。しかしそこで俺たちの前に立ち塞がったのは、かつて俺を止まらなくさせたあの男だった!! 

 次回【腹くくっていこうじゃねぇか大将! 鉄火団vsアグニカンスピリッツ】 次回もこのチャンネルに、止まるんじゃねぇぞ……》

 

 つい先ほど投稿された動画で収録されていた、次の活動の次回予告である。オルガの最期の言葉である「止まるんじゃねぇぞ」が、なんだか決め台詞みたいなことになっていた。

 予告映像には一目でバエルとわかるシルエットが浮かび上がっていた。流石に何年もG-tuberをやっているだけあり、手慣れた編集をしてくれたものだ。

 コメント欄にはそんな予告に対して各視聴者たちから早速「バエルだ!」「あれは……バエルだ!」「マクギリスじゃねぇか……」とノリの良い感想が書き込まれている。投稿から僅か数分でコメント欄が盛り上がっている様子は、流石人気G-tuberと言ったところだろう。

 

 私自身はバエルの神秘性を高める為に自らチャンネルを立ち上げることはしないが、このように他人が我々のことを宣伝する分には特に干渉する気はない。団長の動画で我々の知名度が向上するのは、今後の活動的に寧ろ僥倖でもあった。

 さらに彼らを応援する匿名掲示板を辿れば、既にこのことが話題となりファンの間で次回への考察が交わされていた。

 

433:名無しのダイバーさん ID:vdm1LSSZb

 ミカがミカだけどミカじゃなくて草。この流れだと次回はガチ回か

 

434:名無しのダイバーさん ID:4HhWHz4jg

 存在そのものがネタなのにガチ回とな? 

 

435:名無しのダイバーさん ID:rCSMsuA/d

 ミカワイイ

 

436:名無しのダイバーさん ID:oNNVOKTHa

 最近バグがどうとか騒がしいけど鉄火団は通常運転で安心した

 

437:名無しのダイバーさん ID:0Mgz9yulU

 ガチ→ネタ→ネタ→と来ているから次は多分ガチ回

 

438:名無しのダイバーさん ID:CCeK33cgv

 次バエル出るのか! これで例のメンバーが揃ったな! 

 

439:名無しのダイバーさん ID:nAKayoC42

 アグニカ・カイエルの魂ッ!! 

 

 

 

 団長いわく、我々の戦いの様子は、後日鉄火団のチャンネルに脚色無く投稿する予定だという話だ。

 鉄火団が投稿するガンプラバトルの動画はネタ回、ガチ回共にエンタメ性の高い試合が多くライトユーザー、ヘビーユーザー共に評価が高い。投稿を待ち侘びるリスナーたちの数はフォース汚名挽会の比ではなく、注目度は今までと桁違いである。

 

 我々にとっては、尚更負けられない戦いになったというべきか。

 

「ふっ……それがお前が、積み重ねてきた力ということか」

 

 応援してくれるリスナー、共に戦う頼もしい仲間。それらは全て、高校卒業後に彼が築き上げた人脈である。純粋な力を抜きにこれほどの規模の集団を結成してみせるとは、彼のカリスマ性はあれからさらに成長していると見える。

 

「お前は本当に面白い男だ、団長。ならば私は心して捻じ伏せてみせよう、アグニカ・カイエルの魂に誓って」

 

 これは自慢ではないが、私は団長との一対一のガンプラバトルでは過去に一度も負けたことがない。

 グリムゲルデの振り放つ二刀を以て、彼が愛機として扱っていた貴重なオルガ専用獅電を幾度となく粉砕し、懸命な修理を終えて再戦を仕掛けてきた際にも無慈悲に返り討ちにしてきたものである。

 たとえ扱うガンプラが貴重な限定品であろうと、相手が全力で挑んできたならば容赦なく迎え撃つのが私なりの礼儀だったのだ。今にしてみれば、彼の財布に与えた甚大なダメージは残酷に尽きたと思う。何の気兼ねも遠慮もなく叩きのめすことができる貴重な対戦相手としては、得難い友人だったのかもしれないが。

 

 ともあれGPDプレイヤーとしての彼は、はっきり言ってカモであった。決して操縦の腕は悪くないのだが彼は少々猪突猛進が過ぎ、接近戦に強いグリムゲルデの間合いに無策で自分から飛び込んでくれる為非常に戦いやすかったのだ。

 それは、当時の私をすっかり慢心させたほどの戦績だった。

 

 しかし、それは我々が一対一で戦った場合である。

 

 これが複数人、お互いが三人以上のチームを組んで戦った時──彼が加わったチームの勝率は五割弱にまで拮抗する。

 それは共に戦う仲間がいる時、彼自身の立ち回りが非常に狡猾になるからだ。

 タイマン時の団長は敵に対して「止まるんじゃねぇぞ」とばかりに無謀な突撃癖を発揮してくるが、これが守るべき味方を持つと途端にいやらしい支援と的確な指示で戦場を支配するゲームメーカーに変貌する。

 良くも悪くも、団長は情が深い男だ。自分だけのバトルであれば好きなように突撃を仕掛けてくる彼だが、仲間の為ならばその自分を抑え込むことができる。そんな彼は味方がやられないように気を配りながら全体を見渡し、いい意味で慎重な立ち回りに徹してくる。

 そんな彼の隊長適性を初めて発揮した試合ではまんまと意表を突かれ、巧みな連携攻撃により私のグリムゲルデは高校生活初の撃墜を喰らったものだ。

 あの時は「負ける!? 俺が!? 団長に!?」と素で困惑の叫びを上げながら、豪快にデブリへと叩きつけられたことを覚えている。その時は団長の後ろでせせら笑うガリガリの顔が腹立たしかった。

 

 そのようなエピソードが代表するように、私は彼ほど個人戦と集団戦で成績が乖離しているGPDプレイヤーは知らなかった。思えばその実力は、GPDよりもGBNのフォース戦でこそ十全に発揮できるものだったのかもしれない。

 

 故にGBNの活動で自信をつけた団長は、私に再会するなりこう言ったのだろう。

 

『ここで会ったが何とやらって奴だ。あんたには何が何でも俺たちと戦ってもらう!』

 

 久方ぶりの再会の喜びに浸る間も無く、不敵な笑みを浮かべた団長が一方的に挑戦状を叩きつけてきた。

 オルガ・イツカを模したアバターの姿でありながら、リアルの面影を隠せない彼のバトルジャンキーぶりを見て、私は挑発的に言い返した。

 

『ふっ……お前では勝てんよ、団長』

 

 このGBNで自信を付けたようだが、我々の間には確固たる力量差がある。高校時代から成長を遂げたのは、お前だけではないのだと言ってやる。

 鉄火団団長がどうした? こちらにはバエルがいるぞ、と。

 しかしバエルを手に入れた私の言葉に対して、団長が返したのは買い言葉ではなく爽やかな笑みだった。

 

『俺じゃねぇ。うちのミカがやる』

『ほう……』

『ミカはすげぇぞ? 強くて、クールで、胸もある。初めてのガンプラも乗りこなすし、演奏も上手い。そのミカの目が言ってくるんだ。「この作戦に意味があるとは思えない」ってな。……あの目に認められる団長になりてぇ。あの目に映る俺は最高に粋がって、カッコいい鉄火団団長じゃなきゃいけねぇんだ』

 

 色々とおかしい……気はするが、彼の真っ直ぐな言葉に、私は感心の声を漏らした。

 彼の語るミカ──それは言わずもがな、鉄血のオルフェンズの主人公である三日月・オーガスのことだ。

 この団長という男はその「ミカ」に対して、昔から並々ならぬ執着を抱いていた。彼にとっての「ミカ」とは言わば、私にとってのアグニカとも言うべき崇拝対象なのだ。

 私がアグニカを追い求め続けているのと同じように、団長はミカを追い求め続けてきた。自分にとって最強の友であり、相棒であり、仲間であり、家族である存在──それが彼の言う「ミカ」という概念である。

 そんな団長の今の口ぶりから察するに、彼は遂に見つけたのだろう。彼にとっての「ミカ」を。

 

『ふっ、たどり着いたようだな』

『ああ、俺はあんたを倒す「ミカ」を見つけた』

 

 私がバエルを完成させたように、彼もまた長年の望みだった「ミカ」を手中に収めたのである。道理で自信満々なわけだ。

 かつての仲間として悲願を果たした彼には私も祝福の言葉を捧げてやりたいところだったが、この時はあえて「ライバル」として挑発的な視線を続けた。

 それは恐らく、彼とはそういう関係でありたいと思っているからなのだろう。

 

『俺がバエルを手に入れたことの意味……わかっているのだろう?』

『まあ、はっきりさせたいんですよ。バエルを手に入れたあんたとミカを手に入れた俺、どっちが上なのかを』

『なるほど……殊勝な心掛けだ』

 

 元々実力差があった私がバエルを手に入れた今、彼と私の間には天と地ほどの差があるのだ。そんな道理を突き付けてみるが、団長は一歩も臆さず力強い眼差しで睨み返してきた。

 力の差を鑑みてなお絶対的な勝算があるほどに、彼が見つけた「ミカ」は強いのだろう。

 ならば。

 

『いいだろう。受けて立つ』

 

 彼の挑戦を拒む理由はない。バエルを持つ者に逃走はないのだ。

 ここにいるのは少年の果てにたどりついたガンプラバトル馬鹿同士……我々アグニカンスピリッツは、全力を持って君たち鉄火団を打ち破ってみせよう。

 

 

 

「どうやら私は、戦うこと以外に旧交の温め方を知らないようだ」

 

 シオンの時と言い、再会時のやり取りを脳裏に思い起こしながら、私はアグニカンスピリッツのモビルスーツデッキに立ち並ぶ我々のガンプラを見上げていた。

 

 今日は試合当日。間もなく鉄火団とのフォース戦が始まる時間だ。

 

 団長のことだ。あちらは間違いなく、こちらのガンプラに対して入念な対策を練ってくるだろう。

 もちろん、我々もそれに無策で迎え撃つ気はない。既に完成している私のバエルは別として、イッシーを始めとするフォースメンバーたちはこの戦いを迎える前に、自らのガンプラにささやかな改修を施していた。

 

 イッシーのヘルムヴィーゲ・アヘッドは肩部にレールガンを装備し、中距離戦での攻撃オプションを追加した。総重量が増えたことでやや機動性は落ちたようだが、いざとなればパージすることもできる為状況を見て判断すればいいだろう。接近戦を得意とするイッシーだが、彼自身射撃が下手なわけではない為、シミュレーションでも問題なく使いこなすことができた。

 

 セイギのシュヴァルベ・ゲイツはこれまでの戦闘データからより自分にあったチューニングを行い、内部設計を見直したことで機体性能が微増し操縦性も向上したようだ。見た目は変わらないが、こちらは順当な強化である。

 

 そして仲良し四人組のリーオーライザーは大胆に装備を一新することとなった。

 背中に装着していたオーライザーをオミットし、代わりにランチャーストライカーパックを装備したことで機体名は「リーオーランチャー」となった。

 オーライザーをオミットした理由は単純に機体のバランスが悪くこれまでの戦績が思わしくないのも一つだが、一番の要因はフォースメンバーにライザップが加わったことで、彼らが担当していたライザ・エンザ要素を補う必要がなくなったからである。今までシナジーの無いオーライザーをあえて装備し続けていたのには、そんな意味があったようだ。流石は仲良し四人組、私とは別の方向からアグニカを見ている。

 そして、リーオーの新装備にランチャーストライカーを選んだのは言わずもがな、320mm超高インパルス砲「アグニ」の魅力に惹かれたからである。以前、シオンの相方が使っていたのを見て羨ましくなったらしい。確かにアグニカみを感じるネーミングだ。実用性的にも、チームに一機は後方から砲撃支援をしてくれるガンプラが居てくれた方が有難かった。

 しかしこうも手軽に武装を変更できることからは、リーオーの拡張性と仲良し四人組のビルド能力の非凡さが窺えるだろう。

 

 そして、今回五人目として参加する最後のメンバーはライザップである。新加入の中で最も腕が立つ方だと言う彼は、自らこの試合に志願してくれた。

 

 そんな彼が扱う機体は「ライザライザー」。オーライザーにキャノン砲を増設し火力を高めたシンプルな改造機である。ここでは戦闘機としての運用が基本になるが、その気になれば仲良し四人組のリーオーと合体することができる設計になっており、その機体からは我々のフォースへの並々ならぬ忠誠心が読み取れた。

 

 ならば、私が君たちを連れて行こう。

 アグニカン・ドリームの栄光へ。

 

「マッキー、ガンダム・バエル、出るぞ」

《ご武運を》

 

 この白き翼は、我々の望みを実現する力だ。私はアグニカを表現できるマシンに乗っているのだよ。

 試合開始の時間が訪れ、バエルに乗り込んだ私は、カタパルトから発進するなり真っ先に目的地へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回の鉄火団対アグニカンスピリッツの試合は、相手チームの全滅を目指す通常の殲滅戦とは異なり、特殊ルールで行われる。

 

 舞台は北極基地。ガンダムNT-1を積載し、サイド6に向けて打ち上げられようとしているコンテナシャトルを巡っての攻防戦──というシチュエーションにて、ディフェンス側とオフェンス側に分かれて作戦成功を目指す形式となっている。

 ディフェンス側は時間経過まで防衛目標であるシャトルを守り抜くか、オフェンス側のガンプラを全滅させれば勝利となり、オフェンス側は制限時間までにシャトルを破壊すれば勝利となる。それ故に、通常よりも戦略性は高いと言えるだろう。

 因みにフォース戦のルールはお互いのリーダーの話し合いで決まり、両者合意のもと鉄火団はディフェンス側へ、アグニカンスピリッツはオフェンス側の立場へと回る運びとなった。

 

 ディフェンス側とオフェンス側はどちらも一長一短であり、統計的に勝率差はなく片方が有利になるようなことはない。しかし鉄火団自体の勝率的には、どちらかと言えば今回のようなディフェンス側の方が好成績だった。

 それはフォースの司令塔たる団長が、見た目に反して攻めよりも守りの戦いの方が優れているからでもある。

 

「さてと……奴はどう仕掛けてくるか……」

 

 氷河に覆われた北極の地の上で、自身のガンプラを所定の位置に移動させた団長はチェスの駒のようにその場に待機した。

 こういった防衛戦では、敵を探す為だからと積極的に前に出るのは迂闊である。敵など待っていればあちらの方からやって来る為、鉄火団のガンプラたちは防衛目標から近すぎず、離れすぎない位置に陣を敷くこととなった。

 

 来る戦いを前に心の中では冷静さを保ちながら、団長は友軍から送られてくる通信に応対していた。

 

《団長! RIDEとタカキン、持ち場につきました!》

「よし、そっちはどうだ? ミカ」

《オーロラが綺麗だね。まるでイバロの雪景色のようだ》

「そうか」

 

 自分以外の団員も持ち場についたようであり、ミカからはカンテレの音色が聴こえた。どんな時でも彼女はマイペースである。まさにミカ! 

 鉄火団側のカタパルトから発進したガンプラは、それぞれ別行動を行いながら向かい来るであろう敵の探知に当たっていた。

 原則として、団長はミカ以外の団員には自分含めて常に二人一組で行動するように命じている。

 RIDEのジョニー雷電号はタカキンのガンバレルダガーと。

 そして団長の「獅電・サブナック」はタイゾーのカンタンバルバトスを付近に待機させながら、敵の出方を窺っていた。

 

 獅電・サブナック──その見た目は、さながら白亜に塗装されたGAT-X131B「カラミティガンダム」のようだった。

 右手にはバズーカが、左腕には耐弾シールドがそれぞれ携えられており、背中のバックパックにはカラミティの代名詞である巨大なキャノン砲が装備されており、胸には580mm複列位相エネルギー砲「スキュラ」と火力面で充実した機体となっている。

 その外見は、オルガ専用獅電改の頭部をそのままカラミティガンダムに移植したような姿だった。

 事実、この機体は団長がGPD時代からの愛機である獅電改の魂を宿した一本角を、彼が独自に改造を施したカラミティガンダムとミキシングして製作したガンプラであった。

 

 しかし、その中身は原作中の獅電改ともカラミティガンダムともまるで別物である。

 

 具体的には背中から両肩越しに展開されている巨大な砲塔は125mm2連装高エネルギー長射程ビーム砲「シュラーク」ではなく、形状は似ているが二門とも実弾兵器であり、こちらは対ナノラミネート装甲を想定したレールキャノンであった。

 自身の装甲にもトランスフェイズ装甲ではなくナノラミネート装甲が採用されており、製作者である団長が掲げる機体コンセプトとしては「鉄血のオルフェンズの世界観に合わせたカラミティガンダム」のような機体だった。

 この機体が想定する運用方法は見た目通り、中長距離からの砲撃支援である。

 その獅電・サブナックのコクピットから氷河に覆われた視界を見渡しながら、団長は気を引き締めながら操縦桿を握り締める。

 

「問題は、奴がどの方向からやって来るかだが……」

 

 自分たちとRIDEたちの組を二手に分けたのはもちろん、シャトルへの奇襲に対応する為である。

 相手の進入コースを予測し、それぞれのポイントに配置。しかし絶対に孤立することがないように最低二人はお互いをカバーし合える距離になるように陣形を張っていた。

 

 それはミカ以外の者が、バエルと一対一の状況になった時、誰も奴を止めることができないからだ。バエルのパイロットであるマッキーとは、それほどの実力者である。

 

 マッキー……高校時代は何度も辛酸を舐めさせられたあの男の、思わず殴りたくなるにやけ面を脳裏に浮かべながら団長は周囲の警戒を続ける。

 そして──

 

《来たぞ、団長!》

「……へっ、当たりか!」

 

 カンタンバルバトスのカタイ・タイゾーから通信が入ってくると同時に、獅電・サブナックのコクピットに新たなエイハブ・ウェーブの反応が表出する。

 通信妨害を引き起こすエイハブ・ウェーブだが、GBNでもこれを捕捉すること自体は可能なので電波レーダーの代わりに索敵手段として用いることができる。特にツインリアクターシステムのガンダム・フレームは個体識別がし易い、独特な周波数を発生させていた。

 

「このエイハブ・ウェーブの周波数は……バエルだ! アグニカ・カイエルの魂!」

 

 アグニカ・カイエルの魂ってなんだよ!? まるで一人芝居をするように吠えながら、団長は肉眼で捕捉するよりも先に引き金を引き絞った。

 

「いきなり先行して来やがったな! マッキー!」

 

 獅電・サブナックの肩越しから展開された長射程の125mmレールキャノン。

 敵のエイハブ・ウェーブ反応に向かって挨拶代わりに放ったそれはダインスレイヴほどの威力はないものの、完成度の高いナノラミネートアーマーにも十分なダメージを与えることができる。もちろん、当たりさえすれば。

 氷河の向こうから現れた白いガンダムはこちらの奇襲を予測していたように、自身の射程外から放たれた砲撃に対し右へ左へとホバーリングしながら、こともなげに回避しつつ速度を落とすことなく接近に掛かった。

 この獅電・サブナックは砲戦特化であり、あちらのガンダム・バエルは近接特化のガンプラである。その機体特性上、どちらも自身の距離でさえあれば一方的に有利を取ることができた。

 

「あんたをこの先に行かせるわけにはいかねぇ!」

 

 故に、団長は彼を自分に近づけさせぬよう出し惜しみなく全砲門を開き、徹底的に弾幕を張り巡らせた。

 しかし一方で奴のバエルならば、それさえも単独で突破してくるだろうと判断している。伊達に高校時代何度も彼に挑んでいたわけではなく、団長は冷静に敵の動きに対処していた。

 

 一対一では押し切られるだろう。だが、それは自分が一人の場合だ。

 

「やっちまえ! タイゾーッ!」

《おおおおおおっ!》

 

 団長が仕掛けた獅電・サブナックの弾幕で噴き上がった煙幕に紛れ込むように、付近に待機させていた仲間のガンプラがバエルへと踊り掛かっていく。

 バエルが悪魔だろうと、自分たちの機体もまた悪魔だ。

 その機体の名は「SDガンダム・カンタンバルバトス」。機体の小さなSDガンダムながら大型機にも見劣りしない破壊力を持つ、鉄火団の最優ビルダー・アトラチャンお手製のガンプラである。

 カタイ・タイゾーが操る白いSDガンダムは、自身の身の丈以上もある巨大なメイスを振り上げながらバエルに襲い掛かった。

 そのメイスの一振りを交差させた二本のバエルソードで受け止めながら、バエルのツインアイが威圧的に輝く。

 他所からも爆発の音が聴こえてくる。どうやら敵も予想通り、数か所に分かれて襲撃してきたようだ。

 

 

 鉄火団とアグニカンスピリッツ。マッキーと団長。止まらない者同士の戦いが今、幕を開けた──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 リライズこそバエルを足したらよりハッスルできるのではないかと思いました。バエルおじさんならノリノリで協力してくれそう……
 今回の試合形式は原作の「オーガ再び」回のアレと全く同じです。
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