バエルを使って、アグニカンドリームを実現する為にガンプラバトルをする男   作:GT(EW版)

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 リライズで一番印象が良くなった前作のキャラはマギーさんでもカルナさんでもなくカツラギさんだと思います。お労しや……的な意味で。


私のもとに来ないか?

 

 

 

 宇宙空間に灼熱する光が浮かんでは消えていく。

 

 広大な暗黒の一隅で交差する光芒と火花の乱舞の正体は、モビルスーツ同士の戦闘である。

 一方が敵機を葬れば、もう一方も負けじと敵機を撃ち落としていく熾烈な戦い。

 それは仮想空間ディメンション、GBNでは至る所で繰り広げられている光景だ。

 

 対戦カードは「名無しウォリアーズ」対「アグニカンスピリッツ」の試合である。

 

 互いに総勢十機を超す大所帯フォース同士がマッチングすることとなったこの試合では、試合開始から間もなくして戦場は乱戦模様となっていた。

 団員たちが一進一退の攻防を繰り広げ、お互いに均衡を保った戦況の中で一際目立った動きを見せている者たちがいた。

 

 その内の一人……いや、仲良し四人組が操るリーオーランチャーもその一機だ。

 

「アグニだ!」

「アグニ・アグニの弾ッ!」

「弾!?」

「魂ッ!!」

 

 後方から敵部隊を捕捉したリーオーランチャーが、バックパックに装備したランチャーストライカーパックを展開し、アグニによるミドルレンジからの砲撃を仕掛けていく。

 原作でも一撃でコロニーの内壁に大穴を空けた威力はこのGBNでも伊達では無く、彼らの狙いによって前衛部隊の牽制を受けていた敵機を一機、二機と立て続けに貫き、爆散させていった。

 

 そんな彼らの狙撃にたじろぐ敵部隊の中から、橙色の粒子をGN粒子を撒き散らしながら前進してくる機体がある。

 ジンクスⅢ──アロウズカラーの赤いモビルスーツである。

 

 ジンクスⅢはリーオーランチャーの砲撃によって崩れた陣形を立て直すべく、脚部から即座に手榴弾を取り出すと、迷い無くそれを投げつけていった。

 破裂した塊から拡散していくおびただしい煙幕はアグニから迸る赤色の閃光を大幅に軽減し、自慢の砲撃は後ろの部隊に到達する前に無力化されることとなった。

 

《これでビーム兵器は役に立たない……》

 

 粒子攪乱幕──普段はジンクスⅢの脚部に格納されている、対ビーム兵器用の装備である。それ自体に殺傷力は無いが、煙幕の拡散と同時に撒き散る粒子攪乱剤は粒子ビームを拡散、減衰させて無効化することができるアンチビーム兵器である。

 欠点としては煙幕の中では自分も同様にビーム兵器を使えなくなる点だが、ジンクスⅢにはその為の装備と言わんばかりに大きな槍が、「GNランス」が携えられていた。

 

《接近戦では、こっちが有利イィ──!!》

 

 粒子攪乱幕の中で邪魔な狙撃手を標的に定めた赤いジンクスⅢが、自信満々な叫びを上げて躍り掛かっていく。

 ビーム兵器を多用する敵を相手にする上で、彼がとった戦術は概ね満点の回答と言えるだろう。

 ただこの時の彼が迂闊だったのは、自分と同じように煙幕に紛れながら接近戦を仕掛けてくる敵がいることに気づかなかったことだった。

 

「正義は我々にあるぅー!」

 

 青色のゲイツの改造機、シュヴァルベ・ゲイツ。

 シュヴァルベ・グレイズに酷似したゲイツが、シュヴァルベ・グレイズ同様の武装であるバトルアックスを右手に飛び掛かってくる。

 仲良し四人組のリーオーランチャーを守るように死角から飛び掛かってきた彼は、その奇襲を見事成功させ、斧の一閃によりジンクスⅢの胴部を真っ二つに両断していった。

 

 充実した質量兵器を持つアグニカンスピリッツにとって、ビーム兵器の無力化は有効な戦術メタではなかったのだ。

 

 

《袖付きめぇ……!》

 

 徐々に友軍の撃墜ペースが早まっていることに焦りを感じながら、爆散したジンクスⅢと入れ替わるように緑色の機体が前に出てくる。

 

 それは宇宙世紀を代表する量産機のカスタム機、スターク・ジェガンであった。

 

 スターク・ジェガンは機体の代名詞である両肩の三連装ミサイルポッドを撃ち尽くすと、空となった兵装をパージするなりビームサーベルを構えて突進していく。

 追尾性の高いミサイルの内二発がシュヴァルベ・ゲイツに命中し、彼が防御に構えた盾を粉々に打ち砕いていく。そうして体勢を崩した敵機を、スターク・ジェガンはサーベルで切り裂こうと光剣を振り上げた。

 

 

 ──が、その一閃は遮られる。

 カバーに入った青いアヘッドが、ゲイツに代わって剣戟を引き受けたのである。

 

「ここは私が引き受ける。セイギたちはライザップ隊の援護を」

「そう!」

「魂!」

 

 アグニカンスピリッツの副隊長、イッシーのヘルムヴィーゲ・アヘッドだ。

 二刀の技巧を凝らしたヘルムヴィーゲ・アヘッドの剣技を前に、スターク・ジェガンも非凡な才能を見せつけて幾たび剣を打ち合うが、最後には手数の差で押し切られその首を撥ね飛ばされることとなった。

 手堅く敵機を撃破したイッシーはその高揚に酔うこともなく、きっちりととどめを刺した後は先に行かせた仲間たちと合流すべく、残骸漂う宙域を速やかに退散していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 GBNの人気者との戦いで得たものは、想像していた以上に大きな転機となった。

 

 

 人気Gチューバー集団である鉄火団の場合は世間からの注目度が段違いな為か、自然と対戦相手である我々アグニカンスピリッツの名もさらに知れ渡っていくこととなる。そこまでは当初から予想していたことだ。

 想定外だったのは、彼らが後日投稿した動画の完成度である。彼らは我々の試合を、まるで一本の名作映画のように編集しG-tubeにお出ししてくれた。

 

 餅は餅屋と言うが、プロの編集は違うなと言うのが拝見した私の感想である。編集者のタカキン殿には頭が下がる。

 【まるでアグニカ】鉄火団vsアグニカンスピリッツ【マクギリスじゃねぇか……】と題されたその動画でも、私のバエルとミカのフラウロスの戦いは大いに盛り上がっていた。

 動画の最初の方こそ「何やってんだよ団長!」やら「肩痛がってないでさっさと団長助けにいけよ無能」やらと辛辣なコメントが見られたが、試合が進むに連れて「団長ってこんな強かったんだ……」「タカキンSUGEEE!」「ミカワイイ」「団長の実力が知れ渡って俺も鼻が高いよ」「僕は彼らの凄さを前から知っていましたよ」などと、彼らの実力を真っ当に評価するコメントが増えていったものだ。

 

 加えて、あの試合を生で見ていたらしいロンメル大佐やチャンピオン・キョウヤのツートップまでも何を思ったのか自身のチャンネルで動画を宣伝してくれた為、元々人気のあった鉄火団の動画チャンネルはさらに大変な反響を及ぼすことになった。

 要するに、「バズった」のである。

 

 動画の中で最も話題を攫ったのは、やはりミカのフラウロスと私のバエルがぶつかり合う後半戦だった。バエルの勇姿に対する驚愕のコメントが、私にとっても印象的だった。

 それはもはや画面を覆う定番の弾幕と化した「バエルだ!」「アグニカ・カイエルの魂!」のコメントであったり、「すげぇよミカは……」「シノなら外してた」「ガンプラ戦車道ですがそろそろうちのミカを返してくれませんか?」と言ったミカへの惜しみない賞賛であったりしたが、中でも「AMAでバエルポチってきた」「フラウロスとバエル組んでみるわ」「この動画のおかげでバエル買いました。私もバエルでGBNはじめてみます!」といった視聴者たちのコメントには達成感すら抱いたものだ。

 

 

 そんな彼らの反応を見て改めて再確認したのが、バエルはやはりバエる存在だということだ。

 

 

 互いに死力を尽くした我々の戦いは、エンタメ的にもバエるどちらが勝ってもおかしくない内容だった。それは確かだが、それでも人々の意識を想定以上に集めることができたのは、ガンダム・バエルという存在がそこにあったからなのだと私は思う。

 

 どんなものでもバエルを足せばより面白くなる。

 元々面白いGBNにバエルを足したことで、さらに面白くなったというわけである。

 

 ふふ……思えば「世間にバエルの素晴らしさを知らしめる」という当初の目的も、マスダイバー事件と今回の結果によって概ね達成されているのかもしれない。

 あれ以来、今や私のバエルの存在は並の上位ランカーを凌ぐ知名度を誇っており、アグニカンスピリッツへの入隊希望者も格段と増えることになった。団長たち鉄火団はそれ以上に増えたようだが、彼らにとっては嬉しい悲鳴であろう。

 

 人の心のアグニカがバエルへと理解を示し、集い始めた。

 来ている……流れが……確実に! 時代がとうとう、バエルに追いつこうとしているように私は感じていた。

 

 ならば、私はここで燃え尽きることを善しとせず、これからも戦い続けるとしよう。

 たとえたどり着く場所を通り過ぎようと、止まらずに進み続けるのもいいだろう。

 だから……

 

 

「さあ……世界の扉を開けようか!」 

 

 

 障害物となっていた小型の隕石を真っ二つに引き裂きながら、敵部隊の前に姿を見せた私のバエルが急迫していく。

 エイハブ・ウェーブの発生から間もなく現れた私の登場に敵は不意を突かれたのか、散開してこちらを取り囲もうとする動きは慌ただしく見えた。

 

《い、いたぞ! アイツが敵のフラッグ機だ!》

《なんでわかる!?》

《バエルがフラッグ機じゃないわけないだろ! 錦の御旗的に考えて!》

「ご名答! 見事な推察だ」

 

 今回対戦を組んだ相手フォース「名無しウォリアーズ」とのフォース戦は、敵の殲滅を争う殲滅戦や鉄火団戦のような防衛対象の争奪戦でもなく、各フォースで指定されたフラッグ機を落とした方が勝ちというルールのもと行われている。

 フラッグ機は試合が始まっても対戦相手に明かされない為、誰の機体なのか、どこに潜んでいるのかを探るところから始める戦略性の高いルール方式だった。

 

 尤も、今誰かが言った通り我がアグニカンスピリッツのフラッグ機は始まる前からわかりやすい。

 そう、私だよ!

 

《見事だ、バエル……隊長、戻れそうにありません……母さん、僕のピアノ……キシリア様に届けてくれよ……あれはいいものだからよ……生きるって難しいねバナージ…》

《ハイネー!!》

《混ぜすぎ》

 

 三機掛かりで張り巡らされた敵の弾幕を一気に突破していくと、最も近くにいた敵機ジムの腹部をシャアズゴックよろしく一突きし、パイロットの辞世の句と共に爆散させていく。

 

 残る敵は国民的五歳児の父親的な声を発している地上用リーオーと、龍要素を強めた造形に改造された緑色のガンダムエピオンだった。

 

 彼らの機体はどれもガンダム作品の名名無し兵(めいななしへい)を意識したものだ。まったく……実にニッチと言うか、名無し兵愛に溢れたフォースである。

 

 君たちのようなフォースが相手だと、私も心が躍るよ。おかげで今日も調子が良い……と、私はこの勢いのまま残りの相手をするつもりだったが、そんな私の前に援軍の光が降り注いできた。

 

《援護します准将! いくぞ同志たちよ!》

《レッツ・アグニカ!》

《ジーク・バエル!》

 

 ライザライザー。オーライザーに武装を増設したシンプルな改造機と、それに続くGディフェンサー、スカイグラスパーである。

 いずれも我がアグニカンスピリッツ所属の機体であり、三機の戦闘機で編成されているのはライザップを小隊長とする新参バエリストの部隊だった。

 

 今回のように大人数同士のフォース戦ができるのも、人数が増えたことによって生まれる利点の一つである。少人数制よりもマッチングしにくいのが難点だが、増員したフォースメンバーたちの実力を見ることができるのは隊長としても良い機会だった。

 

《ぐっ、三体掛かりかよォ!?》

《ヒロシ! ええい……!》

 

 ガンダムシリーズが誇る名支援機による連携は、良い声で喚くリーオーを着実に追い詰めていく。あちらは直に片付くだろう。

 ならば今私がするべきなのは、敵エースの撃墜か。そう考え、私はリーオーを援護しようとするドラゴンエピオンの前に立ち塞がった。

 

「君の相手は……私がしよう」

 

 近接武器しか持たない決闘機、ガンダムエピオン。

 彼の機体はアレンジを加えたカスタム機のようだが、前々からかの機体とは戦ってみたいと思っていたのだ。せっかく一対一になったのだ。剣の使い手同士、ワルツと洒落込もうではないか。

 

《へっ……やってやらァ!》

 

 敵パイロットは私の誘いに威勢良く乗っかり、自慢のビームソードを引き抜いて挑み掛かってきた。

 それは実際には追い詰められた状況で開き直った破れかぶれの行動であったが、手負いの獣ほど厄介なものはない。そう己に戒めながら、私は慢心を捨てて迎え撃った。

 

 

 

 

 

 

 

 一刀の下に斬り伏せた目の前の敵の爆散後、戦闘中の全ガンプラのモニターにこの試合の結果が表示された。

 

《WINNER アグニカンスピリッツ》

 

 やはり、相手のフラッグ機はあのドラゴンエピオンだったようだ。被弾が多くなりがちな近接機をあえてフラッグ機に指定したのは、彼がフォースの中でも最も腕の良いパイロットだったからであろう。

 バエルをフラッグ機にした理由? バエルだからさ。存在そのものが錦の御旗であるバエルが、フラッグ機でないなど考えられない。君たちもそう思うだろう?

 

《バエルだ!》

《アグニカ・カイエルの魂!》

《やったぞみんな! これで20連勝! 我々の勝利だ!》

《そうだ! ギャラルホルンの正義は我々にあるっ!》

《うおおおおおおおおおおおおっっ!》

 

 何はともあれ、終わってみれば快勝である。

 破竹の大型連勝に一同は沸き立ち、ライザップら新参メンバーたちは涙ぐんでいる様子だった。

 ふっ……まだまだこの程度で嬉し涙を流しては困るな。20連勝など通過点だ。我々が目指すアグニカンドリームは、まだこれからなのだから。

 だがそれはそれとして、今は勝利を喜ぼう。大儀であった。

 

 

 

 そのような一幕があったように、鉄火団と死闘を繰り広げたあの日以降も我々の快進撃は続いていた。

 

 我ながら順調すぎて怖いぐらいであるが、調子が良いに越したことはないだろう。アグニカンスピリッツは結成から未だ負け知らずであり、個人でも順調にミッションを達成し、気づけば私もAランクに達していた。

 ここまで来れば必殺技を手に入れるダイバーもそれなりに多いようだが、私のバエルにはまだその兆候はない。

 どんな必殺技が生えてくるのかは私も楽しみにしているが、「技」というものは本来通常の戦い方では倒せない敵を倒す為の工夫として編み出していくものだ。

 必要とする時は自然に習得できる筈だと考えており、私の心に必殺技が使えないことへの焦りは無かった。

 

 今は必殺技よりも、バエルでもっともっとアグニカしたい。そんな熱情が私を動かしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロータス・チャレンジ?」

 

 改装が進むヴィーンゴールヴ風タケミカズチの艦長室にて、働き者のライザップが届けてくれた情報に興味を持ったのはそんなある日だった。

 それは、理想のフォースネストの完成に向けて邁進している我らにとってうってつけな情報だった。

 

「はい! フォース「ロータス」が主催するクリエイトミッションなのですが、これのクリア報酬がそれはもう莫大な金額で」

 

 クリエイトミッション──それは運営によってゲーム側で用意されている通常のミッションとは異なり、プレイヤー側がGMとなってシチュエーションとルールを決めて実行することができるミッションである。

 ミッション製作者がラスボスとなって戦えたりダンジョンクリエイト的な要素を持つこのシステムは多くのダイバーたちに好評であり、GBNにはクリエイトミッションの製作を主に活動するフォースも少なくないようだ。

 

 「ロータス」というフォースもまた、しばしばユニークなクリエイトミッションを創造し、提出することで悪名高いフォースだった。

 

 そして今しがたライザップの話に出てきた「ロータス・チャレンジ」というミッションは、通常のクリエイトミッションとは明らかに一線を画するものだというのがわかる。

 ウインドウ画面に映し出された情報を見てまず目を引いたのが、その桁違いのクリア報酬だった。

 

「3000万ビルドコインとは……!」

「よほどの超高難易度ミッション、というわけだな」

 

 驚愕するイッシーの声に、私も同調する。通常の高難易度ミッションと比べても、桁が一つ二つ間違えている大盤振る舞いである。しかもこれが運営ではなく、プレイヤーが用意した報酬であることからロータスの自信の程が窺える。彼らとて3000万もの出費は痛い筈だ。

 

 このGBN史上最大となるクリア報酬から「ロータス・チャレンジ」のミッションは既にネット上でも話題にあがっており、掲示板には実際に挑戦したダイバーたちによるコメントが寄せられていた。

 抜粋すると「こんなん絶対ムリ!」「ニュータイプ専用ミッション来たな……」「ガンダムX&モビルドールで挑んだけど無理だった……」「バリア硬杉」「ロンメル隊7連敗だってよ」「アヴァロンすら5連敗」「時間制限がきちいぜ……」「15分は短すぎだって!」「大気圏越えた時点でほぼタイムアップする件」「こんなん通す運営はイオク様かよ」「それでも……それでもチャンプなら……!」などと半分以上が理不尽な難易度に対する悲鳴だった。

 

 どうやらまだ、このミッションを達成できたフォースはいないらしい。

 

「地上から宇宙へ上がり、宇宙要塞ラビアン・クラブを落とすというミッションなのですが、制限時間が15分しかない上に、要塞にはサテライトキャノンでも突破できないIフィールドが展開されているそうです。このシビアな条件から未だ攻略したフォースは無く、あのアヴァロンさえ5連続で失敗しているとか……」

「なるほど……それは凄まじいな」

 

 チャンピオンすらクリアできないミッションか……それは興味を抱くな。どれほどの厳しさか、後で動画を見ることにしよう。

 しかし、未だ誰にもクリアされたことのないミッションとは、何ともやり甲斐のあるものだ。

 状況が悪ければ悪いほどアグニカはバエる。つまりはそういうミッションを攻略してこそ、バエルの力を示せると言うことだ。

 ビーム兵器が効かない要塞と言うと、実弾兵器しかないガンダム・フレーム向きではあるな。

 

「どうしますか、准将?」

「決まっているさ。もちろん……」

 

 おあつらえ向きなこのイベント、見逃す理由あるまい。そうでなくても噂の魔改造フォースネスト、ラビアン・クラブを一目見てみたいのもある。

 もちろん、我々も挑戦することにしよう。イッシーの問いかけにそう答えようとしたその時、ふと私のメールボックスに着信が入った。

 

 いつもなら確認するのは後にするところだが、発信者の名前を見た瞬間、私はメールの方を優先しそれを開封した。

 

「ふっ……」

「准将?」

 

 メールの内容を見て、思わず笑みが零れた。

 そこに書き綴られていたのは、私のダイバー生活にさらなる充実を与えてくれる情報だったのだ。

 

 

「そうか、完成したか……新しいダブルオー」

 

 

 ダイバーネーム・リク。私が見出した次世代のアグニカだ。

 そんな彼から「新しいガンプラが完成しました」という報告を受ければ、私の心も躍る。

 これは、祝福せねばなるまい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いてもたってもいられない私は思い立ったが吉日、早速彼ら「ビルドダイバーズ」の仮設フォースネストへと訪問することにした。

 マスダイバーとの戦いで私の心を奮わせてくれた彼は、一体どんなガンプラを完成させてきたのだろうか。今はそれが、ロータス・チャレンジの概要以上に気になったのだ。

 

 

「あっ、バエルのお兄さん!」

「バエルさん?」

 

 メールの返信でアポを取った後、開放状態になっていた彼らの格納庫へ単身訪問した私を、見知ったご両人が歓迎してくれた。

 リクとサラ。二人は格納庫に佇む一機のガンプラの前で私を待っていた。

 

 彼らの出迎えに私が右手を振って応えると、リク君は柔和な笑みを返してくる。

 

「わざわざ見に来てくれたんですね」

「ああ、丁度私には、君に直接話したいことがあってね」

「あっ、バエルさん、この間の試合見ました! バエルさんのバエル、本当に凄かったです! ユッキーなんてずっと興奮しっぱなしで!」

「ふっ、そうだろう。バエルとは素晴らしいものなのだ」

「お兄さんのガンプラとても強くて、温かかった」

「バエル、いいよね……」

「? うんっ」

 

 アグニカンスピリッツ対鉄火団の試合を見たというリク君の、社交辞令とは無縁そうな賞賛が心地良かった。

 私としてはここで今一度バエルの魅力を語り明かすのも悪くなかったが、私が彼らの元へ訪問した目的は他でもなく、彼のガンプラにあった。

 

 その威容をデッキから見上げながら、私はリク君に問い質す。

 

「それで……これかな? 君の新しいガンプラというのは」

「はい!」

 

 スカイブルーの彩色が眩しいトリコロールカラーのガンプラを見て、私は「美しい……」と、ただそう思った。

 

 そうか、そういう形で攻めてきたか。

 ダブルオーガンダムの改造機、ダブルオーダイバーエースをさらに改修した新たな翼。元のダブルオーガンダム以上にマッシブで、それでいて洗練されたフォルムに私は好意を抱いた。

 その機体の名を、彼は呼んだ。

 

「ダブルオースカイって言うんです! みんなの協力で、なんとか完成しました。バエルさんの言葉も参考にして……本当に、ありがとうございます!」

「なに、私は何もしていないさ」

 

 私が助言をしようと、しなかろうと、きっと君はこの機体を完成させたことだろう。

 彼の横顔を慈しむような目で見つめている少女の姿を見て、私はそう思った。支え合う関係があるというのは、どこまでも尊いものだ。

 時に仲間と繋がり合うことで、ビルダーは成長する……そうして戦士(ファイター)はどこまでも強くなっていくのだ。

 

 

 今「なんだお前今日はやけにまともだな?」と思っただろうか。私はいつもまともだよ。

 そう、仲間から着想を貰って強くなったのは、私とて同じなのだ。

 それこそが無限の可能性──無限の力となる。

 

 

「ダブルオースカイ……(むげん)の空か。バエルの面影が垣間見える」

「……そうかな?」

「そうかも」

 

 見事な造形だ。300アグニカポイント移譲しよう。

 それに、ただ美しいだけではない。よく見れば胸部のクリアパーツの内に、GPDで負ったと思わしき切り傷があるのがわかる。自らが踏み記した戦いのロードとして、リク君はあえてその傷だけ残しておいたのだろう。男心だな。

 

 わかるぞ……わかる。この機体は近い将来、とてつもない偉業を成し遂げるだろう!

 ダブルオースカイの姿を見たバエリストとしての直感が、私の頭にビンビン訴えてきた。

 

 

 気づけば、思わず彼に詰め寄っていた。

 

「リク君、私のもとに来ないか?」

「えっ」

「君とこの機体の行く末を見届けたいと思った。私の手元で、我がアグニカンスピリッツの一員として戦ってほしいと思ったのだ」

「バエルさん……」

 

 衝動的に持ちかけた、アグニカンスピリッツへの勧誘である。

 その時になって私自身も驚いたことだが、私は思っていた以上に彼のことを買っていたらしい。

 彼がそれにどう答えるかはわかっている。しかし、思ってしまったのだ。

 

 私はこの手で彼を鍛え、最強の戦士(アグニカ・カイエル)にしてみたいと……傲慢にも、そう思ったのである。

 

 

 しかしその思考は、後ろから響く通りの良い声に掻き消されることとなった。

 

「コラコラコラ──! そこぉ! 勝手にうちのリーダー引き抜かないのっ!」

「モモっち落ち着いて! 今のはネタだから! マクギリス・ファリドが三日月を誘ったシーンの再現だから!」

「ユッキーどいて! この人不審者! 絶対不審者だよっ!」

「不審者じゃないよ! マッキー准将はチョコの人だから!」

 

 ちらりと一瞥すれば、こちらを敵認定して今にも飛び掛かろうとする桃色の少女を金髪の少年が慌てて取り押さえている光景が見えた。

 ビルドダイバーズのメンバー、二人ともリク君の友人で、「モモ」と「ユッキー」と言ったか。ユッキー君の方は私の態度から今のはロールプレイの一環だと判断したようだが、モモ君の方は本気で私がリーダーを引き抜こうとしていると思い、全力で引き留めに掛かっている様子だった。

 

 ふふ……仲の良いメンバーだ。彼らのホームで、私も迂闊なことを言ってしまったな。

 サラ君の方にも目を向ければ、彼女もまた心配そうな顔でリク君と向かい合っていた。

 

「……リク、行っちゃうの?」

「ううん、俺はどこにも行かないよ、サラ」

「良かったぁ……」

 

 

 この光景を引き裂こうとした男がいるらしい。

 私だ。

 

 

 

 ふっ……切腹ものだな。介錯はキョウヤ、君に任せた。

 己の気の迷いに苦笑しながら、私は上手い断り方を考えている様子のリク君に向かって訂正の言葉を述べておいた。

 

「そうだな……わかっている。彼の言う通り、今のは私からのマクギリスジョークだ。本気にしなくていい」

「あ、はは……すみません、上手く返せなくて。バエルさんに誘ってもらえたのは嬉しいんですけど、やっぱり俺はビルドダイバーズのリクだから」

「私もそれを望んでいるよ」

 

 近い内に、君とはライバルとして戦ってみたいものだな。私としてはそれが今でも構わないが、急がずとも我々の舞台は風が決めてくれるだろう。

 

 バエルと切り結ぶダブルオースカイの姿を幻視しながら、私はそう言えばと彼に訊ねた。

 

「これの初陣はいつになる?」

「それなんですが、ロータス・チャレンジに挑んでみようと思います」

「そうか、君たちもか」

 

 それは奇遇だな。

 この場を訪れたのは彼らにロータス・チャレンジへの挑戦を勧めようとしたのも理由の一つだったのだが、最初から挑戦するつもりだったのなら話が早い。

 

 やはりアグニカたる者、初陣には相応の舞台を用意したいものだからな。

 

「ならば、我々も挑戦することにしよう。どちらが最初にクリアするか、一つ競争といこうか」

「っ、はい!」

 

 挑戦する順番は、おそらくそちらが先になるだろう。

 我々も出来れば一発クリアを目指したいのでな。その為にシミュレーションを行い対策を練る必要があるので、少し遅れるかもしれない。

 そうなれば最初のクリア達成フォースは、もしかしたら君たちになるかもしれないな。

 

 

 まったく……大人は醜いな。ここに来てラスタルポイントを貯めてしまったと、意図せず完璧な保身が完成してしまった己の提案を自嘲する。

 

 

 リク君たちが先にクリアすればビルドダイバーズの名が世間に知れ渡り、我々が先にクリアすればバエルの素晴らしさがより広まっていくことになるだろう。

 

 

 それは私にとってどちらに転んでも喜ばしい、魅力的な分岐点だった。

 

 

 

 





 私的に接近戦ではこっちが有利ィの人とスターク・ジェガンの人とガンプラバトル世界大会ロワイヤルで出てきたチョマー軍団の人が名無し兵三強だと思っています。他にもいるかもしれませんが……この当たりが印象強いです。あとカルタ様親衛隊で妙に強い人がいた気が。
 後付けでネームド昇格があったりもしますが、こういう名無し兵が私は好きです。
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