バエルを使って、アグニカンドリームを実現する為にガンプラバトルをする男 作:GT(EW版)
この「ロータス・チャレンジ」において、15分という制限時間はあまりに心許なかった。
高度400キロメートルの熱圏にあるロータス要塞「ラビアン・クラブ」。そのコア・ユニットを破壊することが、挑戦者側の勝利条件となる。
スタートは地上。宇宙へ上がる手段はそれぞれ自由。
GBNで大気圏に向かうには「軌道エレベーター」、「マスドライバー」、「レーザー推進」、「スペースプレーン」と多岐に渡るものの、進路上には大量の機雷群と敵部隊が待ち構えている。
ネックとなるのはやはり大気圏突破の手段だろう。
上位フォースによる挑戦動画を視聴したところ、チャンピオンのフォース「アヴァロン」もロンメル大佐の「第七機甲師団」も共に惜しいところまで行っているのだが、熱圏到達までに10分近く掛かった為にことごとくタイムアップとなっていた。
宇宙へ上がる為に使うシャトルはGBN内で用意された数種類の借用品から選ぶことができるのだが、高速のシャトルほど搭載できるガンプラの数が少なくなる為、敵の防衛網を突破するには火力が足りなくなる。
スピードと火力、一方を突き詰めれば突き詰めるほどもう一方が不足してしまう為、挑戦者は八方ふさがりだった。
だが、スピードに関して言えばこちらも秘策がある。
我々ならば、確実に10分は切れる自信があった。
幸いだったのはイッシーら主力メンバーとはリアルでも親交があり、招集を呼び掛ければ集まることができる間柄だったことだ。
その為、我々には信頼を置ける七人掛かりでの「シャトルの自作」という荒技が可能だった。
シャトルには必ずしも借用品を使わなければならないというルールは記載されていない為、このような解決策はあちら側も織り込み済みだろう。
私一人ではミッション期間中の完成は不可能だったが、七人合わされば何とやら。
今回は一からの製作ではなく、以前作ったフルスクラッチシャトル「バエル登場演出用特攻小型艇」をベースに改修することで、短期間での製作が可能となった。
そうして完成したのがこの「スーパーアグニカトランスポーター」である。
デザインは「新機動戦記ガンダムW」でゼクス・マーキスが搭乗していたOZの高速シャトルであり、Gジェネレーション・クロスレイズでもお馴染みの「スーパーソニックトランスポーター」を参考にした。
しかし内部には複数の特殊機能が仕込まれており、見た目は似ていてもモデルとなった船体とは別物と言っていいだろう。故に、スーパーアグニカトランスポーターと名付けた。我ながら素晴らしいネーミングである。
搭載可能なガンプラの数は僅か3機程度だが、そのスペックは改修前や借用シャトルとは比較にならず、マスドライバーを使うことで8分での熱圏到達に成功した。
これでスピード面での条件はクリアだ。
残り時間が7分もあれば、私のバエルなら単独で敵防衛網を突破することは十分に可能だろう。
あとはコア・ユニットをどうやって破壊するかという問題だが……対象の大きさが大きさであり、火力面が些か不安かもしれない。
敵のコア・ユニットは堅牢な装甲と強力なIフィールドに守られており、生半可な攻撃は通用しない。バエルにとってIフィールドは問題ではないが、剣で裂こうにも一太刀では切断しきれない大きさが面倒だった。
無論、我がバエルソードに斬れぬものは何もないが、剣を差し込んでから完全に破壊するまで最低30秒は掛かるだろうと見ている。それを敵部隊の妨害を受けながら行うとなると、7分の猶予があっても安心することはできなかった。
それこそ、チャンピオンの「EXカリバー」のような必殺技があれば、一瞬で落とすこともできるのだろうが……いよいよ私も、必殺技を手に入れる時が来たかと考える。
しかし、そんな私に願ってもない提案を寄越してくれたのが、バエルに集う仲良し四人組の声だった。
「バエルだ!」
「アグニカ・カイエルのアグニカ!」
「バエル。バエル・バエル!」
「……何? それは本当か?」
「魂ッ!」
それは、衝撃的な発言だった。
彼らは……彼らだけは我々の中で誰よりも先に、このロータス・チャレンジを完全に攻略する方法を編み出していたのだ。
私はその事実に驚き、そして歓喜した。
リク君たちビルドダイバーズが挑戦したのは、丁度我々が全てのシミュレーションを終えて攻略の基盤を固めた時のことである。
当日、我々アグニカンスピリッツは今や20人を超える全メンバーと共に観戦することとなった。場所は我々のフォースネストの中だ。
ダイバー共有のロビーでも観戦することはできるのだが、これほどの多人数となると他のダイバーたちの迷惑になるだろうと考え、我々の「タケミカズチ(仮)」の艦橋にて見守ることにしたのだ。
映画館さながらのモニターを展開した艦橋前面に、彼らによるロータス・チャレンジの様子が映し出される。
おそらくはチャンピオン・キョウヤも同じように自分のフォースネストから観戦しているのだろう。
見せてもらおうか、新しいダブルオーの性能とやらを。
上から目線でそう構えながら、私は彼らの戦いを見届けた。
──結果を言えば、ビルドダイバーズは勝利した。
フォースメンバー全員が一丸となり、見事時間内にラビアン・クラブを破壊したのである。
難攻不落の要塞を初めて落とし、ロータス・チャレンジの成功者一番乗りとなった彼らに対しては、我がアグニカンスピリッツ一同も大いに沸き立ち惜しみない賞賛を贈る。私もまたミッション中は彼らの戦いに見入り終始無言で見つめていたものだが、ミッション完了が告げられると同時に思わず拍手を進呈していた。
見事だ……実に美しい戦いだった!
我々以上にスピードを突き詰めたフルスクラッチシャトルの完成度。
罠散らし、シャトルの護衛とサポート面での活躍が光ったジムⅢビームマスター。
ラビアン・クラブ進路上の敵を引きつけ、多彩な技で翻弄していたSDガンダムRX零丸。
敵の防衛網を突破し、コア・ユニットへの直接攻撃を決めたリク君のダブルオースカイは想像以上の性能だった。
チームとして各人の役割を的確にこなすメンバーの実力はどれもハイレベルであり、特にダブルオースカイの光の翼、トランザムインフィニティ時の戦闘力は驚嘆に値する。
ダブルオーの「ツインドライヴ」とデスティニーの「ヴォワチュールリュミエール・ウイング」を融合させた光の翼は、トランザム時に増大する高濃度圧縮GN粒子の放出開放量をウイングユニットで更に加速させることで通常のトランザム以上の性能強化を発揮しているのだろう。
強い機体を強い機体と組み合わせれば最強になる。言葉にすれば単純な発想だが、誰もが苦労してきたミキシングを完璧なバランスで実現させたビルドに、ナイス・アグニカと言わせてもらおう。
それは他のGNドライヴ搭載機にはない、リク君独自の力と言えた。
「どちらが先にロータス・チャレンジをクリアするかという競争は……君たちに軍配が上がった」
決して彼らのことを見下していたわけではないが、あのチャンピオンですら実現できなかった一発クリアを成功させるとは予想以上である。
リク君のことは元から注目していたが、もしかすればビルドダイバーズというフォースは我々以上に、チームとしての完成度が高いのかもしれない。
狼とは群れるもの……いいだろう。それもまたアグニカだ。
「ではいくぞ、イッシー。次は我々の出番だ」
「はっ」
いつもの主力メンバーを引き連れ、私も向かうことにする。
素晴らしい戦いを見せてくれた礼に、我々も見せてやろう。
純粋な力のみが成立させる、ロータス・チャレンジの攻略法を!
難攻不落のロータス要塞ラビアン・クラブを初めて落としたことで誕生したニューヒーロー、フォース「ビルドダイバーズ」の存在は一躍有名になった。
トップフォースが立て続けに失敗してきたロータス・チャレンジを新気鋭のフォースが攻略したという衝撃は、それほどまでに大きかったということだろう。
そんな大金星をあげた彼らに続いてミッションに挑戦することになったのが、現在SNSで話題沸騰中のバエルフォース「アグニカンスピリッツ」である。
ビルドダイバーズの奮闘に湧き上がったダイバーたちの熱がまだ冷めやらぬ中、噂の色物フォースに寄せるダイバーたちの期待は当人たちが思っている以上に大きいものだった。
ビルドダイバーズは凄かった。
アイツらも何かやってくれるのではないか?
アイツらはどんな戦いを見せてくれるのだろうか?
噂のバエルは出てくるのか?
噂通りの実力なのか、それとも単なる過大評価か?
彼らを知る者もまだ知らぬ者も、実際に観戦することでその力を見極めようとする者は多い。
各フォースのフォースネストや共有ロビーの観戦フロアには上位ランカーたちの姿やビルドダイバーズの面々も居り、片隅には自販機に挟まれながら壁に寄りかかって佇んでいる仮面の男の姿もあった。
そうしてディメンション中のダイバーたちの注目を集めながら、彼らの挑戦は始まった。
それは人々に興奮と感動を与える伝説的な活躍を見せたビルドダイバーズとは別の意味で、人々の心に動揺と困惑を与える、ある意味伝説的な戦いとなった。
フォース「ロータス」のモチーフは海産物である。
要塞の前には大量の部隊が展開されており、リーダーのロータス卿が駆るマーメイドガンダムを筆頭に、Gガンダムに登場していた気がするカニガンダムやエビガンダムと言った個性的な機体が機雷群漂う宇宙の海を縦横無尽に泳ぎ回っていた。
どれもこれも冗談のような造形をしているが侮れない性能をしている機体の大半はAI制御による無人機だが、有人機を動かしている一部のメンバーの練度は真っ当に高く容易に突破できる存在ではなかった。
そんな彼らを相手に意気揚々と挑むのは、我らがアグニカンスピリッツだ。
大役を一任した出撃メンバーに気負った様子が見られないのは、この日の為に完成させた戦略に絶対的な自信を持っているからだろう。私もそうだ。
第一の矢である高速シャトル「スーパーアグニカトランスポーター」はシミュレーション通りの性能を発揮し、ビルドダイバーズとほぼ同等の速度で熱圏へと上昇することができた。
さあ、今こそ出撃だ。
「手はず通りいくぞ」
《了解!》
戦場へ躍り出たスーパーアグニカトランスポーターがハッチを開くと、搭載されていた三機のガンプラが一斉に出撃する。
私が乗るバエル。
イッシーのヘルムヴィーゲ・アヘッド。
そして最後の一機は今回の作戦の要である、仲良し四人組のリーオーランチャーだった。
「仲良し四人組はシャトルを守れ。アレを使うまで、一発の被弾も許すな」
《魂っ!》
《お任せください、准将!》
《操舵ッ!》
今回セイギはシュヴァルベ・ゲイツではなく、スーパーアグニカトランスポーターの操舵を任せていた。ライザップには機長を任せており、出撃組でない者たちはシャトルの艦橋に回していたのだ。セイギなどは今回もシャトルの操舵と聞いていの一番に立候補してくれたものである。
実際、彼の操舵によるスーパーアグニカトランスポーターは柔軟な機動を発揮し、敵の砲撃に対して鮮やかに回避してくれた。
《何故あの動きをモビルスーツでできないんだ……》
そんなセイギのノイマン級のバレルロールを尻目に困惑の声で呟きながら、イッシーのヘルムヴィーゲ・アヘッドが先行して前に出る。
革命軍の青いカラーリングを施された機体が、一瞬にして真っ赤に染まる。のっけからトランザムシステムを発動したのである。
赤い彗星と化したアヘッドは残像を残す速さで突貫していくと、今回のミッション用に装備していたGNビームマシンガンを前方に向かって手当たり次第乱射していく。
トランザムによって出力が増したビームは敵海産物部隊を散らしていき、視認性の悪い機雷群を捉えては的確に処理していった。
開戦早々思い切ってトランザムを使えるのは、制限時間が短いからこそできる荒技である。
そしてイッシーには、トランザムで上昇したスピードを使いこなせる技量があった。
「頼もしき同志たちだ」
イッシーが撃ち漏らした甲殻類ガンダムの一機をバエルソードで突き刺すと、もう片方の剣で三枚に卸し爆散させていく。
私のバエルの配置はシャトルとアヘッドの中間だ。この位置で前進を続けながら、リーオーランチャー及びスーパーアグニカトランスポーターを護衛していた。
私は攻めている時の方が好きだ。これが普段の作戦であれば、イッシーのヘルムヴィーゲ・アヘッドと共に前に出て敵部隊を積極的に叩いていたところだろう。実際、私は仲良し四人組から提案されるまで作戦らしい作戦はなく、バエルで敵の防衛網を単独で突破することを考えていた。
純粋な力による個人技。バエルらしい立ち回りと言えば、そちらの方がしっくりくるだろう。
しかし、私とて他の道を考えられないほど不器用ではない。昔はともかく今の私は可能な限り新しいアグニカを開拓していきたいと思っていた。
機動戦士ガンダムの生みの親である御大は、クリエイター側が過去の実績に拘り、「ガンダムシリーズはこうでなければならない」という固定観念に染まることを善としない先進的なお方である。ならば私もそれに倣い、新しいアグニカ・チャンスがあれば積極的に手を伸ばしていきたいと思う。
それに、私はアグニカンドリームを目指している一方で、一フォースの長でもあるのだ。
アグニカしてバエる。
リーダーとして部下を導く。
両方やらなくてはならないのがアグニカンドリームの難しいところだった。
しかし、それを成してこそやり甲斐があり……だからこそバエルは美しいのだと思う。
《シャトルの防衛を優先したその挙動……まさか、爆弾を積め込んだシャトルで特攻を仕掛ける気か?》
熱圏到達から4分が経過した頃。
イッシーと私が確保した進路をスーパーアグニカトランスポーターが進んでいき、攻撃目標との距離を順調に詰めていく。
しかし近づけば近づくほど敵の防衛網は分厚くなり、襲い来る海産物ガンダムの数は一段と増えていった。
そんな中、コア・ユニットへ前進するよりもシャトルの防衛を優先した我々の立ち回りに違和感を抱いたのだろう。アヘッドと交戦に入ったマーメイドガンダムから、怪訝そうなロータス卿の声が聞こえた。
確かにビームが効かない巨大要塞を落とすには、爆弾を敷き詰めたシャトルを直接ぶつけるのも有効な作戦だろう。私も敵側の立場にいたならそう考えるかもしれない。
しかし、我々が考えるこのシャトルの真の運用法は別にあった。
そう……このスーパーアグニカトランスポーターは、ただ大気圏を抜ける為だけに用意したのではない。
熱圏到達後もシャトルの防衛を行っている理由──それを今、君たちに教えてやろう!
「今だライザップ!」
《はっ!》
シャトルに近づく雑兵を粗方一掃した後、ラビアン・クラブとの距離が予定の範囲に入ったところで艦橋のライザップへと命令する。
その時が訪れることを待ちかねていたように、シートから立ち上がったライザップが全回線を開いて叫び始めた。
《同志諸君よ! 今こそバエルを持つ者、最大の使命を果たす時が来た!》
クワッと目を見開くと、まるでアバターが劇画になったかのような迫力を放ちながら勢い良く前方を指差す。
それは、このミッションをクリアする為に仲良し四人組が考案し、私が許可した作戦の合図だった。
《総員、フォーメーション・魂! 発令ッ!!》
《了解!》
《魂ッ!》
《操舵ッ!》
フォーメーション・魂。
ライザップから指令が響くと、スーパーアグニカトランスポーターの機首が大きく傾き、敵要塞に対して腹を見せるような体勢になって旋回していく。
すると、その動きに合わせて下側に回り込んだ仲良し四人組のリーオーが、まるでアクシズを押し出すνガンダムのような姿勢で両手を船体へと押しつけていった。
《な、なにをするつもりだ……?》
彼らの突然の奇行に、敵機から困惑の声が上がる。
歴戦の勘から良からぬものを察したロータス卿ら何機かがシャトルへと近づこうとしてくるが、その僚機を私がねじ伏せ、トランザム持続中のイッシーがロータス卿のマーメイドガンダムを抑えてくれた。
イッシーの負担が増えるが、私も向かうとしよう。
「ここは任せたぞ!」
《准将、勝利を信じています!》
この場の足止めを副隊長に任せると、私もバエルを翻し、可能な限り敵機を蹴散らしながら仲良し四人組のもとへと飛翔していった。
さて、果たしてギャラリーはどのような反応を見せるだろうか。困惑か、それとも動揺か。
どちらでも構わない。我々はやりたいアグニカでバエるだけだ!
「ロータスよ、刮目するがいい。これが我が同志たちが生み出した、アグニカンスピリッツの必殺技だ!」
心が躍るよ。
我が盟友、仲良し四人組が完成させた必殺技の成果を、ここで披露することになるとはな……!
そう、それこそが、我々がたどり着いた大いなる攻略法だった。
私もあの時、彼らが提案した時は驚いたものだ。
『バエルだ!(そう言えば!)』
『アグニカ・カイエルのアグニカ!(この前の試合で必殺技覚えました!)』
『バエル。バエル・バエル!(我々の必殺技ならやれるかもしれません!)』
『……何? それは本当か?(バエルゥ……)』
『魂ッ!(魂ッ!)』
スーパーアグニカトランスポーターの完成後、彼らは言った。
丁度、この間の名無しウォリアーズとの試合が終わった後、彼らのリーオーのコクピットに【SPECIAL MOVE ACQUIRED】と表示されたのだそうだ。
その表示は一定のランクに上がったダイバーが身につける「必殺技」を、彼ら仲良し四人組が取得したことを意味していた。
私やイッシーよりも先んじて必殺技を手に入れるとは、失礼ながら予想していなかったものである。
しかし、よくよく考えれば腑に落ちる話ではあった。ライザップの話によれば必殺技の習得はGBNでの戦闘経験や操縦傾向、戦闘状況によって左右されるものなのだと言う。その点で言えば我らの中で最も必殺技を必要とする状況に立たされていたのは、他ならぬ仲良し四人組だったのかもしれない。
故に、GBNのシステムは仲良し四人組に関しては適性の高い必殺技をスムーズに導き出してくれたのだろう。
彼ら仲良し四人組のプレイスタイルにとって、最も相応しい必殺技を。
その必殺技の名前を、彼らに代わって叫んだ。
「スピリッツ・コネクト!!」
スーパーアグニカトランスポーターと密着している仲良し四人組のリーオーに向かって、パンチングマシンのようにバエルの右手を叩き込み、その胸部へとめり込ませた。
──その瞬間、リーオーの機体が金色に光り輝く。
《何の光!?》
アヘッドと抗戦しながらその光景を見ていたロータス郷から、呆気に取られた声が響く。
突如としてシャトルを押さえ始めたリーオーにバエルが拳を叩き込むと、何故か金色に光り輝いたのだ。なるほど、端から見ればこんなに理解不能な現象はないだろう。
ならば、私が説明しよう!
仲良し四人組の必殺技「スピリッツ・コネクト」。それは、複数のガンプラの魂を一つにすることで、一定時間自身と密着した機体の装甲強度を爆発的に上昇させる最硬最後のフィニッシュムーブであるッ!
発動するには自機以外の複数の機体と密着する必要があり、発動終了後にはエネルギーを使い果たし自壊してしまうという欠点がある。しかしそれらのデメリットに相応しいメリットがあり、発動中のリーオーの装甲は私のバエルソードさえ受け付けない凄まじい硬度を発揮してみせた。
それは常にバエルの盾になろうと思い続けてきた彼らにとって、この上なく相応しい必殺技と言えるだろう。
そして、この必殺技は盾としてだけでなく、使い方次第では武器としても応用することができる。
彼らの必殺技を一目見て我々が考えたのが、今回のミッションに対する勝利の鍵だった。
その発動に必要な最後の条件を、スーパーアグニカトランスポーターを指揮するライザップが担った。
《アグニカン・スラッシャー! 発動ォ! 承認ッ!!》
スーパーアグニカトランスポーター、その船はただの高速シャトルに非ず。
今回のミッションを攻略する為だけに作り上げたその船は、仲良し四人組の「スピリッツ・コネクト」を有効に扱えるミラクルツールでもあったのだ。
「アグニカン・スラッシャァァァ──ッ!!」
ライザップの流れるような承認に同調し、私も豪快に叫ぶ。
ビルドダイバーズの素晴らしい戦いを見たことで、今の私は最高に機嫌が良い。ガラではないが、今だけは勇者になったつもりでこれを使うことにしよう。
金色に輝くリーオーから伝染していくように、スーパーアグニカトランスポーターの船体もまた黄金の輝きを放ち一同の目を眩ませていく。
その変化は色だけに留まらず、金色に変わったリーオーとシャトルは内側から跡形も無く弾け、光のエネルギー体へと姿を変えていった。
その鋭利な姿を見て、ロータス郷が驚愕する。
《密着したリーオーとシャトルが……剣になった……だと……!》
そう。
それはバエルが携えた、全長72メートルに及ぶ超巨大なバエルソードだった。
これがシャトルを媒体にしたスピリッツ・コネクトの応用技【アグニカン・スラッシャー】。
正式名称「アグニカ・ノ・タマシイ・ショックウェーブ・ジェネレイティング・バエリッシュ・ツール」。デビルガンダムコロニー級の敵を迎撃する為に作られた、ガンダム・バエル最強最後のミラクルツールであるッ!と、ライザップが捏造していた。
GBNのシステムだからできる……と言うか、そうでなければ流石に許されざる禁じ手だが、これでも150ガーベラストレートよりかは小型なので許してほしいものだ。
しかしその威力はGBNの必殺技に恥じず、見た目よりもさらなる破壊力を誇る。刀身はエネルギー体で構成されているので見た目よりも遙かに軽い上に、攻撃の判定はバエルソードと同じなのでIフィールドやナノラミネートも貫通できる。まさに、今回の為に作られた最強の戦略兵器だった。
《ちぃーっ! や、奴を止めろ!》
《う、うおおおおおおおお!》
太陽の剣とも言うべき剣を構えたバエルに驚愕しながらも、ロータスは冷静に全兵力をけしかけてくる。
イッシーの足止めを突破し、総勢60機ものガンプラが一斉に襲い掛かってくる……が、今の私には物の数ではない!
「邪魔だ!」
《ぎゃあああああああ!?》
《うぎゃああああああ!?》
《ひいいいいいいいい!?》
《光が……広がっていく……》
一閃。
72メートルのバエルソードを横薙ぎに払うと、その範囲にいた敵機が地獄の亡者のような唸りを上げながら一瞬にして粉々になっていった。
直接剣に触れなくとも、エネルギーの剣圧だけで大半のガンプラが薙ぎ払われていくこの爽快感!
正義! 真理! 魂! バエリッシュ!
思わず歌いたくなる感覚が私を襲い高揚するが、残念ながら今の我々に時間は残されていない。
普段のアグニカとは趣向が違うが、たまにはいいものだな。このような雑なプレイというものも!
最強ツールアグニカン・スラッシャーを携えた私はスラスター出力を全開にすると、その剣を右へ左へと振り回しながら敵の防衛網を突破し、ラビアン・クラブへと急迫していった。
残り1分を切り、刻々と迫るタイムリミット。
焦燥感の中で私の脳裏に響いたのは、志半ばに散っていき、バエルにこの剣を託していった同志諸君らの声だった。
《全ての……魂を……》
《全ての……アグニカを……》
《受け継いで……ください……》
《バエルだ……》
《アグニカ・カイエルの魂……》
《正義は……我々にある……っ!》
一人はバエルの為に。皆はバエルの為に。
自らがバエルソードとなる。そうか、これこそが君たちが積み重ねてきたバエルへの思いの結晶なのだな!
ならば私が見せてやろう! 本当のバエルの力を!
ラスタルが革命派を封じようとしたのも!
ルプスレクスの射程に近づけなかったのも!
マクギリス・ファリドを孤立させたのも!
禁止兵器に頼り、直接攻撃しに来なかったのも!
全ては、奴らが恐れていたからだ。
アグニカの力を高め、セブンスターズの力を超える……バエルから生まれる、このエネルギーをッ!!
「アグニカは、一人ではない……我々が、アグニカだッ!」
剣の間合いに入った瞬間、ありったけの力を込めてバエルが振り下ろす。
悪魔の数にあやかった72メートルのバエルソードを叩き込み、ラビアン・クラブの防衛システム諸共袈裟切りに切り裂いていく。
内包する膨大なエネルギーを隠そうともせずに食い込んだ黄金の剣先は、要塞のコア・ユニットを粉砕し、全てを光の中へ消し込むように振り抜かれた。
恒星のような爆発が広がり、無数の破片となって大気圏へと散らばっていく。
あまりの光景に絶句するロータス一同が見つめる中、光の中から飛び出してきたのは白銀の翼を広げながら勝利の凱旋を披露する一機のガンプラだけだった。
そのガンプラ──バエルの中でしばし哄笑を上げながら、私はこの戦いの勝利者の名をヒリヒリと世界へと叩き付けてやった。
「純粋な力が輝きを放つ舞台で、全てを圧倒するフォース! これこそが、アグニカンスピリッツ……世界を変える力なのだ」
爆発の煽りで自身の装甲も少なからず傷つけてしまったが、その威容は決して陰ることはない。
見るがいい、私のバエルを。これが我々のアグニカだ。
自前のバエルソードを取り出し、今再び高々と掲げて叫ぶ。
「皆──バエルのもとへ集え!」
バエルだ。
アグニカ・カイエルの魂。
アグニカン・スラッシャーはご覧の通り凄まじい火力を誇るが、普段のフォース戦ではおそらく隙やデメリット効果が大きすぎて使いどころが難しくなるだろう。今回使ったのは、発動するに当たって理想的すぎるミッションだったからでもある。
それに……これは今思ったことだが、この必殺技を使うと漏れなくリーオーが自壊する為、勝利したところで彼らの合いの手が聞けなくなるのが難点だった。
いつの間にか、バエルのもとに彼らがいることが当たり前になっているのか……己の認識を自覚し、思わず苦笑した。
仲良し四人組の必殺技のこの使い方は、おそらく今回が最初で最後になるのではないかと思います。
アクシズ落としたりカードゲームしたりする奴がいるGBNの必殺技の中では多分これ地味な方だぜ!