バエルを使って、アグニカンドリームを実現する為にガンプラバトルをする男 作:GT(EW版)
鬼滅、ファフナーBEYOND、BDバトローグ、最近アニメが面白いので投稿します。
ロータス・チャレンジのクリア報酬3000万ビルドコインを手に入れた我らアグニカンスピリッツは、日々賞金稼ぎに邁進してきたこれまでの活動と合わせて遂に必要な活動資金を集めることができた。
……と言うことは、即ち──
これで我らのフォースネスト、ヴィーンゴールヴ風タケミカズチの大規模改修工事に着手できるということだ!
かのミッションで「ラビアン・クラブ」という魔改造フォースネストの到達点を実際に見ることができたのも、インスピレーション的な意味で我々には大きかった。チャレンジをきっかけにロータスのメンバーとも交流を持つことができ、そう言った意味でも我々のロータス・チャレンジは予定以上の大成功と言って良いだろう。
全ての準備が整い、後は工事を進めるのみ。しかしビルダーの性か、当初の予定以上の収入と人員が加わったことで私にはさらなる欲が芽生えてしまった。
「いっそ原作を超え、最終的にはヴィーンゴールヴとなったこの船を飛ばしてみるのもいいな」
「飛ばす? 飛行能力をつけるのですか?」
空飛ぶメガフロートと言うのも中々バエるものだ。そうは思わないか? 私はそう思う。
まあ、実際にやるかどうかは別だが、君達も斬新だと思ったアイディアはどんどん挙げてほしい。ここは私のフォースネストではなく、私のバエルのフォースネストなのだからな。
しかし、まずはバエルを奉納する蔵となる「バエル宮殿」の建築を優先するとしよう。
さて、どういうレイアウトにしようか……予算や人員が足りても、完成まではまだまだ時間が掛かりそうだ。私は己のことをその時その時の感情で生きる刹那的な人間だと自覚しているが、バエルに関してだけはどこまでも慎重な完璧主義でありたいと考えている。私のバエルに見合う蔵を作るには、事は全てアグニカンに運んでいきたいものだ。
「ギャラルホルンの真理はここだ。では、共に駆け上がろうか」
「バエル宮殿だ!」
「アグニカ・カイエルの魂の魂ッ!」
「そうだ……バエルはここにある!」
ふっ……もちろん、これも同志諸君らと相談した上で、の話になるがね。
アグニカを説く私だが、私自身はアグニカ・カイエルのような完全無欠の人間ではないのだ。しかしだからこそ、私はこれからも心にアグニカンスピリッツを灯し続けていきたい。
つまり、何が言いたいかと言うとだ。
──我々のアグニカは、これからだ。
それは、電子の海だった。
重力も空気もない。辺り一面が無限に広がる宇宙のような広大さであったが、宇宙とは違いそこには星もデブリも無かった。
しかし星のような淡い輝きを放つ光は、そこら中無数に散らばっていた。
それは、0と1が不規則に羅列された電子情報の残骸……GBNの世界にあってダイバーたちが暮らすディメンションとは異なり、人々に観測できない領域にあった。
始まりは、遠い宇宙からやってきた。
滅びゆく母星から逃げ延びる為、電子体となって宇宙を彷徨っていた星の民。その内の一欠片は何の因果かGBNという電脳空間にたどり着き、姿形もなく電子の海を漂う存在なりながらもディメンションに集うダイバーたちの「ガンプラへの想い」と重なり合い、少年少女の姿を持った新たな生命を生み落とした。
電子生命体「ELダイバー」。
後にそう呼ばれることになるその存在は、人が数多持つ奇跡と奇跡の積み重ねによって生まれたGBNの子供たちであった。
しかし──もしも、誕生の際に不純物が紛れ込んでいたとしたら?
『アグニカン・スラッシャー!!』
イレギュラーが発生したのは、ロータス・チャレンジを二つのフォースがクリアしたあの瞬間。
その時、一人の無駄に強いアホとそのガヤたちが起こした行動は、GBN中の人々から通常のプレイではあり得ないほど強烈な特異性を持った電子情報を、瞬間的に一カ所へと集中させた。
それは、ダイバーたちのガンプラへの「好き」とは似て非なる、バエリストたちの「アグニカしたい」という想いだった。
イヴとサラ……過去に二人の少女を生み落とした過程とはやや異なるが、それもまたELダイバー誕生の条件を満たすほど膨大な電子情報を掻き集め、一人の電子生命体を爆誕させる結果となった。なってしまった。
言うならばそれは、ELダイバーならぬ「BAELダイバー」である。
このGBNに生まれた新たな電子生命体であり、生まれながらのバエリストであった。
そんな誕生経緯を経て生まれた少女の人格は、本来ならば彼女を生み出したアホとそのガヤたちのようになっていたのかもしれない。
それはそれで不幸な境遇かもしれないが、ここでもう一つ、彼女の存在にはイレギュラーが発生した。
生まれ落ちた彼女の存在には、遠い宇宙の断片的な記憶やバエルへの絶対的アグニ感だけではなく、かつてこのGBNを破滅させかけた禁忌の電子情報が組み込まれていたのだ。
それは、かつての戦いでディメンション中に砕け飛び散った「ブレイクデカール」の残骸。それこそが、世界唯一のBAELダイバー誕生の際に混入した不純物の正体だった!
「…………」
人型の形に集まっていく光の粒子から、小柄な少女が姿を現す。
肩先まで下ろされた髪の色は青みがかった白で、その毛先だけが闇のように黒くくすんでいる。
背中から伝わる感触が固い。彼女が生まれ落ちたのは柔らかな芝生の上ではなく、物々しさに覆われた人工物の上だった。
覚醒した少女はゆっくりとその場から身を起こすと、生まれたての子鹿のような覚束ながら初めて己の足で立ち上がった。
そんな彼女は次に目を開き、初めて「世界」というものをその視界に映した。
「わぁ……っ」
少女の小さな口から、初めての息が零れる。生まれて初めて目にした外の世界に対する感動である。
それは、朝日に照りつけられた大海原の景色だった。
美しい景色に赤い瞳を輝かせると、次はその髪を煽る潮風に驚き、少女はくふふと微笑む。
自分がいる世界を見て、感じる。たったそれだけのことが何もかも新鮮で、彼女には楽しかったのだ。
「これが、海……これが、風……あれが……空?」
生まれながらに頭に携わっていた電子情報と目の前の風景を照らし合わせながら、少女はそれを自らの知識として吸収していく。
そんな絶景を満喫した後、今度は足元を見てみる。人工物でできたそれは、この海に浮かんでいる大きな「船」だった。
「フネ……おおきな、船。ヒトがたくさんいる……? アグニカも、いる……?」
空母、タケミカズチ──今自分が立っているのは、甲板の上だったようだ。
ここが、自分の生まれた場所……少女は振り返り、改めて船の姿を見つめた。
そして、数拍の間を置いて呟く。
「アグニカは……こわい……みんなをいじめたから……」
船の中にいる自分の「父親」にして天敵──その存在を知覚し、少女の頬が強張った。
フォース「エレガントナイツ」はランキング60位の強豪集団である。
それぞれ円卓の聖騎士をモチーフにしたガンプラを扱う13人のメンバーで構成されており、メンバーの全員が必殺技を習得している猛者たちである。
それ故に個々の実力は高く、過去の個人戦大会では度々ベスト16に名を連ねたこともあるほどだ。そういったメンバー各人の実績を挙げれば、フォースランキング十傑に入らず60位程度に収まっているのが不思議なぐらいだった。
このGBNで円卓の騎士モチーフと言えば、不動のチャンピオンクジョウ・キョウヤが率いる「アヴァロン」が有名である。エレガントナイツもまた彼らとほぼ変わらない時期に創設された古参フォースであり、それ故にリーダーの「マグナス・シャインゴールド」はクジョウ・キョウヤら上位ランカーとも顔見知りの間柄であり、同モチーフであるアヴァロンに対してはライバル意識すら抱いていた。
そんな彼女だからこそ、近頃キョウヤが注目しているフォースの一つ、「アグニカンスピリッツ」に興味を抱いたのは必然だったと言えるだろう。
クジョウ・キョウヤに注目されたフォースは大成する。
巷ではそんなジンクスが囁かれているが、古参ダイバーたるマグナスは過去に何度もその実例を見てきたものだ。
クジョウ・キョウヤは冗談みたいな強さを持っている上に、人を見る目までも優れている完璧超人である。時々大人げないことをするのが難点だが、そんな彼が一押しするフォースには少々ちょっかいを掛けたくなるのも道理だった。
彼の一押しと言えば同じくロータス・チャレンジをクリアした「ビルドダイバーズ」もそうなのだが、あちらはチャレンジ達成以来他フォースからも対戦申請が殺到している身であり、エレガントナイツはその波に出遅れた為に今は受諾待ちの状態である。
アグニカンスピリッツも同様の理由で彼ら以上に競争率が高かったのだが、こちらは以前から対戦を申請しており、マグナスたちエレガントナイツが注目していたのも「鉄火団」戦以前からのことだった。
バエルはエレガントな機体である。
故に、エレガント至上主義であるマグナスたちはそんな機体を使いこなすアグニカンスピリッツのことを兼ねてより気に入っていた。
今回はその申請が通り、ようやくかのフォースと相まみえることとなったわけである。
わけなのだが……
「野郎、全然集まらねぇ……!」
金色の騎士甲冑を纏った金髪の女性、リーダーたるマグナス・シャインゴールドは空席だらけの円卓にぐったりと突っ伏し、忌々しげに呟いた。
試合時間まで刻一刻と迫っているにも関わらず、彼女が集合場所に指定したエレガントナイツのフォースネスト、「エレガント宮殿」のテラスにはまだ自分を含めて二人しか集まっていなかった。
そう、これこそがこのフォースがランキング60位に甘んじている最大の理由である。
エレガントナイツのメンバーは皆どこに出しても恥ずかしくない実力者なのだが、どこに出しても恥ずかしいレベルで協調性が無かったのだ。
出席率が不安定どころか、全員が気分屋でワンマンアーミー気取りのキワモノたちである。大抵は隊長の指示を聞かずに個人技に走り、寝返り裏切り内輪揉め何でもありの問題児なのだ。全く持って騎士の風上にも置けない……いや、ある意味ではアヴァロン以上に円卓の騎士をリスペクトしているかもしれないフリーダムな連中だった。
それ故に試合当日になって大勢のメンバーがドタキャンするのも何ら珍しくはない。この日も例によってそれだった。
マグナスがリーダーを務めているのも、実力以前に彼女が最も常識的かつ出席率が高いダイバーだからである。
「ビクトリアとオメガは仕事の都合、デーベは定期検診。他の騎士たちはおそらく大会の調整か……何とも我々らしい」
「事前に欠席の連絡をくれた三人は許そう。特にデーベさんは御年82のでぇベテランだから仕方ない。だが残りの奴らは許さん! 今度会ったらとっちめてやる!」
「ふっ……怖い顔だ。気を鎮めたまえ。君にその顔は似合わんよ」
「うっせぇぶっ殺すぞ」
「それもまたエレガントだ」
マグナスが死んだ目で睨み付けた先には、その手で赤いバラの花を弄んでいるエレガントな男の姿があった。
そう、エレガントである。
具体的にどのようにエレガントかと言うと、その顔、その姿、その格好、その凛々しい眉毛である。
男のアバターは360度どこを見回しても完璧に作り込まれている「トレーズ・クシュリナーダ」パーフェクトフォルムだった。
トレーズをトレースした男の名は「トレース・ロードナイト」、あだ名は専ら「きたない閣下」である。エレガントナイツ最強の剣技を誇る騎士にして、今回の招集に応じてくれた唯一のメンバーだった。
「どうすんだよコレ……5対5の予定が二人しかいないんじゃ試合できないじゃない!」
「紅茶でも飲んで少し落ち着きたまえ。彼らも騎士だ。やむを得ぬ事情で来られなかった以上、代理は立ててきている筈だ。それが我らのルールでもある」
「……傭兵か。なんかもう、お前らより傭兵の方が信頼できるんだけど」
「ふふ」
「ふふ、じゃねぇよ眉毛ちぎるぞコラ」
「やめたまえ」
金髪美人のアバターが台無しとばかりにやさぐれているマグナスを、エレガントな美声で宥めながらトレースが微笑む。
残念ながら今回は二人のメンバーしか集められなかったエレガントナイツだが、GBNにはそのようなフォースにも救済措置が施されていた。
それこそが「傭兵」システムである。
それはビルドコインを報酬に外部から助っ人を呼び込み、一時的にフォースメンバーとして共闘することができる制度だ。
今回のように予定した出席をキャンセルした場合には、キャンセルした者の自腹を切って傭兵を雇うこと。それが、マグナスがリーダー権限とリアルファイトを以て無理矢理取り決めることができたエレガントナイツのルールでもあった。
その結果最近では本来のメンバーたちよりも傭兵と共闘することの方が多くなり、マグナスの周りには随分と顔見知りの傭兵が増えてしまった次第である。その有様は専ら傭兵サーの姫である。
いっそのこと仲の良い傭兵たちを連れて新しいフォース作ろうかな……割と本気でマグナスはそう思い始めていた。
ふとその時、彼らのいるテラスを影が覆い、空から音が聞こえた。
「おや、早速一人来たようだ」
「イナクト? しかも、あの色は……」
空から姿を現したのはエレガントナイツの機体ではなく、傭兵のガンプラである。
機体の名は「サーシェス専用AEUイナクトカスタム」。「機動戦士ガンダム00」に登場し、モラリア共和国のPMCトラストが研究用に入手したAEUイナクトの正式量産型に独自改良を加えた機体である。
カラーリングはアリー・アル・サーシェスのパーソナルカラーである緋色。まさにザ・傭兵とでも言うべき造形だった。
そのイナクトが宮殿の横に着陸すると、コクピットから出てきたビジネススーツ姿の男がテラスの前に姿を晒す。
縮れ毛の髪にハイライトのない瞳、モアイ像のような鼻筋、剃り残した無精髭が目立つ長身のアバターは、このGBNでも有名な傭兵だった。
「あんたらか? 試合前にメンバーが集まらなくて難儀してるってのは」
まさか、彼ほどの傭兵が来るとは……その姿に少なからず意表を突かれた表情を浮かべながら、マグナスは彼の到着を礼節を持って歓迎する。
「リューギ・ランチタイム……貴方でしたか。ご足労いただきありがとうございます」
「騎士の嬢ちゃんにきたない閣下か、こりゃまた懐かしいな。こっちこそよろしく頼むぜお二人さん」
「頼りにさせてもらうよ、リューギ。我が友よ」
リューギ・ランチタイム。ランキング60位の強豪フォースに雇われるに足る、凄腕の傭兵である。
アバターこそ冴えないサラリーマンのようだがその戦い方は裏家業の如く苛烈に過ぎ、如何なる依頼も昼飯前に片付けることから「昼飯のリューギ」の二つ名を持つことで有名な傭兵だった。
そんな彼は愛機であるイナクトのコクピットハッチの上でネクタイを緩めると、タバコを吹かしながら言った。
「ああ、そこの二人も挨拶ぐらいはしておきな。言っておくが、今回のクライアントは礼儀作法にはちと厳しいぜ?」
「そこの二人? っ……!」
どうでもいいことのようにさらりと告げられたリューギの言葉を聞いて、マグナスは初めてテラスの壁際に寄りかかっている二人の大男の存在に気づいた。
気配をまるで感じなかった。得体の知れない強キャラめいた佇まいを見て、マグナスがごくりと息を呑む。
一人は頭の上から足のつま先まで全身黒ずくめの衣装に覆われている、サラサラロングヘアーの銀髪の男だった。
「戯言は終わりだ……さぁ夢から醒めて……お前の好きな緋色で……再会を祝おうじゃないか……なぁ? シェリー」
「シェリーって誰よ」
黒ずくめの男、アバターネームは「クリスティ」。
常に詩的な言葉遣いをすることと、美人な女性を見ると何故か「シェリー」というあだ名を付けて勝手に悦に浸ることで有名な変人である。しかしその実力は高く、トップランカーたちからも腕利きの傭兵として知られているダイバーだった。
乗機は彼の服装同様のカラーリングを施された漆黒の「ZGMF-1017 ジン」。ガンダムSEEDシリーズの傑作量産機を巧みに操り、遙か彼方からの正確無比な狙撃で敵を撃ち抜く(時々標的を間違えるが)その腕から、同業者たちから「ジンの兄貴」という呼び名で親しまれていた。
「昼飯のリューギにジンの兄貴とは、これはまた大物を連れてきたものだ。それに……」
いずれも代理の傭兵としては破格すぎる面子である。
そして最後の一人……鉄の仮面を付けた三人目の傭兵もまた、彼らと同等か、或いはそれ以上の実力の持ち主であった。
「ヴィダール仮面、君は相手がアグニカンスピリッツと聞いてやって来たのかな?」
ガンダム・ヴィダールを操る正体不明の男、ヴィダール仮面。
本来のメンバーが揃わないことで有名なエレガントナイツは、今までも数多くの傭兵たちに依頼してきたものだが、彼がこちらの依頼に応じたことは一度も無かった。
そんな彼がアグニカンスピリッツとの試合を前に参戦してくれたのは何の因果か、その胸中を察したようにトレースが訊ねると、仮面の男は首を振った。
『アグニカンスピリッツが相手だからではない。あの男が相手だからだ……』
「ほう……」
トレースの問いは半分が間違いであり、半分が正解だった。
何故ならばヴィダール仮面にとって敵のフォースそのものはどうでも良く、興味があったのはあくまでも一人なのだから。
『見極めさせてもらうぞ、マッキー……お前がたどり着いたバエルの理想というものを』
決戦の時は、近い。
かつてない強敵たちとの火蓋を前に、アグニカンスピリッツ最大の危機が訪れようとしていた。
今回の敵フォースはカオスです。