バエルを使って、アグニカンドリームを実現する為にガンプラバトルをする男 作:GT(EW版)
今回のフォース戦の相手は、今までで最強の敵と言ってもいいだろう。
ランキング60位フォース「エレガントナイツ」。チャンピオンキョウヤのアヴァロン同様アーサー王伝説をモチーフにしたフォースは、かのフォースと同時期に創設された古豪集団でもある。
我々のランキングが上がったことで、遂にGBNトップ100フォースともマッチングするようになったというわけだ。それはとても喜ばしい。
しかし、それはより高いレベルの戦いが今後の我々に求められるということでもある。今までも個人においてはシオンにミカと上位ランカー級のダイバーを相手にしてきたが、トップ100ともなるとエース以外にも脇を固める者たちから数段高い技量を誇っている。
何度か動画で見たことがあるが、トップ100に入るフォースの何が明確に違うかと言うと、メンバー全体の質の高さだと感じている。
戦場で目立つのは私のバエルのような一騎当千の活躍をするエースだが、レベルが高くなればなるほどそういったエースをサポートする他のメンバーとの連携が極めて重要になってくる。
それは絶対無敵を誇るクジョウ・キョウヤとて例外ではなく、脇を固めるアヴァロンの精鋭たちがあってこそ彼は本来の実力を惜しみなく発揮することができていた。尤も、彼に関しては仮に他のメンバーを封殺できたとしても単独で形勢をひっくり返しかねない底知れなさがあったが、流石はGBNアグニカランキング暫定1位と言ったところだろう。
私も負けてはいられないな。我々の潜在能力も、まだこんなものではない筈だ。日々精進を重ねていくとしよう。
さて、話を戻すが今回の相手「エレガントナイツ」はメンバー個々の能力で言えばトップ10に食い込む強者たちである。特に速さを突き詰めた神速のガンプラ「アルフォースV2ガンダム」や膂力に特化した「エグザエクストリームガンダム」、防御力に特化した守りの要「マグナアストレイ」などは、突出した一分野で言えばGBNでもトップクラスですらある。
そんな彼らとは是非ともフルメンバーで戦ってみたいところであったが……通信端末に映るエレガントナイツのリーダー、マグナス・シャインゴールドの申し訳なさそうな表情から、私は即座にあちらの事情を察した。
《……というわけで、傭兵の加入を認めていただきたいのですが……》
「構わんよ。君たちが選んだ傭兵たちだ。こちらとしては、君のような上位ランカーと戦える機会を失いたくない」
《寛大な対応に感謝します。それで、こちらが今回参戦する傭兵のリストになります》
「ほう、これは丁寧に」
ありがたく受け取らせてもらおう。
現状そちらの方が格上だと言うのに、騎士の名に恥じず律儀な女性である。傭兵を使う場合、必ずしも説明しなければならないという義務は無いのだが、彼女はわざわざ今回彼女らに加わった傭兵ダイバーのリストを届けてくれたのだ。
お互いフェアな条件で戦うのが、オンラインゲームのマナーであり騎士道精神でもある。彼女の心構えに50アグニカポイント、傭兵加入によるマイナス30アグニカポイント差し引いて20アグニカポイント進呈しよう。
『ど、どうも……』
ふっ、照れることはない。私もそれなりに騎士道には通じているつもりだ。
何故ならばガンダム・バエルは悪魔にして王。王にして民の為に剣を取った騎士でもあるからだ。
しかし……ふむ……なるほど。やはりと言うべきか、エレガントナイツに加わった傭兵たちは数合わせにしては豪華すぎる面々だった。
ジンの兄貴ことクリスティ・アガサボス。
昼飯のリューギことリューギ・ランチタイム。
そして……
「……ほう」
遂に私のもとへ来たか、ヴィダール仮面。
不思議だな。私は君のことを知らないが、何故だか初めて戦う気がしない。
もしも、この傭兵が本当にあの男だとするならば、我々は既にエレガントナイツに襟首を掴まれていることになる。
「しかし、私の魂までは掴めはしない」
それぐらいの苦難、乗り越えてみせよう。
心にアグニカを灯して、バエる未来の為に。
そして、試合当日。
今回のフィールドは軌道エレベーター、アフリカタワー周辺地帯。衛星兵器メメントモリが撃ち込まれ、ブレイクピラーが起こる前の状態である。
遠くからでも視認できる軌道エレベーターは、ダイバーたちが中に入って宇宙への行き来ができる上に、展望エリアにもなっているGBNきっての観光名所の一つでもある。因みに、今回の選抜から外れたアグニカンスピリッツの面々はあそこで観戦するようだ。
その選抜メンバーは、今回もいつもの八人である。
ガンダム・バエル、私。
ヘルムヴィーゲ・アヘッド、イッシー。
シュヴァルべ・ゲイツ、ソウダ・セイギ。
リーオーランチャー、仲良し四人組。
ライザライザー、ライザップ。
悲しいかな。我々は総人数こそ多いが、層が厚いわけではない。故にベストメンバーを五人選抜する場合、基本的にいつもの八人が決まってしまう形になっていた。
……その辺りもまた、我々の今後の課題だろう。せっかく多くの同志が集まってくれたのだ。出来るなら、我々も第七機甲師団のように内部競争を活性化させていきたいものだな。私のバエルやイッシーはともかく、他の者たちの間にある壁はそう高くないのだから。
そうして乗り越えた壁は、いつかは自分を守る盾となる。私はそう信じたい。
「マッキー、ガンダム・バエル、出るぞ」
《魂っ!》
さあ、試合開始だ。
気を引き締め、我ら五人のアグニカンはカタパルトからアフリカの空へと飛び立っていった。
今回のルールは殲滅戦、相手フォースのガンプラを全滅させた方が勝ちという極めてシンプルなルールだ。
一応時間制限は一時間ほど設けられているが、五対五程度ならば大抵は決着がつく。シャトルの打ち上げ阻止のような特殊ルールよりも、我々にはやりやすかった。
だがこの試合、敵は速攻で決着をつける心積もりのようだ。
「っ、各員、砲撃が来るぞ! 散開しろ!」
《バ》
《ア》
《た!?》
同志諸君の叫びが最後まで響くよりも速く、それは我々に襲い掛った。
遠く離れた青空の一に、突如として光点が生じたのである。
太陽のような光点が。
その光点は瞬く間に成長すると、直径100メートルに及ぶ巨大な光の大河となり、それが凄まじい圧迫感を伴って開幕早々の戦場に突き刺さっていった。
まさかな……いきなり撃ってくるとはな!
それにこの威力、サテライトキャノン級か。どうやらあちらはのっけから必殺技を放ち、反応が遅れた者を瞬殺しあわよくば全員巻き込んで吹き飛ばそうと考えたようだ。
光が我らのいた空域を駆け抜けていく様を見届けた後、私は的を絞らせぬようバエルに螺旋を描かせながら上昇させていく。
今しがたサテライトキャノン級の一撃が放たれた向こう側には、快晴の空に浮かぶ日輪を背に十字架の構えで両腕を広げている黄金のモビルスーツの姿があった。
百式、スモー、アカツキ、アルヴァアロン……ガンダムシリーズに登場するいずれのガンプラとも合致しない造形は、オリジナルの改造を施された独自のものだった。
それこそが今回の敵、エレガントナイツのリーダ──―
「マグナアストレイ……マグナス・シャインゴールドか!」
清廉な雰囲気に反して、ご挨拶をしてくれたものだ。
私としては好印象だよ。どうやら私は、強かな女性と縁があるらしい。
「各員、無事か?」
《問題ありません》
《正義っ!》
《た、魂!》
《ど、どうにか損傷軽微です!》
私を含む五機共に健在。いや、ライザップの機体が少し掠めたようだ。戦闘は続行できるようだが、ライザライザーのスラスターの一部分から黒い煙が上がっている。
最初の主導権は、あちらに握られたか。
おそらく必殺技であろうこれほどの砲撃、易々と連射はできない筈だ。次の砲撃が来るまでに、彼女のガンプラへ接近する必要がある。そう判断した私とイッシーが動こうとした次の瞬間、砲撃を隠れ蓑に横合いから迫ってきた緋色のガンプラが、イッシーのアヘッドを襲った。
《はっはー!》
《ぐっ!?》
ミサイルポッドによる奇襲である。
一度に放たれた五発の内、一発を被弾したイッシーを狙いに定め、緋色のイナクトが戦闘機形態からミサイルポッドをパージしつつ空中変形を行い、アサルトナイフとリニアライフルを携えながら突っ込んできた。
《テーマパークに来たみたいだぜー! テンション上がるなぁ! ええ!? アグニカンなんたらァ!》
《そうだぁらっ!?》
左手のアサルトナイフでアヘッドとつばぜり合いながら、右手に携えたリニアライフルから弾幕をばらまきセイギのゲイツを牽制していく。まるで背中にも目がついているように、多対一に慣れた動きで二人を翻弄していた。
《イッシー! セイギ! うあっ!?》
そして今度は、地上から一条の光が奔った。
地上から狙撃である。距離は遠く、少なくともバエルのレールガンが届く範囲ではない。
こちらの射程外からの狙撃は一発目でライザライザーの体勢を崩し、二発目で確実に落としに掛かってきた。だが、むざむざと彼を見殺しにする気はない。
私は続けざまに放たれた地上からのビームに割って入り、バエルソードによる切り払いでライザライザーを庇った。
《す、すみません……》
「すぐに予備のスラスターに切り替えてリーオーの援護に向かえ。孤立すれば、一瞬で落とされるぞ」
《りょ、了解!》
この正確な狙撃……ジンの兄貴、クリスティか。
当たりをつけてモニターを拡大すると、そこには予想通り、断崖部に隠れた狙撃ポイントからスナイパーライフルを構えている黒いジンの姿があった。
真昼間で助かったな。これが宇宙か夜戦だったら、視認するまでに一手間掛かったかもしれない。
カラスのように闇に紛れ、数々の敵を葬ってきた暗殺者。それがかの傭兵、クリスティ・アガサボスの戦闘スタイルである。
空に黄金、地に漆黒。対照的な色合いの機体が共に後衛として戦場をコントロールするとは……片方が傭兵ということが信じられぬほど、整った連携戦術である。
なるほど、勉強になるよ。戦場でありながら、バランスの良い相手の布陣に思わず感心してしまった。
さて、どうする?
「まずは後衛を先に始末したいところだが……」
《バエルのパイロット、マッキー!》
「何?」
イッシーに組み付いているイナクトを蹴りで引き剥がしながら、地上から来るジンの狙撃を紙一重で避けていく私のバエルのもとに、外部から通信が送られてくる。
それはとても紳士的な雰囲気を感じる、エレガントな美声だった。
それはこれまでの三機のような奇襲を掛けてくることはなく、正面から堂々たる姿で現れ出た。
カブトガニのような刺々しいフォルムでありながら、無駄の無い機能美を感じる赤い機体。
それは「新機動戦記ガンダムW」の劇中で主人公ヒイロ・ユイが乗っていた機体であり、最終的にはラスボスとして彼の前に立ちはだかった決闘用モビルスーツの姿だった。
《我が名は、トレース・ロードナイト!》
エレガントナイツの正規メンバーの一人、トレース。愛機は、ガンダムエピオン。
私はそのガンプラを見て、思わず息を呑んだ。
それは、いつか相まみえたドラゴンエピオンのような改造が施されているわけではない。
色も装備も、劇中のそれと同じだ。しかしその作り込まれたディティールやブラッシュアップされた造形は、市販のキットを通常通りの組み上げたものともまた、明らかに違っていた。
これは……このガンプラは……!
《一目見た時から、君とは一度語り合いたいと思っていた。私にはわかる……そのバエル、マニュアル通りに作り上げたものではないな》
ああ、何という……何ということか!
原作を忠実に再現し、その魅力をより引き出す為に全力を尽くしたそのビルド!
そうか、そうなのか! わかるぞ、私にも君のガンプラが理解できる!
「ふふ……お言葉だがトレース閣下。我々の間ではもはや、言葉で語らう必要はあるまい」
出会った瞬間、私は、我々は一目で理解した。
ベースとなったガンプラは違えども、お互いが扱っている機体は、どちらも同じ信念を込めて作り上げられたものであると。
そうとも。
私はバエルでアグニカする為に。
彼はエピオンでエレガントする為に。
互いにいい大人である筈の私と彼は、紛う事なき
《ふっ、正しい意見だ……ならばマッキーよ、私は君に決闘を申し込む!》
ガンダムW作中において、かのミリアルド・ピースクラフトはトレーズ・クシュリナーダから寄せられた決闘の申請を拒否した。武人として生きていたゼクス・マーキスの頃ならばいざ知らず、既にコロニーの主導者となっていた彼には、一対一の決闘で全てを決するには背負うものがあまりに多すぎたからだ。
だが、それは私とて同じこと。
私の後ろにもまた、アグニカンスピリッツという守るべきものがある。
故に、今の私は安易に敵の申し出を受けるわけにはいかぬ立場であった。
──だが、我らはアグニカンスピリッツだ!
《准将おおおおおおおお!!》
──准将、行ってください。
叫びと共にイッシーから掛かってきた通信は、我らアグニカンスピリッツの本懐を示していた。
そうとも、一人はバエルの為に、皆はバエルの為に。
フォースの勝利は最優先だが、前提としてバエルがアグニカしてバエるのであれば如何なる苦難も受け入れられるのが彼らの精神だった。
感謝するぞ、イッシー!
「決闘は……受けよう!」
何故なら、その方がバエるからだ。
最高に作り込まれた最強の決闘機エピオンから叩きつけられた挑戦状、受けねばアグニカの名が廃るというもの。
またとないこの機会、イッシーたちに負担を強いることになっても私は受けざるを得なかった。
《バエルだ!》
《アグニカ・カイエルの魂!》
互いにスラスターを噴かし、自慢の剣を抜き放つ。
バエルはバエルソードを、エピオンはビームソードを。
《エピオンだ!》
《トレーズ・クシュリナーダの魂?》
我々の間に言葉は不要。語るならば剣だ!
似通った機体コンセプトを持つ二機は、アグニカとエレガントを持ってその剣を交差させていった。
アグニカンスピリッツとエレガントナイツの戦闘の様子は、アフリカタワーの展望エリアから観戦することができる。
エリアではバトルメンバーに選出されなかったアグニカンスピリッツのバエリストたちを含む多くのダイバーたちが戦いの様子を見守っていた為、どちらかと言えば応援の声が多いのはアグニカンスピリッツの方だった。
尤も、エレガントナイツもまたランキング60位ほどの強豪フォースであり、古参であることからも一定数以上のファンがいる。それ故に近頃話題のマッキーのガンダムバエルと汚いトレーズことトレースのガンダムエピオンが接敵した瞬間にはざわめきの声も大きかった。
バエルとエピオンはどちらも近接戦闘に長けた機体であり、その機体コンセプトから比較の対象に上がることもあった両機である。そんな二機が、いっそ気持ち悪いレベルで原作を忠実に再現したビルドで仕上げられ、同じ戦場で出会したのである。ガンプラバトルファン以前に、ガンダムファンとして沸き立たない筈が無かった。
「始まったな」
「ああ……」
この注目カードに対して、いずれ来る対戦の日に備えてはるばる偵察に訪れた者たちの姿もちらほらある。
そう言った者たちの一部では強豪の偵察を行うカッコいい自分をロールプレイする為だけに、わざわざ架空のユニフォームを着て展望エリアに乗り込み、これ見よがしに目立つ通路で観戦していたりした。
さながら既に全国出場を決めて他県の代表を視察に来たバスケ部のような雰囲気作りである。
彼らは壁に寄りかかりながら、人が近くを通る時を見計らって、
「アグニカンスピリッツ、なかなか面白いチームだな……」
「ああ、特にあのアヘッド」
「お前と同じ副隊長だな。どうだ? 止められそうか?」
「さあな……」
「おいおい、副隊長がそんな弱気でどうすんだよ」
こんな感じのやりとりを繰り返している。その姿は実際カッコいい。そんな彼らすら何気にSランクダイバーだったりするのがこのGBNの混沌さ、自由ぶりを表していると言えるだろう。
そんなアホたちを他所に、バエルとエピオンが舞う剣技に見惚れた者が、アグニカンスピリッツの者にフォースへの加入を申し込んだりと展望エリアはいつも以上に賑やかだった。
ガンプラバトルについて口々に語り合い、他人に迷惑を掛けない範囲で自由に遊ぶ。
大人も子供も、人種や宗教さえ関係なく、ガンプラやガンダムへの理解さえあれば誰もが皆楽しんでいける優しい世界。きっとそれは、この世界を作った者たちの理想の一つでもあったのだろう。
どこからともなくこのエリアに現れ、そんな彼らの様子を見て少女が一人微笑む。
この世界を作った者たちの温かな感情に……そして、戦っているガンプラが放つ純粋な力の輝きを受けて、空っぽだった少女の心が少しずつ満たされていく感じがした。
「あれが……ガンプラバトル……」
自分を生み出したもの。
遙か遠い惑星から、自分を導いたもの。
この世界に生まれ落ちた少女の中に漠然と残っている信じがたい情報が、どれも真実であることを理解できる。
そして──
「あれが……バエル……」
世界に満ちる果てしない優しさを感じる一方で、少女はその身を震わせる深い恐怖を感じていた。
恐怖を感じる理由もまた、少女には漠然とわかっていた。
あれはこの世界の人々に希望を与えてくれた優しい存在であると同時に……少女の存在を形成した闇を打ち砕いた天敵であったからだ。
「バエルは、怖い……だから……」
──あんなモノ、消してしまえばいい──
ブルッと、少女が胸を押さえて震える。
今、私は何を考えた?
一瞬、その心に過ぎった自分自身の感情に怯え、酷く困惑した。
そんな少女の、楽しい場所には似つかない様子に気づいた男がいた。
いや、男と言うよりも、オネエと言った方が正しいだろうか。引き締まった肉体と穏やかな眼差しを持つその親切なオネエは、少女の様子に気づくなり心配そうな声を掛ける。
「大丈夫? どこか悪いの? あら、アナタ……」
オネエ──マギーは目線を合わせるように屈みながら俯いた少女の様子を窺うと、少女の容姿が自らの幼いフレンドと同じであることに気づいた。
「アナタ……サラちゃん? いつもの格好じゃなかったからわからなかったわ。そのお洋服、可愛いわね」
サラ──マギーがその名を口にした瞬間、ハッと息を呑みながら少女が顔を上げた。
そして少女は赤い瞳でマギーの目を見つめ返し、小さく首を振る。
「私は……サラじゃない。私は……」
私は……誰なんだろう?
己に問い掛けながら、少女は踵を返し、マギーの元から走り去っていった。
「あっ……行っちゃった。もう、私ったらダメねぇ」
こちらの制止を聞かず消えてしまった少女を見送りながら、悪いことをしてしまったと自らの頭をゴツンと叩き、マギーは肩を竦める。
あの少女は自分の知る幼いフレンド、サラではなかったようだ。本人が否定した上に、目の色も違っていた。人違いで呼び掛けてしまったことを反省し、しかしそれにしてもと彼女の姿を振り返る。
「だけど、本当にそっくりだったわね」
GBNのアバターは基本的に自由自在とは言え、あれほどまで瓜二つなのは珍しいものだった。
汎用的に用意された没個性的なアバターならともかく、サラのような美少女のアバターに意図的に近づけるとなるとそれはもう並大抵の努力ではないだろう。
それはつまり、あの少女は元からよく似た容姿であるということの証であり……
「ひょっとしたら、姉妹だったりして」
今度サラちゃんに会った時、姉か妹がいないか聞いてみよう。
雰囲気的に、サラちゃんの方がお姉ちゃんかなと思いながら、マギーは目の前に広がるバトルフィールドへと視線を戻した。