バエルを使って、アグニカンドリームを実現する為にガンプラバトルをする男   作:GT(EW版)

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 積みゲーを消化しようとしたら積みゲーが増えたので投稿遅れまし魂。


純粋な力のみが成立させる真実の世界を!

 マグナス・シャインゴールドのガンプラ「マグナアストレイ」はガンダムアストレイ・ブルーフレームを原型にした彼女オリジナルの改造ガンプラである。その機体色は黄金。青いフレームの上にアカツキを基にした黄金のアーマーを纏っており、快晴の日に当てられた装甲はまさに太陽のようだった。

 

 そう、エレガントナイツの守りの要、マグナアストレイは太陽の力を持つガンプラである。

 

「シャイニング・ゴールド・ソーラ・レイ」。開戦と同時にアグニカンスピリッツを襲ったのは、彼女の必殺技だった。

 その機体に纏う黄金のアーマー「ヤタノカガミ」をミラーとして活用することで、太陽のエネルギーをソーラ・システムのように放出する彼女の切り札である。それ故に発動するにはまず日が出ていることが条件になるが、一発で戦局を変えうる戦略兵器級の威力を誇っていた。

 そのような一撃を初手から放ったのは、ガンプラバトルのセオリーから外れた戦法だった。それを理解してなお、マグナスは敵の対応を見ておきたかったのだ。

 後々のことを考えてのことだ。今回の相手アグニカンスピリッツがいずれ自分たちと同ランクの位置まで上がり、今後もやり合う相手になるだろうと見込んだ上での試しでもある。

 

「一機ぐらいはと思っていましたが、やはり侮れませんね」

 

 その結果、敵が見せた反応は概ね見込んでいた通りである。

 やはり、アグニカンスピリッツは強い。バエルとアヘッドには避けられるだろうとしても他の一機ぐらいは落とせるのではないかと思っていたが、彼らの立て直しは予想以上に早く冷静だった。

 脇を固めるダイバーたちは強敵と言えるほどの達人ではないが、エースの足を引っ張るほど弱いというわけでもないようだ。何より彼らの操るガンプラは、中々マグナス好みの改造が施されていた。

 

「なるほど……彼らの機体には、局所的にナノラミネートが使われているのか」

 

 後方から放たれたジンの兄貴からの狙撃が、敵のシュヴァルベ・グレイズ風のゲイツへと命中する。

 胸部に命中したビーム兵器の一撃であったが、彼の狙撃は敵の装甲を貫通するまでには至らず、機体ダメージを与えながらも一撃で撃破することはできていない。

 見た目通りビーム兵器には一定の耐性があるらしく、その防御力はガンプラ自体の完成度が高いことを表していた。

 その方向性には、少しだけ親近感が沸いてくる。

 

「しかし、このマグナアストレイの敵ではない!」

 

 マグナスは自身に大口径の砲塔を向ける敵のリーオーを見下ろすと、高圧的に言い放った。

 

「ビーム耐性ならこちらにもあるぞ!」

 

 アグニ──一撃でコロニーに穴を空けるほどの一撃を、マグナアストレイがガードの姿勢を取らないまま堂々と胸部で受ける。

 瞬間、彼女に着弾した筈のビームはラケットに打ち返されたボールのように反転し、リーオーの構えるアグニを真っ二つに撃ち抜いていった。

 ビームを反射する鏡面装甲「ヤタノカガミ」の真骨頂である。マグナアストレイは彼女オリジナルのガンプラであるが、改造に用いたアカツキとアストレイが同世界観の機体ということもあってかパーツの親和性が高く、非常に高いバランスで完成されたガンプラだった。

 

《アカツキだ!》

《ウズミ・ナラ・アスハの魂!》

《そうだ……オーブの正義はアレアレにあるっ!!》

 

 こちらの黄金の装甲がヤタノカガミであることに気づくと、彼らは畏敬を込めた声音でそう叫ぶ。まるで意味がわからなかった。

 

「落とせるところから落とす。ジンの兄貴はポイントを維持、トレースがバエルを押さえている隙に私とリューギで仕掛けます」

《おうよ!》

 

 トレース・ロードナイトはエレガントナイツの正規メンバーの中では良識派だが、例に漏れず人の言葉を聞かない変態である。加えて、今回は兼ねてからマッキーのバエルに一騎打ちをしたがっていたということもあり、彼については織り込み済みの上で戦術に組み込んでいた。

 ガンダムエピオン。近接武器しか持たないエレガントすぎる設計思想は乗り手を選び、このGBNでも完全に乗りこなせるダイバーは極めて少ない。しかし、トレース・ロードナイトは見事にあの機体を乗りこなし、一対一の近接戦闘ならばあのチャンプとも打ち合うことができる猛者である。彼のエレガントデュエルに相手側が乗ってくれるのであれば、リーダーとしては幾分戦術を立てやすかった。

 彼がバエルを押さえている間に他の四機を叩き、彼らの決闘の決着がついたところで残ったバエルを叩く。もちろん、彼が普通に倒してくれるのならそれで良しだ。

 ヴィダール仮面は本人の希望により後方で待機。今は見極めに集中し、状況を見て臨機応変に場を荒らしてもらおう。

 部隊は傭兵故に細かな連携は難しいが、一人一人の実力は言わずもがな。彼らに対する指揮はある程度アバウトな方が上手く回ってくれた。

 マグナス自身、自分が優秀な指揮官だとは思っていない。元々なし崩し的に隊長になってしまった身だ。機体特性的にも、前に出て戦う方が性に合っている。

 王も含めて全員が騎士となれることが、チームエレガントナイツの強みでもあるのだ。

 

「プラズマ・シュート!」

 

 マグナスアストレイがバエル復活ポーズのように両腕を広げると、それぞれの手から稲妻が迸り、光の球を生成していく。

 光電球。掌から放出されるビームサーベル用の荷電粒子を球状に固定し、相手に叩き付けてメインカメラなどを破壊することが出来るアストレイレッドフレームの必殺技である。

 原作では偶然の産物で編み出された技であり、下手をすれば自らの腕までもヒートエンドさせてしまう可能性があったが、このマグナアストレイはその光電球をさらに改良し、正式な武装として昇華されている。

 マグナアストレイの光電球はエネルギー体として安定しており、自由自在に生成し、射撃武器として投げ放つことが可能である。それがこのガンプラのメインウェポン「プラズマ・シュート」である。

 このエネルギー弾は通常のビーム兵器とは異なり、命中した機体の駆動系を麻痺させるデバフ効果を併せ持つ。ウミヘビやエグナー・ウィップ等、ガンダムシリーズにおける電撃技の有用性はお馴染みであろう。

 アヘッドのパイロットは中々いい勘をしているようだ。投げつけられたそれに初見で嫌なものを感じたのか、受けではなく回避に専念し、バックステップを踏むように射線上から飛び退いていく。

 投擲故にビーム兵器ほどの弾速は無い。しかし、牽制としてはそれで十分だった。

 

《ちょいさぁ!》

《ぐっ……》

 

 アヘッドが飛び退いた先へと回り込み、リューギ・ランチタイムのイナクトが踊り掛かっていく。傭兵ながら、彼は全体に合わせて連携を取るのが上手い。マグナスの意図した通りに動き、的確にアヘッドを追い詰めてくれた。

 緩急を付けた読みづらい挙動でアヘッドの右腕を蹴り上げると、その手に携えていたGNビームサーベルを叩き落とす。そのまま一気にコクピットへとナイフを突き立てようとするが、寸でのところでゲイツの妨害が入り、撃破には至らなかった。

 だが素早くターゲットを切り替えたリューギが、正確な射撃でゲイツの機体へダメージを与えていく。

 

《具だくさんながらさっぱりしてる見た目! ヘルシー感出てるなぁ!》

《せ、正義っ……》

 

 相手の実力を見てモチベーションが上がってきたのか、リューギの攻撃がさらに苛烈になっていく。ノリに乗っている時の彼はSランクダイバーの中でも上位の力を誇る。

 今は味方だから頼もしいが、敵に回したら恐ろしい相手だ。そんな彼がリニアライフルとナイフで攻め立て、青いゲイツを一方的に傷つけていった。

 

《下半分には肝と骨があるから上半分とは勝手が違う。真ん中辺りに行くほど変化を見せてより掻き立てられたり、ずらしたら隠れていたのが出てきて驚かれたり、流石にこちらも限界かと思ったら新たな楽しみを見せてくれたり、もうずっと興奮が止まらないんだよ! 最高だろ!? ガンダムゥ!》

 

 リューギの独特な台詞回しにマグナスは内心「怖っ……」と引きつりながらも彼の動きに合わせて連携し、敵のアヘッドとゲイツを翻弄していく。複数の敵の間に飛び込んでいきながら優位に立ち回るその技量は、まさしくイナクトを駆る傭兵アリー・アル・サーシェスのようだった。

 リーオーとオーライザーの動きはジンの兄貴の狙撃で封じており、戦場は完全にエレガントナイツペースだった。イレギュラーが無ければ、十中八九勝てるだろう。

 だが上位ランカー同士の戦いにイレギュラーは付き物だ。事が順当に運ぶことなど滅多に無いと、マグナスは嫌と言うほど理解していた。

 

「そちらは任せましたよ。ロードナイト」

 

 彼女が独語を向けた先は後方。

 一対一で激しい剣戟を繰り広げている二機の剣士たちの激闘だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 美しい……その剣捌きを見た私は、戦士としてただ純粋にそう思った。

 おそらくは、彼自身も何らかの剣術を嗜んでいるのだろう。GPDでもそうだったが、自分自身が修めた武術をガンプラの動きに反映させて戦うファイターは稀にいた。このトレース・ロードナイトという男もまた、そのタイプと見受けられる。

 尤もそれは、ガンプラを自らの手足の延長として自由自在に扱える技量あってのものだ。

 

「やるものだ!」

 

 砲撃武装を持たず純粋な力で戦うエピオンというガンダムは、パイロットの能力がダイレクトに反映される機体だ。

 その上……これほど精巧に作り込まれているのなら、ガンダムエピオン最大の特徴であるあのシステムも再現されていることだろう。

 

《エピオンよ、私に未来を見せてくれ!》

 

 エピオンシステム。それは、ウイングガンダムゼロに搭載されている「ゼロシステム」と同質の操縦インターフェイスである。ネーミングについては「ゼロシステム」と呼称している媒体もあるが、公式設定によると同質のインターフェイスであることに変わりは無いようだ。

 リアルタイムで推移する戦況を演算処理し、導き出された最良の戦術、および実行後予測される結果を搭乗者の脳に直接伝達するシステムである。

 脳内神経伝達物質の分泌量をコントロールすることで身体能力の向上を行うことも可能で、機動時のG負荷や痛覚などの感覚を緩和し、人体の限界以上の環境下での機体制御を可能としている。即ちただ機械的に勝利のみを追求し、パイロットの潜在能力を限界以上まで引き出すシステムだ。

 しかしこのシステムは搭乗者の理性を無視し、完璧な兵士としての戦術を強制させるものの為、大半の人間はシステムに取り込まれ暴走する危険がある。

 故に搭乗者にはシステムからの望ましくない命令を取捨選択し跳ね除け、耐えられるだけの精神力が要求される。

 作中においてトレーズ・クシュリナーダがヒイロ・ユイにこのエピオンを託した時、「その機体に乗って勝者になってはならない」と忠告するシーンが印象深い。

 勝利のみを追求するシステムを使いながら、勝者になることは許されないという矛盾。力をどう受け止め、扱うのか? というその哲学は、「新機動戦記ガンダムW」という物語を象徴する問答だったのではないかと私は思う。

 全話視聴した私自身も閣下の御心は理解できていないが、「迷いの無い戦士は崇高で美しい」というその言葉には同意見である。

 

 そして、そんな戦士と全力で戦えるからこそ、ガンプラバトルを全身全霊で愛することができる! 

 

「見事な力だ! 私のバエルに匹敵するその力!」

《素晴らしい剣捌きだ! システムで予測して尚押しきれぬその技巧!》

「しかし!」

《だが!》

「勝利するのは!」

《勝者に相応しきは!》

「バエルを持つ者だ!」

《エレガントたる男だ!》

 

 勝者も敗者も所詮は結果でしかない。だが、だからこそ我々は戦い抜く。どこまでも純粋に、戦士として! 

 打ち合う剣戟の回数が、今ので100回へと到達する。

 軌道エレベーターの周囲を縺れ合うように旋回しながら上昇し、互いの機体を弾き合っていく。

 近接戦闘というバエルの土俵において、尚決めきれぬ戦いに私は喜悦する。

 これが上位ランカーの実力! 

 これが上位ランカーのガンプラ! 

 それと戦う私のバエル! 美しい! 

 白熱した戦闘によるアドレナリンは私の脳神経をより活性化させていき、私のIQをみるみる溶かしていく。

 こういう時は「バエルだ! アグニカ・カイエルの魂!」としか言い表しようにない。その点で言えば、日頃の戦いでは私よりも仲良し四人組の方がガンプラバトルを楽しんでいるのかもしれない。

 全力で戦える相手とのガンプラバトルの興奮は、何度やっても慣れないものだ。バエリストを自称しているが、私の本質的な部分は戦闘狂なのかもしれない。

 だがそれは、誰しもが持ちうる人間の本能である。

 戦争は愚かだ。人を貶め合う愚劣な行為には吐き気がする。しかし、いかに綺麗事を並べようと人類は戦いをやめられない生き物であると私は考えている。

 ヒトは戦ってこそ美しい。自惚れかもしれないが、そう考える私はピースクラフトの思想よりも閣下のそれに近いのかもしれない。

 

「それほどの機体……! 完成させるまで、一体どれほどのガンプラを組み上げてきたのか!」

《聞きたいかね? 昨日までの時点で、822体だ》

 

 あと99000体か……先は長いな。しかし積み重ねてきたガンプラビルドの実績は、私以上の大ベテランのようだ。

 そんな彼は、亡くなった者たちに哀悼の意を表するように言った。

 

《少年時代から作り上げてきたガンプラのことは、全て記憶している。ノーベル、セラフィム、ベアッガイ、ドートレス、オッゴ、ブリッツ……皆忘れられぬキットたちだ》

 

 抜群の記憶力はまさにエレガントである。流石の私も、今まで作ってきたガンプラを全て記憶しているわけではない。

 バエルのことならば完璧に記憶しているが、ビルダーとしての私は彼ほど幅広く精通してはいないのだ。

 

《多くのガンプラは、ガンプラバトルの使用に耐えられぬものたちだった。だが、君もこれだけは知っていてほしい。彼らは決して積みプラになどしていない。そして!》

 

 左腕を振り上げ、エピオンが踊るような優雅な挙動で突っ込んでくる。

 ヒートロッド──左腕のシールド先端部に接続された鞭状の武器を展開している姿を見て、私は次に来る攻撃を警戒する。

 ガンダムエピオンのヒートロッドは使用時は表面が灼熱化し、一瞬で敵の装甲を熔断する強力な武器だ。延伸距離は数十メートルに及び、近接戦闘での距離感が掴みにくい厄介である。パイロットに技量を要求する装備でもあるが、近接戦闘においてリーチ差というものが単純かつ強力なアドバンテージであることは言うまでもないだろう。

 

 そのヒートロッドが渦を描くように繰り出された瞬間、鞭の数が無数に分裂したのだ。

 

 それは原作のガンダムエピオンのヒートロッドではあり得ない挙動であった。

 故に不意を突かれ、私はほんの少しだけ対処が遅れる。

 十撃目までは捌くことができたが十一撃目の鞭がバエルソードの間を抜け、私のバエルの胸部を抉り取ったのである。

 

「な、に……!?」

 

 物理法則を無視した不可思議な一撃に驚愕しながら、クリーンヒットを浴びたバエルが吹っ飛ばされる。

 それは、トレース・ロードナイトが駆るガンダムエピオンの「必殺技」だった。

 

《どうかね? 私の必殺技「スパイラル・マスカレード」の御味は》

 

 ヒートロッドが分裂した……? いや、本当に分裂したわけではない。そう見えるほど異常な速さで打ち込んできたのだ。ヒートロッドの先端をマシンガンのように超高速で突き刺す。それこそが、必殺技と称する今の攻撃の正体だと分析する。

 

《初見でそこまで見抜くとは流石だ。つくづく異教徒なのが惜しい。念の為に訊くが、君もエレガントにならないか?》

「光栄な申し出だが、答えるまでもあるまい」

《ふっ……正しい判断だ》

 

 この機体に乗ってエレガントになってはならない。私は常にアグニカとして帰還することを望んでいる。

 しかし、原作に忠実なエピオンと見せかけ、勝負どころで彼独自の技を使い相手の意表を突くとは……

 卑怯とは言うまい。それも戦術だ。

 しかしなるほど、この強かさは確かに汚い閣下と呼ばれるわけである。

 

「エレガントか……実に奥が深い」

 

 ルールを遵守している限り、ガンプラバトルは自由。それこそ無限の戦術があり、無限の可能性がある。

 彼のエレガントは強い。そこに併せてGBNの絶対的なプレイ経験の差は、今の私をも追い詰めかねないものだった。

 だが……

 

「私はアグニカだ!」

 

 彼がエレガントなら、アグニカである私はそれさえも捩じ伏せてやろう! 

 バエることも、アグニカすることもファイターの美しさだ。ならば、私はどこまでも戦い抜いてみせる。誰よりも純粋に! バエリストとして! 

 スラスターを最大出力で吹かし、旋回した勢いで加速しながら再びエピオンとの間合いを詰めていく。

 必殺技と言うだけのことはあり、今の一撃でヒートロッドを受けた胸部の装甲は見事に抉れ、コクピットのダメージ表記もイエローゾーンを割っている。それでも何ら性能を落としていないのが私のバエルの素晴らしさだが、恐るべきはそんなバエルの装甲さえ抜いてみせた技の威力か。

 だが、勝つのは私だ。強いのはバエルだ! アグニカ・カイエルの魂! 

 

《恐れず挑むか!》

「無論だ!」

 

 リーチの長いヒートロッドによる超速の乱打は、理不尽なまでに近接殺しの技と言えるだろう。そのようなエピオンの長所を更に引き出す必殺技を習得できたのも、彼自身が求めてきたエレガントがエレガントであった証だろう。

 或いはそれは、私が目指すアグニカン・ドリームにも近しいのかもしれない。

 だがアグニカとエレガントは似て非なるもの。教えてやろう、私のアグニカを。

 

《さあ、来るがいいバエル! エピオンシステムは既に君が敗北する未来を映した! ならばマッキー、君はどうする!?》

「そのような些末事、バエルの力で捩じ伏せる!」

 

 エピオンが彼に見せる未来とバエルが私に見せてくれた未来は、決して交わることはない。

 見せてやろう。純粋な力のみが成立させる真実の世界を! 

 

《エピオンッ!》

「バエルッ!」

 

 一瞬の何分の一もの速さで、ヒートロッドを突き出したエピオンとバエルソードを突き出したバエルが交錯し、傷ついた翼を広げながらお互いの背中を後にする。

 

 

 その時には既に、互いの得物が相手のパーツを刈り取っていた。

 

 

「まさかな……」

 

 その結末に、自分ごとながら私は驚く。表面上は冷静だが、内心では狼狽えていたと言えるぐらい動揺していた。

 まさか得意の近接戦闘で私が、私のバエルが左腕を持っていかれるとは……と、知らず内に慢心の権化と成り果てていた己に苦笑する。

 

 しかし、それはあちらとて同じこと。

 

《見事だ、マッキー……君のバエルと戦えたことを、誇りに思う》

 

 必殺技を解放したエピオンのヒートロッドはバエルの左腕を刈り取り、私のバエルのバエルソードは、エピオンのコクピットを刻んでいたのだ。

 ほんの少しの当たりどころの差が、我々の勝敗を分かったのである。

 決闘の勝者となった私だが、どうにも私の中には不完全燃焼感があった。と言うのも、彼の戦い方に疑問が残っていたからだ。

 何故……もっとビームソードの出力を上げなかったのかと。

 考えられる理由としては、一つだった。

 

「試したのか? この私を」

《ふ……事は「全てエレガントに」運ぶことを信条とする私は、無粋な真似はしないよ。しかし、次はこうはいかないと言っておこう》

「……いいだろう、受けて断つ」

 

 迫るトーナメントの日に備えて、自分の必殺技への対応を見たかったのかもしれない。トレーズ・クシュリナーダはエレガントすぎるあまり本気で戦っていたのかどうかも疑わしい男だったが、そんなところまでリスペクトする彼は本物のエレガントバカである。

 まあ、いずれにせよ今回軍配が上がったのは私であることに間違いない。彼の思惑がどうであろうと、バエルバカである私は真っ向から打ち砕くまでだ。何故なら私はアグニカだから。

 

《先に逝っているぞ、ヴィダール仮面……》

 

 その台詞を最期に、空気を読んだようにエピオンの機体が爆発し、消滅していく。爆発の瞬間、彼のエピオンには特殊なエフェクトが設定されていたのか薔薇の花を撒き散らしながら美しく散っていった。

 

 これで、一機。

 しかしこれはチーム同士の撃破を競い合うフォース戦である。それ故に今回の決闘で及ぼした影響は、あまりに大きかった。

 

 

 新たな通信が入ったのは、エピオンの撃破を確認したその時である。

 

《流石だな。GPD時代よりもさらに腕を上げたか、マッキー》

 

 お前がそこにいることには気づいていた。

 決闘の最中、黙してバエルの力を見極めていたことも。

 馬鹿正直にエピオンとの決闘に付き合ってしまったが為に、彼にその機会を与えてしまったことに後悔は無い。バエルは王者であり、王者たる者、その程度の不躾な眼差しは許して進ぜよう。

 律儀に決着まで待ってくれたのにも、一応は感謝している。

 

「見極めは済んだのか?」

《さあどうだろうな? 少なくとも、お前の腕が落ちていないことに俺は安心している》

 

 撃破したエピオンのトレースと入れ替わるようにバエルの前に出現し、聞き慣れた声で通信を送ってきた敵パイロットの声に俺は微笑む。

 前哨戦としては強敵に過ぎる彼の次は、やはりお前が来たか……謎の男ヴィダール仮面! 

 案の定と言うべきか、その仮面に隠された正体は予想通りだった。

 

「お前にとってそれが喜ばしいこととは思えないが……」

《喜ばしいさ。簡単に乗り越えられるようじゃ、壁の意味が無いからな》

「違いない」

 

 仮面にくぐもった声は静かながら言い回しは不遜で、自分の方が強いのだと言う確信に満ちたものだった。そう、まさにバエルを手に入れた俺のように。

 そんな彼は、フワリと舞い降りるような動きで快晴の太陽に照らされた漆黒の機体を俺の前に曝した。

 

《これを見ろ。俺たちが完成させたこの機体……ガンダム・ヴィダールアインがお前を討つ》

「なん……だと……?」

 

 ヴィダール仮面……その正体は、かつて幾度となくあいまみえてきたキマリストの筈だ。

 しかし、我が盟友が作りしそのガンプラは、私がかつて見たことのないガンダム・フレームだった。

 




 因みにトレースは本気だったし必殺技が命中したのに一撃で落とせなかったバエルに内心ドン引きしています。
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