バエルを使って、アグニカンドリームを実現する為にガンプラバトルをする男 作:GT(EW版)
4年半だ……もう休暇は十分に楽しんだだろう
ガンダム・ヴィダール──それは謎の仮面の男ヴィダールが駆る漆黒のガンダム・フレームだ。
アニメ「鉄血のオルフェンズ」ではエドモントンでの戦いで大破したガンダム・キマリストルーパーの機体を月外縁軌道統合艦隊が密かに回収し、独自の改造を施した形態である。
本来のキマリスとは色合いも造形も大きく変化しているが、機動性、突撃を主体とした機体特性は共通しており、トルーパー以上の高い戦闘力を発揮する。
背部にはガンダム・フレーム共通のツイン・リアクターに加えてエイハブ・ウェーブを偽装する特殊なリアクターが搭載されている為、その正体は謎に包まれているのだが……鉄血のオルフェンズを視聴していた者ならば、迷う余地もなくヴィダール=キマリスとメタ読みできてしまうのはご愛嬌である。
そして今私の前にいるガンプラは、そのガンダム・ヴィダールの機体を偽装したままの姿で強化した形態──我が友の駆る「ガンダム・ヴィダールアイン」であった。
マクギリス・ファリドとの最終決戦では、真実を見極めたことで仮面を外しラスタル・エリオンの下についたガエリオ・ボードウィンの意思表示もあってか、本来の姿であるガンダム・キマリスヴィダールとなったその機体。
対して目の前の機体は未だキマリスの名を捨てた上でギャラルホルンの汚名と化した「アイン」の名を冠しているとは、何とも皮肉なネーミングである。
言うならばそれは、最終局面においてもなお真実を見極めることができず、仮面の下の感情を怒りの鎧で覆い続けたガエリオのIFとでも言ったところか。
かつて至高のキマリストを目指していたお前が、このGBNでたどり着いたのは「キマリス」の名を持たない機体だったとはな。これには私も想定外である。
尤も私と彼との間では想定内に収まる出来事の方が珍しかったが、それでも私は彼のたどり着いた新たな境地に驚いていた。
「……これは、決闘の余韻に浸っている場合ではないな」
トレース閣下との決闘を制した直後に交戦するには、あまりにもヘビーな強敵だ。
すがめて見つめたモニターの先には、その名の通りキマリスヴィダールよりも圧倒的にヴィダール要素の強い機体の姿が映っている。
配色はガンダム・ヴィダール同様漆黒と群青色のツートンカラーをベースに、バーストサーベルを収めた両腰のホルダーはそのままに、両肩部にはキマリスヴィダールに似た巨大なバインダーが装着されている。それはまさしく、純白のバエルと対を為すような禍々しくも美しい姿である。
もちろん、バエルと対峙している今はより一層バエるだろうと賞賛したいキマリきったデザインだった。
相手にとって不足無し……私はバエるよ。バエてみせるよ。
お前が漆黒のヴィダールを貫くつもりならば、俺は漆黒を切り裂く閃光のアグニカとなろう!
隻腕のバエルに黄金の剣を携え、奮起した私は奴の新機体ヴィダールアインへと切迫していく。
その時だった。
《残念だが……》
バエルとヴィダールアインの間を、暴力的な光の奔流が通過していく。それはさながら、我々の接触を阻む天の川のようだった。
しかし、七夕の夜に見上げてロマンチックに浸るような生やさしい光ではない。
何故ならば光が通り抜けていったその瞬間、バエルのモニターから友軍機である四つの機体反応が同時に消滅したからである。
……これは、してやられたな。トレース閣下との決闘に意識が行き過ぎた。
《お前たちの負けだ。アグニカンスピリッツ》
開幕にも放たれたマグナアストレイの必殺技。それが私以外のフォースメンバーをまとめて薙ぎ払ったのである。
指揮官の差が露骨に表れたな……すまない、同志たちよ。
《トレースの大将を倒しやがるとはなァ》
《フン……奴は俺たちの中で最強……》
たった一撃で四機のガンプラを飲み込んで消滅させた戦略兵器級の砲撃。
イッシーも含め、彼らはまんまとその射線に誘導されてしまったのである。
無論、あちらとてそれほどの一撃はノーリスクで放てるものではなく、見ればマグナアストレイの金色の装甲はこんがりと焼き切れており、ビームを反射するヤタノカガミの機能は消失したと見える。
尤も、元より私のバエルにビーム兵器など存在しないがね。
《しかし、これはGBN。純粋なガンプラの出来栄えだけが、勝敗を分かつわけではない》
仮面の下からくぐもった声でそう語りかけてくる我が友の声に、わたしは苦笑を返しモニターから周囲の状態を一瞥する。
ヴィダール仮面のガンダム・ヴィダールアイン。
ジンの兄貴のジン。
昼飯のリューギのイナクト。
そしてマグナス女史のマグナアストレイ。
既に仲間を失った私のバエルの周囲は、四機のガンプラによって完全に包囲されていた。
《チェックメイトですよ。マッキー准将》
まさしく絶体絶命の状況……それを見通していたのが、マグナスの戦術眼か。
なるほど、一撃で戦局を覆すのがGBNにおけるガンプラの必殺技だ。前に戦った鉄火団の「団員スレイヴ」もそうだったが、このクラスのランカーともなると必殺技を前提にした戦略を組み立ててくるということか。
それは確かに、前の世代のガンプラバトルには無かった要素である。
理不尽とは言うまい。それがGBNの醍醐味であり、それもまたアグニカなのだから。
「自らの装甲をソーラ・システムに見立てた必殺技……その発想、実に見事だ」
《お褒めに預かり光栄です》
「残念ながら私のバエルにはまだ、君のような一撃で戦局をひっくり返すような必殺技は無い。だが私には、必殺技をも凌駕する究極の力があってね」
《……何です?》
追い詰められた時こそエレガントたれ──と言うのはアグニカンとは違うが、勝負師の心構えだろう。
故にこの状況に陥った私は、何より私自身を鼓舞する意味を込めてあえて言った。
「アグニカの魂だ!」
そうとも……たとえGBNに適応した必殺技は無くても、私のバエルはその存在に宿るアグニカの魂こそが最大の奥義である!
それは片腕を失おうと、上位ランカーを四人同時に相手取ろうと決して揺らぐことはない!
そうとも──体はバエルで出来ている。
真理はここで、正義は我々。
幾たびの戦場を越えてアグニカ。
ただの一度も妥協はなく、ただの一度も理解されない。
王者は常に独り、錦の御旗を掲げ己に酔う。
故に、幸せに本物も偽物もなく。
その体は、きっとバエルで出来ていた──
《? あ、あのヴィダール仮面、彼は一体何を……?》
《奴の言うことを真に受けるなマグナス。どうせ必殺技の習得を狙って、適当に思いついた必殺技っぽい詠唱を口ずさんだだけだろう》
《????》
むぅ……おのれガリガリ。流石に貴様には私の魂胆が読めるか。
察しの通り、おもむろにそれらしい詠唱をすれば私にもいい感じの必殺技が芽生えるのではないかとライブ感に任せ、淡い期待を寄せて唱えてみたのだが……残念ながらそのような粗末な流れでは、都合良く覚醒することはできないらしい。やはり奥が深いな、GBNのシステムは。
ならば仕方ない。
王者とは孤独……そして、孤独とは自由。
私独りになろうとその程度で私の魂は砕かれない。見せてやるぞエレガントナイツ、自由を手に入れた私の全てを捩じ伏せる力を!
──と、粋がってはみたのだがな……流石にこの時ばかりは、打開することができなかった。
ガンプラではない。私自身の力が足りなかった。一人一人が上位ランカーである彼ら四人のダイバーを同時に相手取るには、トレース閣下に斬られた片腕の消耗はあまりに重かったのである。
そこから私は敵四機の内兄貴のジンと昼飯のイナクトまではどうにか撃破したものの……最後はあと少しでマグナアストレイの首にバエルソードが届くか──というところで、一時間のタイムリミットが訪れ試合はあえなくタイムアウトとなった。
この場合、我々が設定した今回の対戦ルールではタイムアウト時点でのチーム残機が多い方が勝利となる。
アグニカンスピリッツの残機は私のバエルが一機。
エレガントナイツの残機はヴィダール仮面のヴィダールアインとマグナスのマグナアストレイの二機。
よって、このバトルの勝者は──
【WINNER エレガントナイツ!】
今日は素晴らしきエレガントバトルを見せてもらったぞ……言葉では大人らしく賞賛した私だが、心は子供のような悔しさに満ち溢れていた。
大人にはなりきれないものだな……私たちアグニカンスピリッツが連勝街道にノっていた中で、それはこのGBNで喫した初めての黒星となった。
《あの状況から、我々が仕留めきれないなんて……!》
《これがあの男の底力だ。やはり侮れないな、バエルの力は》
《……ヴィダール仮面、貴方途中から攻撃の手を緩めましたよね? 四対一だからとミスター・ブシドーのように興でも乗りませんでしたか? 弁明次第ではその仮面叩き壊すぞ》
《君が撃墜されないように注意を引き付けていた。文句は無いだろう? それに、今日はこの機体の慣らし運転が目的だと最初に伝えた筈だ。今回の依頼料は半額にしておくからそれで勘弁してくれ》
《……貴方はまともな人だと思っていたのですが、そんな言い訳をするとは残念です。二度と依頼しません》
《それは困る。考え直してくれ》
《……まあ一度目なので許しましょう。ふふん、私の寛大さに感謝しなさい》
《腐敗、ここに極まれりだな……》
《ああ!?》
《なんでもない》
少なくともこの時の私は、あちらの回線で仲良くぎゃーすかと騒いでいる二人の口論の内容が全く頭に入ってこない程度には、冷静ではなかったのだろうな。
ガンプラバトル・ネクサス・オンライン──それは仮想現実の世界で進化したガンプラバトル。
そこに誇りを賭ける伝説のアグニカ・カイエルの魂を持つ者たちを、人は「アグニカンスピリッツ」と呼んだ。
あれから、数日が過ぎた。
場所はバエル宮殿──ギャラルホルン本部、ヴィーンゴールヴの地下に構えられたガンダム・フレームの保管庫。
そこにはアグニカ・カイエルが乗ったASW-G-01 ガンダム・バエルを始めとするセブンスターズの始祖が乗った伝説のガンダムたちが保管されているという。
言わば、アグニカの祭壇とも言えるその聖域──作中のレイアウトを完全に再現した光景をこの目に焼き付けながら、私は満悦の表情を浮かべていた。
「ふふふ……我々のヴィーンゴールヴも形になってきたな」
作中で明かされている箇所はそのままに。
そうでない箇所には我々アグニカンスピリッツの各人が抱いている各々の解釈を擦り合わせながら吟味し、何度も試行錯誤を重ねて加工したこの施設!
手間暇かけて改修した我々のフォースネストは今、もはや空母艦タケミカヅチの原型は見る影もなく変貌し、ギャラルホルンのメガフロート・ヴィーンゴールヴの姿をほぼ完全にトレースしていた。……流石にサイズまでとはいかないがね。
ライザップたち途中加入の同志諸君らの稼ぎや技能のおかげで、想定以上にビルドコインが集まったのが大きかったな。おかげで予定以上の収支となり、バエル宮殿は当初の計画よりも早く完成と相成った。
……しかし何故か、ここまで形になるまで随分長く、時間がかかった気がするな。具体的には4年と5ヶ月ぶりぐらい。
フッ……私の体内時計はルクレツィア・ノインのように正確ではないらしい。
そう呟くと、仄暗くも荘厳とした美しき祭壇を見つめる私の横で、我がアグニカンスピリッツの建設事業を監督した功労者のライザップが同調した。
「ええ、素晴らしいですよ本当にこの出来映えは! 現時点で八割がた完成と言えるでしょう!」
「八割? ではこのバエル宮殿は如何ほどか?」
「十割です! 最優先で改修しましたから!」
「そうか、見事な働きぶりだ。施工に関わったメンバー全員に300アグニカポイント移譲しよう」
「300も!? ありがたきお言葉です!」
ガンプラの改造センスならばおいそれと負ける気は無いが、流石にこのサイズの船や格納施設は門外漢だからな……フォースネスト内のデザインセンスといい、ライザップを筆頭にリアルでその手の職種に就いているらしい本職の者が何人かいたのはありがたかった。
しかしこのバエル宮殿──ああ、正式名称は「バエルの祭壇」というのが正しいのだが、我々は今後も「バエル宮殿」と呼ばせてもらおう。
いわゆる俗称ではあるのだが、この呼び名はアニメ「鉄血のオルフェンズ」の公式ラジオで三日月・オーガスを演じていた中の人が、この施設を「バエル宮殿」と呼称したことから広まった由緒正しき呼び名なのである。
我々の手で再現したかの宮殿の完成度の高さに、私はしみじみと浸っていた。うむ……端から端までナイスアグニカとしか言いようが無い!
「また一つ、世界の扉が拓かれたな」
何と言っても重厚な扉の先に佇んでいる私のバエルの胸部が、入室して真っ先に視界に飛び込んでくるのが素晴らしい。
宮殿の中心部には私のガンダム・バエルの姿がまるで聖なる泉の台座に突き刺さった勇者の聖剣のように佇んでおり、その周囲を七つの倉庫が円卓を囲むように建ち並んでいる。それはまさしく鉄血のオルフェンズ第43話「たどりついた真意」に登場した光景を再現していた。
作中のバエル宮殿において、この七つの倉庫はそれぞれにかつてバエルと共に厄祭戦を駆け抜けた七人の英雄セブンスターズのガンダム・フレームが奉納されている──という設定なのだが、流石にまだ中身までは再現できていない。私としては今後はイッシーたちのガンプラを収納するスペースとして活用する予定である。伝説のチームセブンスターズの復活だ。
尤もそれでも倉庫の中身は、いくつか空になってしまうわけだがね。まあ、それはそれで原作再現なのでアグニカと言えるだろう。
「やっと会えたな……バエルゥ……」
そんな十割方完成したバエル宮殿の中に入ると聖地巡礼の如く、私はマクギリス・ファリドが立っていた位置に足を運ぶなり恍惚とした声を漏らした。
しかし、やはり……いや、想像以上と言うべきか。聖なる泉に膝下まで浸かりながらただ静かに復活の時を待っている1/1スケールのガンダム・バエルの姿は、私の口から余計な形容詞を付けたくないほどに美しく雄々しかった。
そんなアグニカルかつエレガントな光景にトリップしていた私の後ろから、ライザップの感心した声が聴こえてくる。
「准将は落ち着いてますね……」
落ち着いている……? 私が?
自分で言うのもなんだが、今の私の内心は少年が乗っていたフラッグのシートに座ったグラハム・エーカーにも劣らぬ興奮状態だぞ。
「……それはちょっとどうかと」
「そうだな。失礼した」
我がアグニカンスピリッツのメンバーは全員男性だが、それはアバターの話であり実際の性別もそうとは限らないからな。ハム仮面的な言語表現はいつどこで魂のセクハラ行為に該当してしまうかわかったものではないので、君たちも気をつけるといい。
「グラハム語録は戦闘中なら寧ろアガるんですけどね。平時だと普通に引きます」
それは手厳しい。
だが、君の言わんとしていることはわかる。ああ、私が落ち着いているように見えるという話だぞ?
先日の敗戦を受けても特に変わらず、今も自然体でいる私を見て何か感じ入るものがあったのだな。
「は、はい……」
フッ……これが落ち着いているように見えるなら、私も少しは大人になれたのだなと思っておこう。
「なに、たかが一敗だ。実際の戦争のように負ければ命を奪られるわけでもあるまいし、一々堪えてはいられんよ」
赤い人も言っていたが、過ちを気に病むことはない。ただ反省し、次に活かせば良いだけだ。
その程度の切り替えができる程度には、私のガンプラバトル歴はそれなりに長いと自負している。先日の試合は確かにGBNの対人戦では初の敗北だったが、私自身としては過去に黒星を喫した回数は両手の数には収まらない。一々引き摺ってなどいられないのだ。
「准将ほどのファイターでもそうなのですか……」
「君は私の実力を高く買ってくれているようだが、アグニカの道は一日にしてなるものではない。僅かばかりの栄光の礎には、数えきれぬほどの失敗があるものだ。私のバエルが完成に至るまで、300の犠牲があったようにな」
「それは……300!?」
無論、そんな私でも敗北に慣れたわけではないがね……幾つになろうと、負ければ当然悔しいし平常心ではいられない。周囲から見ても、露骨に機嫌が悪くなることだってある。
そういう意味では、私やイッシーよりも仲良し四人組やセイギの方が強いのだ。
「バエル宮殿だ!」
「アグニカ・カイエルの魂の魂!」
「そうだ……ヴィーンゴールヴの正義は我々にあるッ!!」
そう──バエル宮殿の中心部に佇む私のバエルを修学旅行生のようなキラキラした眼差しで見上げている彼らの姿には、先日の敗北に対する暗い感情が微塵も感じられない。
「あの人たちはそうでしょうね」
だが、もちろん彼らとて負けを気にしないわけではない。
先のバトルでは何もできずにマグナスの必殺技に撃墜されたことを気に病み、敗戦直後にはその言葉にも「タマシイ……タマシイ……」といつもの覇気が無かったほどだ。
だが、次の日には爽やかに切り替え、何が悪かったのか敗因をしかと見極めた上で「バエルだ!」と自分にできることをこれからも続けていくと語ってくれたものだ。
「そ、そうですか。……なんであの四人の言葉がわかるのこの准将……?」
だからそんな同志たちの姿を目の当たりにしている私が、何故くよくよしようものか。
GPDでは歴戦の勇士とて、我々はまだGBNに触れたばかり。リベンジの機会はいくらでもあるし、彼女らエレガントナイツへの借りもその時にまとめて返すだけだ。私のバエルの、黄金の剣でね。
そう言い渡すと、ライザップはハッと納得した様子で顔を上げた。
「では、イッシー殿も……」
「イッシーのことなら心配するな。彼の帰還は、保証しよう」
私もそこまで鈍感ではない。ライザップが何を気にしているのかはわかっている。
我らがアグニカンスピリッツのエース、イッシー副官のことである。
あの敗戦から数日が経つが、彼はあの日以来──このGBNにログインしていない。バトルの後で私に「申し訳ありません……」と言い残し、一人ログアウトしていったのが最後の記憶である。
そんな別れ方をしたものだからか、まだ彼と付き合いの浅いライザップたちは敗戦のショックでフォースから離れてしまったのではないかと心配しているのだろう。
私はもちろん、その件については全く心配していない。私のところにもまだ彼からの連絡は来ていないが、敗戦の後に彼がそうやってふらりと姿を消すのはこれが初めてではないからだ。
しかし、かなり久しぶりのことではある。あれはそう、私が初めて大学で
「ふっ、懐かしいな……」
「懐かしい?」
「ああ、私が大学のガンプラサークルで初めてイッシーと会った時……私とのGPDに敗北した彼は、数日の間行方をくらませたものだ」
出会った頃のイッシーは今とは違い、自信家な面がわかりやすく表に出ていてな。私が名うてのバエリストと知るなり、どちらが至高のバエルを扱うに相応しい人材か雌雄を決そうとしてきたのだ。
尤も、あの頃の私はまだバエルを完成させていなかったのでバトルで使ったのは使い慣れたグリムゲルデだったが、彼の出してきたガンダム・バエルもまたそれは見事なガンプラだった。
「えっ、イッシー殿もバエルを使っていたのですか!?」
「なんだ、知らなかったのか。ならば君にも伝えておこう。彼もまた自分自身のアグニカを追い求め、その手でバエルに独自のカスタマイズを施していた──誇り高きバエリストであったと」
そう、今でこそ石動・カミーチェ的ポジションを担い私の副官として付き従っている彼だが──彼もまた、私がバエルの理想にたどり着くにあたって大きな存在である「ライバル」の一人だったのだ。
ともすれば士官学校時代のゼクス・マーキス首席から見たルクレツィア・ノイン次席のように……もしかしたら本当の実力は、私よりも上なのではないかと疑ったほどのね。
かつて無い難産だったのはバエルが負けるシーンを書けなかったから(姑息な言い訳)
まさかこれを書いていた頃はSEEDの劇場版が完成するとは思わなかった(浸り)