バエルを使って、アグニカンドリームを実現する為にガンプラバトルをする男   作:GT(EW版)

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いいだろう……受けて立つ

 チャンピオンのキョウヤ。

 No.2のロンメル大佐。

 私ことマッキー。

 そして、シオン。

 うぬら四人か……と、ゴーストエリアへの突入予定メンバーはこれから悪の大魔王にでも挑むのかという満足の顔ぶれとなった。

 尤もマスダイバーを統べる大魔王は既に勇者リクが討伐したので我々は残党退治に乗り込んでいくだけなのだが……四人目の内定者がシオンとはな。してやられた感覚である。

 

「息災のようで何よりだ。君がメンバーに加わるのであれば、私も心強い」

「……もっと何か、他に言うことありません?」

「良き演奏だった。心が楽になりました……」

「ミネバ様のヴァイオリンを聴いた時の大尉みたいな言い方しないでください……ありがとうございます。でも、それよりもっとこう、あるでしょう? 自分で言うのもなんですけど、色々とツッコむところとか……」

 

 ツッコミどころと言われてもな。確かに予想外の来訪に面食らってしまったが、実力としては何ら不足、もとい不満足がない人選である。

 彼女自身の卓越したパイロットセンスはもちろん、彼女の101.5(ワンハンドレッド・アイズ)ガンダムは100のビット兵器を搭載した無尽蔵の手数を持つガンプラだ。今回のような多対一の状況が想定される戦場では、その力は大いに役立つだろう。

 

「ああ、カツラギGMが言っていた民間協力者というのは、君のことだったのだな。この短期間でブレイクデカールの研究が進んだというのも、アレを使わなかった君が現物を運営に提供したのであれば納得できる」

「そういう察しはいいですよね貴方は。いや、それでもなくて」

 

 ああ、もちろんわかっている。

 再会して早々に君が求めていたのは、つまりはこの言葉だろう?

 

「アバターを作り直したのだな。そこまでリアルに似た姿で来るのもどうかと思うが……私にはその方が似合っていると思うぞ、シオン」

「……まあ、ギリギリ小満足ぐらいですね。先輩にしては悪くないお世辞です」

 

 それは手厳しいな……やはり女性の扱いというのは難しいものである。そこに関してはマクギリス・ファリドのような紳士にはなりきれないものだとつくづく思う。

 

「アレも側から見れば紳士ではあるんでしょうけど……先輩はならなくていいです。赤い人じゃないですけど、関わった女みんなロクな目に遭ってないですから」

 

 そうでもあるが。

 しかし赤い人に関しては彼の方こそキシリアから始まって関わった女性から大概ロクな目に遭っていないことも多い気がするので、私としては過剰に彼を扱き下ろすのはどうかと思う。クェスのことだけは擁護が難しいが。

 そしてマクギリスについても「アルミリアの幸せは保証する」と言っていたあの言葉だけは、最期まで本物だったと信じたい心理である。

 

「そこに関してだけは褒められるところですよねマクギリスの。だけど彼自身が幸せを体感したことの無い人生だったから、本気であの子に与えようとしていた筈の幸せも偽物と否定されるしかなかったのが悲しいです……」

 

 幸せに本物と偽物があるのか?──マクギリスがガエリオに向けた最後の問いかけは皮肉ではなく、本当に心の底から理解できていない迷い子のような言葉だった。それは我々視聴者からしてもハッとなる、色々と考えさせられる台詞だろう。

 

「哲学的ですね……まあそれはそう思います」

 

 その問いに対して「そんなこともわからないのか」と返せるのは、我々が当たり前の幸せを当たり前に受け取れる人生を送っていたからであって、そうでない者たちには幸福という概念さえ酷く曖昧なものだった。

 だがそれでも……仮に自分自身がまともな人生を歩むことができなかったのだとしても、そんな人間でも他者を尊重することでいつかはきっと愛する者に本物の幸せを分け与えることができるのだと、そう思いたいものだ。

 

「真面目か……でも私は、そういう意味でもやっぱり鉄血のラストは苦手ですね。他人から見れば決してまともなじゃない人生を歩んできた三日月だからこそ、最後は生き残って自分の家族を幸せにしてあげてほしかったです」

 

 そうか……今でも君は鉄血のオルフェンズの結末否定派なのだな。

 だが苦手な理由をそこまで言語化されては、容認派の私も納得するほかあるまい。複数の視点からそれぞれ多様な解釈が可能な奥深さもまた、ガンダムシリーズの奥深さでありアグニカなのだからね。

 

 大事なのはその自分自身の「嫌い」を、他の誰かに押し付けないことなのだ。

 

「っ……急に刺してくるじゃないですか」

 

 さて、仰ることが理解できませんな。

 だが君があれほど「嫌い」を叫んでいたこのGBNで、よくぞ運営に協力する気になったものだ。

 一体どういう風の吹き回しかね? 我々とのバトルで心変わりでもしてくれたなら結構だが。

 

「勘違いしないでほしいですが、GBNには今でも満足してません。ただ……贖罪とでも言ったら、笑いますか?」

「まったく」

 

 何故笑うのだ?

 嫌っていたものを何故嫌いなのか、それを一から理解する為に上位ランカーとして積み重ねてきた全ての実績もリセットして、再びアカウントを作り直してリスタートした少女の行動に滑稽な点があるのなら、是非とも教えていただきたい。

 

「……全部知ってるじゃないですか……ほんと、そういうところがズルいですよね先輩は……全然アグニカじゃないです」

 

 なん……だと……

 

「でも……相変わらずで安心しました。私もこの姿だと、心まで童心に返っちゃいますね。リアルの私はもう少し背も伸びてて一応立派な大人なんですけど」

「フッ……精神は肉体に引っ張られるという話を聞く。以前ほど極端にリアルと乖離したアバターではないのだから、そこまで不自然ではないさ」

 

 そう思うと不思議なものだな、仮想現実というものは。

 私は現実の彼女とそれなりに付き合いがあったから以前の男性アバターだった彼女のことも今の彼女のこともごく自然的に受け止めているが、そうでないものには二人が同一人物であることの理解が頭の中で追いつかないだろう。

 

 見たまえ、我々のセイギを。まるでひまわりの種を抱えながらフリーズしたハムスターのように、その頭の後ろには大宇宙が広がっているぞ。

 

「本当だ。ふふっ、かわいー」

「せ、正義……?」

「ん、なんて?」

 

 おや、彼が照れるとは珍しいものを見た。まあシオンは彼の周りにはいないタイプの異性だからな。戸惑いもあるだろう。

 だが見た目は可憐でもその苛烈さは以前のバトルでも見た通りだ。既に私の心は、彼女との共闘への期待感でアグニカにバエつつあった。

 

「何にせよ、君と肩を並べて戦うのは楽しみだ。その力、当てにさせてもらうぞ、伝説のチーム満足のリーダーよ」

「やめて」

 

 さて、私としては久方ぶりに再会した彼女とこのままガンダム談義を続けていても構わないのだが、いい加減後ろで微笑みをたたえながら霊圧を消して会議室の壁になっているキョウヤの姿が気になってきたからな。そろそろ本題に戻るとしよう。

 

「ふふ……私のことはお気になさらず、どうぞ続けて」

 

 そのような、リク君とサラ君を見守るような眼差しで我々のことを見つめられても困る。

 おそらくだが私は、君が期待するようなものは見せられないぞ。

 

「そうか……だけど君たち二人が顔見知りだったのは幸いだ。クジョウ・キョウヤだ。よろしく頼む、シオンさん」

「……どうも」

 

 おっと、私が初めて出会った人見知りが激しかった頃の姿で、初対面の人間と握手を交わす姿は中々新鮮だな。

 成長したな、シオン。団長も草葉の陰で喜んでいるぞ。

 

「私も色々ありましたから……」

 

 それはそうだろう。でなければチーム満足のリーダーなどできなかった筈だ。その成長にアグニカポイントを進呈しよう。

 

「要らない……」

 

 

 して、キョウヤ。これからどうする?

 

 カツラギGMはログアウトしてしまったわけだが、彼からこの場を預かったのだろう? 作戦の決行は明日以降としても、せっかくメンバーが三人集まったのだから、今の内に可能な範囲で打ち合わせておきたい。

 本当ならば最後のメンバーであるロンメル大佐にもこの場に来てもらいたいのだが……できるなら彼には、我々三人のモビルスーツ隊を指揮する隊長役を頼みたい。

 そう訊ねるとチャンピオンは困ったように笑いながら言った。

 

「そのロンメル大佐だが、先ほど連絡があった。……残念な報せと、良い報せがある」

「何?」

 

 穏やかではないな。彼のことは有志連合戦のように、GBNの未来に関わる戦いには真っ先に駆けつけるタイプのオコジョだと思っていたのだが。

 その様子だとよもやとは思うが……参加を断られたのか?

 

「それが残念な報せだね。大佐は今回の作戦を辞退なされた。だけど同時に、良い報せもある」

「……どういうことだ?」

 

 勿体つけずに言いたまえ。

 

「僕が今回の件について伝えると、ロンメル大佐は「その任務なら私よりも適任者がいる。私より一対多の戦闘に秀でていて、まさにマスダイバーとの戦いには打ってつけな人材がね」と返してきたんだよ」

「なんと」

「正義……」

 

 それはつまり、自分は辞退するが、より強力なダイバーを代役に立てるということか。

 妙だな……客観的に見て、ランク2位フォースのリーダーであるロンメル大佐よりも上の実力者など、チャンピオンのキョウヤしかいないと思っていたのだが。

 彼のフォース「第七機甲師団」はまるで本物の軍隊のように統率の取れた連係が有名だが、彼自身は一対一の個人戦においてもキョウヤと拮抗できる実力者だったと記憶している。

 それこそ彼と壮絶な死闘を繰り広げた「第14回ガンプラフォーストーナメント」の決勝戦では、それはもう見事な立ち回りだったからな……リク君たちがガンプラバトルの世界に飛び込むきっかけだと言うのも頷ける名勝負だった。

 

 そんなロンメル大佐がはっきりと「自分より適任」という人物が、私には皆目見当がつかなかった。

 

「その人物はもうこちらへ向かってきているらしい。順調なことに、これでメンバー全員が集合することになるね」

「そっか……あの人が来ないのは良かった。でも誰だろう……タイガーウルフかな? シャフリヤールかな?」

「そうだ!」

「セイギさんもその二人あたりだと思いますよね!」

「いや、セイギは「マギーさんとか、最近勢いのあるオーガあたりが来るのでは?」と言っている」

「我々にあるっ!」

「えっ、なんで先輩わかるんですか? 怖っ……」

 

 シオンは誰が来るのかそわそわしている様子である。そんな彼女はロンメル大佐がお越しになられないことにはどこか安堵しているようであったが……ああ、そう言えば彼女はチーム満足時代、彼のコラムで素行の悪さについて苦言を呈されていたな。もしかしたら二人には面識があった上で、お互い気まずい関係なのかもしれない。

 

 

 ──その時である。

 

 シオンに続き来客の訪問を報せたこの部屋の扉が、おもむろに開いたと同時にダンディーな歌声が聴こえてきたのは。

 

 

走り続けて 空に届けば 風になれると そう信じてるから……

 

 

 ……む? このいつか空に届いては……!?

 

 

「シオンさんと言い、流行っているのかなこういう登場の仕方……僕も今度やってみようか」

「……最近気づいたんですけど、私は性根が陰気な性格なのでセルフBGMを口ずさむといい感じにノれるんですよ。流石に人前で歌うのは恥ずかしいのでハーモニカにしてますが」

「なるほど、あの登場にはそんな理由があったんだね。参考になります」

「……チャンピオンには必要無いんじゃないですか? 貴方はいつも自然体ですし」

「そうかい? 僕もこれで根はそこまで明るい方ではないんだけどね」

「そうだ……我々にある」

「ああ、そうだね。カツラギGMを帰らせたのは正解だったね」

「……なんでこの人もセイギさんの言葉わかるの……?」

 

 チャンピオンだからだよ。

 

「チャンピオンだからか……」

 

 そうだ。チャンピオンだからだ。

 

 それはそうと気分高揚のルーティンは大事だからな……私も出社する時は車の中でよく歌ってるからわかる。

 しかしシオンのハーモニカに続く二番煎じだったためか、私を含む一同は持ち前の適応力も相まり皆思いのほか冷静だった。

 

 そんな中、堂々たる足取りでこの会議室に入室した人物の姿を見て──クールダウンしていた我々の心に、再びアグニカの火が灯った。

 

 

I never give up forever! 待たせたな諸君! 私が来た!!」

「あ、貴方は……!?」

「キャプテン・ジオン!!」

 

 

 四人目のメンバー……ロンメル大佐直々の推薦を受けて現れたその人物の姿は──赤かった。

 

 見事な赤さである。この赤い残像は、まさしく去り際のロマンティクスと言ったところか。

 

「わたし映画の最後すっごい泣いたんで名曲に変なイメージ植えつけるのやめてもらえます?」

 

 すまない……

 

「HAHAHAHA! 見た目はキュートなのに手厳しいのだな少女よ」

「……シオンです」

「ああ、君はシオンというのだな! いい名前だ! 私は第七機甲師団ロンメル隊長から推薦を受けたキャプテン・ジオンという! シオンとジオンで濁音違いだな!」

「…………」

 

 おっとよく嫌そうな言葉を飲み込んだな。

 胸の「Z」は俺たちの約束──その身に纏った真っ赤なスーツの胸にそのアルファベットを刻み込んだアメコミヒーローのような巨漢は、我々の想像に反してダイバーランキングには一切覚えのない人物であった。

 見た目や声から判断するにかなりのやり手のように見えるが……シオンは声のトーンを落としながらも露骨に怪訝そうな様子でキョウヤに訊ねていた。

 

「……ランク戦で見たことないんですけど強いんですかこの人?」

「ああ、キャプテン・ジオンは諸事情あってランク戦には参加していない、アングラ寄りのダイバーなんだ。だけどGBNのヒーローとして不正やマナー違反の苦情が集まっているダイバーと決闘し、何人も改心させてきた実績がある」

「そ、そうなんですか……」

「フッ……マスダイバーの一件は氷山の一角に過ぎない。このディメンションには今日も困っているダイバーたちがたくさんいるからね。ロンメル隊長もその事実には心を痛めていた……だからそれを力無き者たちに代わって助けてあげるのが、GBNのヒーローである私の使命なのだ!」

「GBNの正義……!」

「そういうことだ! まだ活動をはじめて日は浅いがねHAHAHA!」

「いや、活動の長さは関係ない。誰に頼まれたわけでもなく自分自身の意志で力無き者たちの盾となる姿勢……ナイス・アグニカと言わせてもらおう、キャプテン」

「ありがとう! 君もまた、誇り高きダイバーであったぞマッキー殿」

 

 カツラギGMの負担を自らの手で少しでも減らしてやろうとするその精神性は、まさしくGBNのスーパーヒーローと言った風格である。今はまだ駆け出しだそうだが、私には何となく彼がそう日も置かず大人気ダイバーになるのではないかと予感していた。

 何せ声がいいからな……華があり、艶があり、秘密があり、このGBNに大いなる高みと底知れぬ深みをもたらしてくれそうなその声には、何か薔薇を咥えるのが似合うアグニカントな風格があった。

 

 

「……マッキー先輩、もしかしてこの人ってロンメル……」

 

 

 やめろ。

 

「あっはい」

 

 素直でよろしい。流石は私の後輩だ。

 君とて似たようなものなのだからな。彼はGBNのヒーローキャプテン・ジオン、その正体は謎に包まれている……それでいいのだ。

 

 だから私も君がその姿である限り、特に過去のあれこれを詮索する気は無いと言っておこう。

 

「……本当に、ずるい……このバエル馬鹿は」

 

 ありがとう、最高の褒め言葉だ。

 

 

 

 

「……キョウヤ、不躾ですまないがあの二人……」

「私も詳しくは。ただリク君たちとはまた違った、こういうしっとり感も見応えありますよね」

「フッ、気が合うな」

 

 ──さて、これで晴れて四人のメンバーが揃ったわけだ。

 ロンメル大佐の推薦で来てくれたキャプテン・ジオン殿の加入、私はもちろん賛成だが皆も賛成でよろしいか?

 

「私ももちろんOKだ。パワーファイトに秀でた彼のスキルなら、たとえ相手がブレイクデカールの装甲だろうと苦にしない筈」

「……二人がいいなら、まあ」

「我々に正義ある!」

「では全員可決と! ありがとう! ヒーローとして全力を尽くすと約束しよう! このキャプテン・ジオンが!」

 

 私、キョウヤ、シオン、キャプテン・ジオン。

 こうして見ると想定より濃い顔触れが揃ったものだな……バエルは無論問題無いとしても、私自身が彼らの個性に埋もれないようにしなくては。

 

「指揮系統はどうする? キョウヤからは、ここにいる全員がそれぞれのフォースでは隊長を務めている身と聞いているが、四人の中で暫定的なリーダーぐらいは決めておくべきだろう──というのがキャプテン・ジオンからの意見だ」

「……私は隊長ではないので、リーダー役はパスです。個人的にはチャンピオンかマッキー先輩を推します」

「そうだね。有志連合の時のように、私が現場のリーダーということにしても構わないが……私としてはスーパーアグニカトランスポーターとの連係も考えて、マッキーを推薦したい」

 

 おっと、これは意外なところから他薦が来たな。

 総責任者はカツラギGMが務めるとしても、確かに現場の指揮系統はある程度固めておきたい。

 アグニカンスピリッツでは私もリーダーをやってこそいるが、指揮官としての能力はつい先刻エレガントナイツのマグナス・シャインゴールド女史に完敗したばかりだからな……バエルを持つ者として一刻も早くその汚名を挽回したい身である私にとっては、千載一遇の機会とも言えるか。

 

「汚名挽回……」

「ふむ、実はジェリド中尉の名言として有名な汚名挽回だが、ネットが普及した現代社会では実は誤用でなかったことが少しずつ広まっているようだな」

「えっ誤用じゃないんですか? 汚名を挽回したら馬鹿みたいじゃないですか」

「未だにそういう認識も人々の間では多いのだが、本来は「挽回」という言葉自体に「既に成ってしまった不利な状況を覆す」という意味が込められているため、汚名挽回とは「汚名を着せられた現状を覆す」という意味になり、そういった「失った汚名を取り戻す」という意味にはなりえないのだ。誤用警察の指摘に遭った際には、是非そう教えてあげるといい! 詳しくは私のG-tubeチャンネル、「キャプテン・ジオンのガンダムシリーズ迷言解説」でも解説しているから是非チェックしてくれ!!」

「そうですか、どうでもいいです」

「Oh……」

 

 これほどの大物たちを指揮した──という経験は、私自身のアグニ観的知見を広げるまたとない好機である。

 皆が構わぬと言うのなら私もこの機会、逃す気は無かった。

 

「ではミスター・マッキーがリーダーということでいいかな?」

 

 キャプテン・ジオンの問い掛けに、キョウヤとシオン、そしてセイギが快く頷いてくれる。

 いいだろう……受けて立つ。

 

「拝命した。では私マッキーが隊長ということで、有事の際には私の命令に従ってくれ」

「了解、頼りにさせてもらおう。マッキー准将」

「考えてみればロンメル「大佐」より上の階級なんだから当然ですよね准将」

「私はキャプテン・ジオンだが今回の戦場では君をもう一人のキャプテンとして認めよう」

「そうだ……正義は准将にあるぅ!!」

 

 フッ……即席チームながら気持ちの良い男たちである。ああシオンは女性だが。

 個性派揃いのメンバーをバエルの威光でまとめ上げる隊長──それもまた大いにアグニカである。これは私も、本気で応えなければな。マスダイバーたちよ、君たちには特に恨みは無いが作戦決行の日が君たちの命日となることを約束しよう。

 

「では隊長として、最初の命令を与えよう。可能な範囲で構わない。君たちのガンプラのデータを見せてほしい」

「まあ、そこは当然だね」

 

 キョウヤとはビグ・ザムとの一戦で共闘したことがあるが、他の二人とは無いからな。シオンの101.5ガンダムのことは知っているが、対戦相手としてではなく友軍となる以上どういうことができて、味方にどう立ち回られるのが困るのか程度のことは皆で共有しておきたい。

 もちろん普段はランキングを争っているライバルである以上、自分のガンプラのデータを見せることに抵抗があるのなら隠し球や必殺技あたりの情報開示は拒否してもらって構わない。

 因みに私のバエルの情報は何も隠さない。端末からガンプラのステータス画面を広げた私は、言い出しっぺとしていの一番に開示してやった。私のバエルは逃げも隠れもしないし己が性能に恥じる部分は何も無いのだ。アグニカ・カイエルの魂!

 

「おお!」

「ほう!」

「ギャラルホルンの正義はバエルにある!」

「うわぁ……」

 

 そんな私のバエルのステータスを見せた時、上からキョウヤ、キャプテン・ジオン、セイギ、シオンの反応の順である。

 うむ、GBNの頂点級に立つ者たちが一目で驚いているのがわかり、私の魂も喜びの声を上げた。

 

「戦闘に必要無い部分まで1mmずつ作り込まれてて、正直引きます……これGPDだと精密機械みたいなもので逆に出せない奴ですよ」

「いや、凄いなこれは……これほど美しいグラフは初めて見たよ。前の戦いを見た時にそうなんじゃないかとは思っていたけど、膂力や装甲といった純粋な機体性能は私のAGEⅡマグナムより上かもしれない」

「ロングレンジ以外の全ての適性と、射撃の火力以外全ての項目がカンスト……陸海空宇宙全ての地形適性もSと恐ろしいレベルで安定している……! まさにアグニカ・カイエルの魂の名に相応しい恐ろしい機体だ。君がマナー違反者でなくて良かったよ……」

「ふっ……二人からそう評して頂けるとは、私もアグニカ冥利に尽きるというものだ。知っての通り私のバエルは接近戦が主体となるため、広範囲を巻き込む砲撃を撃つ時には留意していただきたい。無論、おいそれとフレンドリーファイアを喰らうバエルではないがね」

 

 マウントを取る、というわけではもちろんないが、これで私のバエルの力の一端でも理解してくれたなら安いものだ。

 トップランカーたちの評価に上機嫌に心を躍らせていると、彼らもまたこちらの誠意に対して誠意を返し、それぞれのガンプラのデータを渡してくれた。

 

 キョウヤのAGEⅡマグナムは……流石だな。あらゆる地形、あらゆる距離において全く隙が無く、装備の火力はもちろんその気になれば徒手空拳でもモビルファイターを殴り倒せるスペックを持っている。

 

 キャプテン・ジオンの機体は……「ジオンガンダム」というのか。ファーストガンダムでお馴染みのRX-78ガンダムを素体にシャア専用ゲルググの意匠も各所にあしらっている赤いガンダム。目を引く武装はバックパックに装着されている巨大な「手」。オールレンジ攻撃が可能な有線式の五連装メガ粒子砲二基は、ジオングからミキシングした武装と見える。

 まさしく「ジオン」と融合したガンダムというところか。そしてその手にはキャプテン・ジオンの精神が形を成したような黄金の大剣「ジオニックソード」。

 こちらも見た目は尖っているが性能はかなりバランスが取れており、接近戦ではジオニックソード、遠距離戦では五連装メガ粒子砲と圧倒的な攻撃力を備えているスーパーなガンプラであった。

 

「マナー違反者との戦いでは、あらゆる奇策に対処する必要があるのでね。それらを真っ向から打ち破るには、強靱なパワースタイルが有効というわけだ!」

「バエルの設計思想にも通じるな……このガンプラを見ればわかる。やはり貴方はただ者ではなかったようだ、キャプテン・ジオン」

「ただのコスプレおじ様じゃなかったんですね……」

 

 コスプレは君に言えた話ではないだろう。私にもないが。

 そもそもそれが目的でこのGBNを楽しんでいる者が圧倒的に多数派だからな。少年の頃から追い求めていた夢を実現できる──やはりGBNは今のこの世界にとって、最もアグニカ・カイエルの理想に近いのかもしれないな。

 

「っ、私のはコレです」

 

 どうした急に不機嫌そうに。

 

「……別に……ちょっとした嫉妬です」

 

 そうか、嫉妬か。

 そうか……む?

 

 

「君の機体は──101.5(ワンハンドレッド・アイズ)ガンダムではないのだな」

 

 

 最後の一人、ダイバーネーム「シオン」の使用ガンプラの情報として叩きつけるように見せられたウインドウ画面に、私は予想外の情報に驚いた。

 そこに記載されていたのは私が以前彼女と戦ったGNバエルとも呼ぶべき1.5(アイズ)ガンダムの改造機ではなく──全く別の、しかしどこか見覚えのある機体の情報だったのだ。

 

 

【デュエルデスガンダム】

 

 

 それは、彼女が高校時代模型部に入部して初めてガンプラバトルをした頃に扱っていた──「デュエルガンダム」の改造機であった。




 この五人の会話書くのが思ってたより楽しくて満足。
 キャプテン・ジオンは実際にいつから活動してるかわからないですが本作では有志連合後あたりのつもりで扱っていきます
 機体はνじゃないジオンガンダム。なんか最近公式で見た気がする……
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