花言葉:「敏感」「鋭感」「三枝の礼」等
花騎士を始めるきっかけになった娘。
ウィークリーガチャに毎月1~2回課金する程度なのでお迎えするのにそこそこ苦労しましたが(リセマラはしない主義)、お迎え後は副団長として活躍してくれています。
ホーム画面で聞ける彼女のまったりボイスにはいつも癒されています。特に放置ボイスは必聴。
彼女をこの世に産み落としてくれた親御さんの黒兎先生に最大限の感謝を
遠征任務からの帰途、夜営の準備中に見張りの花騎士たちの悲鳴が響き渡り、作業を中断して声のした方へと向かう。そこにはぐったりと横たわる数名の花騎士と、大きな蜘蛛型害虫の姿があった。
こちらに気付いた害虫が雄叫びをあげ、それだけであたりの木々が吹き飛ぶ。
倒れている少女たちの安否を確認したいところだが、不用意に視線を外そうものなら、次の瞬間に命はないだろう。
「この力……極限指定クラスか!?そんな、どうしてこんなところに……。」
帰路の選定には細心の注意を払った。今回の任務の前に調査団も派遣しているが、これ程の害虫が潜んでいるような痕跡は発見されていない。
幸い、配下の害虫が潜んでいる様子はないが、数的優位があるといっても迂闊に攻めに出れる相手ではない。
「副団長がいてくれたら……」
膠着状態の緊張に耐えきれなくなったのか、そんな声が聞こえてきた。
鋭敏な感覚で非凡な索敵能力を持つオジギソウ。彼女がいれば少なくとも不意を突かれることはなかっただろう。しかし、今彼女には別任務の指揮という大役を任せている。
団員たちに信頼される副団長に成長したことを嬉しく思いつつ、この程度の状況で取り乱し、自分より副団長を頼りにされていることに苦笑する。
オジギソウに自信をもってもらうため、帯同を希望する彼女を押しきっての別任務でこの様では、会わせる顔が無いではないか!
オジギソウの活躍に頼り、戦略に妥協が生まれていたのではないか?反省すべき点はいくつもあるが、次に活かすためにも、先ずはここを生き残らなければならない。
花騎士たちを鼓舞し、数的優位を活かすために散開。戦闘を開始したーー
ズズーン……
防御と回避を最優先とした持久戦の末、その巨体が崩れ落ち、完全に生命活動を停止する。
多数の怪我人を出しはしたが、命に関わる深手を負った者がいないのは幸いだ。
正直な感想としては強敵を討ち取った達成感よりも『運が良かった』という思いの方が強い。
戦った個体には、明らかにこちらの攻撃に対する反応の鈍い箇所があったのだ。その原因と考えられるのが、今の戦闘中に破壊した記憶の無いぐちゃぐちゃに潰れた複数の眼球である。
別の騎士団が極限指定害虫の討伐に動いているという情報は無かったので、他の害虫との縄張り争いに敗れ、眼を失ってから日の浅い個体だったのではないかと思われる。
もしこれで相手が万全の状態だったらと思うとゾッとする。
何にしても、この付近の再調査が必要と判断し、体力に余裕のある者を選抜し、部隊に先行して騎士団本部に調査隊の編成を依頼するように伝える。
縄張り争いに勝った害虫が近くで潜伏している可能性も否定できないため、残った部隊も可能な限り移動を急いだ。
ブロッサムヒルの象徴である知徳の世界花を確認し、市街地までもう少しと迫った頃、緊張の糸が切れてしまったのか、新米の花騎士が数名泣き出してしまった。彼女たちが落ち着くのを待っていると、前方からすごい勢いで何かが突っ込んでくる。何人かの花騎士が自分を庇うように間に立ち……、そして全員が身を引いた。
えっ、ちょっと待って!? 結果、その勢いのまま草原に押し倒される羽目に。衝撃で多少ふらつく頭を持ち上げると、目に涙を溢れさせたオジギソウがガッチリと抱きついていた。
「無事で……良かった、です~……。団長さま~。」
震え声で語る彼女に心配をかけてすまないと謝りつつ、髪を梳くように優しく頭を撫でてやる。
普段の恥ずかしがり屋はどこへいったのか。そうでなくても、あらゆる感覚に敏感なオジギソウとここまで密着する機会はさほど多くない。
そして、この体勢も非常によろしくない。彼女の身体に触れるのは久しぶりで、香ってくる甘い匂いや、押し付けられる胸の柔らかさに理性が反抗期を起こしかけている。しかし、他の花騎士の手前でもあるため何とか抑えつける。
みんなが守ってくれたから心配ないと残った理性を総動員して彼女を引き剥がす。
「ぐすっ……みん、な?」
呆けた表情で辺りを見渡すオジギソウ。視線はすべて自分たちに集まっており、ニヤニヤと笑みを浮かべている者すらいる。しばらくそのまま固まっていたオジギソウだったが、急に顔を真っ赤にして慌て出した。 やっと今置かれている状況を把握したらしい。
「あの……えっと……私、みなさんの前でなんてはしたないことを……。はっ……恥ずかしいです~!」
慌てて立ち上がった彼女は、来たときと同じようにあっという間に視界から消えていった。
「団長様と副団長ってそういう関係だったんですか!?」
「お二人はどこまで進んでるんですか?」
「副団長までライバルだったなんて……。」
オジギソウを見送ったあと、そんな内容を口々に問い詰めてくる花騎士の面々。沈んだ空気が解消されたのは良いが、些か元気になりすぎではないだろうか。この後も花騎士たちからの追求がやむことはなく、帰還報告のために上司の部屋を訪れるまで続くのだった。
上司への報告を済ませた後、辺りはすっかり暗くなっていたが、記憶が鮮度を保っている内に報告書の骨組みだけでもまとめておこうと執務室へ足を向ける。
任務に赴く前に施錠していたことを忘れ何の気なしにドアノブを捻ってしまうが、何の抵抗もなく開く執務室の扉。
その先には、仮眠用のベッドで布団もかけずに眠るオジギソウの姿があった。
普段であれば扉を開く音にも反応するはずの彼女が起きる気配が無いとなると、よほど疲れているのだろう。
だから治まれと無防備な彼女の姿に対して沸き上がる欲望を必死に理性で抑え込む。ここまでくると彼女に試されているのではないかという気さえしてくる。
「すぅ……すぅ……むにゃ……。えへへ~、団長、さま~。」
当のオジギソウは呑気なもので、こちらの葛藤などお構い無しだ。どんな夢を見ているのだろうか。
何とか理性陣営が勝利したところで彼女に毛布をかけてやり、ベッドの側を離れる。
執務机に腰かけると、彼女が先程まで作業していたためだろう。そこには几帳面な文字で書かれた書類が散乱している。作業中に寝落ちしたと思うのだが、果たして彼女はどうやってベッドまで移動したのだろうか?
不思議に思って寝ているオジギソウに目を向けると、枕元に彼女がいつも大事そうに抱いているくまのぬいぐるみが置かれていることに気付いた。―ー心なしか、目があったような気がするのだが(まさかな……)。
考えても仕方のないことなので、自分の作業場所を確保するために散らばった書類をまとめなおし、ペンを手に取った。
「むにゃ……?このペンを走らせる音は……団長さまの?はっ、団長さま、いつの間にこちらへ!?」
幾許も経たない内に彼女にかけた毛布が床に落ちる音が響いた。可能な限り音は立てずに作業をしていのだが、彼女の眠りを邪魔しないためには場所を変えるべきだったかもしれない。
「私、書きかけの報告書を仕上げようと思って……それから……皆さんの前で団長さまに抱きついてしまったことを思い出してしまって……これはもう寝ちゃうしか~って、何で私団長さまのベッドに!?うぅ……恥ずかしいです~。」
自分のベッドの上でゴロゴロと転がり、恥ずかしさに悶えるオジギソウ。その仕草を可愛らしく思いながらも、夢で呼ばれていた気がするのだが?と質問してみる。
追い打ちをかけるようで申し訳ないが、こちらとしては昼間に突然抱きつかれてからずっと悶々とした気分を味合わされているので、半ば意地悪のつもりだった。
「……へっ?ああ、それはですね~。団長さまが任務の成功を誉めてくれる夢を見ていたからだと思います~。」
しかし、予想に反してハキハキと答えてくれるオジギソウ。もっと慌てふためいたような反応が見れるかと期待したのだが、これは当てがはずれたか。
知らぬ間に自分のベッドに寝ていたという事実が衝撃的過ぎて、他の事象を大したことが無いように感じている。そう思ったのだが……。
「今回の任務で団長さまと会えない日が続くようになって、私……実はちょっと寝不足気味だったんです……。副団長として部隊を指揮する任務。これを成功させたら、団長さまにいっぱい誉めてもらえるって考えてたら、今みたいな夢を何度も見てました。いけませんよね、まだ任務を成功させた訳でも無かったのに……。」
自嘲気味に笑いながらそう語るオジギソウ。しかし、それをしっかりと自覚した上で任務を完璧にこなしているのだから気にすることはない。そう慰めるが、未だに彼女の表情は優れない。
「ありがとうございます、団長さま。でも、私は自分で自分を管理できていた訳じゃ無いんです……。夢の中で団長さまに撫でてもらう時、感触が無いせいですぐに夢だと自覚できてしまって。そこで起きてしまうので……。」
長い睡眠を取ることができずに寝不足になってしまった訳か。確かに、それは彼女にとって良くない。
すべての感覚が鋭いオジギソウは、その分外から受け取る情報量が非常に多い。特訓の成果で最近は少なくなってはいるが、集中の度合いを間違えて急激に大量の情報を受け取ってしまうと脳が余計な情報を遮断するために眠りについてしまう。
だからこそ、交戦の危険が無いとき等はなるべく体力を温存させるように言い渡していたのだが、寝不足では十分な能力を発揮できるはずもない。
「はい……。同行していた花騎士の皆さんにも心配させてしまいました。幸い、遭遇した害虫は大したこと無かったので任務の遂行には問題はなかったんですけど……。」
今にも泣き出しそうな顔で俯くオジギソウ。今回彼女に頼んだ要人の警護任務は、厄介な害虫が出現したという情報もない比較的安全な場所だ。向こうの私兵も出ているし、花騎士の護衛は保険のような立ち位置だった。彼女の実力をもってすれば難なくこなせる任務。だからこそ、不甲斐ない自分が許せないのだろう。
「なので、今回の任務は団長さまに誉めてもらえるようなことは何も……へっ?団長さま!?」
そんな彼女の頭を優しく撫でてやる。
先程任務の報告を行った際、上司の下には彼女に任せた任務の依頼主から手紙が届いていたのだ。その内容はオジギソウと専属契約を結びたいというもので、つまり彼女の能力を高く評価したものだ。(彼女の能力を正当に評価してくれた依頼主に感謝しつつ、内容そのものについては丁重に断った。)
最初は依頼主も寝不足気味のオジギソウに対して体調管理もろくにできないダメな花騎士という認識だったそうだ。しかし、害虫の襲撃を事前に把握したオジギソウの偵察と指揮能力を甚く気に入ったらしい。
以前、敏感すぎる感覚をコントロールしたいと申し出た彼女に付き合った時のことを思い出す。特訓で疲労困憊となり、揺すっても起きなかったオジギソウだが、それでも害虫に追われ、助けを求める声は聞き逃さなかった。
今回遭遇した害虫を大したことが無い相手と語っていたが、地力で勝っていても奇襲を受けて部隊が壊滅することなど珍しくない。例え本調子でなくても、いち早く敵の存在に気付き、味方に適切な指示を出したオジギソウの功績は大きい。
その後、未だに謙遜する彼女を自分の功績だと素直に認めるまでひたすらに撫で続けたのだった。
翌日、目を覚ますと太陽は大分高いところまで登った後のようだ。隣で眠るオジギソウは未だにすやすやと規則的な寝息を繰り返している。昨夜と同じ、いや、それ以上に無防備な彼女の寝姿にむくむくと沸き上がる欲情を感じるものの、任務明けのせっかくの休日をそれだけで終わらせるのはもったいないと考え直し、昼食と兼用になってしまった朝食の支度を整えながらオジギソウの起床を待つことにした。
ただ、起き抜けに昨夜の情事を思い出して赤面する彼女と一悶着あり、結局溜め込んでいたものが一晩で解消される訳もなく、朝食を済ませて一休みした後に昨夜の続きが敢行されたことは言うまでもない。
2/16加筆修正
実はこの作品と同時進行で作中のあからさまに飛ばされた部分(ゲームで言うところの寝室)の執筆をしており、そちらで加筆していた部分がそこそこの文章量になってしまったのでこちらに加筆(ついでに細かいところを修正)しました。