花言葉:「多感な心」「隠れた価値」
今さらだけど万華祭ニューカマー8位おめでとうスキラ!(投票したのは別の子だけど)。
万華祭は眠り姫様独壇場って感じでしたが、それ以外は見慣れた顔になってきましたね。お題もほとんどは人気キャラが独占してる感じだし、運営様には殿堂入り制とか入賞してない子にもっとチャンスを与えてほしい願望。初実装が虹で別バない子とか埋もれてるだけだって……
11/16 誤字訂正
普段から多くの花騎士が本を漁ったり、イタズラしたり、サボったり、隠れたりと忙しない執務室だが、今日も例外ではない。
「ねぇ団長ぉ……、お仕事はまだ終わらないの?」
来客用のソファーからこちらを見上げるようにしてスキラが問いかけてきた。
同じ質問はこれで何度目だっただろうか。
実家が資産家の貴族である彼女は、バトラーでもあるカゲツと一緒にいることが多いのだが、あいにくとカゲツは別任務に出撃中である。
世話役である彼女をスキラと別任務に派遣するというのはできるだけ避けてはいるのだが、一花騎士である以上限られた人員の中で遣り繰りしようと思えばこういうことも起こり得る。
「はぁ~暇ねぇ。パルファン・ノッテでひと勝負!といきたいところだけど、一緒に行く人の宛もないし……。」
本当に宛がないなら、今頃は既にゲームに興じているはずだ。つまりは、そういうことなのだろう。
仕立ての良さそうな青いドレスにきれいな白髪、美少女と言って差し支えない容姿で資産家の娘からのお誘いである。ソファーの肘掛けで頬杖をつき、足をパタパタと戯れさせている様子は本人の外見と合わせて子どもっぽさを演出しているのだが、一般的に考えれば十分に魅力的な誘いと言えるだろう。しかし、ダメなものはダメだ。
「えー、一緒に行こうよー!1人で行くのは嫌なのー!団長は後ろで見れくれてるだけでも良いからー!」
間接的な誘いでは埒が明かないと判断したのか、ついにはこちらの手をとって直接ねだり始めた。これではもうただの駄々っ子である。
「団長様?何を騒いで…ってスキラさん!?団長様の仕事の邪魔をしてはいけませんとあれほど……」
「はにゃ!?ナズナ、さん……これはそのぉ……」
声が部屋の外まで聞こえていたらしく、様子を見に来たナズナがしがみつくスキラを引き剥がす。
ソファーに座り直され説教を受ける彼女はまさに借りてきた猫。先程までの勢いはどこへやらだ。
助けを求める視線を感じてはいるが、藪をつついて蛇……どころか竜を起こしたくはないので大人しく仕事に励むことにする。
スキラは断末魔の声を残して執務室から連れ出されていった。
その後、手早く仕事を片付けて彼女を迎えに行ったのだが、スキラは中々機嫌を直してくれなかった。仕事を理由に誘いを断り続けていたのに、その男が1時間もしない内にすべての仕事を片付けて現れたのだから当然と言われればそうかも知れない。
しかし、こちらとしては未だに続いていたナズナの説教から解放してやったのだ。感謝されても良いくらいだと思う。
実を言うと、スキラが執務室を訪れた時点で仕事は終わりかけだったのだ。一緒に出掛けるのを渋ったのは別の理由からである。
「ひひっ、待っていなさい。今日こそ大勝ちしてやるんだから!」
場所はブロッサムヒル北東の港都市、ヨーテホルクの埠頭。1隻のきらびやかな装飾を施された客船を前にスキラが吠える。
『パルファン・ノッテ』――豪華客船の船内に設けられた、スプリングガーデン全域を股にかける大型移動式カジノ。そのブロッサムヒル出張版である。
ヒヤシンスという花騎士がオーナーをやっている関係で任務の打ち合わせに何度か訪れたことがあるのだが、ホール内は今日も一攫千金を夢見る者たちの歓喜と悲哀の声で満ちていた。
早速ポーカーが行われているテーブルに着いたスキラ。すると、周囲の者たちの空気が変わったのが分かる。彼女はここの常連であり、有名人なのだ。知らぬ者がいない「カモ」として。
「また負けに来たのかい?花騎士のお嬢ちゃん。」
「むっ、失礼しちゃうわね!今日のわたしをいつもと同じだと思わないことよ。なんたって今日は団長が一緒なんだから!」
同じく常連らしい男の軽口に乗ったスキラがこちらを指差しながら応じる。恥ずかしいからやめて欲しい……。そして、その自信はどこから来るのだろうか?
「だって、団長はいくつもの死線を潜り抜けて来た猛者でしょ?つまり、豪運の持ち主!そんな団長が一緒なんだからもう勝ったも同然じゃない?」
なるほどわからん。そんなやり取りをしている内に、スキラのゲームを見たさに集まったらしい。観戦者がテーブルの周りに溢れ、物凄い熱気である。
序盤は静かな立ち上がりを見せたこのゲーム、最初に動いたのはスキラに軽口を吹っ掛けてきたあの男だった。
「今日も勝たせてもらうぜ。そら、レイズだ!」
この1手により、賭け金がいきなりそれまでの倍にまで吊り上げられる。たまらずフォールドを宣言する参加者がほとんどの中、スキラだけは余裕の表情を崩さない。
「ふふん♪わたしの辞書にフォールドという文字は無いわ。交換は5枚すべて!そして、コールよ。」
一切の躊躇なく手札すべての交換を宣言したスキラが自信満々に応じると、その潔さに周囲の熱気はさらにヒートアップしていった。
ちなみに、スキラが交換を行う前に持っていた手札は3とQの2ペア。安全を重視するならフォールドを選ぶところだが、相手のブラフ(自らの役の強弱を相手に誤認させる行為)を警戒するなら1枚の交換でスリーカードやフルハウスも狙える悪くない手だ。しかし、スキラはそのどちらも選ばない。しかも、配られた手札を確認しようともしないのだ。おそらく、先程の宣言通り勝負を降りる気がないことの意思表示。初めてこの光景を目にしたものならば、十中八九彼女の正気を疑うことだろう。しかし、このような恐ろしい賭け方をした本人は自らの勝利を欠片も疑っていない。
「宜しいですか?それではショーダウン!」
ディーラーがベットの終了を宣言する。
アドバイスが禁止されていることも忘れて考え直すように勧めそうになったがどちらにしても時既に遅く……
「……ぐわあああああ!!!」
美少女があげたとは思えない絶叫がホール中に鳴り響くことになるのだった。
彼女の手札はスカ、つまり役無しである。ちゃんと手札を確認していれば、コールなどしなかっただろう……たぶん。
そう、スキラは極度のギャンブル好きであると同時に、壊滅的なまでに賭け事に向いていない。その様はまさしく「カモ」であった。
「お帰りなさい団長様……ってスキラさん!?いったい何が……は聞くまでもないですよね。」
パルファン・ノッテからの帰り、執務室で書類の整理をしていたナズナは酷く落ち込んだ様子のスキラに一瞬驚いた様子だったが、理由も聞かずにテキパキと仕事だけこなして去っていった。
あんまりな対応にも思えるが、我が騎士団ではそれほどまでに見慣れた光景なのだ。
ナズナが執務室を後にしたことを確認すると、無言でソファーの方へ誘導され、そのままスキラが抱きついてくる。
スキラはあの後も順調に負けを積み重ね。あっという間に所持金を使い果たしてしまったのである。熱くなり過ぎた彼女が掛け金確保のために身に付けた衣服に手をかけた時はさすがに焦ったものだ。
年頃の娘がそんな馬鹿なと思うかも知れないが、何を隠そうこの子、前科持ちである。バナナオーシャン出身の花騎士が薄着で出歩いているのを見て教えてくれた(なぜか自慢気に)。
カゲツが同行するようになってからはそこまで無茶をすることは減ったようだが、花騎士全体の沽券に関わることなので今後も注意が必要だろう。
「あーもう、悔しいわね!今度こそ大勝ちしてやるんだから!」
しばらく頭を撫でてやると突然大声を上げるスキラ。どうやら復活したらしい。この切り替えの早さは彼女の長所でもあるのだが、理由が理由だけに危うさも感じてしまう。
あまりに負け続けたせいで実家からお金の無心が難しくなったと嘆いていたので、ただの杞憂ではないだろう。
以前、ギャンブル以外の趣味でも見つけてはどうかと勧めてみたこともあるのだが、「わたしからギャンブルを取ったら何が残るの!?」と真顔で返されてしまった。だからこそ他の趣味を勧めているのだが……。
なぜそうまでしてギャンブルに拘るのか?
「だって、賭け事は1人じゃできないでしょ?」
事も無げにスキラは答えてくれた。心なしか、抱きつく彼女の腕に力が込められた気がする。
「どんなに弱くても、いいえ、だからこそ歓迎されるじゃない?ひひっ♪わたしだって必要とされてるって実感できるのが良いのよ。」
それは「カモ」にされているだけではないのかと聞いていて悲しくなる。しかし『わたしだって』という発言が気にかかった。ギャンブルをしている時の、自信満々な彼女とは到底結びつかない姿。
そんなスキラを強く抱きしめ返してやる。
わざわざ外に出向かなくても、彼女を必要としている人間がここにもいると行動で示すために。
「んっ、ちょっと団長ぉ?苦しいってば。ねぇ……聞いてるの?」
口ではそう言うが、本気で嫌がっているようには見えない。世界花の加護を受けた花騎士とは、基本的な運動能力が違うのだ。彼女が本気を出せば振りほどくことくらいわけないはずだ。
「い、嫌なわけないじゃない!そうじゃなきゃわたしからこんな……もう、こんな恥ずかしいこと言わせないでよ……んむっ!?」
可愛いらしいことを言ってくれる口をキスで塞ぐが、これにも抵抗する様子はない。
「ん……ぷはっ、ひひっ♪団長は物好きね。わたし……ううん、やっぱり今はいいわ。わたしのこと、好きにして。でも、覚悟してよね?もう離してあげないんだから♪」
こんな時にも強がってみせる彼女を愛しく感じ、今度は優しく抱きしめてやるとスキラがこちらに身体を預けてくるのが分かった。
何か言いかけた気もしたのだが、キスで誤魔化されてしまう。まぁ、焦ることはない。いずれ彼女の口から語ってくれるだろう。
「……団長さんと何かあった?」
翌朝、部隊のメンバーよりも一足早く帰還したカゲツがスキラにそう問いかける。
「なな、何のことかしら?そんなことよりカゲツも疲れてるでしょ?ゆっくり休むと良いわ!」
その反応では何かあったと白状してるようなものだろう……。
「ふーん、そっかー。良かったねスキラ。」
「へ?そ……そう、ね?」
まだ状況をうまく飲み込めていない様子のスキラだが、カゲツは色々と察したらしい。
この後、カゲツからの質問責めに辟易したスキラがパルファン・ノッテに出向く回数を大きく減らしたのはまた別の話だ。
ということで、テンションのギャップが激しいスキラを描かせて頂きました。キャラクエで団長はさらっとスルーしてたけど、絶対何か抱えてると思うんですよね。開花キャラクエでその辺が明かされることを期待しています。
本当は先日偶然お迎えできたヒヤシンスも登場させてあげたかったんですが、名前だけの登場になってしまいました。それはいずれ描く彼女のメイン回に持ち越しということで(いつになることやら)!