とある花騎士団長の庭園   作:とある花騎士団長

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イフェイオン
花言葉:「恨み」「別れの悲しみ」など
始めた時期的にメイドVer.を先にお迎えしてしまい。通常衣装がお迎えできる緊急イベントの復刻が待ち遠しくて仕方なかった記憶。




13.「別れの悲しみ」に沈む復讐の花騎士―足りないもの―

――ようやく、ここまでこれた。

知徳の世界花、ブロッサムヒルの王城内に設けられた執務室で、わたしが今日から所属する騎士団の団長は人の良さそうな笑顔を浮かべていた。

ああ、これでやっと……

「わたしはイフェイオン……あなたに会うためにここに来たの。」

わたしの言葉に、微かに首を傾げた団長が問いかけてくる。

「今日が初対面だと記憶しているのだが、どこかで会ったことが?」

その問いかけに対する答えはNOだ。でも……

「あなたが知らなくても、わたしはあなたのことを知っている。

だって、あなたの命を奪うためにここに来たんだから。」

椅子に腰掛けたままの団長は一瞬驚いたような表情を浮かべたけど、目に見える反応はそれだけだった。

騎士学校の入学担当者を脅した時は必死に命乞いをしてきたものだけど、余裕のつもり?

いくら鍛えてると言っても、座った体勢のまま花騎士の動きにはついてこれないはず!

懐に忍ばせていたナイフに手を伸ばした瞬間、静寂を破るように執務室の扉が開かれた。

「うおぉぉぉ!!勇者ランタナ、爆・誕!だんちょに手を出そうという不届き者はお前か!?」

「……へ?」

突然の乱入者はピンク色の髪をサイドポニーにまとめた女の子(ランタナというらしい)で、なぜか頭にはハロウィンでもないのにカボチャの被り物をしていた。

(この狙ったとしか思えないタイミング。まさか暗殺の計画がバレた?)

そんなはずはないと否定する。

団長への復讐を果たすために、多くの時間を費やしてきた。

根回しは完璧だった。

それなのになぜ……。

動揺で考えがまとまらない。

でも、次に彼女が放った言葉はあまりにもあんまりだった。

「あれ、本当に誰かいるじょ~?」

「「…………。」」

「はっ、これはむしろだんちょが女の子を部屋に連れ込んで?むぅ~、私というものがありながら許せん!だんちょ、覚悟~!」

浮気された正妻のような言葉とは裏腹に満面の笑みで団長に突っ込んでいくランタナ。

机に広げられていた書類の束が宙を舞う中、騒ぎを聞きつけた花騎士たちが近づいてくる気配を感じる。

ランタナの突撃に受け身を取り損ねている団長の様子を見れば、彼女の乱入が彼にとっても予想外だったことがわかる。

まったくの偶然で復讐が妨害されたという事実に、思わずその場に崩れ落ちる。

わたしは続々と花騎士がなだれ込んでくるのを見つめながらこれまでのことを思い返していた。

 

 

 

始まりはまだわたしが両親と幸せな毎日を過ごしていた頃。

突然、その日常は脆くも崩れ去った。

「が、害虫だぁぁあああ!」

「騎士団の連中は何をしてるんだい!?このままじゃ……。」

「誰か手を貸してくれ、逃げ遅れたやつが……うわぁぁあああ!」

たった数匹の害虫によって見慣れた景色は地獄に成り果てた。

異変を察知した花騎士が救援に駆けつけたときには既に手遅れ。わたしを逃がすために、両親は目の前で犠牲になった。

生きる気力を失っていたわたしにその理由を与えてくれたのは、救援物資を届けにきた商隊が語っていた噂話。

襲ってきた害虫が近くで行われた討伐作戦から逃げ延びた個体だったこと。

そして、その作戦を指揮していた団長の名前。

幸い、わたしには花騎士の素質があった。

それからのわたしは必死に努力を積み重ねていった。

闘うための技術だけじゃない。

情報収集や交渉術。暗殺に使えそうな技術は何でも身に付けようと頑張った。

両親を手にかけた害虫を滅ぼせるように。

欠陥のある討伐作戦を指揮した団長に復讐できるように。

でも、いざ騎士学校に入学してみて分かったことがある。

わたしの花騎士としての才能が、良くて並程度という事実。

同時期に入学した子がどんどん実績を積み重ねて行く中、退学を勧められたことも1度や2度じゃない。それでも諦めきれなかった。

魔法の才能が無かったわたしは、不意の1撃で大ダメージを与えるべく戦斧を武器に選んだ。

団長のいる騎士団に入れるように裏工作を重ねていく内、相手の不意を突くことは自然と上手くなっていた。

わたしの素の能力では、花騎士として長く生き残ることはできないと思う。

勝負は最初の1回切り。

だから根回しも念入りにやって来た。

予定通り団長のいる騎士団に配属が決まった時。嬉しさを抑えることができなかった。

事情を知らない者には、純粋に憧れの人物いる騎士団に配属が決まったことを喜んでいるように見えたはず。

それからも気を抜かないように気を付けていたはずなのに……。

それでも、失敗した。

直接手を出していなくても、団長の一言で身体検査でもされれば一貫の終わり。隠し持ったナイフを捨てる余裕もない。

埋め尽くす諦念の中、僅かに別の感情が潜んでいることにこの時のわたしは、気付くことができなかった。

「それじゃあ、私はこれで。何か分からないことがあればいつでも呼んでくださいね?」

「ありがとうございます。あの……」

「はい?」

「……いえ、やっぱり何でもない、です。」

「?それでは。」

団長補佐(そう言えば名前を聞いていなかった)のお説教が終わる頃にはすっかり日も暮れた後。

ここまで案内してくれた団長補佐の足音が遠ざかっていく。

案内されたのは薄暗い独房……ではなく、殺風景ではあってもそこそこ広い私室。

持ち込んだ僅かばかりの荷物を開ける気にもなれず、ベッドへと倒れ込む。

騒ぎが落ち着いても、団長はわたしのことを誰にも喋らなかった。

おかげで復讐のチャンスがあるはず!……そう考える度、先程の光景が思い出される。

 

「むっ、団長のお腹、クコ占有権、主張!共存、不可!ヘナ、救援希望!」

「ヘナ、了承。ヘナ、全力……!」

「ぬおっ!だんちょ、ロリっ娘美少女枠さえもランタナだけでは足りないと言うのかぁぁああ!」

「団長、断じて遅刻です?お仕事終わったらモコウとボードゲームの約束。

モコウ、待ってる間に新しい戦術閃いた?早く試しに行くです?」

突如始まる団長争奪戦。

騒ぎが大きくなるにつれて執務室を訪れる花騎士も増えていく。

もはや収集がつかなくなった状況を治めたのは……

「団長様、頼んでいた書類なんですけど……何ですかこの状況!」

団長補佐の一喝だった。

 

団長が多くの花騎士に慕われ、愛されていることは分かった。いや、改めて分からされたという方が正しい。

団長としては若手とはいえ、数々の討伐任務で功績を上げ、所属する花騎士の待遇も良好。

そんな彼の命を奪ってしまえば、わたしはあの憎らしい害虫と同じになってしまうのでは?

騎士学校時代から持ち続けていた疑念が、ここにきて再燃する。

復讐を果たしても心の痛まないような人間であれば、どんなに楽だっただろうか。

団長がどんな理由で黙っているのかは分からない。もしかしたら、ほとんどの花騎士が寝静まった今が最後のチャンスなのかもしれない。

でも、復讐を遂げた後なんて何も考えていなかったはずなのに、ここで実行に移したら何かに納得できない自分がいることを自覚してしまう。

復讐は、一時保留にしようと思う。

今日のような頻度で花騎士が訪れていては、いつ邪魔されるか分からないだけ。

もっと団長のことを知る必要がある。

それまでは……。

長年準備していた復讐が失敗したというのに、この日は最近で1番ぐっすり眠れた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりに投稿したと思ったら、ここを覗きに来る方のほとんどにとってはもはやネタバレ済の優し過ぎる復讐者ネタという。
土下座( ノ;_ _)ノ

書きたいネタ書いてたら既にいつもの投稿文字数程度に達していたので1度切ることにしました。
重ね重ね土下座( ノ;_ _)ノ

他の子の書きたいネタも貯まってるので続きはいつになることやら……土g(以下略)
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