とある花騎士団長の庭園   作:とある花騎士団長

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アザミ
花言葉:「独立」「報復」「触れないで」など
生放送の紹介の段階でピンと来るものはあったんですが、 何ですかねこの庇護欲を掻き立てまくる生き物。
天井まで回して保証分の1人しかお迎えできませんでしたが、一片の悔い無しです!
※キャラクエのネタバレを含むため、気になる方はブラウザバック推奨です。



15.「素直になれない恋」の疑心暗鬼な花騎士―せめぎ合う感情の先へ―

「それでは、くれぐれも宜しく頼むよ!」

先程到着したばかりだと言うのに、仲介役の男はそれだけ言い残してあっという間に執務室を出ていった。その瞳はあからさまに自らが連れてきた少女を避けており、一瞬でも同じ空間に居たくないという心情が透けて見えるようだ。

そうした態度に感じるものがなくもないが、一方で彼女もそんな男に興味は無いようで、赤みがかった紫色の瞳でじっとこちらを見据えている。

癖のある長い髪をツインテールに結わえ、服装は黒と瞳の色に合わせた紫を基調としたゴスロリ風のドレス。特に目を引くのは彼女が大事そうに抱えている大きなハリネズミのぬいぐるみだ。

「この人が団長さんだって。怖い人じゃなさそう。だけど……パパはどう思う?」

“パパ”というのは抱えているハリネズミの人形のことを指しているのだろうか?残念ながら詳細までは聞き取ることができない。

ひとまず騎士団長としての責務を果たすべく、自己紹介を促してみる。

「わたしはアザミです。……自己紹介って他にどんなことを言えば良いの?」

難しく考える必要はない。例えば好きなものなど教えてもらえたら嬉しい。

「……そんなのありません。嫌いなことなら、いっぱいあるけど。」

とりつく島もない回答に一瞬唖然となるが何とか立ち直り、彼女に手を差し出す。

これから一緒に戦っていくことになるのだ。出来れば仲良くやっていきたい。

「あっ、触らないでくださいね?

わたし、触られるの嫌いなので……。」

そう言って執務室を退出するアザミ。取る者が居なくなった手を引っ込めることができたのは、任務の報告書を持ってきた花騎士にツッコミをくらってからだった。

 

 

 

こうした対応は仲間の花騎士でも似たり寄ったりであるらしい。

団長として彼女の対人関係に気を揉んではいるのだが……。

「団長さん、余計なことしないでください。アザミは友達も家族も皆、皆要らないんです。パパさえいればそれで……。」

当の本人がこれなのである。

「アザミは花騎士だから、団長さんの命令どおりに戦います。でも、それだけ。

アザミ、団長さんなんてだいっきらいなので。

だから、他のことでアザミに関わらないで。」

彼女がここまで他者を拒絶する理由は、ある程度調べがついている。

仲介役の男が持ってきたアザミの出自に関する報告書。気乗りはしないが、何か彼女の心の殻を破る手がかりになればとページを捲っていく。

 

――アザミの母親は彼女の父親以外に何人もの男性と関係を持っていた。

寡黙な夫はその状況にも沈黙を貫いたのだが、ついには2人を置いて家を出ていってしまった。

夫が家を出てからもアザミの母親は男たちとの関係を絶つことはなく、彼女と関係を持つ“パパたち”は最初こそ彼女の母親へのアピールとしてアザミに良い顔をしていたものの、やがて自分に靡かないと見るや暴力を振るい始めた。

そんなある日、事件は起きた。母親とその交際相手から暴行を受けた際にアザミの魔力が暴発したのである。

その事件を期にアザミは騎士学校に預けられることになる。いつ魔力を暴発させるかわからない“危険人物”として。――』

 

報告書はもう少し続くのだが、吐き気を催すような内容に報告書のページを閉じる。

乱暴に閉じられた報告書のとばっちりを受けた机が抗議でもするように悲鳴を上げ、振り下ろした方の拳に鈍い痛みを伝えてきた。

アザミが大事に抱えているハリネズミのぬいぐるみは、本当の父親からもらった唯一の贈り物なのだそうだ。

彼女を置き去りにすることはなく、気に食わないからと暴力に訴えることもない理想の“パパ”。

改めて読み返しても打開策などは浮かんでこない。しかし、やるべきことは変わらない。

それを確信できたことだけは収穫だった。

 

「キシャアアアアアアアッ!!!!」

報告を受けて駆けつけたこちらの部隊を、害虫は数の有利を活かして取り囲むように位置取ってきた。

多方面で同時に戦闘が起こり、どうしても指示が行き渡らない。あちこちで響く剣戟の音に焦りばかりが募っていく。

何とか戦力を集中して一点突破を図るべく指示を飛ばしていると戦場の一角から凄まじい魔力の高まりを感じ取った。

その中心にいるのはアザミだ。

「嫌い、嫌い、だいっきらい!!

害虫も同じ。お母さんや“パパたち”、団長だってきっと……皆、皆同じ。アザミの前からいなくなれ……っ!!」

矛先である害虫だけでなく、味方の花騎士まで怯むほどの禍々しい怒りの感情の発露。

『†メランコリーワルツ†!!』

アザミの魔力に操られた複数体の人形が害虫の群に突っ込み、包囲網に風穴を開けた。

単身で戦況を動かすほどの活躍を見せたアザミだが、この状況はまずい!

「キシャアアッ!!」

向けられた憎悪に憎悪で返すように、生き残った害虫の目標が大技の直後で対応が鈍くなったアザミに集中する。

援護しようにもこの位置からでは彼女も巻き込んでしまいかねない。

「あぅ…………っ!」

防御をすり抜けた害虫の攻撃がヒットし、吹き飛ばされたアザミが抑えた呻き声を上げる。

その拍子に、彼女が大事に抱えていたぬいぐるみが腕からこぼれ落ちた。

「……っパパ、パパ!?」

こんな時まで!?

自らの危険も省みずぬいぐるみを拾おうとするアザミ。

周囲を囲まれた状態でそんなことをすれば……

危ない、と思った時には既に体が動いていた。

「……っ団長さん!?」

アザミを抱き抱えるようにして地面を転がると、直前まで胴体があった場所を鋭い何かが突き刺す鈍い音が響く。

当然視界に入れて確認している余裕などあるはずもなく、未だに放心しているアザミを仲間に預けると、今度はぬいぐるみを回収するべく未だに害虫の密集するその場所へと足を踏み入れる。

害虫もこちらの動きに感付いたようだが、今度は花騎士たちのサポートもあり難なく回収することができたのだった。

その後は早かった。

アザミが道を切り開いてくれた上、彼女への報復のため1ヶ所に固まった害虫たちを逆に包囲することで群の一掃に成功したのである。

 

 

 

書き上げた報告書をチェックし終えると、時間もだいぶ遅くなってしまっていた。

部隊の指揮官という立場にも関わらず無茶をしてしまったことで、同行していた花騎士や団長補佐であるナズナにこっ酷く叱られてしまった。

今後は気を付けよう……できるだけ。

そんなことを考えながら就寝支度を整えていると、遠慮がちに扉をノックする音が響いた。

こんな遅くに誰だろうか?

「…………。」

応答はないのだが、扉越しに人が離れていく気配もないのでゆっくり扉を開いていく。

そこには俯いたままアザミが立っていた。

だが、無事に彼女の元へ生還を果たしたはずのハリネズミのぬいぐるみは不在のようだ。

何か思うところがあるのだろうか?

しかし、扉が開いても入室してくる気配はなく、かと言ってどこかに立ち去るわけでもない。

試しに来客用のソファーを勧めてみたのだが、それでも彼女はその場から動こうとはしない。

どうしたものかと考えた末、しゃがんで彼女と視線を合わせにかかる。

それでも無反応を貫いていたアザミだったのだが、やがて意を決したように口を開く。

「……団長さんは、何でアザミにあんなことしたんですか?」

こちらを睨む視線は、どことなく力ない。

あんなことと言われて思考を巡らせると、彼女を害虫の攻撃から庇う際に思いっきり抱き締める形になってしまっていたことに思い当たる。

咄嗟のこととは言え、触れられることにあれだけ拒否反応を示していた程である。実は相当不快な思いをさせてしまっていたのではないか?

そう思って頭を下げてみるのだが、アザミは頭を横に振って否定する。

「団長さんはどうして、……どうしてアザミに取り入るようなことをするんですか?」

取り入る?そう疑問系で返すと、彼女の瞳に苛立ちの感情が揺らめくのを感じた。

「とぼけないでください!たくさんの“パパたち”も最初はそうでした。

お母さんに取り入るためにわたしに良い顔をして……なのに!」

それは報告書にも記載されていたこと。彼女の母親は誰かを選ぼうとはせず、アザミを取り込めないと判断した“パパたち”も一緒になって彼女に暴行を加えた。その結果……。

「アザミは……いつも人を傷つける。

だから皆アザミのことを嫌いになるの!

団長さんも……きっとそう。

だから……信じたくない。

なのに、どうして?団長さんは信じさせようとするの?アザミやパパを助けたりするの!」

止まらない感情の奔流。

魔力の暴発は、幼かった彼女の心に相当根深い傷を残しているようだった。

「団長さんだけじゃない……どうしてここの皆はどんなに酷いことを言ってもアザミを嫌ってくれないの?」

報告書によれば、魔力の暴発は彼女の防衛本能が働いた結果なのは明らかだ。

この騎士団に、彼女を傷つける者などいない。

もしアザミを傷つけるような輩が現れたなら、その時は自分が……この騎士団の全員がアザミの味方だ。

一言一言丁寧に思いの丈を彼女ににぶつける。

「団長さん……。」

アザミが震える手をこちらに伸ばしてくる。こちらからは何もしない。

どれだけ言葉を並べ立てたところで、最後の1歩を踏み出すのはアザミ自身でなければならない。

伸ばした手がこちらに触れる。

震えが伝わってくるその身体を、今度は明確な意思でもって抱き締めてやる。

一瞬身体が強張ったように感じたものの、アザミはゆっくりと体重を預けてくれた。

それがどれだけの勇気を要する行為なのか、自分には想像することもできない。

やがて彼女の震えが落ち着いた頃には規則的な寝息が聞こえてくるのだった。

 

 

 

「やっぱり、アザミはまだ団長さんを信じて良いのかわかりません。」

翌朝、先に起きていたアザミが開口一番に告げてきた言葉だ。

一度部屋に戻ったようで彼女の腕にはぬいぐるみが抱えられている。

こちらとしても、幼い頃から傷つけられてきた彼女の心を一朝一夕にどうにかできるとは思っていない。

だが、まったく前進がなかったかと問われればそういうわけでもない。

「だから、これからは団長が信じられる人か近くで見てるから。」

それからアザミはどこへ行くにも付いてきたがるようになった。

「パパも今後はしっかり見極めたいそうなので、気を付けてくださいね?団長さん。」

任務や飲食はもちろん、会議は花騎士が同席しても大丈夫なものなら同席させたりもできたが、風呂やらお手洗いまで付いて来ようとした時にはさすがに焦ったものだ。

彼女を包む心の殻を完全に取り払うためには、きっと長い時間が必要になることだろう。

それでも、彼女ならきっと克服できる。以前より少し笑うことが増えた、今も袖を掴んで隣を歩く彼女を見ながら確信する。

ふと、こちらの視線に気づいたアザミと目が合い、頭を撫でてやると柔らかな笑みを浮かべる。

それまでこの笑顔とともに歩んで行こう。そう気持ちを新たにするのだった。

 

 

 

 

 




他に書き始めてたSSもたくさんあったはずなんですが、キャラクエ巡回してたら我慢できなくなった模様。

彼女をお迎えできた団長諸兄は是非とも精一杯の愛情を注いであげてください!
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