とある花騎士団長の庭園   作:とある花騎士団長

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他の方々の嫁回見てたら無性に書きたくなった嫁回。
花騎士の子たちはみんな可愛いんだけど、やっぱり私の中の嫁枠と言ったらこの子なんだな~と再確認できました。

自分で書いといてあれなんですが、我ながら最後テンションおかしい(深夜テンション?)ので、読み飛ばして頂いても一向に構いませんです、はい。


18.「敏感」と「鋭感」の寝坊助花騎士④―儚くも輝き束ねて―

「それじゃあ任務の準備もあるし、わたしはこの辺で。団長たちもあまり根を詰めすぎないでくださいよ?」

そう言って事務作業を手伝ってくれていた花騎士がまた1人執務室を後にする。

退出際、意味深な視線が自分ともう1人の間を行き来していた気がするのだが……気のせいだろうか?

今この場に残っているのは自分とオジギソウの2人だけである。

最近は討伐任務が立て込んでおり、休暇もバラバラだったためにこうして2人きりになるのは久しぶりだ。

――うん?

しばらく作業を続けていたのだが、ふと視線を感じてそちらに目を向けると、こちらを覗き込んでいるオジギソウと目が合った。

「……っ!?」

重なった視線はすぐに逸らされてしまったが、思い返してみると他の花騎士と一緒に作業をしている間も何度かチラチラとこちらを伺うような素振りを見せていた。

そこで、先に退出していった花騎士たちの意味深な視線を思い出す。

元々恥ずかしがり屋なところがあるオジギソウである。彼女たちはこの状況をお膳立てしてくれたのではないだろうか?

どうやらオジギソウも同じ結論に至っていたようで、しばらく逡巡した後に意を決してこちらを見上げてきた。

「団長さま、今度のお休みなんですけど……私とお祭りに行きませんか?」

お祭り?

つまりはデートの誘いである。

任務に追われて失念していたが、開催の申請が上がっていたのを思い出す。

改めて日取を確認してみると、確かに我々の休暇が重なったその日の開催となっていた。

久しぶりに2人揃っての休暇とあって彼女からの誘いがなければどこかに出掛けようと考えていたのだ。当然、断るなどありえない。

「本当ですか!?楽しみです~♪」

了承の言葉を返すと途端に顔を綻ばせ、作業に戻るオジギソウ。

その姿は傍目から見ても上機嫌であり、当日までに多くの花騎士から質問攻めされる彼女を目撃することになるのだった。

 

 

 

夜には花火も打ち上がるとのことなので、昼までは街で買い物と食事を楽しんだ後、一度解散して会場で待ち合わせることになった。

徐々に賑やかさを増していく人混みの中、会場へと続く入口付近でオジギソウの姿を探す……とは言っても、待ち合わせの時間にはかなり余裕があるため、当然だがまだその姿は確認できない。

楽しみのあまり約束の時間より早く来すぎてしまうとは……質問攻めにされる彼女をからかっていたというのに、所詮は同じ穴の狢である。

「えっ、団長さま!?もしかして……お待たせしてしまいましたか?」

近くの喫茶店で時間を潰そうと踵を返したところ、慌てた様子の声に呼び止められる。

「時間がかかりそうだから、お待たせしちゃいけないと思って帰ってすぐに準備したのに……む~、団長さま早すぎですよ~!」

不満を口にするその声はオジギソウのものに違いなかった。

すまんすまんと謝りながら声のした方に顔を向けると、視界に入った彼女の姿にほぅ……と、つい惚けた声を上げてしまった。

「あっ、どうですかこれ?バナナオーシャンの両親が送ってくれたんです~♪」

こちらの反応に気を良くしたのか、機嫌を直したオジギソウがその場でくるっと回ってその姿を見せてくれる。紺色の浴衣姿だった。

夜空に瞬くたくさんの星をイメージしたデザインはどこか儚げで、派手さがないのがむしろ彼女の魅力を引き立てている。

普段は結われている栗色の髪もアップにまとめられており、帯にあしらわれた赤と黒のシックな印象と合わさって普段より彼女を大人っぽく魅せていた。

綺麗だ……。すごく似合っている。

そう答えるのがやっとな自分の甲斐性の無さが恨めしい。しかし、言外に含んだ部分もしっかり汲み取ってくれたらしく、照れたような微笑みを浮かべてくれた。

「えへへ♪団長さまならそう言ってくれるって思ってましたけど、直接言われると嬉しいものですね~。」

そう言ってこちらの腕に抱き付いてくる。

「団長さま、すごくドキドキしてるのが分かります~。言葉なんて無くても、私のこと、意識してくれてるって……。」

いじらしいことを言ってくる彼女の頭を、抱きつかれてる方とは逆の手で撫でつつ賑わう会場に向けて足を運ぶ。

 

 

 

「む~~。」

真剣な表情のオジギソウが見つめる先には、大小様々な景品に繋がれた木製の柱がランダムに配置されている。彼女の手元にはカラフルに色付けされたゴム製の輪っかが握られている。

立てられた柱を囲むように輪っかを落とせば対応する商品がもらえるというシンプルなゲームのようだが、当然高価な品は難易度も高い。

果敢にチャレンジする大人たちの横で、子どもたちが近場の比較的取りやすいお菓子を狙って一喜一憂している。

「お嬢ちゃんは投げないのかい?」

中々投げようとしないオジギソウに気付いた店主が話しかけてくるが、集中した彼女の耳には届いていないようだ。その並々ならぬ雰囲気に、店主ばかりでなくざわざわとしていた周囲の客までが一瞬静まり返った……その瞬間。

「そこです!」

気合いと共に放たれた輪っかは綺麗な放物線を描き、全弾が目標の柱に収まっていた。しかも、そのどれもが明らかに高難度と分かるものばかりである。

ベイサボールが得意だと以前聞き及んでいたのだが、このコントロールは大したものだ。

「やった、やりましたよ~団長さま!」

どっと沸く周囲と、呆然とする店主を尻目に満面の笑みを浮かべるオジギソウ。

結局、彼女自身が一般人向けの遊びに本気を出してまで景品を受け取るつもりは無かったらしく、そのまま立ち去ろうとしたのだが「沽券に関わる」と主張する店主と押し問答の末、両手一杯のお菓子をもらって集まっていた子どもたちに配ることで落ち着いたのだった。

 

 

 

「ふぅ……楽しかったですね、団長さま。」

しばらくは出店のゲームを巡ったり軽食を取ったりしながら過ごし、今は人混みから離れたベンチで一休み中だ。

五感が鋭いオジギソウにとって、人が多く集まるところは情報過多になりやすい。休憩を挟んだ方が良いだろうという判断だったのだが……

「私だって、成長してるんですよ~。」

こちらの心配を先取りしたようにオジギソウが胸を張る。どうやら心配したほど疲れを溜め込んではいないようで安心する。

今日のデートにしても、自分から人の集まりそうな場所を指定してきたりと、確かに彼女は成長しているのだろう。

そんなことを考えていると、でも……と話が続けられる。

「まだ、団長さまが隣にいないと上手くコントロールできないんですよね~。」

苦笑を浮かべつつ白状するオジギソウ。

「団長さまの傍はすっごく安心なので、団長さまに意識を集中しておけば回りの音とかがそこまで気にならなくなるんです~。

えっと、その分心臓の音とか、息遣いとか……余計に意識してしまってドキドキしちゃうんですけどね?って、私ったら何で言わなくて良いことまで……うぅ、恥ずかしいです~。」

羞恥で蹲ってしまうオジギソウ。こうなってしまうと下手な慰めは逆効果になるのは分かっているので彼女が落ち着くのを待つことにする。

 

 

 

どれだけの間そうしていただろうか?

「今、泣き声が聞こえませんでしたか?」

突然そんなことを言い出したかと思うと、立ち上がって一直線に走り出すオジギソウ。

「やっぱり聞こえますね。……こっちです!」

正直これだけの人混みの中では子どもの泣き声など聞き取れはしないのだが、オジギソウが言うのだから間違いないのだろう。

人の波を掻き分けるように進んでいくと、確かに道端で泣きじゃくる幼い女の子の姿を捉えることができた。

しかし、大変なのはその後だったのだ。

近くに人影がないところを見るとおそらく迷子だと思われたのだが、こちらが何を聞いても泣き止む気配がなく、この子の名前すら聞き出せていないのが現状だ。

視線を下ろすと、膝の辺りを擦りむいてしまっているのが分かった。不安と痛みでパニックを起こしてしまっているのだろう。

どうしたものかと頭を悩ませていると、ここまで静かだったオジギソウが女の子に優しく語りかけ始めた。

「もう大丈夫ですよ~。花騎士のお姉さんがお父さんとお母さんのところへ連れていってあげますからね~。」

花騎士という言葉に、女の子が微かな反応を見せた。

「……お姉ちゃん、花騎士なの?」

「はい、頼りになる騎士団長さまも一緒ですから心配は要りませんよ~。」

オジギソウの言葉に、おっかなびっくりながらも女の子がこちらを見上げてきた。

せっかくオジギソウが持ち直させた彼女の感情を刺激しないように、いかにも自信満々に見えるように任せて欲しいと胸を叩く。

その甲斐もあって、いくらか女の子が落ち着いてきたのでいよいよ両親探しに移る。

「それじゃあ、お姉さんにお名前を教えてくれませんか?」

「……◯◯◯。」

「◯◯◯ちゃんですか~。可愛い名前ですね。それじゃあ、ちょっとだけ待っててくださいね?すぐに見つけちゃいますから!」

名前さえ聞ければこちらのものである。

人混みからでも◯◯◯ちゃんの声を聞き取ったオジギソウが、我が子を探す両親の声を聞き逃す訳がなかった。

「花騎士のお姉ちゃん、ありがとう~!」

程なくして無事に再会を果たし、女の子は両親と共に再び人混みに紛れていったのだった。

 

 

 

しゅっと良く晴れた夜空を切り裂くように舞い上がった火花が色とりどりな大輪の花を咲かせている。

「ふぁ~、はぁ~。綺麗ですね、団長さま~。」

こちらの肩に頭を預け、眠そうな様子のオジギソウが語りかけてくる。

さすがにあの人混みの中から特定の声や言葉を聞き取るのはそれなりに負担がかかったようで、親子を無事に見送った直後に寝落ちした時はかなり焦ったものだ。

何とか花火の始まる時間までには起きてくれたものの、疲れが溜まっているのは間違いない。

「私も、まだまだ……ですね~。ふぁ~。今度は、もっとお役に立ちますから~。」

最後に特大の一発が打ち上がったかと思うと、オジギソウはいつの間にか安らかな寝息を立てていた。起こさないように気を付けながら彼女を背負い、騎士団本部への道を歩く。

ふと空を見上げると、夜空には満天の星が輝いていた。

個々の輝きは小さくとも、より集まることで夜空を明るく照らす星の瞬きに想いを巡らせる。

千年間続く害虫との終わらない戦い。その闇を照らすべく、人々の希望の光となって戦う花騎士たち。

いつの日か、この夜空のように闇が照らされる日が来ることを信じている。

そんな日が来るために、自分もできることをやっていこう。

背中の確かな温もりを感じながら、明日以降の任務への心意気を新たにするのだった。

 

 

 




そんなこんなで嫁回でした。
他の子のネタも渋滞起こしてるのに何をしているのか(後悔はない)。

お盆は連休もあるので、今度こそ渋滞している子たちのネタを消化していきたいところ(願望)。
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