花言葉:「幸せな思い出」「また会う日を楽しみに」
ロムを2つプレイしている中でただ1人、虹メダル交換などの確定入手手段を使わずに両ロムで入団してくれた虹の娘。
純粋でひたむきに努力する彼女の姿には何度も心を打たれました。ゲームで育てた団長諸兄なら分かると思いますが、入手直後や進化、開花してすぐだと低レアリティと同程度の総合力しかない娘なんですよね。
大器晩成型と言いますか、こういう娘は非常に育て甲斐があって好きです。
※この作品の注意
・本文中やあとがきにおいて、通常衣装ネリネのキャラクエの内容に触れているので、そういうネタバレが気になる人はブラウザバック推奨です。
・前話のオジギソウ団長とはパラレル世界の住人という認識でお願いします。
執務室で書類仕事を片付けていると、窓の外から賑やかな声が聞こえてくる。先日の害虫討伐任務成功を祝した打ち上げが、所属花騎士であるホップ幹事の下で行われているためだ。
彼女が幹事を務める宴会にははずれがない。自分も声はかけてもらっていたのだが、今現在執務机の上に積み上げられている書類の束がそれを許してはくれなかった。
未処理の束が無くなった頃には、外から聞こえてくる喧騒もだいぶ落ち着いてきた。仕事が早めに片付いたら顔を出すと伝えてはいたが、今からというのはさすがに気まずい。
諦めて就寝の支度に取りかかろうと席を立って伸びをしていると、執務室の扉を叩く音が響く。
入室を許可すると、おもむろに現れたのはホップだった。
彼女が幹事を引き受けた宴会を途中で抜け出してきただと!?しかも、いつもは覚束ない足取りも今日は割りとしっかりしている。明日は古代害虫の復活に備えるべきだろうか!?1人でパニックに陥っていると、ホップの後ろからもう1人の花騎士が駆け出してきた。
「うわぁーん。私、悪い子です団長さん…。」
ホップが1人だと勘違いしていたため完全に不意は突かれたが、何とか受け止めることに成功する。
腕の中では、水色のマーメイドドレスに身を包んだ小柄な花騎士、ネリネがひたすら泣きじゃくっていた。心なしか、頬が少し赤みを帯びている気がする。
助けを求めて視線を向けた先で、ホップが手に持っているものの存在に気付き、大方の事情は把握することができた。
「私、ジュースと間違って、お酒飲んじゃいましたー。うぅお顔熱いよぉ…けどけど、ラベルも悪いですよー。なんですか?シードルって…うわぁーん。」
つまりは、そういうことだった。ホップの持つ空瓶には確かに酒という文字は入っているものの、ジュースと言って出されれば疑わずに口をつけてしまいそうだ。
「ごめん団長…。私がもっとちゃんと確認してれば良かったんだけど…。お仕事も邪魔しちゃったよね…?」
ホップがすまなそうに謝罪の言葉を口にするが、たった今片付いたところだから問題ないと執務机を指して応えると、いくらかは安心したようだ。
ちゃんと確認をしなかったネリネにも責任はあるのだからあまり気にするなとホップの頭を撫でてやると、その様子を見ていたネリネが反応した。
「むぅ…団長さん、ホップさんとばかりお話ししててズルいです。私にも構ってくださいよー。それとも、私みたいな悪い子とはもうお話ししてくれないんですか…?」
瞳に涙を溜めているネリネに気付き、慌てて空いてる方の手でドレスとお揃いの綺麗な水色の髪を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細めて大人しくなった。
「ひっく、っひひ、だんちょーのところに連れてきたのは正解らったねー。私たちじゃ手がつけらんなくて~。そのままお願いしちゃって良い~?」
いきなり呂律が怪しくなったと思ったら、どこから取り出したのかワインをボトルでグビグビやっていた。
「それじゃ~私はこれで。」
ネリネをそのままに執務室を出て行こうとするホップ。あまりに自然で一瞬そのまま見送りそうになったが、何とか引き留める。酔った女の子を男の部屋に置いていくんじゃない。
「らって~、仕様がないじゃない。まだ片付けも残ってるみたいらし~。」
なおも引き留めようとしていると、服を引っ張られた。視線を下げると、頬を膨らませたネリネが撫でる手が止まったことへの無言の抗議(+涙目)を向けてくる。
言葉に詰まっている隙を突かれ、気付くとホップは既にドアノブに手をかけていた。酔っぱらいのくせに!
「なぁに、襲ったって嫌われたりしないわよ~。ここに来るまでに色々聞いちゃったし~。それとも、そこまで必死に引き留めるってことはだんちょーはそういうのがお好み?」
もはやぐうの音も出ない。ホップはそのまま「冗談よ~。」と言い残して執務室を後にした。
ネリネの方を見ると、元々赤くなっていた顔がさらに赤みを増している。これはホップが聞いたと言う『色々』をぜひ聞いてみたい。
頭を撫でていた手を背中に回し、優しく抱き上げる。抵抗は無いようなので、そのまま寝室に向かうドアの方へ歩き始めた。
いつの間に寝てしまったのだろう。彼女を抱き締めていた温もりが残っていたからか、懐かしい夢を見たものだ。
『自他ともに認める泣き虫の花騎士』それが、この騎士団に来たばかりのネリネだった。害虫と遭遇して、攻撃を捌ききれなくて、自らの無力さを思い知って、ネリネの涙を見ない日はなかった。
自己紹介の時「人魚姫に憧れている」 と語った彼女は、泳ぐことができなかった。初めて彼女の泳ぎの練習に付き合った時など、膝下まで水に浸かっただけで軽いパニックを起こしていたほどだ。
それでも、彼女は立ち止まらなかった。努力をし続けた。
経験も実績も積み、着実に実力をつけていったネリネ。しかし、自分にとっては最初の頃のイメージが強く、どうしたら自分に認めてもらえるのか悩んでいる彼女に、バナナオーシャンでの任務に向かう途中、ある提案をした。
『任務が終わるまで1度も泣かなかったら、泣き虫ではなく、立派な花騎士だと認める』
一時はヒヤリとする場面もあったが、自分が「任務完了」を宣言するまで、彼女は泣かずに任務をやり遂げたのだ。
あの日以降、彼女が任務中に泣くことはめっきり減った。成長を嬉しく思いつつ、少しばかり寂しさもある。
ふとベッドの隣に目を向けると、ネリネの姿は無い。自室に戻ったのかと思ったが、何やら食欲をそそる匂いが漂っており、程なくして可愛らしいイルカのデザインされたエプロンを身に付けたネリネが寝室に入ってきた。
「あっ、おはようございます、団長さん!もう起きたんですか?むぅ、お嫁さんみたいに起こすのもやってみたかったんですけど。」
何やらもったいないことをした気がするが、どうやら先に起きて朝食の支度をしてくれていたようだ。 昨日迷惑をかけたお詫びらしいが、これも最初の頃は包丁を持つ手が危なっかしかったりとヒヤヒヤさせられたものだ。
「えへへ、ご飯の準備はできてますよ!一緒に食べましょう。」
今日もネリネは着実に成長している。これからもずっと頑張り屋な彼女を1番近くで見守っていきたい。満面の笑みを浮かべる彼女に微笑み返しながらそんなことを思うのだった。
自分の中で前回のオジギソウ、今回のネリネ、最後にもう1人が別格の存在です(嫁はオジギソウ1人ですが)。そのもう1人がちょっと難産になりそうなのですが、エタらないように少しずつ進めていきたいと思っています。あまりに難航しそうであれば、別キャラを先に書いてしまうのも手ですね。それこそ、今回は脇役止まりだったホップさんとか。
さて、ネリネのキャラクエをクリアした方ならピンときたと思いますが、本文中で触れているバナナオーシャンでの討伐任務はネリネの開花キャラクエで語られている内容になります。
余談になりますが、このクエストクリア後、蜜を大盤振る舞いしつつバナナオーシャンで羽虫害虫の出現するエリアを巡回しまくった団長がいたら同士です。私は軽く友人に引かれました。
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