花言葉:「自由」「気まま」「愛嬌」
個人メッセージで「低レアリティの子も見てみたい」というリクエストがあったので書かせて頂きました!
書いてて思ったこと、私、白髪の子好きなんだろうか?
まだ書いてない子合わせれば特別そんなこともない気はするんだけど、片寄ってるな……
急峻な渓谷地帯に根付く風谷の世界花『ベルガモットバレー』。高地に街を築き、周囲を囲う自岩壁が織り成す厳しい地形は害虫の侵攻をも防ぐ天然の要塞と言えた。
世界花の加護を失い、今や害虫の総本山と化したコダイバナと隣接していながらこの国が存続しているのもその恩恵と言えるだろう。
しかし、侵攻の難しさはこの地を訪れる者たちの利便性の悪さと表裏一体でもある。
常人より優れた身体能力を誇る花騎士であっても現地に慣れた者でなければ長距離の移動は難しい……はずなのだが。
「おぉおっ?団長さん、あのヘンテコな装置は何っすかね!?」
巨大な風車?のような装置に瞳を輝かせたユキヤナギが元気に問いかけてくる。
こちらは後を追うだけで限界だというのに、彼女は立ちはだかる害虫を蹴散らしながらでも堪えた様子はない。
突然愛用のハンマーを振り回し始めたかと思うと、横合いから突っ込んできた害虫が哀れにも遠心力を得た鉄塊に殴り飛ばされ、チリと消えた……お見事。
帰ったら体力トレーニングを増やすべきだろうか?
「へぇー。団長さんは物知りっすねー。」
休憩がてら、先程見かけた装置についてベルガモットバレー出身の騎士団長から聞いた内容を掻い摘まんで話してやるとユキヤナギが感心したように頷いてくれた。
これで満足してくれたかと思った矢先……
「あっちに見えるのはひょっとして滝ってやつじゃないですか!?アタシ、ちょっと見て来ますね!」
言うが早いか、こちらが制止の声を上げる前に全力で駆け出すユキヤナギ。
「うぉおーっ、害虫!?」
見知らぬ土地で突っ込み過ぎると危ない。言おうとした言葉は少し遅かったようだ。
小型とは言えハエ型やカマキリ型など数体の害虫が飛び出してくる。
本来なら一旦引かせるところなのだが、彼女はそのまま戦うつもりのようだ。
「えっへっへー!自由ってのは、やっぱりままならねぇもんですね~。でも、このぐらいなら織り込み済み、ですよっ!」
「キシャ!?」
完全に不意をついたつもりだったのだろう。
空を切った自身の鎌を信じられないと言うように見つめるカマキリ害虫の背後に回ったユキヤナギが一撃で仕留めて見せる。
完全に機先を制した彼女はあっという間に害虫を討ち尽くすのだった。
「……あ、団長さんどうでしたか、アタシの活躍振り!見てくれましたか?」
彼女の元までたどり着くと、最後の1体に止めを刺したユキヤナギが堂々と胸を張るので、素直に頭を撫でてやることにする。
「ひゃうっ!?あ、あの……えっと?」
するとどうだろう、素っ頓狂な声を上げたかと思うとさっきまでの溌剌とした姿が嘘のように俯いてしまった。
まさか、こちらの気付かない内に怪我でも負わされたのか!?
「うわっ団長さん!?大丈夫……アタシは大丈夫ですから。どこも怪我してませんって!」
では、いったいどうしたと言うのだろう?
「いや、団長さん怒らないのかなーって。アタシ、内心ビビってたんですけど……」
上目遣いにこちらを見上げるユキヤナギに、そんなことかと拍子抜けしてしまった。そんなもの、怒る理由がないからに決まっている。
一見不意を突いたような害虫の奇襲だったが、ユキヤナギは完璧に捌き、なおかつ反撃までして見せた。
いくら反射神経に優れた者でも、想定外な攻撃にあそこまで完璧に対応することなどできるだろうか?答えは否だ。
つまり、彼女が言うようにあの状況も織り込み済みだったことに疑問の余地はない。
自由奔放な言動は目立つが、彼女は自らの行動が起こし得るリスクをしっかり勘定して動いているのだろう。
そうであるなら、無駄に花騎士の士気を削ぐ方が愚策である。
もちろん、他の花騎士も絡んでくるなら注意をしないわけにはいかないだろうが……
「…………」
それにしても、先ほどからユキヤナギが随分大人しい。屈んで視線を合わせてみる。
「……っ!」
一瞬で視線を逸らされてしまった。
「あ、あの……ヘンなんです、アタシ。
団長さんがアタシたちのことちゃんと見てくれてるのは知ってたし、今までこんなことなかったのに……。」
やっとこちらを向いたかと思うと、その顔は耳まで真っ赤になっていた。
普段は元気いっぱいな少女のしおらしい姿に思わずドキリとしてしまう。
「うぅ~、何だかモヤモヤして、ソワソワして……あぁ~ままならねぇです~!」
唐突に駆け出すユキヤナギ。
彼女は勢いを殺すことなくそのまま近くの滝壺へと飛び込んで行った。
噴き上げる水飛沫に唖然としていると……
「はぁ~、汗かいちゃってたんでちょうど良かったですね。団長さんもどうですか?」
先ほどのしおらしさはどこへやら。さっぱりした表情のユキヤナギが水面に顔を出した。
厚手の上着を着ているため透けるようなことはないのだが、服が肌にピッタリと張りついて浮き出た身体のラインが艶かしく、目のやり場に困ってしまう。
「隙ありっ!」
なっ!?
彼女から目を離したのがいけなかった。
振りかける大量の水飛沫に、こちらまでずぶ濡れである。
「えへへっ、アタシこれからも思い付きで行動するかもなんで、団長さんに迷惑かけちまうと思うんですけど、これからも末長くよろしくお願いします、ね!」
満面の笑みと共に先程よりも大きな水飛沫がこちらを襲う。
言葉と行動が合ってない!
ここまでコケにされてはこれからの騎士団運営の沽券に関わる。ここは年長者として分からせてやる必要がありそうだな!
彼女を追って滝壺に飛び込むと、こちらの気勢を察したユキヤナギがいつの間にか少し離れた位置に陣取っており、しばらく年甲斐もなく楽しんだのだった。
「何か釈明したいことは?団長様?ユキヤナギさん?」
「……申し訳ない。」
「……申し訳ねぇです。」
その後、中々帰ってこない我々を心配した現地の騎士団が救出部隊を編成する事態を招き、帰り道をまったく考慮していなかったために揃って風邪をひいてしまい、その後の業務に支障を来したことでみっちり絞られることになるのだった。
普段元気いっぱいな子が唐突に見せる照れた表情……良いですよね。
花騎士は低レアの子でも魅力に溢れていて可愛いです!