花言葉:「陽気」「喜び」「控えめな美」など
初期の清楚な様子と別Ver.が実装される度に糖度が増し増しになっていくキャラクエ、キャラボイスが良く話題になる子ですよね。
クリスマス、ジューンブライドの別Ver.は所持していたのですが、引き直しガチャでついに念願の通常Ver.お迎えできたので記念に投稿。
ふむ、取り敢えずはこんなものだろうか。
普段は未処理の書類や討伐任務の計画書等で散らかり放題になっている執務室だが、今日は他の騎士団から移籍してくる花騎士が挨拶に来るということで早朝から片付けに勤しんでいる。
とは言いつつ、初めての追加人員でもここまで徹底的にはしていなかった気がする。
つまり、今回の移籍はそれだけ『大物』なのである。
何かの間違いではないかと数日の内にすっかり折り癖のついてしまった資料に再び目を通す。
配属される花騎士の名前はサフラン。
ウィンターローズ所属の花騎士であり、老舗ファッションブランド『アスファル』を設立した一族の娘。
地元では庶民から王侯貴族まで幅広く支持されている人気のブランドであり、ウィンターローズ王家とも取引があるらしい。
最近では各国に店舗を増やしているようで、その知名度はファッションに疎い者でも名前くらいは知っていると答えが返ってくるほどだ。
つまりは貴族である。それも、頭に『超』が付くほどの大貴族。間違っても失礼があってはならない。
遅刻などがないように急ぎの仕事はすべて片付けてあるし、新規の仕事は上司に事情を話して明日まではこちらに回さないように手配済み。騒ぎを起こしそうな連中は昨晩討伐任務に送り出したので早くても夕方までは帰ってこない。
後は座して待つのみ!
少々静か過ぎるという思考を頭の隅に追いやり、時計の秒針を目で追いながら時が経つのを眺める。
何度目かの欠伸を噛み殺したところで、静かにドアがノックされる音が響いた。
慌てて表情を引き締め、入室を促す。
しかし、入ってきたのは目に涙を浮かべたウサギゴケだった。
「うぅ、団長……」
彼女が差し出した掌の上には、いつもは右手にはめられているウサギのパペット……良く見ると、長年の使用で縫合が解れてしまったのか、耳が片方取れかかっていた。
自分でどうにかしようとしたのか包帯で補強された跡があり、余計に痛々しい。
夕方まで待てば裁縫の得意な花騎士も帰ってくるが、それまで放っておくわけにもいかない。
確か針と糸は在庫が残っていたはずだ。
約束の時間まで少し余裕があることを確認し、ウサギゴケに留守番を任せて備品庫に向かうのだった。
「お姉さん凄いの、ありがとうなの!」
針と糸を手に急ぎ戻って来たのだが、聞こえてきたのはウサギゴケがお礼を述べる声だった。
まさかと思い扉を開けると、彼女の他にもう1人の人物がソファに腰かけていた。
ツインテールにまとめられたピンク色の髪の少女。黄色のワンピースにオーバーコートというラフな格好ながら、気品すら感じる居住まい。
間違いなくサフランその人であった。
「あら、あなたが団長さん?」
綺麗に直してもらったパペットを満面の笑顔で受け取るウサギゴケに優しげな笑みを返し、こちらに問いかける。
そこでやっと正気を取り戻し、待たせた非礼を詫びる。
「まだ約束の時間には早いじゃない。私が早く着いちゃっただけだから気にしないで。」
あっけらかんと語るサフランだが、大貴族のご令嬢を待たせてしまったことに変わりはない。それに、ウサギゴケの件もある。
さすがは人気ファッションブランドを営む一族の娘といったところだろうか。縫合跡も目立たない完璧な仕事である。自分ではこうはいかなかっただろう。
「……別に、好きでやったことだもの。むしろ、この子のために針と糸まで準備してくれてたのに申し訳ないと思ってるわ。」
うん?……気のせいだろうか。
言葉尻は丁寧なままなのだが、少々ムッとした印象を受けた。気に障るようなことでもあっただろうか。
「ああ……私、貴族ではあるけど団長さんには花騎士としてみんなと平等に扱って欲しいの。私からのお願い。ダメ……かしら?」
誰でもないサフラン本人からの申し出なのだから当然聞き届けるべきなのだが、彼女の扱いに関しては上からも厳命されているので簡単に返すわけにもいかない。
どうしたものか……
悩んでいると、普段は空気の読めるウサギゴケが強引に話に割り込んできた。
「サフラン、この子が解れちゃったらまた直してもらっても良い?」
「ええ、もちろんよ。これからは一緒に戦う仲間なんですもの。遠慮は要らないわ。」
「仲間……うん、なの!サフラン、これからよろしくなの!」
彼女なりに気を使ってくれたのかもしれない。戯れ合う2人に向き直り、希望に添えるように努めることを約束するのだった。
正式にサフランが配属されたのはそれからしばらく後のことだが、配属から数日としない内に大量の衣服やぬいぐるみを運ぶサフランの姿を見かけるようになった。
驚きつつ彼女の私室まで運ぶのを手伝ったのだが、良く見るとどれも修繕が必要なものばかりのようだ。
何となく事情を察しつつ、確認のため質問を投げ掛ける。答えは当然、予想通りのものだった。
「最初はウサギゴケだけだったんだけど、いつの間にか他のみんなにも私服やぬいぐるみの修繕を頼まれるようになっちゃって大変なのよ……全部引き受けたらこんな数になっちゃった♪」
言葉の割にはずいぶん嬉しそうだ。その点を指摘すると、彼女はあのときのようにあっけらかんと笑って答える。
「変に恐縮されるよりずっと良いもの。この間はカレーの美味しいお店を教えてもらったし、今度のお休みにショッピングに誘ってくれる子たちもいたわ。こんな風に対等に接してくれる同年代の子と出会えて、花騎士になって……団長さんの騎士団に来れて良かったって思う。」
相手の機微に敏感なウサギゴケが真っ先に彼女に懐いていたのが功を奏したようだ。
元々が気さくな雰囲気のサフランなので、騎士団にも既に馴染んでいるようである。
ウサギゴケには後で埋め合わせでも考えておこう。
「もちろん、ウサギゴケには感謝してるわよ。でもね、団長さん。私はあなたにも感謝しているのよ?」
早速作業に取り掛かりながらそんなことを言ってくる。
はて、今のところ花騎士たちに何かを特別指示したりはしていないのだが?
「私のことで上の人から色々言われてるんでしょう?」
惚けてはみたものの、彼女は作業中の視線を上げることもなく核心を突いてきた。
バレていたか……。
「ああ、やっぱりそうなのね。ここに来る前の騎士団でもそうだったし、挨拶に来たときのことを考えれば、ね。
大貴族の令嬢を待たせた上に針仕事をさせた人はあなたが初めてだけど♪」
どうやら鎌をかけられたらしい。いつの間にか上げられていた視線が悪戯に成功した子どものような光を灯している。
彼女には敵いそうもない。
作業に戻ろうとするサフランだったが、彼女を探していた本来の目的を思い出す。
騎士団に馴染んでくれているのはけっこうなことだが、今日はほどほどにしておいて欲しい。
急ではあるのだが、明日から害虫の目撃情報があった地点に討伐任務の要請が出たのである。
上からの指示はもう少し時間を空けてから安全なものをとのことだったが、訓練を見学した際の実力も確かなものだった。
他の花騎士と平等に扱うという約束も果たせるし、実践での機転や立ち回りも見ることができる。
初対面の日の意趣返しのようなものだったが、彼女はお気に召したようで無邪気な笑みを引っ込め、不敵に宣言する。
「良いわね。私だって一生懸命鍛えているんだもの。明日は花騎士サフランの毅然たる姿をお見せするわ。」
やる気が溢れているようで何よりである。
「うふふ♪この騎士団とは長い付き合いになりそうで安心したわ。移籍もそろそろ諦めようかと思ってたんだけど、あなたと会えて良かったわ。これからも改めてよろしくね、団長さん。」
差し出された手を力強く握り返す。
この良い意味で貴族らしからぬ貴族な花騎士と長い付き合いになりそうという意見はこちらも同感である。
「さて、そうと決まったらまずはご飯にしましょう?私、今すごくカレーが食べたい気分なの!」
言うが早いかこちらをぐいぐいと引っ張っていこうとする彼女の笑顔は、短い付き合いながらもこれまでで1番ではないかと感じさせてくれるほどに輝いて見えたのだった。
ファッションブランドを経営する一族の娘だけあって、衣装のセンスはピカイチな子ですよね……。未実装のジューンブライド開花衣装か待ち遠しいです。