花言葉:「約束を守る」「あの人が気がかり」など
大手メーカー様の看板イラストレーターを起用ということで実装前から話題になっていた子ですね。
ゲスト絵師様ということで別Ver.は期待薄かもですが、魅力に溢れた子なのでもっと色々な姿を見てみたいものです。
「あら、いらっしゃいませ。
団長さん、今夜もいつものやつ……ですか?」
暖簾を潜ると、パッと花開いたような笑顔で女主人が出迎えてくれた。
場所は町中の小料理屋……ではなく、騎士団領内の空き部屋を改造したものである。
彼女がいそいそと準備に取りかかろうとするのを制し、今夜は仕事の話だと伝える。
女主人、オミナエシの実家はベルガモットバレーで小料理屋を営んでおり、花騎士を志すまではそちらで働いていたという料理の腕は一級品である。あちこちから食欲をそそる料理の香りが湯気とともに届いてくる。
本音を言えば今夜も彼女の店で晩酌といきたいところだが、緊急の任務で明日の朝にはこちらを発たねばならない……後ろ髪を引かれつつ、話を続ける。
「ベルガモットバレーまで遠征任務、ですか?
私が団長さんのお役に立てるならどこへでもご一緒しますよ♪」
そう、今回の任務先は彼女の実家近くにある秘境なのだ。
場所の特殊性から誰でも良いというわけにはいかず、既に予定などが入っていたら手詰まりだったのだが、オミナエシは快諾してくれた。
しかし、途端に困ったような表情になる。
「朝の出発となると、今日は早めに店仕舞いしないとですね」
その言葉に、彼女の料理に舌鼓を打っていた花騎士たちからざわめき始める。
せっかく1日の疲れを美味い酒と料理で癒していたところにこの仕打ちである。
自分でも納得できないのだから彼女たちの不満はもっともだ。
どうしたものかと悩んでいると……
「ほっ、ほら、団長さんも困ってるじゃない。
ここは私が奢ってあげるから別のとこで飲み直しましょ!」
「そっ、そうね!緊急の任務だもの、しょうがないわよ」
突然何人かが慌てて席を立ち、近くの花騎士たちを急き立て始めたではないか。
きっとこちらの事情を汲んでくれたのだろう。
気配りのできる部下を多く持つことができて団長として喜ばしい限りである。
にこやかに笑いながらに店仕舞いに取りかかるオミナエシを手伝いながら、そんなことを思うのだった。
ベルガモットバレーの南東、フラスベルグ渓谷。リリィウッドとの国境沿いに位置し、外交の際にも利用されることから警備隊が常時配備されている詰め所があるのだが、付近の山間部は起伏の激しいベルガモットバレーでも屈指の過酷さとあって警備が行き届かない場所も多く、害虫が勢力を広げないようにするためには花騎士による巡回が不可欠な場所となっている。
しかし、不安定な足場の中、不意に襲ってくる害虫に対処しながら急勾配を進むのはいかに花騎士と言えども相当な修練が必要であり、人手不足は否めない。
だからこそ、他国の騎士団に所属しているとは言え実績のある花騎士であるオミナエシに白羽の矢が立ったのだろう。
事実、彼女は苦もなく襲い来る害虫をあしらいながら歩を進めていく。
「桃源郷の皆様にはしっかりと鍛えていただきましたから。彼女たちに比べれば私などまだまだですよ」
彼女の実家である小料理屋の近くには桃源郷と呼ばれる歓楽街があり、自警団を組織して自治を行っているらしい。中には訳あって花騎士の立場を追われた末に流れ着いた者もいるようで、手練ればかりとの噂だ。
花騎士の道を志したオミナエシはそんな環境に身を置いて修行を積んだようで、謙遜してはいるが実力は確かなのだ。
「この辺で少し休憩にしましょうか」
何度目かの害虫の襲撃を退けたところで、そんな提案が飛んでくる。
彼女自身は息1つ乱していないため、こちらへの配慮なのは明らかだった。
休憩が必要なほどではない。男として強がりを吐きたい気持ちはあるのだが、取り繕えるような有り様でもないため素直にお言葉に甘えることにする。
「ふふっ、桃源郷の自警団でも世界花の加護無しにここまで付いて来れる方は見たことがありませんよ?」
そんなこちらの内面までお見通しと言うように、隣に腰かけたオミナエシが励ましてくれる。
もしかしたらこちらを励ますための嘘だったかもしれない。その可能性に思い至ったのは休憩を終えて大分歩いてからだったのだが、いくらか歩く気力が甦ったのも事実であり、相変わらず淀みなく歩を進める彼女の後ろ姿を見やりながら敵わないなと苦笑を浮かべることになるのだった。
発見した害虫の巣はそこそこ急を要する状態にまで拡大が進んでいた。
「これはちょっと、私1人では厳しいかもしれませんね。すみません……」
頭を下げるオミナエシに、気にする必要はないと諭してやる。
全体の数はそこまで多くない。しかし、極限級とまではいかずともかなり大型の個体がちらほらと確認できた。
道中に襲ってきた害虫の数が報告よりも多かったことから悪い予想はあったのだが、オミナエシが手練れと言っても1人で対処するには危険すぎた。ここは1度報告に戻るべきだろう。
そう結論付けたところだった。
「誰かと思えば、懐かしい顔もいるでありんすね」
突如背後から聞こえた廓詞に驚きつつ振り返って見ると、息を呑むようは美人が 立っていた。
一見、たおやかな遊女そのものといった容姿だが、放っている気配は常人のそれとは一線を画している。
「懐かしい顔」と言っていたが、自分には心当たりがない。となれば……
「あなたがこの子のところの団長さんでしょうか?お会いするのは初めてでしたね。
私はゲッカビジン。桃源郷の花魁にして象徴。
ところでものは相談なんでありんすが……」
オミナエシに戦いの技術を教え込んだ張本人。実力者揃いと言われる桃源郷自警団の頂点に君臨する女性のお出ましである。
撤退の方針から一転、ゲッカビジンの協力を取り付けることができ、問題なく害虫の討伐を果たすことができた。
どうやら彼女も一度戻って仲間に協力を仰ぐべきか考えあぐねていたところらしい。
他国では同じ目的の花騎士が戦場で偶然居合わせるなど考えにくい話だが秘境故に女王の統治が行き届かず、桃源郷をはじめとする独立勢力が跋扈するベルガモットバレーならではのケースと言えた。
たった2人の花騎士による猛攻になす術なく崩れ落ちる害虫を前に、自分の存在意義を見出だそうとすることが愚だという結論に至る頃には戦闘は終了していたのだった。
詰め所への報告は、王室が自治権を認めているとはいえ国に属していない桃源郷のことを良く思わない者もいるらしく、ゲッカビジンのことはあえて報告しなかったのだが、壮年の部隊長は幸いにも理解のある方だったようで、その辺はうまく取り繕ってくれるとのことだ。
オミナエシは職業柄人の嘘を見抜くことに長けており詰め所を出てから「あの方は信用しても大丈夫」と太鼓判を押していたので任せることにしたのだった。
「はい、団長さん。もう一杯いかがですか?」
ベルガモットバレーでの任務から早数日。あの後も何だかんだと呼び出しが続き、こうして彼女の料理に舌鼓を打つのも思えば久しぶりだ。
程よく出汁がきいた料理に、面白いように酒が進む。
「お疲れ様です、団長さん。
最近お忙しいようでしたから、今日も来ていただけないのではないかと寂しかったんですよ?」
空になったグラスに2杯目を注ぎ足しながら可憐しいことを言ってくれるオミナエシ。
珍しいことに他の花騎士の姿がないからか、今日は随分と積極的だ。
「ふふっ、酔った人からは駆け引きの材料なんかも手に入るんですよ。こうして、想いを寄せる方と2人きりになれるように取り計らったり……」
すごく可愛いことを言われているのだが、後半は良く聞こえなかった。ただ、何かあまり深く聞き出してはいけない気がする。
とにかく、寂しい思いをさせてしまった分、今夜はとことん付き合おう。
掛け値無しに思いの丈を伝えると、彼女表情が綻ぶ。
「本当ですか!?団長さんもお疲れだろうと私からは言い出しにくくて……」
客商売の経験が長いとは言え、何と人ができた花騎士だろうか。彼女の気遣いに痛み入っていると、おずおずと小指を差し出してきた。
オミナエシの花言葉は「約束を守る」。瞳に浮かべた期待が何を求めているかは明白だ。
差し出された小指にこちらの小指を絡める……その瞬間、浮かべられた表情は花騎士でも小料理屋の主でもなく、一人の女性のそれだった。
「指切りげんまん♪嘘ついたら針千本の~ます♪指切った♪」
鈴を転がしたような澄んだ声でお決まりの口上を歌い上げるオミナエシ。
「えへっ♪約束しましたからね、団長さん」
自らのグラスにも透明な液体を満たし、屈託なく笑うオミナエシを見やり、今夜は長くなりそうだと覚悟するのだった。
ということで清濁織り混ぜた魅力を合わせ持つ小料理屋の主、オミナエシちゃんの回でした。
清楚な見た目と気配りにまずは惹かれる子ですけど、それだけじゃないのがまた魅力的ですよね……はぁ、別Ver.こないかな
((/ω・\)チラッ)