とある花騎士団長の庭園   作:とある花騎士団長

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プルモナリア
花言葉:「気品」「孤独な魂」
ニューカマー枠はずっとアザミちゃん推しだったんですが、何ですかこの可愛すぎる生き物は……
まだまだ気になる実装予定の子もいるし、今年誰に投票しよう(苦笑)

1/30加筆修正


28.「孤独な魂」に寄り添う花騎士なおくりびと―温もりを灯せるうちに―

雨上がりの湿気を含んだ空気の中、害虫の群と花騎士による戦いは熾烈を極めていた。

数的有利な状況を作り出し敵の数を減らしていく一方、こちらの戦力も確実に削られていく。

一進一退の攻防が続く中、その均衡は敵の親玉らしいカマキリ害虫の咆哮によって終わりを告げた。

各所で散発的に花騎士と戦闘を行っていた小型害虫が、一斉に付近の街へと進行を始めたのである。

こちらの迎撃で仲間が倒れようと一直線に目的地へと向かう様子に意図するところを察して一瞬の逡巡はあったものの、まだ動ける花騎士に街の防衛を指示する。

こちらの戦力を分散させ、強引に包囲を切り抜けるのが目的なのだろう。事実、このカマキリ害虫の戦闘力は極めて高く、これまでに何人もの花騎士が戦闘不能に追いやられていた。

対処する人員を減らすのはかなりのリスクに繋がるのだが、騎士団として住民の安全を疎かにすることはできない。

背を向けた者へ仕掛けることも警戒していたのだが、親玉害虫にそうした仕草はないところを見ると、最悪自分だけが包囲を突破して逃げ延びる算段なのだろう。

「キシャァァアア!!!!」

再び咆哮を上げるカマキリ害虫。

幸い、これまでの戦闘でダメージは蓄積されているようだが、それはこちらも同じこと。

双方睨み合いが続く中、不意に袖を引っ張られる感覚に意識だけそちらに向けると、油断なく武器を構えながらもどこか落ち着いた雰囲気を見せるプルモナリアだった。

その視線は一点を見つめており、それを辿ることで彼女の意図を察する。

身振りで他の花騎士にも作戦を伝え終えるのと、痺れを切らした親玉害虫がこちらへ突っ込んでくるのは同時だった。

「やぁぁああ!」

カマキリ害虫の周りを囲むように位置取り、敵が狙いを定めるより早く、ありったけの魔力を込めた魔法が炸裂する……害虫の僅か上方で。

それを見てチャンスと捉えたのだろう。一気にこちらの戦力を削るべく、魔力を使い果たして立ち尽くす彼女を無視して接近戦を仕掛けてくる……最も近場にいたプルモナリアへと。

「……ととっ!?」

間一髪。手にした鎌を間に滑り込ませることには成功したものの、小柄な体で受け止めるにはその一撃は重すぎた。

遥か後方へと吹き飛ばされるてしまった彼女が心配ではあるが、今は無事を祈るしかない。

「シャァァアア!!」

立て続けに2人の花騎士を戦闘不能にしたことで調子づいたのだろう。雄叫びと共に次のターゲットへと体を反転させようとする害虫……その行動が、こちらの思惑通りであるとは知らずに。

「……キシャッ!?」

驚きの声を上げるカマキリ害虫。見ると、雨のぬかるんだ土に足を取られ、体勢を維持できなくなったようだ。

当然、そんな姿勢でまともに受け身を取れるはずもなく、その一瞬にすべてをかけた総攻撃を叩き込む。

「ギ、ギシャ……」

しばらくは自身の鎌を盾に凌いでいた親玉害虫ではあったが、すべての攻撃を受けきるには到底足りず、やがて塵となって崩れ落ちた。

少々綱渡り気味な策ではあったが、どうにかうまくいったことに安堵する。

小型害虫の掃討に向かった部隊とも無事に合流し、手分けして負傷者の救護にあたるのだった。

 

 

 

「あ、偉い人ー。わたしはこっちだよ」

吹き飛ばされたプルモナリアの捜索に向かうと、足を引き摺った状態ではあるものの無事な姿を見せてくれた。

作戦成功の立役者に殉職されたとあっては、みんなに会わせる顔がない。

「今回ばかりはわたしにもお迎えが来たのかと思ったよ。

葬儀屋だけに、棺桶に片足を突っ込んでたね」

救護班に手当てを受ける傍ら、縁起でもないことを口にするプルモナリア。騎士団に迎えた当初は反応に困ったものだが、任務をこなしていくうちに彼女が心から冗談で語っているのだと分かってきた。

だからこちらも、葬儀屋に先立たれてしまっては誰が我々の棺桶を用意してくれるのだ?と冗談めかしてやる。

驚いた表情を浮かべたプルモナリアがキョロキョロと辺りを伺うと、彼女を心配して集まっていた花騎士たちが同意するように頷いてくれた。

「ふふふ。この騎士団は良いね~。

わたしの冗談にこうやって付き合ってくれる」

ふにゃりと笑みを浮かべるプルモナリア。

葬儀屋の娘。そんな環境で育ってきたからか、彼女は戦いの毎日を送る花騎士の中でもとりわけ死と向き合ってきたのだろう。

彼女はそんな自らを指して心が鈍感になっていると自嘲することもあるが、とんでもない。

「ふぁっ!?だ、団長?」

手当を終えたばかりの彼女を正面から抱き締めてやると、微かな身体の震えを感じ取ることができた。

普段の澄ました様子とは違う可愛らしい悲鳴が上がる。

周囲に集まった花騎士たちから黄色い歓声が上がるのにも構わず、彼女が今も生きている証である温もりを全身で感じ取る。

射程から外れた者が空への退避を塞ぐ。ここまでは予定通りだが、臨機応変に近場の者が担うはずだった囮役のポジションへと最短距離で突っ込む彼女を目撃したのは自分だけではない。

「おいー!

恥ずかしいからやめろよー!」

ジタバタともがく彼女を余計に強く抱き締めてやる。

その口調は既に普段とかけ離れたものになっているが、もしかしたらこちらの方が素なのかもしれない。

「みんなも笑ってないで助け……って、なんで余計に集まって来るんだよー!」

唐突に始まったハグ合戦(?)は、騒ぎに気付いた救護担当の花騎士に大目玉を食らうまで続けられたのだが、一緒に騒いでいたはずの花騎士たちが結託してねじ曲げた経緯を説明したため、帰還後は1人寂しく始末書を書く羽目になったのだった。

 

 

 

さすがは花騎士といったところで、あれからまだ数日と経っていないうちにプルモナリアの足の具合は完治していた。しかし、治療に専念している間は質素な栄養食が続いていたため、甘いもの無しでは生きていけないと豪語する彼女にとってはそこそこ苦痛な日々だったようだ。

そこで、復帰祝いとして彼女の大好きな甘いもの巡りへと繰り出していた。

「はぁ……、糖分が身体に染み渡るよ。やっぱり甘いものは最高だねー。

今日はありがとう、偉い人」

これ以上無いほどの笑顔でスイーツを平らげていくプルモナリアに、気を良くした店主がまだ発売前だという試作品をおまけしてくれたりと終始ご機嫌な様子である。

そんな折り、夕焼けに染まる帰り道で彼女は唐突に切り出してきた。

「花騎士のオバケさんがね、教えてくれたんだよ」

最初は何のことか分からなかったのだが、先程の店で激しい戦いの最中に冷静な対応を見せた彼女を誉めた際の反応がおかしかったことに想い至り、今の発言と合わせてだいたいの事情を把握することができた。

プルモナリアはこの世ならざる者を見て実際に会話をすることもできるのだ。

彼女の意思を尊重して口外はしていないが。

「大切な人がいたんだって。

その人に想いを伝えられずに死んじゃったことを、とっても後悔してた。わたしたち花騎士は、いつも死と隣り合わせなのにどうしてだろうって。だから……」

と、これまでハキハキと言葉を口にしていたプルモナリアが途端に言い淀んだ。

だから?と先を促してみるのだが、続く言葉は中々出てくる気配がない。

しかし、今日は彼女の復帰祝いである。

話したくない内容を無理に聞き出すこともあるまい。そう結論付け、前に向き直ろうとしたところで意を決したような彼女の声が響いた。

「だから、だからわたしは、後悔の無いように生きたい!」

言うが早いか、プルモナリアが全力でこちらに抱き付いてきた。

「あの時は恥ずかしくて暴れちゃったけど、団長やみんなに抱き締めてもらって……本当はすごく嬉しかったから」

柔らかな感触がこちらの唇と重なる。

「分かり合えないまま死ぬ人たちを見たくなくて花騎士になったのに、わたしが後悔を残すような生き方をしてちゃダメだよね」

やがて名残惜しむように唇を離しながらそんなことを言う彼女に、今度はこちらから口づける。

この温もりを絶やさないようにしよう……そう志を新たにしながら。




ということでプルモンことプルモナリア回でした。

開花キャラクエや解放されてないボイスも多くて正直どこまで彼女の魅力を表現できたのかわかりませんが、今自分にできる精一杯は詰め込んだつもり。

楽しんで頂けたのであれば幸いです。
ありがとうございました。
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