花言葉:「謙遜」「純愛」「追憶」
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最近は冬も本番とばかりに冷え込む日が続いており、街を出歩く人々は誰もがしっかりと着込んでいるのが見て取れる。
この分だと明日辺りは初雪になるかもしれない。
頭の中で補強が必要になりそうな箇所をピックアップしていると、しっかり閉じられた窓越しでも聞こえる程の賑やかな声が響いて来た。
「うぇ~い北風が吹き荒れようとも走っていれば寒くないっす。
寒いからこそ、魂を燃やすっすよ!」
「いいね!あたしも付き合うよ。
やるなら正々堂々勝負と行こうじゃないか!」
「うへへへへへ、望むところっす。
うおー、やる気メーターが振り切れるっす!」
「ちょっと、アンタたち訓練中に何やって……ってもう居ないし!?」
眼下に広がるのは、厚着とは言い難い……どころか薄着と言っても良い服装ではしゃぎ回る少女たちの姿だ。
スプリングガーデンを害虫の脅威から守るために世界花から加護の力を授かった少女たち・花騎士。
彼女たちは優れた身体能力を持つだけではなく、暑さや寒さといった気候の変化にも人並み以上の耐性がある。
自分なら考えただけで震えが止まらないのだが、彼女たちにとっては活動に支障をきたす程ではないらしい。
もちろん、本来は“人並み以上”というだけの話であって、個人差はあるし無茶をすれば体調を崩すこともある……こんな風に。
「ケホッ、ケホッ……。うぅ……私としたことが」
苦し気に咳をする声にベッドまで歩み寄ると、この部屋の主であるチャノキが横たわっていた。
部屋を訪ねた際に具合が悪そうだったのでなし崩しに世話を焼き始めたのだが、どうやら風邪を拗らせてしまったらしい。
この分だと今日1日は安静が必要だろう。
額に乗せられたタオルを取り除き、冷たい水に浸してから再び乗せ直すと、気持ち良さそうに表情を緩めた後、黄緑の瞳がこちらを見上げてきた。
「まったく……キミも酔狂な男だな。
私なんかのために貴重な休みの日を潰すとは 」
お礼の言葉よりも先に悪態が口を突いて出てくるのが実に彼女らしい。
苦笑を浮かべつつ暖炉の前まで戻ってくると、チャノキがベッドの中でぶつぶつと何かを呟いている気配がするのだが、残念ながらその内容までは聞き取ることができないのだった。
「……団長くん?」
どれだけの時間が経過したのだろう。燃え尽きかけた薪がパチパチと爆ぜる音だけが響く室内にこちらを呼ぶ声が響き、微睡みかけていた意識が覚醒する。
慌てて視線をベッドの方に向けると、いつの間にかチャノキが上体を起こしていた。
万全とは言わないまでも、最初に部屋を訪れた時に比べれば顔色も大分良くなっているようで安心する。
「おかげさまでね。
ま、まぁ、何だ。その……ありがとう」
恥ずかしそうに視線を逸らしながらではあるものの、素直にお礼を述べるチャノキ。
「な、何だその顔は!私だってお礼くらいはちゃんと言える!
初めてだったんだよ……キミがしてくれたみたいに、付きっきりで看病してもらうというのは」
素直にお礼を言われたのはもちろん意外だったのだが、続いた言葉はさらに予想の斜め上をいくものだった。
知り合いの中には幼い頃の彼女を知っている者もいたのだが、その誰もが『大切に囲われた箱入り娘』という印象を持っていたからだ。
「はは、やはり“外の世界”から見ると当時の私はそのように見えるのだな……」
乾いた笑みを浮かべる彼女が語った内容は、こちらの不快感を煽るには十分な内容だった。
家族にすら疎まれ、来客以外では部屋から出ることも許されなかったこと。その理由が“生まれが四番目だから”というくだらないものだったという事実。
「だから私は家を飛び出し、花騎士の道を選んだ。
その選択は……まぁ、悪くはなかったかな」
あっけらかんと話すチャノキだが、これは聞いても良い話だったのだろうか……そんなこちらの心境を察したのだろう。無理やり話題を変えるべく語りかけてきた。
「ところで、そろそろ訪ねてきた目的を教えてくれても良いんじゃないかな?
まさか私が体調を崩しているのを予知していた訳ではあるまい」
そんな彼女の言葉にハッとする。すっかり忘れていたのだが、元はと言えば自分が先に訪ねて来たのだった。
「まぁ、おおかた任務関係だろう?
そうでもなければこんなに無愛想な女にわざわざ会いに来ることもないだろうからな」
少し寂しげな笑顔を浮かべたチャノキに、慌ててそうではないと否定する。
首を傾げるチャノキ。
どうやら本気で仕事の話をしに来たと思っているらしい。
そんな彼女に、せっかくの休日なのだから一緒にどこかへ出掛けないかと誘いに来たことを白状する。
「……ふぇっ!?」
きっといつもの悪態が飛んでくる。そう思っていたのだが、返ってきたのは思いの外気の抜けた、可愛らしい声だった。
目を真ん丸とさせて固まってしまった彼女を見つめていると、みるみるその顔が赤く染まっていく。
「と、突然何を言い出すんだキミは!?
私なんかをこの騎士団に置いてるのはキミが騎士団長で、私が花騎士で……。
ただそれだけの話だろう!?」
溜め込んだ分まで吐き出すように騒ぎ立てるチャノキを宥めつつ、まだ万全の状態ではないのだから落ち着くように言い聞かせる。
そもそも、騎士団長が休みの日を花騎士と過ごそうとすることがそんなにおかしなことだろうか?
「お、おかしいに決まっているだろう!
今日が非番の花騎士なんて他にもたくさんいるはずだ。なぜ私なのだ!?」
なぜ?と問われると返答に困ってしまう。
一緒に出かけたいと思ったからではダメなのだろうか?無理強いはしたくないが……
「っ……ダメとは言っていない!
そ、それが酔狂だと言うのだ。
この騎士団には悪態ばかりついてる私なんかより素直で可愛い子なんていくらでもいるじゃないか!?」
もはや支離滅裂である。
結局病み上がりに騒いだことで風邪が振り返してしまい、再び熱にうなされるはめになるのだった。
「団長くん団長くん!これが“雪”というものなのか?」
翌朝、すっかり体調の良くなったチャノキと外に出てみると、予想通り初雪がちらつき始めていた。
「白くてフワフワで……冷たっ!?」
手で受け止めようとした雪の冷たさに驚いて声をあげるチャノキに苦笑を浮かべていると、ハッとしたように彼女がこちらを見上げてきた。
どうやら一連の自らの行動を客観的に見ることで恥ずかしくなってしまったらしい。
当たり前と言っては当たり前なのだが、長らく“外の世界”から遠ざかっていた彼女にとっては雪が冷たいという事実も新鮮なのだろう。
「……あっ」
俯く彼女の両手を取ると最初は外気に触れたこちらの手まで冷えてしまったのだが、やがてじんわりと互いの熱で暖まっていくのがわかる。
十分に暖まったところで改めて手を繋ぎ、街へと足を運ぶ。
せっかく直ったのにまた体調を崩させる訳にはいかないので、足りなくなっていた備品の買い出しついでに防寒具を一式揃える予定なのだ。
初めての冬の街並みに興味を惹かれるのか、何度か足元が覚束なくなる。
指摘しようかとも考えたのだが、子供のように瞳を輝かせている彼女が実に可愛らしく、もう少しこのままで良いかと思い直す。
せめて転ばないようにと握る手に力を込めると、気付いたチャノキも繋いだ手を強く握り返してくれたのだった。
儚げな子って良いですよね……キャラクエがバナナオーシャンならぬ夏の海だったので、冬の雪で話を書いてみようというthe安直な思考ですw
ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。
次回は今度こそクリスマスになる予定です。