とある花騎士団長の庭園   作:とある花騎士団長

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な、何とか間に合った(クリスマスイベント実装中という意味で)

サブタイも過去一で捻りもへったくれも無いという(苦笑)
もしかしたらいずれこっそりと編集してるかもしれません
※12/30サブタイを修正
本編も最後のところをちょっとだけ書き直しました。




32.「愛の喜び」と「初恋」の灰かぶり花騎士②―自らの意思で―

執務室の窓から見下ろす先に広がるのはカラフルな装飾に彩られた街並み。今日はクリスマスとあって浮き足立った雰囲気が街全体を包んでいる。

家族や友人、恋人との時間を過ごす人々。

そんな人々に混ざって、正装で巡回にあたる花騎士たちがちらほらと確認できる。

こんな時くらい身体を休めて鋭気を養って欲しいというのが本音ではあるのだが、そんな事情など害虫にはお構い無しなのである。言ったそばから害虫出現の報告が届いたらしく、担当地区を警備する花騎士たちが慌ただしく駆け出し始める。

心配がないと言えば嘘になる。だが、幸い警報が発令されるレベルではないようなので自分も割り当てられた仕事をしっかりこなすことにする。

せっかくの特別な日が、害虫という無粋な存在によって悲劇に塗り替えられてしまわぬよう、いつも以上に気を引き締めて任務にあたらなければ……そんな使命感に駆られていると、タイミング良く扉を叩く音が室内に響いた。

「団長様、準備はバッチリです。

そろそろ出発しましょうか?」

入室してきたのは普段花騎士として着用している躑躅色の衣装ではなく、赤と白のサンタクロースをイメージした服装に身を包んだツツジである。

膝上丈の赤いワンピースドレスに肩までのケープ、赤い帽子。それぞれの裾にあたる部分にはふわふわとした白いファーが縫い付けられており、茶色のロングブーツを履いていた。

なぜ彼女がそんな格好をしているのかと言えば、今日の目的は中心街から離れた小さな村々や孤児院を回って物資を運ぶことであり、せっかくなので形から入ろうとなったからである。

だから決してこちらの趣味という訳ではない。断じて。

事前に示し合わせてはいたのだが、これは予想通り、いや……それ以上に可愛らしかった。

「可愛いですか?……良かった~。

パパとママが送ってくれた衣装なので、きっと二人も喜ぶと思います」

そう言ってその場でくるりと回って衣装をよく見せてくれるツツジ。今にも抱き締めてしまいそうになったが、これから任務に着ていく衣装をシワにしてしまうわけにはいかないので理性を総動員することでなんとか堪えるのだった。

 

 

 

深い森の中、ソリが地面を滑る音だけが辺りに響いている。

「えへへ」

辺りが静かだとちょっとした物音がよく響く。

どうやら隣に座るツツジが忍び笑いを漏らしたようで、どうしたのか問いかけると顔を真っ赤にして慌てだした。

「あ……すいません団長様。

わたし、これまで色んな事に巻き込まれてきたんですけど、サンタさんのお仕事には巻き込まれたことなかったんです。

まさか騎士団の仕事が初体験になるとは思ってなくて……」

一瞬何を言われたのか認識できずに呆然としてしまったのだが、はにかむ彼女を見ていると「この子ならやりかねない」、そんな思いが込み上げてくる。

彼女の巻き込まれ体質は折り紙付きであり、お祭りの行列や雪合戦にいつの間にか引き込まれているのは日常茶飯事。ボーっと外を歩いていたら害虫の巣の真っ只中に……なんてこともあったほどだ。

「キシャー!!」

こんな風に。……って、そんな馬鹿な!?

ソリの進路を塞ぐように立つクモ型害虫はかなりの大きさで、その後ろには小型の害虫がウヨウヨしているらしい。正確な数までは分からないが、月明かりを反射した目が怪しく光を放っている。

積み荷である食料を狙って害虫の襲撃に遭うことは想定していたのだが、これだけの数の群れがこちらに気付かれず接近したとは考えにくい。

おそらく、彼らの巣がある位置に我々が突っ込んだのだろう。

「あはは……すみません団長様。

巻き込まれ体質は相変わらずみたいで」

そう肩を落とすツツジに、気にする必要はないと応じる。

事前に調査隊が派遣されたルートを通ってきたはずなのだが、済んだことを嘆いても仕方ない。

彼女はまったく慌てた様子を見せていないのだから。

「もう慣れっこになってるみたいですね。

最初は団長様や皆さんに追いつくために必至でしたけど、ちょっとずつ対応できるようになって……害虫絡みのトラブルならむしろ任せてください!」

そう言って愛用の魔導書を広げつつ控えめな胸を張るツツジ。

「「「ギシャァァアア!!!!」」」

一方、自分たちのことを無視して会話を続けるこちらに痺れを切らしたのだろう。

先程よりも若干迫力を増した雄叫びに応えるように手下の小型害虫がこちらへ突っ込んでくる。

彼らは最期まで気付かなかったのだろう。相対したその瞬間から彼女を中心に高まり続ける魔力の奔流に。

 

 

 

ところ変わってすっかり日も落ちた執務室。

ソファーの対面に座るツツジに温かいミルクティーを差し出しながら今日1日の頑張りを労う。

あの後も何度か積み荷の食料を狙った害虫の襲撃があったりしたのだが、その度に彼女が対処してくれたおかげで事なきを得ていた。

感謝を込めて頭を下げると、向かいの席で慌てふためく気配が伝わってくる。

「そんな……あ、頭を上げてください団長様。

わたしなんてクロユリさんやゼラニウムさんたちに比べたらまだまだ至らないところばかりで……」

対害虫の最前線、コダイバナで戦う勇士の名前を挙げて謙遜するツツジ。しかし、今や彼女も同じ戦場で肩を並べる存在である。

徘徊する害虫の強さはもちろんのこと、花騎士としての実力を十分に発揮できない彼の地に派遣が許される花騎士はほんの一握りに過ぎない。

そんな栄誉を授かる花騎士が自らの騎士団から排出できたことを誇りに思うし、もっと自信を持って欲しい。

その言葉に顔を真っ赤にして縮こまるツツジ。

その姿からは、任務中の勇敢な様など想像もできない。

「団長様……」

どれくらいそうしていただろうか。

不意にこちらの名前を呼んだ彼女の瞳には、決意の色が見えた気がした。

何事かと問う質問には答えず、席を立ったツツジがこちらの隣へと席を移してしなだれかかってくる。

まだ着替えていなかったサンタクロースの衣装。

肌触りの良い生地を間に挟んではいるものの、意識されるのは女性特有の柔らかな感触。

控えめとは表現したものの、確かに感じられる女性らしさに胸が高鳴っていく。

普段の様子からは想像できない大胆な行動に驚きを隠せないでいると、まっすぐこちらを見上げた彼女が口を開く。

「えへへ……任務中に聞かれた時は恥ずかしくて誤魔化しちゃいましたけど、クリスマスの日に団長様とずっと一緒にいられて、わたし嬉しかったんですよ?

それだけで幸せなのにわたしを喜ばせるようなことを言うなんて……団長様!?」

辛抱堪らず彼女の軽い身体を持ち上げると、顔を真っ赤にして驚きの声をこぼしたもののされるがままだ。

しかし、優しくベッドに下ろしたところで待ったがかかる。

「団長様、ちょっとだけ待ってください。これは……この言葉だけは、流されるんじゃなくてわたしの口でちゃんと伝えたいんです!」

後に続く言葉は余程恥ずかしい勘違いでなければ想像はできるものの、彼女の意志を汲んで伸ばしかけた手を何とか引き留める。だが、そう長くは持ちそうにない。だから……

「わたし……わたしは、団長様が好きです!」

彼女がその言葉を言い切るまでが限界だった。

 

 

 

翌朝、差し込む日差しで目を覚ますと、隣には毛布に包まれてすやすやと寝息をたてるツツジがいた。

途中から記憶が定かではないのだが、どうにか寝落ちした彼女に毛布をかける判断力は残っていたようだ。風邪をひかせるわけにはいかないのでその点は一安心である。

しかし、欲望に負けて自分はなんてことをしているのかと昨夜の自分を小一時間問い詰めたい気分である。

やきもきしたまま身悶えしていると、こちらが起きた気配を感じ取ったのだろう。身を起こしたツツジがぼんやりと目を開く。

「ふぁ……うん?団長様、おはようございます」

どうやらまだ寝ぼけているようで焦点が結ばれていないようだが、こちらもおはようと返してやると徐々に意識がハッキリしてきたのか、やがて今の自分の格好を自覚したらしい。

ガバッと全身に毛布を被り直し、しばらくもぞもぞとしていたかと思うと昨日と同じサンタクロース衣装を身に付けたツツジが顔を出した。

「あうぅ……昨日はすみませんでした」

蚊の泣くような声で謝罪されたものの、お互い様なのでそれ以上は言及しないことにする。

その後、執務室からサンタクロース衣装のまま自室まで戻る彼女を誰にも見られないように送り届けると言うのは到底無理な話であり、後日その一部始終を目撃した花騎士たちに根掘り葉掘り説明を求められたのは言うまでもない。

 




というわけでクリスマス回の名を借りたほぼ嫁枠回という。
新春回はいつ投稿できることやら……
本当は来月の13日でこちらに投稿を初めてから1周年ということで何か書きたいんですが、このペースでやれるだろうか?
とりあえずやれるところまでやってみようと思います。
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