とある花騎士団長の庭園   作:とある花騎士団長

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ホップ
花言葉:「希望」「天真爛漫」「信じる心」等
思えば2話目(ネリネ回)アップした時にこの子書きたいって言ってたんですよね(苦笑)
およそ1年越しでやっとアップすることができました。




33.「希望」と「信じる心」の酔いどれ花騎士―下手くそな隠し事―

長いようで短かった1年も残り僅か。

常夏の世界花とも称されるバナナオーシャンでは冬の深まりと言っても少々気温が下がった程度であり、害虫の活動がめっきり減ってきている他国のようにはいかないものの、悩みの種であるコダイバナ方面からの襲撃が減ったことで人員にも多少の余裕を持てるようになった。

陽気な国民性で知られるバナナオーシャンの民がそんな絶好の機会を逃すはずもなく、新年を華々しく迎えるための準備が着々と進められていた。

「いやー、ちょうど人手が足りなかったから大助かりだよ。

ありがとうね団長様」

会場の設営には手透きの花騎士も駆り出されており、部下の手前こうして自身も寸法を確認したり角材を運んだりと汗を流していると、顔馴染みのおばちゃんに声をかけられた。

「ほら野郎共、いつまでも花騎士の嬢ちゃんたちばっかり目で追ってないで働きな!

いつも頑張ってくれてる団長様がここまでしてくださってるんだ。

私に働いてないと判断されたやつは明日の宴会を楽しめると思うんじゃないよ!」

並の害虫なら声だけで怯ませることができるのではないかというおばちゃんの檄を合図に慌てて作業へ戻る男たちに苦笑しつつ、騎士団長就任前とは様変わりした日常に想いを巡らせる。

儀礼としきたりを重んじるリリィウッドから就任した自分には、毎日のように催事ではしゃぎ倒す彼らに当初は困惑もあったものだが、今では過酷な現実に悲観することなく日々を楽しく生きようと奮闘する姿を誇らしいとさえ感じている。

そんな彼らに報いることができるのであれば、この程度はお安いご用なのであった。

 

 

 

やがて予定より早く任務を終えたという他の騎士団も合流し、夜通し交代で進める手筈だった作業も日暮れ前にはすべて完了させることができた。

余った資材を片付けるのみとなったところで後は自分たちでやるからという人々の好意に押されて帰り支度を整えていると、今朝から見かけなかったホップが歩み寄ってきた。

「いやっほー団長!今日もバナナオーシャンは暑い!

こう暑いと、キンキンに冷えたやつが欲しくならない?」

酒瓶を手にする彼女の足取りは覚束ない様子で、近くまで歩み寄ってきたかと思うと、勢いを殺しきれなかったのかそのまま抱き付いてくる。

「えへへ~、お仕事お疲れ様、団長」

既に出来上がっているかのような赤ら顔で身体を擦り寄せてくるホップ。

押し付けられる柔らかい2つの感触と相まって普段であれば目のやり場に困ることこの上ないのだが、さすがに作業直後とあって暑苦しいという感想が先にたった。

暑いと言うくらいなら身体を密着させなければ良いと思うのだが……

「えー、減るもんじゃあるまいし良いじゃない、仕様がないな~ほれ、うりうりっ!」

唐突に押し付けられた酒瓶は言葉通りよく冷やされており、うひゃっと情けない声が出てしまう。

何事かと視線が集まってくるが、元凶となった少女はそんなことなどどこ吹く風である。

「うひゃっ……だって、団長ってば可愛いんだから♪」

何がそんなに楽しいのか余計に身体を密着させてくるホップ。そんな我々を尻目に、他の花騎士たちは「またか」といった様子で黙々と作業に取り組んでいる。その一方で

「おっ、こんな時間からから熱いねぇお2人さん!」

「くぅ~羨ましいぜ!こうなったら今からでも騎士団長を目指して……」

「悪いことは言わない……止めとけ」

「そうそう、お前がなれるなら俺でも目指すわ」

「何だと!こうなりゃもう飲むしかねぇ!」

これが故郷のリリィウッドであったなら、終わりかけとは言え作業中に何をやっているのかと怒られそうなところだが、いつの間にか本番前の予行演習と称した宴会が始まるあたり、さすがはバナナオーシャンなのであった。

 

 

「ぷっはぁー!仕事の後はお酒が進むわぁ……」

屯所までの帰り道、さっきまでしこたま飲んでいたはずのホップがどこからか取り出した酒瓶を呷り始めた。

“予行演習 ”は日が完全に落ちきるまで続き、彼女以外の花騎士たちは先に屯所へ戻ったのを確認しているため、騎士団の関係者で最期まで残っていたのは我々だけである(ホップが離してくれなかったことも一因ではあるが)。

それにしても、まだ飲むのか……

「当たり前じゃない。むしろこれからが本番!

みんなでワイワイ騒ぐのも好きだけど、団長と2人でしっとり……ってのも格別なのよね」

何やら頭数に入れられている気がするのだが?

こちらとしては当然の疑問を呈しただけのはずなのだが、ホップはなにやら不満気だ。

「えー、たまには付き合ってくれても良いじゃない。最近は宴会の方にもあまり顔出してくれないし、付き合ってくれないと寂しいよぉ~。

さっきだってほとんど飲んでないみたいだし」

案外よく見ているものである。

まぁ、これ以上はこの状況を用意してくれた彼女が可愛そうなので素直にお誘いに応じるとしよう。

「ふぇ?……えええぇぇぇェッ!?」

やはり気付かれているとは思っていなかったようだ。ホップが驚きの声を上げる中、仕事を手伝ってもらったという花騎士が何人もお礼を言いに来たことを白状する。

これで隠し通せてるつもりだったのだから詰めが甘いどころではない。

最近は任務が立て込んでいたせいてホップ主催の宴会にもあまり参加できていなかったので、こちらとしても申し訳なく思っていたのだ。

「う、うぅ……」

酒せいだけではなく顔を真っ赤にするホップ。

やがて何を思ったのか手にした酒瓶の残りを一気に飲み干してしまった。

さすがに許容量を越えてしまったらしく、力なく崩れ落ちそうになる彼女を慌てて受け止める。

「うい~……ひっく……団長、あんまり無理しちゃダメよ?

こんな私でも信頼して任せてくれるのは、団長くらい、なんだから……」

「団長……大好……くぃ……す~……、す~……」

せめて最後のところは言い切って欲しかった!

常夏のバナナオーシャンとは言え、この時期の夜は多少冷える。

腕の中で寝息をたてる彼女を背負い直し、風邪を引かせてしまわぬように帰路を急ぐのだった。




前回のツツジ回に続いてそのうちこっそり編集しにくるやも。
何気にバナナっぽいバナナの子書いたの初めてと言うねw
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