花言葉:「元気」「無邪気」「心も体も健康」「変わらぬ愛」等
予定変更等が重なって新年1発目の投稿がかなり遅れてしまいましたが、この子に決めました。
常に研鑽を重ね、その立ち居振る舞いは味方を鼓舞する。その姿、まさにヒーロー!
(世間的には)年が明けて最初の出勤日とあって、本日の予定は各国のお偉いさんとの面会ばかりだった。こちらは昨夜まで害虫の討伐に勤しんでいたにも関わらず、である。
本音を言えば今すぐベッドに潜り込みたいところではあるが、向かいの席で語り続けるどこかの上流貴族(名乗ってもらったはずだが忘れた)を前に船でも漕ごうものなら国際問題にまで発展しかねない。
ひたすら平身低頭に徹することで話を早く切り上げてくれるように内心で祈っていると、どうやら願いは通じてくれたらしい。
「それでは、今年も君の活躍に期待しているよ!」
そう言って腰を上げ、従者を引き連れて意気揚々と執務室を去っていくのを見届けると、緊張の糸が切れたように倒れ込んでしまった。
突然の衝撃に抗議するかのようにギシッと軋むソファーがかなりの大音量を響かせたことに慌てて正気を取り戻したものの、どうやら気付かずに離れてくれたらしい。
今度こそ完全に緊張を解いて横になる。
幸いこの後に急ぎで提出が必要な書類や出席が必要な会議などは予定されていない。
誰かが入室してこようものなら言い訳のしようがないほどにだらけきった姿勢ではあるが、もはや瞼が重力に抗うのも限界のようだ。
どれくらいの間そうしていただろうか?
一度手放した意識は何者かが執務室に近づいてくる気配を察知して僅かに浮き上がってくる。
慌てて姿勢を正そうと試みるが、再び沈みかけた意識を繋ぎ止めるのが精一杯のようだ。
先程と同様、今度は気配の主が執務室を素通りしてくれるように祈ってみたのだが、残念ながらその願いは聞き入れてもらえないらしい。
「団長くん、任務の報告書を……って、あれれ?
もしかして疲れちゃいましたか?」
聞こえてきた声はどうやらオステオスペルマムのようだ。
正義のヒーローを自認する彼女は『皆がゆっくり休んでいる今だからこそ、ボクが皆の分まで頑張ります!』と、自ら進んで件の任務に名乗りを上げてくれた花騎士の1人である。
報告書と思われる書類を執務机に置いた後、なにやら近くで囁く声が聞こえてくるものの、もはやその内容を聞き取ることも叶わない。
普段はヒーローとして常に研鑽を重ねる彼女の模範となるべく、騎士団長として恥じない立ち居振る舞いを心がけていたのだが、これはもしかしたら幻滅されてしまうだろうか?
そんな不安を抱えつつ、完全に意識を手放すのに時間はかからなかった。
目を覚ますことができたのはすっかり辺りが暗くなった後のことである。
徐々に意識を手放す前の記憶がはっきりしていく中で、一先ずオステオスペルマムが置いていった報告書を確認するのが先決である。そう判断して起き上がろうとしたのだが……
「……すぅ、……すぅ」
こちらに覆い被さるようにしてオステオスペルマムが気持ち良さそうに寝息を立てているではないか。
「……すぅ、……ハッ!!申し訳ありません団長くん。
お疲れの様子だったので一休みしてから起こそうと思ってたのに……こんな、時間……」
気づいたところで1度付けた勢いを殺しきれる訳もなく、飛び起きた拍子に起こしてしまった。
彼女が運んできてくれたらしい毛布がパサッと床に落ちる。
呆然としつつも情けないところを見せてしまったことを謝罪するが、首を振って否定される。
「ヒーローにも休息は必要ですから。
それに……」
何かを言い淀むオステオスペルマム。
ヒーローとしていつも堂々とした振る舞いを心がけている彼女には珍しいことである。
「うぅ、やっぱり分かっちゃいますよね。
団長くんだから白状しちゃいますけど、実はボク……暗いところが苦手なんです」
そう切り出した彼女は、幼少期の嫌な思い出を晒していく。
苦手なことくらい、誰しも1つや2つ持っていそうなものだが、ヒーローを自負するオステオスペルマムとしては看過できない弱点なのだろう。
下手な慰めは逆効果になると判断し、彼女の手を引いて私室まで送る傍ら、今日のことはお互い胸にしまっておくことを提案する。
軽々しく弱味を明かせない者同士、必要な協力は惜しまない、とも。
俯いたままの彼女が何を思っているかは判然としないものの、一先ず幻滅されてはいないことに安堵したのだった。
「団長くん、この間言っていた弱点を克服するための協力。今お願いしても良いですか?」
報告書をまとめ終え、私室に戻る支度を整えていたところにオステオスペルマムが訪ねてきた。
既に夜の帳が降りた後であり、廊下も松明の灯りがあるとはいえかなりの暗さだったはずだ。
そこまで急ぐことはないのではないか?そう尋ねようとしたのだが、まっすぐこちらを見据える瞳から確かな決意を感じ取れた。
発言の真意は未だに掴めていないが、必要な協力は惜しまないという言葉に嘘はない。
静かに頷いて返すと、オステオスペルマムは唐突に執務室の明かりを消していった。
僅かな月明かりだけが差し込む暗がり……彼女の姿はぼやけた輪郭しか見えないものの、不安を必死に堪えるように縮こまっているのは容易に想像できた。
さすがに荒療治過ぎるのではないかと微かに震える身体を優しく抱き締めると、抱擁を返す彼女の声が耳元で囁く。
「えへへ……団長くん。頼みたい協力っていうのはですね……今ここで、ボクのことを愛して欲しいんです」
震える声とは裏腹に、絞り出された言葉の内容はストレートそのものだった。
「嫌な思い出を忘れられるくらい幸せな思い出を作れれば、きっと暗闇も怖くなくなるはずだって思ったんです。
色々考えたんだけど、やっぱり好きな人に……だから!……うむっ!?」
自分で良いのか?
その質問が無粋と感じられるほどの覚悟に、彼女の唇をキスで塞ぐことで応える。
望み通り過去の記憶を新たな思い出で塗り潰すべく、されるがままの肢体に手を伸ばすのだった。
おかしい……まさにヒーローといった具合に害虫どもをバッタバッタと薙ぎ倒す彼女のSSを書いてたはずなのにどうしてこうなった(苦笑)
明後日は投稿初めて1周年なのに新作書く余裕が……やれるところまでやってみます!