とある花騎士団長の庭園   作:とある花騎士団長

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皆さんステージ周回は順調でしょうか?
私?このタイミングでSS投稿に来てる時点でお察しですね。

蜜もスキチケも既に使いきりましたが、残りのイベント期間も気合いで乗り切りたいと思います。


36.「孤独な魂」に寄り添う花騎士なおくりびと②―甘い誘惑―

「さ、寒すぎぃ……。ウィンターローズ出身と言っても特別寒さに強い訳じゃないのにさ……」

冬晴れの空の下、訓練場を白く染め上げた新雪を踏み締めながら歩いていると隣を歩くプルモナリアが早速弱音を吐く。

貸し与えたブカブカのコートを羽織ってなおガタガタ震えている彼女はいかにも寒そうで、中に戻ろうかと提案してみるも首を大きく横に振って拒否されてしまった。

「いやいや、後になってこういうのが思い出に残ってたりするからね。

今は我慢しておくよ」

少々意固地になっている気もするのだが「冬の思い出を作りたい」と連れ出したのは彼女の方なので、それも致し方ないのかもしれない。

何より、プルモナリアは葬儀屋の娘という死を間近に感じる環境で生まれ育ったからか、明日が常に約束されたものでは無いことを誰よりも実感として知っている。そのため“思い出”というものをとても大切にしているのだ。

こちらが何か言ったところで、満足するまで戻らないだろう。

そんなことを考えながら彼女の様子を見守っていると、近場の雪を寄せ集め始めた。

かまくらでも作るのだろうか?

「ふふふーん♪ まだ秘密だ」

疑問符を浮かべつつ、取り敢えず彼女の元へ雪を運ぶ手伝いをしていると、いくらも掛からない内に雪の塊が形を成していく。

やがて姿を現したのは、葬儀屋の娘である彼女らしい逸品が姿を現す……そう、棺桶である。

「どお? わたしとしては結構良い出来栄え」

プルモナリアが胸を張る通り、細部の装飾まで作り込まれた棺桶はこの短時間で作ったものとは思えない完成度だ。

自分の葬儀の際には自作した棺桶に入りたいと豪語するだけあって普段から作り慣れているのだろう。それにしても、のんびりとした印象の強いプルモナリアなだけに予想外の速業である。

「木材と違って加工がしやすいからね。

良かったら団長の棺桶も雪で作ろうか?」

言われて気付いたのだが、目の前の棺桶は小柄な彼女が入るには大き過ぎた。もっと背の高い……そう、自分ならちょうど良いだろう。

何とも言えない感情を込めて彼女の方を見る。

「……冗談だよ?

団長の棺桶は、最高級の木材を使ったかっちょいいのを用意するって決めてるから」

そう言って笑うプルモナリアがクシュッと可愛らしいくしゃみをしたところで、風邪を引く前に室内へと避難するのだった。

 

 

 

暖炉に火を焚いて暖めていた室内に腰を落ち着け、温かい飲み物を用意する。

自分にはコーヒー、甘いもの好きなプルモナリアには牛乳とハチミツをたっぷり加えたココアだ。

「はぁ~やっぱり甘いものは最高だね。

ありがとう、偉い人」

余程気に入ったのか、おかわりを要求するプルモナリアに2杯目を用意するべく給湯室でお湯が沸くのを待っていると、数名の花騎士が通り掛かった。

「あっ、団長さんだ!」

「ねぇ、団長にも……」

「そうね、同性の意見ももらえるのはありがたいわ」

何やらこそこそと相談をしているようだが、やがて1人が代表するように進み出てくる。

「団長様、良かったら食べた感想を伺っても良いかしら?」

そう言って差し出された皿の上には、大量のチョコレートが並んでいる。

きっと試作品なのだろう。所々に形の不格好なものも見受けられるが、味の方は申し分無い。

その言葉に安心したのか、緊張で強張っていた顔が安堵の色を見せる。

その光景を見ていた他の花騎士たちからも続々とチョコレートが差し出され、素直な感想を返していく。

中にはかなり個性的な味付けのチョコレートもあったのだが、どうやら相手の好みに合わせたものらしい。

お湯が沸いたことを知らせる甲高い音が響いたのでプルモナリアの元へ戻ろうと断りをいれると、感想のお礼にとたくさんのお土産を包んでもらったのだった。

 

 

 

大量のチョコレートをお土産に部屋へと戻って来ると、案の定プルモナリアは瞳を輝かせて喜んだ。

1つまた1つとチョコレートを頬張る嬉しそうな顔を見つめていたのだが、不意に手を止めて疑問の言葉を口にする。

「バレンタインデー……って何?」

世間知らずと言うほどではないが、彼女はたまにこうしたイベントごとに疎いことがある。

だからその質問がそこまでおかしな事だとは思わないのだが、だとするとどうしてその単語を知っているのかという疑問が生じる。しかし、その答えはすぐに判明した。

最初は自分への問いかけかと思ったこの質問だが、プルモナリアの視線がこちらに向いていないのだ。

「ふむふむ、なるほど~」

端から見れば1人芝居でもしてるようにしか見えないのだが、それなりの時間を共有してきたことで彼女が今この世ならざる者と会話をしていることは容易に想像することができた。

騎士団長という立場上、不思議な能力を持つ花騎士と出会うことは珍しくないのだ。

散々気味悪がられてきたからか、入団当初はその力を隠していたプルモナリアだったが、少なくともこの騎士団に彼女を疑う者などいない。

命を救われた者は1人や2人ではないのだ。

プルモナリア曰く、『幽霊はみんな素直でワガママな寂しがり屋』なのだと言う。

彼らにとって、自分たちの主張を聞き届けてくれる彼女のような存在は貴重なことだろう。2人(?)の会話の邪魔にならぬよう、大人しく経過を見守るのだった。

 

 

やがて説明が終わったのか、明後日の方を向いていたプルモナリアの視線がこちらに戻って……来なかった。

「ねぇ、……偉い人?」

俯いたままモジモジとする彼女の様子に、そこはかとなく嫌な予感を感じつつ続く言葉を待っていると、意を決したようにプルモナリアの視線が上がった。

「バレンタインは好きな人に『チョコと一緒にわたしも食べて♥️』ってやるのが定番なんだね」

前言撤回。なぜ先程の自分は2人(?)の会話を止めなかったのだと後悔する。

ここか?ここなのか?彼女に余計なことを吹き込んだ変態がいると思われる箇所に思いっきり拳打を叩き込む。

「……団長?」

プルモナリアの呼び掛けのおかげで正気を取り戻すことができたのは、どれだけ無為な時間を過ごした後だっただろうか。

そう、まずは彼女の誤解を解くことが先決なのである。報復など後でいくらでもできる。

正しいバレンタインの在り方をプルモナリアに説くべく口を開きつつ、バナナオーシャンで巫女を営んでいる花騎士のツテにどうやって協力を取り付けるか思案しているあたり、自分はまったく冷静では無かったのだと思う。

「好きな人にチョコレートを渡す。そう聞いたとき、最初に思い浮んだのは偉い人の顔だったよ?」

だからこそ、続くプルモナリアの言葉に意図せぬ返事を返してしまったのだ。そうに違いない。

「わたしは、団長が好き……大好き……

だから、団長が嫌じゃなかったらだけど」

しかし、ここまで真っ直ぐな好意を寄せられて抗える男などいるだろうか?

「今日を生きられても、明日もそうとは限らない。

わたしは花騎士で、偉い人は騎士団長だから。だから……」

誘われるように触れ合った唇からはチョコレートの甘さが伝わってきたのだった。




という訳でニューカマー最推しのダイマと気の早いバレンタイン回(?)でした。
バレンタインはバレンタインで別の子書くと思いますが←自ら追い込むスタイル
どうかお手すきの票がありましたらお題3はプルモンにお願いします( ノ;_ _)ノ
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