今日は節分!節分と言えば豆まき!
豆まきと言えば、最も定番の口上は『鬼は外、福は内』であろうか。
実際、周辺の地域も例外ではないのだが、春庭全土から花騎士が集まってくる騎士団という組織においては必ずしもそうとは限らない。
特に『鬼は外』の部分はそれぞれの信仰や家庭の事情からタブーとされる場合も多いようだ。
数年前まではこの騎士団でもお決まりの口上が使われていたようだが、名前に「オニ」と付く者たちに配慮して徐々に『福は内』だけが使われるようになった。
他国から移籍してきた花騎士によると『鬼は(も)内』、逆に『福は外、鬼は内』なんていう地域まであるらしい。マロニエやソリダスターといった博識な花騎士がいれば細かな注釈付きで経緯を説明してくれそうだが、残念ながら両者とも任務中なので今は興味深いに留めておく他ない。
何はともあれ、今年も騎士団を挙げて盛大に豆まきを……と言いたいところなのだが、昨年に一部の花騎士が屋根の上やら訓練場やら所構わず豆をまいたせいで後処理に時間を取られてしまい、今年は自粛の厳命が下されてしまっていた。
おかげで若干の消化不良を感じつつ、こうして炒り豆をつまみながら事務仕事に精を出している次第である。
無心で書類を片付けていると、書類の山もだいぶ低くなってきた。大きく伸びをしつつ窓越しに外を覗くと、ちょうど夕飯時といった頃合いである。
さすがに炒り豆だけでは小腹も空いてきたので、食堂で軽く腹ごしらえでもしようかと席を立った時だった。
「団長さま、恵方巻きをお持ちしました~」
絶妙なタイミングでオジギソウがお盆を手に入室してきた(五感の鋭い彼女のことなので、実際にこちらが小休止を挟むタイミングを計っていたのかもしれない)。
執務室に仄かな磯の香りが広がり、彼女の手にしたお盆に視線を向けると海老やサーモンといった海鮮がふんだんに使われた2本の太巻きが皿に乗せられている。どうやら一緒に食べようということらしい。
当然断る理由などあるはずもないので、お礼を言ってから皿だけ受け取る。
「今、お茶を淹れてきますね~」
勝手知ったる様子でお茶の用意をしている間に来客用のソファーへと席を移すと、先程のお盆に湯飲みを乗せたオジギソウが戻ってきた。そのうちの片方を受け取り、彼女が対面に座るのを待ってから手を合わせて無言のままそれぞれの太巻きにかぶりついていく。
もちろん、今年の恵方である南南東に視線を合わせた上でだ。
しばらくは咀嚼音だけが空間を満たす。
そして、最後の一口を押し込んだところで再び対面を向くと、彼女はやっと半分を食べ終えたところだった。マイペースではあるが、着実に食べ進めていくオジギソウ。そんな様子を眺めていると、徐々に彼女の顔が赤く染まり始める。
最初は食べ続けるのが苦しくなってきたのかとも思ったのだが、どうやら違うらしい。
視線は一点を見つめているとは言え、こちらに見られているのが何となく分かるのだろう。
食べ終えた頃には、オジギソウは耳まで真っ赤になってしまうのだった。
「んも~! 団長さまのせいで失敗しかけたじゃないですか~」
しばらく俯いていたオジギソウだったが、顔を上げると同時に抗議してきた。
すまないとは応じてみるものの、本気で怒っている感じではない。きっと、恵方巻きにかけた願いが共通のものだからだろう。
その予想を裏付けるように席を立ってこちらの隣へと移動してくるオジギソウ。
肩に腕を回して引き寄せると抵抗もなく身体を預けてくれたので、優しく髪を梳くように撫でてやると気持ち良さそうに目を細めて密着を強めてくる。
今年も無事に何気ない一時を……その横に彼女が居てくれればそれ以上は望むまい。
もちろん、騎士団長としてオジギソウに限らず多くの花騎士や住民の命を預かる立場であることに変わりはない。来年もこうして平穏な時間を過ごせるように、自分の出来うる限りのことをしなくては……そのまま寝入ってしまったオジギソウの安らかな寝顔を眺めつつ、一先ず彼女を起こさないようにこの場を移動するためにはどうすべきかと思考を働かせるのだった。
という訳で本当は昨日の内にあげたかった節分回です。
(今日としてもかなりギリギリですが……)
ニュースによると2月2日が節分なのは124年振りらしいですね!
もったいないことをした……でも繁忙期の睡魔には勝てなかったよ(泣)